4種のカレーをあいがけ!バンドマンが作る「240(ニコヨン)」のスパイスカレー

2017.02.16

京都にクレイジーでファンキーなカレー屋がある。店主は、カレー店での修行経験がないバンドマンだ。一見お遊びのように見えるが、大阪で独自の進化を遂げた「スパイスカレー」と、さまざまなカレーの要素が融合していて、カレーツウが食べれば、数百店以上を食べ歩いて完成させたことがわかる本格的な一皿だ(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、京都府にある、スパイシーな4種のあいがけカレーのうわさを調査してきました。

スパイスを駆使した4種のあいがけカレー「CURRY & BAR 240」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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京都の二条城近くに、バンドマンが店長を務めるカレー店「CURRY & BAR 240(ニコヨン)」があります。カレー店での修行経験はないそうですが、カレーソースが4種のあいがけになっていて、スパイスが効いていておいしいと、インターネットを中心に話題になっています。本当においしいのかどうか、ぜひ訪問して評価をお願いします
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井上先生「この店は、2015年6月の開店から瞬く間に人気になり、カレーツウの間でも話題になっていたんだ。だけど、時間がとれなくてなかなか行けなかったよ。この機会に、調査しに行ってみようか!」

りか「やった~!実は私、カレーと同じくらいバンドマンが大好きなんです!最高の組み合わせですね!」

井上先生「ったく、やれやれ…」
「CURRY & BAR 240」は、二条城のすぐそば、市営地下鉄二条駅から徒歩約5分のところにあります。青色のポップな外観は、古都京都らしからぬアメリカンな雰囲気。店名の通り、夜はバーとしても営業しています。

井上先生「お!いかにも、バンドマンがやっていそうな外観だね」

りか「ですね~!オシャレなレコード屋さんと間違えてしまいそうです。さっそく中に入ってみましょう(バンドマン♪バンドマン♪)」
入店すると、壁にはライブのフライヤーがずらりと貼られていて、まるでライブハウスのよう。
「いらっしゃいませ」
奥から出てきたのは、噂のバンドマンである店長の徳増良介(とくますりょうすけ)さん。ロックバンド「LABRET(ラブレット)」でギターを担当しているといいます。
井上先生「噂で、カレー屋での修行経験がないのにカレー店を開いたと聞きました。どうしてカレー屋を開いたのでしょうか?」

徳増さん「以前は、バンドをやりながらバーテンダーをやっていたのですが、深夜の仕事ではなく昼間の仕事をしようと思って。そのときカレー作りにハマっていたので、カレー屋やろか~という感じですね」

井上先生「カレーはどこで覚えたんですか?」

徳増さん「店を開く1年前に、輸入雑貨店でスパイスカレーキットが売っていたので、試しに買ったんですよ。中に小分けになったスパイスが入っていて、最初は付属の説明書見ながら作りましたけど、レシピ本もなかったので、感覚ですかね」
井上先生「…感覚ですか。しかし、カレーは4種のあいがけにするなど、昨今、大阪を中心にブームになっているスリランカカレーのスタイルを踏んでいると思うのですが?」

徳増さん「最初は1種類だけでしたが、そうすると提供するカレーの減りがめっちゃ早いので、“あいがけにしたらいいんちゃう?”と思いついて。2種類かけてみたら、まだ皿のスペースに余裕があるなってことで、最終的に4種類になっただけですよ。なので、スリランカカレーは関係ないですね」
りか「そ、そうなんですね(どうしよう…この方、本当にカレー作れるのかな?)」

ちなみに店名の「240(ニコヨン)」とは、戦後の日本で、日給240円で働く非正規雇用の労働者を指した俗語。ご自身も10代の頃に非正規雇用の労働をやっていたことに由来するそうです。そこから這い上がっていくという意志も込めているのでしょうか!

カレーツウの舌は騙せない!辛さと香りが引き立つ「ニコヨンスペシャル」

ひょうひょうとした徳増さんに不安を覚えつつも、まずは噂のカレーを食べてみましょう!オススメの「ニコヨンスペシャルカレー」(税込1,210円)をオーダー!
▲上から時計回りに、ごぼうのスパイスキーマ、パキスタンカレー、ニコヨンチキンカレー、ペッパー牛スジカレーの4種類があいがけされた「ニコヨンスペシャルカレー」

井上先生「見た目は、いま大阪で流行りのスパイスカレーだね」

りか「そうですね。スパイスがたくさん振りかけてあって、香辛料のツンっとしたいい香りがします」
井上先生&りか「いただきます!」
井上先生「君から先に食べて感想聞かせてよ」

りか「わかりました。では、お先にいただきます!」
▲パクっ

りか「う~~~っん♪」
りか「口に入れた瞬間、辛さがガツンっときます。牛スジはこんなにも大きくて、ぷるぷるのやわらか食感です!」
りか「しかも!カレーの上にパクチーや玉ねぎ、パセリに加え、ブラックペッパーなど様々なスパイスを振りかけてあるので、同じカレーでも食べる場所によって、多様な味に変化するんですよ。ひと口ひと口違うから飽きないですね!井上先生もひと口食べてみてください。すっごくおいしいですから!」

井上先生「あ、そう?じゃあ、どれどれ…」
井上先生「(…お、おや?あれだけ素人ぶっていたが、研究の成果が見え隠れするカレーだ。絶対にいろんなカレーを食べ歩き、インスパイアされているに違いない)」

りか「先生、お味はどうですか?」

井上先生「結構、辛いな!カレーも熱々だから、香りが立っていて、スパイスの辛さが引き立っているよ。名付けるなら、THEやんちゃカレーかな。アチャールもうまいね」

りか「アチャールって、付け合わせのことですか?」

井上先生「一番弟子なのに、そんなことも知らないの?アチャー。ってね(笑)」
りか「…先生、あまりのおいしさにノリツッコミが出ちゃいましたか?」

カレーの作り方で分かる、ただものではない感!

あまりの辛さに額から汗が噴き出るほど!
でも、最初の不安がなんだったのかと思うくらい、スパイスを駆使したカレーにくぎ付けになってしまいました。「ニコヨンスペシャル」の4種類のカレーは、一体どうやって作っているのでしょうか?徳増さんに聞いてみました!
徳増さん「ニコヨンチキンカレーは、一番辛さ控えめのカレーです。カルダモン、クローブ、シナモンのホールスパイスをテンパリング(※)してから、玉ねぎが飴色になるまで炒めて、そこにニンニク、ショウガ、トマトや、焙煎したコリアンダー、クミン、ターメリックなどのスパイスを投入します。あとは炒めた鶏肉を一緒に煮込んで、パクチーやココナッツミルクも入れて、最後にテンパリングしたししとうとクミンシードを投入して完成です」

※テンパリング…油で熱することで、ホールスパイスや野菜の香りを引き出す作業のこと

りか「スパイスは、投入する前に焙煎するんですね?」

徳増さん「焙煎したスパイスとしていないスパイスでは、香りが全然違うので」

井上先生「(彼は、スリランカのスパイステクニックについても知っているようだな)」

りか「最後に、ししとうとクミンシードをテンパリングするワケは?」

徳増さん「これも、テンパリングするとしないでは香りが違うので」

井上先生「(お、それは大阪で話題になっているカレー店の新しいテクニックじゃないか!)」
▲ペッパー牛スジカレー

徳増さん「牛スジカレーの場合は、牛スジを下ゆですると臭うんですよ。だから、臭い消しのために日本酒を入れたり、あと隠し味に醤油も入れたりしています。ごぼうのスパイスキーマは、ミンチした国産の鶏むね肉と、ミキサーで作ったごぼうのペーストを混ぜて作ります。ごぼうを入れた理由は、僕がごぼう好きだからですね」

井上先生「(スパイスだけじゃなく、日本酒や醤油も駆使しているとは!)」
▲パキスタンカレー

徳増さん「パキスタンカレーは、鶏肉と玉ねぎ、トマトを、コリアンダー、クミンシード、シナモン、フェンネル、スターアニスなど20種類ほどのスパイスで5時間煮込みます。ライブで北海道に行ったとき、たまたま入った『カラバトカリー(※)』という店のパキスタンカレーがおいしかったので、レシピはわからないんですが再現してみました」

※札幌にあるパキスタンカレーが有名なカレー店。独特なスパイステクニックで人気の横浜『サリサリカリー』の系列店でもある

井上先生「(フェンネルやスターアニスなどのスパイスも使い、しかも北海道にある他店のメニューまで研究しているじゃないか!)」
井上先生「(うん、やっぱりただものではないな)」
徳増さん「で、煮込むとどうしてもスパイスの香りが消えてしまうので、4種類のルウをかけたあとに、再度ガラムマサラとカスリメティ、ショウガ、パクチー、ブラックペッパー、パセリなど10種類以上のスパイスを振りかけて完成です」

井上先生「なるほど。ちなみにカスリメティはどこからきたのでしょうか?」

徳増さん「いろんなカレー屋さんがのせていたので。“この葉っぱなんやろ?”と調べたら、カスリメティの香りがするなって。じゃあ、うちものせようって感じです」

井上先生「かなり、研究していますね」
徳増さん「ふふ(笑)。遊んでいるだけですよ」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「CURRY & BAR 240のカレーチャートはこちら!」
井上先生「コクというよりは辛さを味わうカレーなので、辛さは5。ノリと感性でやっているとはいえ、すごく勉強しているのが伝わってくるカレーだったから、オリジナリティも5。正直、一番弟子の君より彼のほうがカレー詳しいね。あ~ぁ、彼が弟子入りすれば、君は二番に降格だな(笑)」

りか「そ、そんな~!」
▲最後はスケボーを持ってパシャリ!

京都でスパイスカレーを食べるなら、「CURRY & BAR 240」へ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

吉祥寺在住のフリーライター。カレー大學を卒業し、現在カレー大学院で猛勉強中(じつは井上先生の座を狙っている)。カレーパン伝道師。趣味はカレーとJリーグ。

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