海上自衛隊の味が勢ぞろい!呉海自カレーは食べ比べがおもしろい

2017.03.16

海上自衛隊は、旧海軍の習慣にならって、曜日感覚を失わないように毎週金曜日にカレーを食べている。代々受け継がれてきたカレーは、艦船ごとに具材や隠し味が異なり、艦船同士で味を競っているという。その「海自カレー」で、まちおこしに成功した地域がある。どんなテクニックを駆使しているのか分析しながら、艦船ごとのカレーを食べ比べするとおもしろいだろう。(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、広島県呉市の「海自カレー」のうわさを調査してきました。

一度に3種類のカレーが食べられる「クレイトン ベイ ホテル」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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いま広島県呉市の「海自カレー」が注目を集めています。どうやら海上自衛隊呉基地や艦船で作られているカレーを、呉市内のホテルや飲食店で提供しているそうです。なかなか広島まで行けないので、現場の盛り上がりを調査してきてもらえないでしょうか?
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井上先生「そうそう。呉市は2015年から、まちおこしの一環として『呉海自カレー』という取り組みを始めたんだ。各飲食店のカレーを食べてシールを集めると、海上自衛隊マニアにはたまらない景品がもらえるらしいよ。だけど、時間がとれなくて行けていなかったんだ。この機会に、調査しに行ってみようか!」

りか「大好きなカレーを食べて景品がもらえるなんて素敵な取り組みですね!ぜひ行ってみましょう」
ということで、やってきたのは広島県呉市。明治時代から海軍、海上自衛隊の主要な基地として発展してきた町です。

「呉海自カレー」とは、呉市内にある約30の飲食店で、艦船ごとのカレーを提供する取り組みのこと。各艦船の料理長から直々に作り方を教わり、艦長が認定したお店のみ参加しています。つまり、海上自衛隊で食べられている味が忠実に再現されているということ。
▲呉市内各所で無料配布している呉海自カレーのパンフレット

また、参加店が一堂に会するイベント「呉海自カレーフェスタ」も年1回開催されています。2015年の開催時には、どの艦船のカレーが一番おいしいのか、来場者の投票によって決める「呉海自カレーグランプリ」も行われました。
参加店のなかでも注目は「クレイトン ベイ ホテル」。館内にある3つのレストランが、それぞれ違う海自カレーを提供しています。

近くには海上自衛隊の歴史がわかる「大和ミュージアム」や「てつのくじら館」があるので、呉海自カレーのシールラリーを回られる方も、まずは「クレイトン ベイ ホテル」からスタートするのがよさそうです。

そこで今回は、「クレイトン ベイ ホテル」内のカレー店をすべて食べ歩いてみることに!
▲入館すると、1階のロビーには「呉海自カレーグランプリ」の賞状と大きい銀色のスプーンが!

りか「先生、あのパネルを見てください!初代呉海自カレーグランプリを獲得したカレーが、このホテルで食べられるそうですよ」

井上先生「まずは、そのカレーから食べてみようか。今日は気合を入れて、3食分のカレーを食べるぞ!」

りか「はい、任せてください!大食いには自信がありますから!」

1番人気!護衛艦いせ「海軍伝承いせカレー」

初代グランプリを獲ったのは、ホテルの1階にある「ソーニョ・コートダジュール」。呉市にある艦船の中で、一番大きくて人気のある「護衛艦いせ」のカレーを提供しています。
▲じゃがいもがトッピングされた「海軍伝承いせカレー」(税込1,080円)。付け合わせのサラダやデザートは、ホテルのオリジナル

りか「じゃがいもをトッピングにするのも珍しいですね!呉海自カレーのガイドブックによると、鶏ガラと香味野菜からとったブイヨンで、じっくり煮込んだビーフカレーだそうです」
井上先生&りか「いただきます!」
井上先生「濃厚な甘さで、香ばしさもあるね。子どもの頃に、給食で食べたような欧風カレーで、少しなつかしい。こういう甘口のカレーは、今ではなかなか飲食店では食べられないよ」

りか「護衛艦いせの人気もさることながら、お子さんからご年配の方まで食べられる味なので、初代グランプリを獲ったのかもしれませんね!」
井上先生「おや…?ルウの中に煮込まれたキャベツが入っていて、キャベツの甘みが出ているよ」

りか「本当だ!珍しいですね。あと、ルウの中にある小さい粒はなんでしょうか?スパイスではないようですし…」
▲料理長の加藤さん

加藤さん「それは、フードプロセッサーで砕いた大豆の水煮ですよ。大豆を入れることでマイルドになり、よりやわらかい味になるんです」

井上先生&りか「大豆ですか!?」

加藤さんによると、まず小麦粉とカレー粉、鶏ガラブイヨンで自家製カレールウを作り、そこにあらかじめ炒めておいた玉ねぎ、ニンジンなどの野菜、牛肉、大豆、調味料を投入したら2時間煮込んで、1日寝かせます。仕上げに、1cmほどの短冊切りにしたキャベツ、豆乳、バナナを入れたら完成だそう。
りか「キャベツに大豆、豆乳とこだわりがスゴイ!これを艦船で食べていると思うと、海上自衛隊の方ってグルメなんですね」

レシピは海上自衛隊が考案しているため、なぜこのようなテクニックが生まれたのかは不明だそうですが、海上自衛隊の方々が、カレー作りに対して並々ならぬ熱意を持っているのが伝わってきます。

加藤さん「作るのに3日かかるので、どの海自カレーよりも工程は複雑だと思いますよ。味は間違いなく、うちが1番です!」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「煮込み、寝かせ、仕上げと3段階に分けて調理することで、味を落ち着かせているね。砕いた大豆をカレーに入れるとは初めて聞いたよ。仕上げに入れたキャベツは、絶妙な食感だった。斬新なアイデアに溢れているから、オリジナリティは4に」

りか「大豆と豆乳に、イソフラボンが摂取できる甘口のカレーでしたね!」

※「護衛艦いせカレー」は、護衛艦いせの転籍により平成29年3月31日で提供が終了します。

大人向けの味!補給艦とわだ「補給艦とわだカレー」

「海軍伝承いせカレー」の余韻が残るまま、続いて向かったのはホテルの2階。日本食レストラン「呉濤(ごとう)」では、「補給艦とわだ」のカレーを提供しています。日本食レストランでカレーとは、意外な組み合わせ!
▲「補給艦とわだカレー」(税込1,404円)。レストランオリジナルのサラダ、温泉玉子、デザートまで付いてくる

りか「和食器で食べるカレーもいいですね。ガイドブックによると、桃とリンゴのすりおろしピューレが入っているそうですよ」

井上先生「さっきのカレーに比べると、スパイシーな香りが漂っているね」
井上先生&りか「いただきます!」
りか「う~ん、おいしい!先ほどのカレーとは打って変わって、中辛で大人向けのカレーですね」

井上先生「複雑になった苦みがあるね。私はこれくらいキレのあるカレーが好みだな」
▲料理長の鷹林(たかばやし)さん

鷹林さん「ありがとうございます。日本食レストランなので、今までカレーを提供してきたことはありませんでしたし、香りの強いカレーを出すことに抵抗がありました。だけど、いざ始めてみたら口コミからカレーの注文がよく入るようになり、今では出ない日がないくらいです。お酒を飲んだあとのシメとして、一皿をシェアして食べられるお客様も多いんですよ」

りか「そんなに人気だとは…!本当みんな、カレーが好きなんですね。こちらのカレーはどうやって作っているのでしょうか?」
鷹林さんによると、バターで玉ねぎを飴色になるまで炒めたら、ニンニク、ショウガ、別で炒めておいた牛肉を入れ、そこにブイヨンスープ、カレールウ、焙煎したカレー粉、オールスパイス、桃とリンゴのピューレを投入し煮込み、仕上げにチーズを入れれば完成だそうです。なんと隠し味に、ブランデーやソースなどを入れているのだとか!
井上先生「なるほど。カレーの複雑な苦みは、カレー粉を焙煎しているからだろう。深いコクも、隠し味のブランデーやソースが効いているに違いない」

りか「ブランデーやソース以外にも、まだまだ隠し味はあるそうですから、これはかなりのこだわりですね!」

鷹林さん「初代グランプリは逃しましたが、味はうちが1番だと思っていますよ」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「焙煎したカレー粉やルウ、スパイスを駆使して苦みと辛さを出していたのと、隠し味で深いコクを出していたので、辛さとコクはどちらも4に。大人向けのカレーで、お酒のシメにぴったりだね」

りか「はい!大人が喜ぶカレーでしたね」

呉市で1、2を争う高級な味!練習艦かしま「かしま牛タンカレー」

最後に訪れたのは、ホテルの11階。「練習艦かしま」のカレーを提供している「ヴェール・マラン」です。ムードのある、オシャレなフレンチレストランです。
▲「かしま牛タンカレー」(税込1,944円)。サラダ、デザート、コーヒー付き。付け合わせの種類も豊富

りか「わ~!とっても優雅なカレーですね。牛タンもゴロゴロ入っていますよ!」

井上先生「練習艦は若い隊員が多いから、具を多めにしているのかもしれないね。これが今日最後のカレーだよ」
井上先生&りか「いただきます!」
りか「う~~んっ!これはおいしい!甘口と中辛の間くらいで、万人受けする欧風カレーですね。1cm角ほどの牛タンが食感はありつつもやわらかくて、全然ボソボソしていません」
▲牛タンがゴロゴロと入っている

井上先生「うん、牛タンがおいしいね。それに付け合わせが福神漬けとらっきょうだけでなく、オニオンフライやレーズン、キュウリ、しいたけ、ナッツ、安藝紫(あきむらさき)などがあるのもいいね。ただ原価率は高そうだな(笑)」
▲広島県の名産である安藝紫。広島菜をしそ風味に仕上げた漬物のこと。付け合わせは、ホテルのオリジナル

兼丸さん「そうですね。参加店舗のなかで、1、2を争うほど食材にこだわったカレーだと思いますよ」
▲料理長の兼丸さんにお話を伺う

作り方は、まず地鶏のガラと牛スジでダシを取り、4~6時間ほど煮込みます。その2つのスープを合わせた鍋に、炒めた玉ねぎ、ジャガイモ、ニンジン、セロリ、トマトの角切りにした野菜、牛タン、カレーのルウ3種類を入れ煮込み、仕上げにフレッシュな玉ねぎを入れて完成だそう。複数のルウをブレンドすることで、味に深みが出るんです。

りか「セロリが入っていたんですね。気づかなかったです!」

兼丸さん「隠し味程度なので、食べてもダイレクトにセロリの味はしませんが、甘みや香りを出すのにいい食材なんですよ。私は参加店舗全て食べ歩いたのですが、うちのカレーが1番おいしかったです。初代グランプリを逃して悔しいので、リベンジしたいです!」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「ダシを取るのに数時間もかけ、さらに牛タンのうまみが抽出されているカレーだったからコクは4。ホテルのオリジナルだけど、付け合わせに広島名物の安藝紫があったから、ご当地グルメ度は3に。玉ねぎを2段階に分けて入れるテクニックもお見事だね」

りか「たまには高級なカレーもいいですね。付け合わせもユニークでおいしかったです!」

旅行のお土産は、呉海自カレーのレトルトカレーを!

りか「食いしん坊の私でも、さすがにカレー3皿はお腹いっぱいになりました…。でもどのカレーも個性的なテクニックがあり、勉強になりました」

井上先生「そうだね。各店のテクニックは、自宅で欧風カレーを作るときにも生かせそうだ。それにお客さんからの反響もすごいとも言っていたね。カレーでまちおこしをしている地域はたくさんあるけど、広島県呉市はその成功事例と言っていいだろう。呉海自カレーは種類が豊富だから、テクニックを分析しながら食べ比べするのがおもしろいね」

りか「ちなみに今日食べたカレーは、すべてレトルトカレーになっているので旅行のお土産に買って、自宅で食べ比べするのもおもしろそうですね」
▲お土産のレトルトカレー(各税込648円)を持って、「呉濤」の店長・山本健二さんとパシャリ!

そのほか市内の飲食店では、ナンで食べるカレーやトッピングがコロッケのカレーなど個性的な海自カレーを提供しています。ぜひ、広島県呉市に来たら、呉海自カレーを食べましょう!
ご協力ありがとうございました。

※掲載しているメニューは、取材時のもの。提供するカレーの種類は、時期によって異なりますので、ご了承ください。

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

吉祥寺在住のフリーライター。カレー大學を卒業し、現在カレー大学院で猛勉強中(じつは井上先生の座を狙っている)。カレーパン伝道師。趣味はカレーとJリーグ。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
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