広島・呉海自カレーがおもしろい!海上自衛隊の味を再現した3種のカレーを食べ比べ
海上自衛隊は、旧海軍の習慣にならって、曜日感覚を失わないように毎週金曜日にカレーを食べている。代々受け継がれてきたカレーは、艦船ごとに具材や隠し味が異なり、艦船同士で味を競っているという。その「海自カレー」で、まちおこしに成功した地域がある。どんなテクニックを駆使しているのか分析しながら、艦船ごとのカレーを食べ比べするとおもしろいだろう。(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。
今回は、広島県呉市の「海自カレー」のうわさを調査してきました。
一度に3種類のカレーが食べられる「クレイトン ベイ ホテル」

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いま広島県呉市の「海自カレー」が注目を集めています。どうやら海上自衛隊呉基地や艦船で作られているカレーを、呉市内のホテルや飲食店で提供しているそうです。なかなか広島まで行けないので、現場の盛り上がりを調査してきてもらえないでしょうか?
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井上先生「そうそう。呉市は2015年から、まちおこしの一環として『呉海自カレー』という取り組みを始めたんだ。各飲食店のカレーを食べてシールを集めると、海上自衛隊マニアにはたまらない景品がもらえるらしいよ。だけど、時間がとれなくて行けていなかったんだ。この機会に、調査しに行ってみようか!」
りか「大好きなカレーを食べて景品がもらえるなんて素敵な取り組みですね!ぜひ行ってみましょう」

「呉海自カレー」とは、呉市内にある約30の飲食店で、艦船ごとのカレーを提供する取り組みのこと。各艦船の料理長から直々に作り方を教わり、艦長が認定したお店のみ参加しています。つまり、海上自衛隊で食べられている味が忠実に再現されているということ。

また、参加店が一堂に会するイベント「呉海自カレーフェスタ」も年1回開催されています。2015年の開催時には、どの艦船のカレーが一番おいしいのか、来場者の投票によって決める「呉海自カレーグランプリ」も行われました。

近くには海上自衛隊の歴史がわかる「大和ミュージアム」や「てつのくじら館」があるので、呉海自カレーのシールラリーを回られる方も、まずは「クレイトン ベイ ホテル」からスタートするのがよさそうです。
そこで今回は、「クレイトン ベイ ホテル」内のカレー店をすべて食べ歩いてみることに!

りか「先生、あのパネルを見てください!初代呉海自カレーグランプリを獲得したカレーが、このホテルで食べられるそうですよ」
井上先生「まずは、そのカレーから食べてみようか。今日は気合を入れて、3食分のカレーを食べるぞ!」
りか「はい、任せてください!大食いには自信がありますから!」
1番人気!護衛艦いせ「海軍伝承いせカレー」

りか「じゃがいもをトッピングにするのも珍しいですね!呉海自カレーのガイドブックによると、鶏ガラと香味野菜からとったブイヨンで、じっくり煮込んだビーフカレーだそうです」


りか「護衛艦いせの人気もさることながら、お子さんからご年配の方まで食べられる味なので、初代グランプリを獲ったのかもしれませんね!」

りか「本当だ!珍しいですね。あと、ルウの中にある小さい粒はなんでしょうか?スパイスではないようですし…」

加藤さん「それは、フードプロセッサーで砕いた大豆の水煮ですよ。大豆を入れることでマイルドになり、よりやわらかい味になるんです」
井上先生&りか「大豆ですか!?」
加藤さんによると、まず小麦粉とカレー粉、鶏ガラブイヨンで自家製カレールウを作り、そこにあらかじめ炒めておいた玉ねぎ、ニンジンなどの野菜、牛肉、大豆、調味料を投入したら2時間煮込んで、1日寝かせます。仕上げに、1cmほどの短冊切りにしたキャベツ、豆乳、バナナを入れたら完成だそう。

レシピは海上自衛隊が考案しているため、なぜこのようなテクニックが生まれたのかは不明だそうですが、海上自衛隊の方々が、カレー作りに対して並々ならぬ熱意を持っているのが伝わってきます。
加藤さん「作るのに3日かかるので、どの海自カレーよりも工程は複雑だと思いますよ。味は間違いなく、うちが1番です!」
では井上先生、カレーの評価をお願いします。

りか「大豆と豆乳に、イソフラボンが摂取できる甘口のカレーでしたね!」
※「護衛艦いせカレー」は、護衛艦いせの転籍により平成29年3月31日で提供が終了します。
ソーニョ・コートダジュール
広島県呉市築地町3-3 クレイトンベイホテル1F
[営業時間] 10:00~18:00(L.O.17:00)
[定休日]なし
0823-26-1133
大人向けの味!補給艦とわだ「補給艦とわだカレー」


りか「和食器で食べるカレーもいいですね。ガイドブックによると、桃とリンゴのすりおろしピューレが入っているそうですよ」
井上先生「さっきのカレーに比べると、スパイシーな香りが漂っているね」


井上先生「複雑になった苦みがあるね。私はこれくらいキレのあるカレーが好みだな」

鷹林さん「ありがとうございます。日本食レストランなので、今までカレーを提供してきたことはありませんでしたし、香りの強いカレーを出すことに抵抗がありました。だけど、いざ始めてみたら口コミからカレーの注文がよく入るようになり、今では出ない日がないくらいです。お酒を飲んだあとのシメとして、一皿をシェアして食べられるお客様も多いんですよ」
りか「そんなに人気だとは…!本当みんな、カレーが好きなんですね。こちらのカレーはどうやって作っているのでしょうか?」


りか「ブランデーやソース以外にも、まだまだ隠し味はあるそうですから、これはかなりのこだわりですね!」
鷹林さん「初代グランプリは逃しましたが、味はうちが1番だと思っていますよ」
では井上先生、カレーの評価をお願いします。

りか「はい!大人が喜ぶカレーでしたね」
呉濤
広島県呉市築地町3-3 クレイトンベイホテル2F
[営業時間] 11:30~14:30(L.O.14:00)、平日17:30~21:30(L.O.21:00)、土・日・祝日17:00~21:30(L.O.21:00)
[定休日] なし
0823-26-0005
呉市で1、2を争う高級な味!練習艦かしま「かしま牛タンカレー」


りか「わ~!とっても優雅なカレーですね。牛タンもゴロゴロ入っていますよ!」
井上先生「練習艦は若い隊員が多いから、具を多めにしているのかもしれないね。これが今日最後のカレーだよ」



井上先生「うん、牛タンがおいしいね。それに付け合わせが福神漬けとらっきょうだけでなく、オニオンフライやレーズン、キュウリ、しいたけ、ナッツ、安藝紫(あきむらさき)などがあるのもいいね。ただ原価率は高そうだな(笑)」

兼丸さん「そうですね。参加店舗のなかで、1、2を争うほど食材にこだわったカレーだと思いますよ」

作り方は、まず地鶏のガラと牛スジでダシを取り、4~6時間ほど煮込みます。その2つのスープを合わせた鍋に、炒めた玉ねぎ、ジャガイモ、ニンジン、セロリ、トマトの角切りにした野菜、牛タン、カレーのルウ3種類を入れ煮込み、仕上げにフレッシュな玉ねぎを入れて完成だそう。複数のルウをブレンドすることで、味に深みが出るんです。
りか「セロリが入っていたんですね。気づかなかったです!」
兼丸さん「隠し味程度なので、食べてもダイレクトにセロリの味はしませんが、甘みや香りを出すのにいい食材なんですよ。私は参加店舗全て食べ歩いたのですが、うちのカレーが1番おいしかったです。初代グランプリを逃して悔しいので、リベンジしたいです!」
では井上先生、カレーの評価をお願いします。

りか「たまには高級なカレーもいいですね。付け合わせもユニークでおいしかったです!」
ヴェール・マラン
広島県呉市築地町3-3 クレイトンベイホテル11F
[営業時間] 11:30~15:00(L.O.14:00)、平日17:30~22:00(L.O. 21:00)、土・日・祝日17:00~22:00(L.O. 21:00)
[定休日] なし
0823-26-0001
旅行のお土産は、呉海自カレーのレトルトカレーを!
井上先生「そうだね。各店のテクニックは、自宅で欧風カレーを作るときにも生かせそうだ。それにお客さんからの反響もすごいとも言っていたね。カレーでまちおこしをしている地域はたくさんあるけど、広島県呉市はその成功事例と言っていいだろう。呉海自カレーは種類が豊富だから、テクニックを分析しながら食べ比べするのがおもしろいね」
りか「ちなみに今日食べたカレーは、すべてレトルトカレーになっているので旅行のお土産に買って、自宅で食べ比べするのもおもしろそうですね」

そのほか市内の飲食店では、ナンで食べるカレーやトッピングがコロッケのカレーなど個性的な海自カレーを提供しています。ぜひ、広島県呉市に来たら、呉海自カレーを食べましょう!
ご協力ありがとうございました。
※掲載しているメニューは、取材時のもの。提供するカレーの種類は、時期によって異なりますので、ご了承ください。

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)
カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。
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