冬でも行きたい東京のかき氷屋3選/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きvol.15

2017.01.20 更新

雪にまつわるニュースが聞こえてくる時期になると、さすがにかき氷を提供するお店の混雑も落ち着いてきたなぁと感じられる。夏の間は数時間の行列や、お目当てのシロップの売り切れに涙をのんで諦めたあの店も、冬の平日にはうまくいくと待ち時間なしに座ることが出来る。「そんなこと言っても、さすがに寒いでしょう、冬のかき氷は…」と言う方もいるが、店内はポカポカに温めてあるし、冬のかき氷は冬なりの楽しみがいっぱいなのだ。

和スイーツ系かき氷の最高峰「和キッチンかんな」

世田谷区下馬にあるこの店は、夏の間はいつも2階の店舗入り口から1階までずらりと人が並び、休日ともなると道を挟んで長い行列が出来てしまう人気店だ。

氷の温度管理をしっかりと行い、かき氷を削る削り手(かき氷を削って仕上げることのできる技術者)の研修にも力を入れているので、いつ行っても安定していて、ふわりとした口溶けの美しいかき氷が提供されている。
和モダンを基調にした店内は広々として、窓際席のほかにオープンキッチンが見える席や、レイアウトが異なる半個室などがあり、どこに座っても心地良い。

キッチンに和食職人の着る白衣姿のスタッフが見えるのは、もともと「かんな」の前身の店が割烹だったからで、かき氷に和風テイストが盛り込まれている理由でもある。
▲BC(番長)950円(税込)

「かんな」の代表作のひとつで通年提供されている「BC」は、いちごシロップとマスカルポーネシロップがかかったかき氷で、小さな器にこんもりと可愛らしく盛られた氷は、かき氷というよりも大きなカップケーキのように見える。

ふわりと削りながら押さえつけないように形を整えているので、氷の上の方から食べていけば簡単に崩れることもない。

口溶け良く羽のように薄く削ることはもちろん大事だが、食べやすく整えること、食べ始めから食べ終わりまでの展開をうまくまとめることはなかなか難しい。「かんな」はそういうところが非常に上手なのだ。
▲焼き芋850円(税込)

この冬イチオシの「焼き芋」は、通常の器とは異なるガラスのスープ皿のような器で運ばれてきた。

このかき氷は「BC」とは全く異なる盛り付けで、氷削機からひらひら落ちる氷を固めることなく皿に受けているのだという。

気温の低い冬の時期でないと提供できないかき氷で、羽のような氷の儚い口溶けと、香ばしくしっとり甘い焼き芋のシロップを味わうことができる。
▲KKS(時価)。写真は950円(税込)

かんなのメニューには、前出の「BC」同様に、いくつかの暗号のようなアルファベットが並んでいるのだが、「KKS」とは「(K)今日の(K)気まぐれ(S)シロップ」だそうで、この時期人気の芋・栗・かぼちゃの3種類のシロップが添えられていた。

素氷のようにも見える白いかき氷にはチーズ風味のミルクシロップがベースとしてかけられていて、そのまま食べてみるとほのかな塩気と濃厚なチーズの香りが鼻をぬけてゆく。チーズ味のかき氷に3種類のシロップを自分好みでかけながらゆっくりと味わう、なんとも贅沢なかき氷だ。
▲大人のティラミス1,000円(税込)

このほか、20歳以上限定の「大人のティラミス」はお酒の入ったかき氷で、少し時間の空いたときにしか作ることができないというかき氷を味わうことができるのも、冬のかき氷の醍醐味だ。

「かんな」はかき氷以外にランチも提供しており、気軽に食べられる和風の定食が人気なのだが、2017年から新しく餃子の定食も加わるという。

かき氷と餃子。珍しい組み合わせだが、この相性は是非皆さんの舌で確かめてみてほしい。

家族みんなが楽しめる、かき氷のテーマパーク 「雪うさぎ」

「かんな」から電車で1駅、駒沢の「雪うさぎ」は、焼肉「韓々(かんかん)」・蕎麦「五大(ごだい)」・ラーメン屋「大八車(だいはちぐるま)」が入るビルの1階にあるかき氷の専門店だ。

実はこの4店は姉妹店。どの店も味へのこだわりと丁寧な接客が評判で、地元の人から深く愛されている有名店なのである。

「雪うさぎ」が開店したのは2014年、この4店の中では一番末っ子である。
「雪うさぎ」のかき氷は、レギュラーメニューだけでも20種類以上。

生いちごから煮たいちごシロップや根強い人気の黒蜜シロップ、昔ながらのかき氷のほかにも、とろりとしたシロップと歯ごたえあるトッピングが人気の「塩キャラメルグラノーラかき氷」や、食べ応えのある「ずんだかき氷」など、様々なジャンルのメニューが並んでいる。
▲塩キャラメルグラノーラ800円(税込)

昼間は子供達やママ友さんグループが、夕方には学生、夜は仕事帰りのOLや食事を終えた家族連れなど、お客様の層も様々。

だからこそ、小さなお子さんからかき氷好きの大人まで、皆に満足してもらうために日々試食開発を怠ったことがないという。

そして更に20種以上のレギュラーメニューのほかに、短いスパンで提供される「裏氷」なるものが存在するのだ。

「裏氷」と言うとなんだか特別な人しか食べられないような、仰々しい雰囲気があるが、これを頼むためには店員さんに「今日の裏氷は何ですか?」と声をかけるだけ。すぐにメニューに載ってない限定のかき氷を教えてくれる。
▲香り高き柚子クリーム900円(税込)

この日の「裏氷」は、冬に旬をむかえる黄柚子を使ったかき氷で、無農薬の柚子を使用していて皮まで安心して食べることができるという。

柚子皮を美味しく煮詰めたコンフィチュールを包むようにかけられているのは、柚子果汁と生クリームで仕上げたエスプーマだ。

シロップに比べると温度の高いエスプーマがたっぷり添えられているせいか、この氷は食べ進んでもあまり寒くならない気がする。
▲佐賀みかん果肉入り 柑橘ミックスヨーグルト~エスプーマ仕立て~900円(税込)

この日は柚子のほかにみかんを使ったかき氷もあったので、柑橘好きの僕はもちろんこちらも注文。「雪うさぎ」人気の柑橘ミックスシッロップをヨーグルトエスプーマ仕立てにし、氷の中にはたくさんのみかん果肉が詰まっている。同じ柑橘でも柚子とは異なる構成になっているのがいいではないか。

このかき氷は美味しいみかんが手に入った時にだけ提供されるものなので、もしメニューにあったらラッキーだ。是非一度食べてみていただきたい。
▲紫芋とキャラメリゼしたリンゴ900円(税込)

柑橘のほかに特に女性に人気なのが、芋を使ったかき氷だという。紫芋のシロップにキャラメリゼしたリンゴがトッピングされて、オレンジと紫の組み合わせがとても美しい。女性たちのテーブルでは運ばれてきたかき氷に歓声が聞こえ、早速写真撮影会が始まった。
▲純米大吟醸~加賀鳶(かがとび)~の酒粕クリームと黒糖ジンジャー900円(税込)

一方、僕が男性にオススメするとしたら、冬にしか食べることのできない「純米大吟醸の酒粕クリームと黒糖ジンジャー」だ。

石川県金沢の名酒「加賀鳶」の酒粕を使ったとろみのあるシロップに、サラッとした黒糖ジンジャー蜜が添えられているシンプルな構成。酒粕クリームの雪のような白さに、黒糖で煮た生姜の黒がキリッと映えてなんとも粋なかき氷ではないか。
まずは酒粕の美味しさを楽しんで、それから生姜の刺激を味わってほしい。

たっぷりかき氷を食べた後に「五大」で蕎麦をすするも良し、「韓々」で焼肉を楽しんだ後にお口直しのデザートとして利用しても良し。
大人の僕らにも、家族連れの子供達にも、誰にでも優しい「雪うさぎ」はまるでかき氷のテーマパークのようだ。

宝箱のようなびっくりかき氷が楽しい「いちょうの木」

北品川の商店街を少しそれたところにある大銀杏の下に、宝箱のような甘味処がある。ビルやコンクリートの多いこの街で、自然の風景を残した庭に囲まれたこの店は、周りの喧騒とは遮断されたような特別な空間で、僕はこの店の持つ独特の雰囲気が大好きなのだ。
実はいつも不思議に思っていることがある。「いちょうの木」のメニューはいったい何種類くらいあるのであろう?

甘味処と言うだけあって、「あんみつ」や「みつ豆」類も多数あれば、パフェもバリエーションがあって人気。近所の常連さんが昼食に頼んでいるのはきしめんや雑煮で、こちらも様々な味やトッピングがある。その他トースト類が並び、最後にかき氷。メニューはまるでアルバムの様になっている。

ようやくかき氷のメニューを見つけたが、書き並べられたメニューの多いことと言ったら……。一度や二度行っただけで「いちょうの木のかき氷ってこうだよね」と語ることなどできるわけがないほどバリエーションが多いのだ。
この店のかき氷をカテゴリーで分けると、和風の甘味系、パイ氷などのスイーツ系、お酒の入ったアダルト系、自分でシロップを選んで組み合わせるオーダーメイド系などがあるのだが、ちょっと時間を空けると、いつの間にか新しいカテゴリーが増えてしまっていてとても網羅できない。

こんなびっくり箱のように色んなものが詰まった店を店主はたった一人で回している。というわけで夏は言わずと知れた大行列。

この季節になってようやく一息ついた店主が、何やら面白いかき氷を始めたと聞いて、今度は何だ?と楽しみに訪れた。
▲シュトーレン500円(税込 )

まずは冬定番の菓子パン「シュトーレン」が楽しげなかき氷になって現れた。
トナカイのツノのように見えるのはスパイスが効いた外国っぽい味のクッキー。
かき氷の中にはレーズン・クルミ・コーンフレーク・塩いちじくクリームなどなど、美味しい味が所狭しと詰まっている。

最初は氷の口溶けを楽しんでいたが、途中からはアイスクリームのような、パフェのような味わいになってくる。
こんなに楽しいシュトーレンは初めてだ。
▲りんご飴700円(税込)

次に注文したのは「リンゴ飴」。これは11月限定のヒット商品で、たまたま隣り合わせたご婦人に「物凄く美味しいのよ!」と勧められて注文。

運ばれてきた途端、ご婦人が嬉しそうにはしゃいだ声で言った。「このカリカリっとした飴がいいのよ!本当にりんご飴みたいなんだから」。

かき氷の上にはリンゴのコンポートと色鮮やかなべっこう飴がきらきらと輝き、中にはレーズンカスタードソースやコーンフレークも入っている。沢山の具をたっぷりスプーンにすくって食べると旨いこと旨いこと!これはハマるよなぁ~、と隣のご婦人に深く賛同した。
▲塩芋焼酎400円(税込)

ここ最近の店主のオススメは「塩芋焼酎」。ほかの氷と比べるとあっさりとした見た目だが、味のインパクトは最も強かったかもしれない。

まず塩味の芋シロップがしみじみと旨い。焼酎とはいうものの、臭みやくどさはなくスッキリとしたお酒の香りがする。食べ進むと下には黒糖蜜が潜んでいて、上の芋シロップと混ざると物凄く芳醇な味わいとなった。

「旨いなぁ!」と声をあげると、いつもはクールな店主が「美味しいでしょう!?」と嬉しそうに言った。
この店に行くと、ちょっと離れた親戚の家を訪れたような、なんとも落ち着いた気分になる。

それは店主がこの店を家のように大事にしているからこそ生まれる居心地の良さで、何十年も時間をかけて熟成してきた店にしかないこの店の歴史がそういう気分にさせるのだろう。

いつまでもこの店がこのままの雰囲気でここにあってくれることを望まずにはいられない素敵な店だ。
夏の風物詩のかき氷ではあるが、冬には冬の楽しみがある。少しのんびりとかき氷を味わうことができるのもあと数カ月。いつもより少し厚着をして、冬素材のかき氷に挑戦してみてはいかがだろう。
小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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