富山地鉄で「往年のスター電車」に出会う旅!/古谷あつみの鉄道旅Vol.16

2017.03.17

みなさん、こんにちは!古谷あつみの鉄道旅企画が始まって1年が経ちました。これまでに全国各地の鉄道を紹介してきましたが、今回は北陸新幹線開業で東京からぐっと近くなった富山県の鉄道を紹介します。テーマは、かつて関西や関東で活躍したさまざまな電車に出会う旅!

富山地方鉄道では、鉄道ファンが喜ぶ電車から、鉄道旅初心者にもどこか懐かしい電車まで、関西や関東の大手私鉄で活躍していた“懐かしい電車たち”が、今もなお現役で活躍しています。そうした電車に会いに来ました!

いつもの鉄道ライター土屋武之さんがアドバイザー。レイルマンフォトオフィスの山下大祐カメラマンが撮影担当です。

今回の見どころはここ!

1.旅のスタートはさまざまな○○と一緒に!
2.夢の東西私鉄コラボレーションが富山で?!
3.昭和の人々の憧れ…貴重な電車に初対面
4.旅の疲れはやっぱりコレで解消!足湯と温泉街

1.旅のスタートはさまざまな○○と一緒に!

▲富山地方鉄道電鉄富山駅前

今回の旅の始まりは、ここ富山駅前です。
2015年に開業した北陸新幹線で東京からおよそ2時間。以前は上越新幹線と特急を乗り継いで4時間弱かかっていましたから、大幅な時間短縮となりました。
観光客も増え、賑わう富山駅ですが、実は私…新幹線開業後に来たのはこれが初めて!以前とは全く違う駅前の雰囲気に驚きました。

そんなJR富山駅のすぐ隣りにあるのが、富山地方鉄道の「電鉄富山駅」です。
▲電鉄富山駅のエントランス

富山地方鉄道は、地元の富山県では「地鉄(ちてつ)」と略して呼ばれ、親しまれています。ここからは私も親しみを込めて「富山地鉄」と呼ばせていただきますね!
富山地鉄は富山県東部を走る私鉄で、有名観光スポットである立山黒部アルペンルートや宇奈月温泉、黒部峡谷などへのアクセスルートとして欠かせない鉄道路線。観光シーズンである春から秋にかけては大変なにぎわいを見せます。
▲電鉄富山駅の改札口

また富山地鉄は、一畑電車に続いて、映画RAILWAYSシリーズの第2弾『RAILWAYS~愛を伝えられない大人たち』(2011年公開)の舞台になったことでも知られています。
▲富山地鉄が1日乗り放題!

そんな富山地鉄へ取材にお邪魔したのは12月。オフシーズンですが、いったいどんな楽しみがあるのでしょうか?
全線1日乗り放題の「鉄道線・市内電車1日フリーきっぷ」で巡ります!
▲ヘッドマークがたくさん並べられている!

電鉄富山駅の名物と言えば、ホームの壁面に並べられたたくさんのヘッドマークです。ここに来たら、まずはこの前で1枚、記念撮影をしたくなります。
これらのヘッドマークは、展示されているわけではなく、いつでも列車に取り付けられるように置かれているそうですよ。

取材ということで特別に持たせていただきましたが、大切な備品ですので見るだけにしてください。触ってはいけません。

古谷「さぁ、旅の始まり~!…といっても、オフシーズンなのに、なにか見どころがあるんですか?!」
土屋「あるさ。これから面白いものが見られるよ。ほら、電車が入ってきた!」
古谷「あっ!あれは!」

2.夢の東西私鉄コラボレーションが富山で?!

▲電鉄富山駅で並ぶ17480形(左)と10030形(右)

左側の列車は17480形といって、かつて関東の東急大井町線で走っていた、ステンレス製の電車です!
東急で走っていた頃の外装をそのままに、富山の大地を駆け抜けています。

対する右側は10030形で、元京阪3000系。大阪と京都の間を特急として走っていた電車です。
車体のカラーは、富山地鉄のオリジナルカラーに塗り替えられています。

この2種類の車両が並ぶとは、鉄道ファンにとっては夢の東西コラボレーション!これを見たくて富山地鉄まで足を運ぶ人も少なくないんですよ。
▲電車の正面のヘッドマーク掛け

先ほど紹介したヘッドマークは、ここに掛けられるのですよ。
まずは富山地鉄カラーに身を包んだ元京阪電車に乗って、岩峅寺(いわくらじ)駅を目指します!
▲10030形のあちこちに、京阪の名残りが…

車内も京阪で走っていた当時の面影がいっぱい!この壁のデザインも京阪らしい、雅な模様です。車内を眺めているだけでも楽しくなります。
▲常願寺川の鉄橋から立山連峰を眺める

車窓いっぱいに立山連峰の山々が広がり、気分は爽快です。春や夏も綺麗なことはもちろん、寒い冬のオフシーズンだからこそ見られる山の表情があります。
どこまでも続く山々を眺めていると、旅の気分も盛り上がるというもの!
▲標高が上がると積雪も増えてくる

電鉄富山駅からおよそ40分。岩峅寺駅に近づくと辺りは雪景色に!
電車に揺られていると気付きにくいですが、田畑を白く染める雪を見ると、ずいぶんと標高が高いところまで来たことがわかります。
▲岩峅寺の駅舎はレトロな造り

さぁ、岩峅寺駅に到着しました。
この駅は富山地鉄の立山線と上滝線の接続駅で、富山地鉄の主要駅の一つ。趣がある瓦屋根の駅舎は、1956(昭和31)年の完成です。
2007(平成19)年には、映画『剱岳(つるぎだけ) 点の記』のロケにも使用され、明治末頃の富山駅として登場するほど立派なものなのですよ。
▲今度は元西武の電車に乗車

さて、次に乗る電車は16010形といい、こちらは西武鉄道の特急「レッドアロー」として走っていた車両です!
ここまでで、すでに京阪、東急、西武と夢の私鉄コラボレーション!トリプルパンチにノックアウトされそうです!

しかも、普通列車として走っている場合は乗車券だけで乗れるというのだから、こんな電車で通勤・通学できる地元の方が羨ましい~。
▲16010形の客室内

車内は、観光客と通勤通学客の両方に対応するため少々改造されています。
▲車内には自動販売機も設置

飲み物の自動販売機が設置され、ドア回りは乗り降りしやすいよう広くされました。
▲瓶入り飲料の蓋を開けるための栓抜き

テーブルの下に取り付けられているのはなんと栓抜き!昭和に活躍した車両だということがよくわかる懐かしいアイテムが、取り外されることなくそのまま残っています。 

古谷「わ!栓抜きだ!こういうの、興奮しちゃうんですよね~!」
土屋「わかるよ。当時の内装にほとんど手を加えられていないことも人気の理由なんだ。」
▲特急型電車そのものの車内でくつろぐ

古谷「いやぁ~、土屋さん!ここまで大興奮なんですが、珍しい電車はこれだけですか?」
土屋「君も驚く電車がまだあるんだ!それに乗らなきゃ帰れないよ!」
古谷「え~!どんな電車でしょう?楽しみです!」

3.昭和の人々の憧れ…貴重な列車に初対面

▲16010形で電鉄富山駅に戻ってきました

さて、電鉄富山駅に戻ってきた私たち。昼食の駅弁を調達してきました。JR富山駅がリニューアルされ、売店も充実したこともあり、グルメには困りません。

それより…土屋さんが言っていた、私が驚く電車がもうすぐ入線してくるらしいのですが…。
▲特急の一部は、ダブルデッカーエキスプレスで運転

案内表示には「ダブルデッカーエキスプレス」の文字が!土屋さんが言っていた、驚く電車とはこのことだったようです!

ダブルデッカーとは2階建て車両のこと。私鉄では珍しい造りの車両です。
▲京阪特急の姿を再現した「ダブルデッカーエキスプレス」とご対面!

かつて京阪で特急として活躍していた3000系は、1971(昭和46)年から1973(昭和48)年にかけて58両が製造された電車。
そして2階建て車両は、3000系のうち1両を1995(平成7)年に改造して誕生したものです!ふつうの電車を2階建てに大改造してしまったのだから、びっくりです。

3000系は京阪で引退した後、富山地鉄には1990~1993(平成2~5)年にやってきて10030形となりました。京阪に残っていた2階建て車両は、2013(平成25)年に仲間たちの跡を追って富山にきました。
▲富山平野を走る「ダブルデッカーエキスプレス」。京阪特急のシンボル「鳩のマーク」も再現

そして富山地鉄では、10030形のうち1本を京阪時代の姿に「リバイバル」し、譲り受けた2階建て車両を組み込んで、京阪特急を再現したかのような、観光列車「ダブルデッカーエキスプレス」としたのです!
この車両だけのために全国から富山地鉄に訪れる鉄道ファンも多いのだとか…。富山地鉄なのに、京阪特急のシンボルの鳩マークをわざわざ復刻させて走らせるところが…にくい演出ですね!たまりません!
▲車体のイラストも京阪時代のまま

2階建て車両の車体に描かれているイラストは、京都三大祭りの一つ「時代祭行列絵図」。ここが富山県だということを忘れてしまいそうです(笑)。早く車内が見たいっ!
▲3両のうち1両がテレビカー

3両編成のダブルデッカーエキスプレスのうち、まずはテレビカーから紹介します。車体には「テレビカー」の文字が、京阪時代と同じ昭和の香り漂う字体で描かれています。

「テレビカー」とは、名前の通り車内にテレビが設置された車両のこと。昭和の頃には、大変珍しいものでした。
え?!どんなふうに付いていたの?!と思うでしょ?
▲隣りの車両との連結部分にテレビが!

じゃ~ん!こんな風に設置されているんですよ!地デジ液晶テレビが設置され、現在も実際に「テレビカー」として走っているのです。

土屋「京阪は特別料金がいらない特急、つまり通勤客が乗る電車に、1954(昭和29)年にテレビを取り付けて話題になったんだ。」
古谷「え?!通勤電車でテレビなんて見ますか?!」
土屋「その当時はテレビは高級家電で、一般家庭ではそう簡単に買えるような値段じゃなかったんだよ。」
古谷「まだまだテレビが珍しい時代だったんですね。」
土屋「そうさ。モノクロ放送からカラーテレビに変わってからも、野球中継などを流して、サラリーマンに人気だったんだよ。富山地鉄でも通常のテレビ放送や観光PRビデオを放送したりして、今も活用されている。」
▲1階、2階へと続く階段

続いて、お待ちかねの2階建て車両へ潜入です!
「ダブルデッカーエキスプレス」として走る場合、この車両に乗るには、乗車券、特急料金のほかに座席指定券220円が必要となりますが、富山地鉄に来たら絶対に乗ってほしい車両です。
▲1階席は低い位置

1階席、2階席共にシートピッチもたいへん広く贅沢な造りです。
頭上に読書灯などが設置されているところを見ると、京阪が力を注いで造った車両だということがわかります。
▲2階席。固定式だけど座り心地のいい座席が並ぶ

1階席も良いのですが…やはりオススメは2階!
▲2階からの眺めはおもしろい

ふつうの座席の位置より視点が1m以上高くなるので、他の車両とは違う目線で車窓を楽しめます。
ほら、すれ違う列車だってこんなに高いところから見えるんです。
▲車窓もまた変わって見える

2階席から見た立山連峰もダイナミックです。先ほども同じ場所を通ったのですが、視点が高くなることで同じ場所とは思えないほど雰囲気が変わります。
やはり、高いところから見る景色は気持ちが良いです。より遠くを見渡せますし、なにより大きく造られた窓が、解放感たっぷりです。
▲終点の宇奈月温泉が近づいてきた

ダブルデッカーエキスプレスから綺麗な景色を楽しめば、あっという間に目的地に到着です。この旅最後となる目的地とは?!

4.旅の疲れはやっぱりコレで解消!足湯と温泉街

▲宇奈月温泉に到着!

さて、この旅最後の目的地「宇奈月温泉駅」です。
▲宇奈月温泉駅前には温泉の噴水もある

この駅の周辺は温泉街で、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅が近いことからオンシーズンは大変な人でにぎわいます。冬はとっても寒い宇奈月温泉ですが、最後に温泉で温まりたいと思います。
▲ホームに足湯が!

宇奈月温泉駅のホームの端には、数々の観光列車のデザインを手掛けた水戸岡鋭治さんがデザインした足湯「くろなぎ」があります。改札口を通らなくても、駅前の道路から入ることもできるんですよ。
もちろん、お湯は宇奈月温泉のお湯。しかも、トレインビューな足湯であることはもちろん、ここからは黒部峡谷鉄道も見えるのです!トレインビューならぬ、トロッコビューですね。
足湯だけでは満足できない方は、駅のすぐ近くにある「宇奈月温泉総湯 湯めどころ宇奈月」がオススメです。2016(平成28)年にオープンしたばかりで美しく、富山地鉄をたっぷり楽しんだ後でも立ち寄ることができます。
▲「総湯」とは公衆浴場のこと。北陸独特の呼び方だ
▲足湯につかって、まったり

古谷「くぅ~!こうして足湯に浸かっていると、旅の終わりを感じますね。今回も良い旅でした。」
土屋「そうだね。さまざまな電車に出会えただろう?」
古谷「はい!珍しい電車ばかりで楽しかったです!」
土屋「実は、富山地鉄にはまだまだ珍しい電車が走っている。」
古谷「それはまた次の機会のお楽しみということで…。」
▲富山地鉄オリジナル車14760形

皆さんも珍しい車両を探す旅に出かけてみてはいかがでしょうか?

次回、古谷あつみの鉄道旅Vol.17は、新潟県の「えちごトキめき鉄道・北越急行」へ!

※記事内の価格表記は全て税込です。

土屋武之(鉄道ライター)

鉄道を専門分野として執筆活動を行っている、フリーランスのライター・ジャーナリスト。硬派の鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」メイン記事を毎号担当する一方で、幅広い知識に基づく、初心者向けのわかりやすい解説記事にも定評がある。
2004年12月29日に広島電鉄の広島港駅で、日本の私鉄のすべてに乗車するという「全線完乗」を達成。2011年8月9日にはJR北海道の富良野駅にてJRも完乗し、日本の全鉄道路線に乗車したという記録を持つ、「鉄道旅行」の第一人者でもある。
著書は「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「誰かに話したくなる大人の鉄道雑学」(SBクリエイティブ)など。

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。 学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。 現在はタレント活動のほか、鉄道関係の専門学校や公立高校で講師をしている。2015年には、「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、鉄道模型雑誌「N」等で執筆活動中。

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