大阪のカレーが広島で進化?ソースが香る「キュリ」の混ぜ焼きカレー

2017.04.17

明治から伝わる大阪発祥の混ぜカレーが広島で進化を遂げていた。2日間かけて作る濃厚カレーソースとごはんを混ぜ合わせ、熱々の鉄鍋で食べる楽しみは、どことなく広島名物のお好み焼きを連想させる。言うなれば、温故知新カレーだ!(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、広島県で進化していた混ぜカレーのうわさを調査してきました。

レトロな雰囲気の古民家「カリー食堂 キュリ」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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広島に「カリー食堂 キュリ」というカレー店があります。広島在住のカレー好きには有名なお店で、1番人気のメニューは「レトロカリー」という“混ぜ焼きカレー”だそうです。なかなか広島までは行けませんので、どんなカレーなのか調査してきてくれないでしょうか?
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井上先生「お、このお店は前から行きたいと思っていたんだよ。私が主宰するカレー大學で、広島から来た受講生からおすすめされたことがあってね」

りか「先生の情報網はさすがですね。ただ“混ぜ焼きカレー”とは何でしょう?初めて聞きました。早速調査しに行ってみましょう!」
「カリー食堂 キュリ」がある場所は、広島電鉄宮島線・広電五日市駅から徒歩約4分のところ。古民家を改築したお店で、ひっそりと住宅地の中にあります。知らないとついつい通り過ぎてしまいそう。
店内の内装は外観とは打って変わって洋風で、明治時代のハイカラな雰囲気を彷彿とさせます。喫茶店ならまだしも、これがカレー専門店とは驚きです!

混ぜカレーとお好み焼きが融合した「レトロカリー」

「カリー食堂 キュリ」はメニューが豊富で、カレーだけでも25種類以上あります。いろいろと食べてみたいのですが、今回はお目当ての混ぜ焼きカレーである「レトロカリー」をオーダー!
▲スタッフさんが、目の前で土鍋のふたを開けてくれる
▲アツアツグツグツな「レトロカリー」(税込910円)

りか「わぁ、ソースの香ばしいにおいがします!茶色いごはんに、卵黄がトッピングされているんですが、これがカレーなんでしょうか…?」

井上先生「この見た目こそ、明治時代に大阪で生まれた混ぜカレー(※)だよ。だからメニュー名に“レトロ”と付くのかもしれないね。それに混ぜ焼きの“焼き”とは、何だろうと思っていたが、鉄鍋が由来していたのか。カレーを鉄鍋で提供するアイデアはありそうでなかったな。じゃあ早速いただこう!」

※混ぜカレーとは、カレーソースとライスが一体化したカレーのこと。さっさと作ってさっさと食べたいという、大阪人のせっかちな性格から生まれたとされる。
井上先生&りか「いただきます!」
▲卵黄をつぶすタイミングは自由
▲ご飯と混ぜながらいただきます
▲パクっ

りか「う~~~んっ♪おいしい~~!でもカレーというより、ソースの味がダイレクトに来て、少しジャンクフードのような、別の料理のような感じもします。夏祭りに花火を見ながら、食べたい味ですよ」

井上先生「お祭りの屋台にありそうな味ってこと?たしかにソースの味が濃くて、広島名物のお好み焼きを連想させるね。あ、でもあとからじわじわと辛さがやってくるぞ」

りか「…言われてみれば!」
井上先生「それに、お米に少し歯ごたえがあるよね?」

りか「…言われてみれば!」

井上先生「もう、さっきからそればっかりだね!一番弟子なんだから、しっかり食レポしないと」
りか「す、すみません。あ、先生!鶏のナンコツが入っていましたよ。カレーソースとごはんを混ぜただけでなく、いろいろな工夫が隠れていそうですね」
井上先生「うん、そうだね。大阪発祥の混ぜカレーにインスパイアされているのは間違いないが、しっかり独創性も加えているよ」

まさにご当地グルメ!広島の食文化があったからこそ生まれたカレー

「レトロカリー」はどうやって作っているのでしょうか?スタッフさんに聞いてみましょう!

スタッフさん「作り方は、カレーソースを混ぜたごはんを温めた鉄鍋に入れ、そこに特製ダレと卵黄をのせるだけですが、ポイントは、このカレーソースです!」
▲鉄鍋に、ヘラでごはんを入れている様子

スタッフさんによると、まず小麦粉とカレー粉、スパイスでオリジナルのルウを作ります。できたルウに、玉ねぎやリンゴ、牛の肩ロースなどを加え8時間ほど煮込み、ガラムマサラを入れてから一晩寝かします。そして翌日、このカレーソースが半分の量になるまでさらに煮詰め、濃厚なカレーソースにするのだとか。

井上先生「最初は味が濃いと思ったが、2日もかけ、あえて濃厚なカレーソースにしていたとは。広島の食文化を代表するお好み焼きのソースのように、味のしっかりした食べ物を好む県民性なのかもしれないね」
スタッフさん「ちなみにごはんは、白米のほかに玄米と押し麦を使うことで、食感を出しているんですよ」

配合の割合は、白米7、玄米と押し麦が3。カレーソースとごはんを混ぜたタイミングで、鶏ナンコツを投入するそう。特製ダレは、醤油やウスターソースをベースに、コチュジャンなども入れて甘辛く仕上げています。

りか「ごはんに食感があったのは、玄米と押し麦を入れていたからだったんですね。また最後に特製ダレをかけるところは、どことなくお好み焼きを食べるときの感覚と似ていますよね」
▲店内に貼られた混ぜカレーに関する説明文

井上先生「ああ、たしかに似ている。ちなみに、どうしてレトロカリーが生まれたのでしょうか?」

スタッフさん「古民家に合うようなメニューを作りたく、やはり昔っぽいといえばソース味かなと思いました。それに広島の食文化にも合うのではないかと。インパクトを出すために鉄鍋で提供してみました」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「カレー食堂 キュリのカレーチャートはこちら!」
井上先生「ごはんに玄米や押し麦、鶏のナンコツを入れるなど食感を出す工夫が見られたので、オリジナリティは4。大阪で生まれた混ぜカレーは広島に渡り、お好み焼きを好む食文化と融合することで発展を遂げていたから、ご当地グルメは3.5に。カレーを食べているのに、お好み焼きを食べていると錯覚させる不思議なカレーだったよ」

りか「ご当地ならではのカレーでしたね!調査しに来てよかったです」
▲風情ある縁側でパシャリ!

広島で混ぜ焼きカレーを食べるなら「カリー食堂 キュリ」へ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

吉祥寺在住のフリーライター。カレー大學を卒業し、現在カレー大学院で猛勉強中(じつは井上先生の座を狙っている)。カレーパン伝道師。趣味はカレーとJリーグ。

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