伊豆・稲取「雛のつるし飾りまつり」。素朴で愛らしい雛人形に癒される
伊豆稲取温泉で毎年1月下旬~3月末に開催される「雛のつるし飾りまつり」。本州にいち早く春を呼ぶイベントとして、賀茂郡河津町の「河津桜まつり」と並ぶ人気を呼んでいます。各会場では、色とりどりの布で作られた愛らしい人形が付いた「つるし飾り」と、稲取に古くから伝わる貴重な雛人形の数々がお出迎え。圧倒的な数の人形たちが、訪れた人を幻想的な空間へと誘います。
古から伝わる愛娘への思いが詰まった贈り物

桃の節句には、布の切れ端を縫い合わせて作った人形を竹ひごの輪から下がる赤い糸に縫いつけ、雛段飾りの両端へ吊るします。輪に下げる糸の本数や、糸に縫い付ける人形の個数は自由ですが、その数を「奇数」にするという決まりがあります。
一度は廃れかけた風習でしたが、稲取の「雛の会」の努力と地元の方々の協力により復活。1998(平成10)年から毎年「雛のつるし飾りまつり」として、地区全体を会場に開催されています。

「花」「桃」「うさぎ」「きんちゃく」「とうがらし」など、人形の一つひとつに願い事が込められていて、その数は30種類以上。例えば、女性の象徴でもある「桃」は、厄払いや多産、長寿延命。「とうがらし」は娘に悪い虫(悪い男性)が付かないようにとの願い。
あらゆる厄災から大切な娘を守りたい。理想に描いた人と結ばれ、幸せになって欲しい……という、親の切なる願いが詰まっているのです。
一般庶民の家庭ではまだ、立派な雛段飾りが買えなかった時代。せめて手作りの人形で桃の節句を祝ってやりたい、という思いもあったことでしょう。願う事柄を具体的な形にして祈りを捧げるという形が、この「つるし飾り」の大きな特徴になっています。
圧倒的数の展示!メイン会場「文化公園 雛の館」



館内には年代物の雛人形がたくさん並んでいます。なかには、おとぎ話をモチーフにしたユニークな人形も。表情豊かで、どれも精巧に出来ています。



稲取は金目鯛の漁獲量が県内一位ということもあって、ブランド魚「稲取キンメ」の産地ならではのユニークなつるし飾り、「金目鯛の“鯛の鯛”つるし飾り」も展示されています。


また、約43,200個のスワロフスキー・エレメントでデコレーションされた、世界でたったひとつの「雛のデコつるし飾り」は、ジュエリー好きには見逃せません。制作からデコレーションまで100時間以上かけて、すべて手作業で作り上げたそうです。

ちなみに、文化公園の敷地内には無料の足湯「雛の足湯」があります。屋根がついているので、天気が悪い日も快適。ほかの会場へ行く前や散策の途中、疲れた足を休めるのにオススメです。

文化公園 雛の館
静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1729
[開館期間]毎年1月20日~3月31日
[開館時間]9:00~17:00(最終受付16:30)
[入場料]小学生以上300円(税込)
0557‐95‐2901(稲取温泉旅館協同組合)
海岸沿いにあるもうひとつのメイン会場「むかい庵」



その古今雛の名品「田町 新宿(あらしゅく)・鈴木家(荒店酒店)のお雛様」は、長崎・旧平戸藩主・松浦家の寿免(すめ)姫が鳥羽藩主・稲垣家に輿入れした際に持参したものと伝えられています。人形の冠の細工や着物の細やかな作りは必見です。
人形の前に飾られている「お道具」の金蒔絵には、松浦家の家紋「梶葉紋」が施されていて、その美しい意匠と優雅なフォルムに、思わず見入ってしまいます。

また館内には、珍しい「端午の節句のつるし飾り」も展示されています。
稲取に残る昭和2(1927)年の絵幟(えのぼり:絵が描かれたのぼり旗のこと)には、尚武(しょうぶ:武事を重んずること)を願う武者絵などが描かれ、その裾に綿入りの「猿っこ」「桃」「三角」「のし目」などの人形が縫い付けられていたそうです。
桃の節句と同じように、端午の節句にもつるし飾りが作られていたんですね。子どもに向ける親の深い愛情は、いつの時代も平等なんです。

現代のつるし飾りの展示では、地元の小学生たちが作ったかわいらしい作品が注目を集めていました。今年はどんな展示があるのか楽しみですね。


「むかい庵」は海に面していて、とても景色の良い会場として人気です。駐車場からは稲取港を一望。



むかい庵
静岡県賀茂郡東伊豆町稲取8-1
[開館期間]毎年1月20日~3月31日
[開館時間]9:00~17:00(最終受付16:30)
[入館料]小学生以上300円(税込)
0557‐95‐2901(稲取温泉旅館協同組合)
つるし飾り鑑賞以外の楽しみ方もできる協賛会場

一つ目は、文化公園から徒歩約10分(車で約2分)の場所にある「収穫体験農園 ふたつぼり」。こちらでは、つるし飾りの鑑賞と一緒に完熟みかんの収穫体験を楽しめるんです。しかも、みかんは全種類食べ放題!収穫したみかんを、その場で搾ってジュースにしたりジャム作り体験ができるというのも楽しいですね。


庭にある樹齢約200年の「鳳凰の松」は、東伊豆町天然記念物に指定されています。大きな鳳凰が羽を休めているような、じつに堂々とした姿をしていますね。

収穫体験農園 ふたつぼり
静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1813‐1
[雛のつるし飾り展示期間]毎年1月20日~3月31日
[営業時間]9:00~17:00(みかん狩りの最終受付は16:00)
[定休日]7~9月、10~翌6月は雨天休園
[料金]つるし雛の見学は入場無料
※みかん狩りの期間や料金などの詳細はホームページをご確認ください。
0557‐95‐2747

三つ目の協賛会場は、ならぶととから徒歩4分ほどの場所にある「八幡神社」(入場無料)。こちらは、2018年より新たな協賛会場として加わりました。

さらに2019年2月20日(水)~3月10日(日)まで、「むかい庵」から徒歩約10分の「素盞鳴神社(すさのおじんじゃ)」では、階段を利用した雛段飾りが展示されます(雨天中止)。最下段から最上段まで、長~い石段に並べられた雛段飾りは壮観。階段を上った先の神社側から見る絶景は、一見の価値ありですよ!
文化公園から徒歩5~6分の場所にある「三嶋神社」でも階段を利用した雛段飾りの展示があるので、こちらにもぜひ立ち寄ってくださいね。

期間中はほかにも、楽しいイベントが盛りだくさん。詳しくは、「稲取温泉旅館協同組合こらっしぇ」のホームページをご覧ください。
小さな港町・稲取地区の街を散策し、ファンタスティックな雛のつるし飾りに囲まれると、ほっこり温かい気分になれますよ。ひと足早い春を見つけに、「雛のつるし飾りまつり」を訪れてみませんか?
稲取温泉 雛のつるし飾りまつり
[開催場所]稲取文化公園 雛の館、雛の館 むかい庵 ほか
[開催期間]毎年1月20日~3月31日
※開催時間および定休日、入館料は会場により異なります。詳細はホームページをご確認ください。
0557-95-2901(稲取温泉旅館協同組合)

小林ノリコ
移動文筆家/伊豆在住フリーランス・ライター。東京・南青山の編集プロダクション勤務を経て2005年からフリーランスとなり、2015年より静岡県熱海市を拠点に執筆活動を開始。「ふらりと出かける、ゆる伊豆」をテーマに、地域の宝を再発見する取材活動と、伊豆地域を拠点に活動するフリーランス・クリエイターのネットワーク作りを行っている。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
伊東・東伊豆で体験できるプラン
-
オンライン予約OK
デコオルゴール体験
約45分|2,200円(税込) / 個
伊東・東伊豆
-
オンライン予約OK
クリアハーバリウム体験
約60分|2,100円(税込) / 個
伊東・東伊豆
-
オンライン予約OK
そば打ち体験&そば定食(天ぷら・サザエ飯・小鉢付き)
約90分|3,100円(税込) / 人
伊東・東伊豆
-
オンライン予約OK
クリアキャンドル体験(S/M/Lサイズ)
約60分|1,200円(税込) / 個
伊東・東伊豆
-
オンライン予約OK
にぎり寿司体験(10貫)
約60分|3,000円(税込) / 人
伊東・東伊豆