新潟・松之山温泉で、甘くてとろける衝撃の「湯治豚」を発見!

2017.03.29 更新

突然ですが、「豚肉が甘~~~い!」って、実際にうなったことはありますか?一口食べてそんな風にもだえた場所は、日本三大薬湯のひとつにも選ばれた温泉地、新潟県は松之山。そんな、「ここでしか食べられない」という絶品「湯治豚(とうじぶた)」の正体、ご紹介させていただきます!

▲温泉の街だからこそ誕生した、湯治豚の正体に迫ります

松之山温泉で低温加熱調理した 甘くてジューシーな「湯治豚」

というわけでやってきました。ここは、新潟県十日町市松之山。
JR越後湯沢駅から車で約60分の、長野県との県境に位置している温泉街です。
▲松之山温泉は室町時代から約700年続く、歴史ある温泉街
▲晴れてると思ったら、すぐ雪が降ったり。冬の天気の移り変わりがめまぐるしい雪国。2月のこの日の積雪は2m!

松之山が含まれる十日町市と津南町を指す妻有(つまり)地方では、「妻有ポーク」と呼ばれるブランド豚が飼育されています。子豚の頃から抗生物質には頼らない無薬飼料を与え、ビタミンやミネラル補強など栄養バランスにも気を配って飼育された、丹精込めたこだわりの結晶です。
▲妻有ポークは第36回日本農業賞大賞を受賞し、「丸の内オリンピッグ2013」第1位を獲得

そこまでこだわっているならば、味の良さは言わずもがなですが、ここで松之山の人たちがさらにこだわった工夫がもう一つ。

ただでさえ美味しい妻有ポークの中でも特に優れた、希少でなかなか流通しない熟成肉が「越乃紅(こしのくれない)」。そこに温泉を使った旨みを引き出す調理法で誕生したのが、今回注目の豚肉「湯治豚」なのです!

妻有ポークを真空パックして68度の温泉に約3時間じっくり浸けるというその作り方は読んで字の通り、まさに豚が湯治しているような状態。
▲約68度の温泉から取り出した出来立てホヤホヤの湯治豚を、後ほどご紹介する「手打ちラーメン 柳屋」の柳隆子さんが見せてくれました

68度というのが肉のタンパク質の凝固や水分の分離の肝であり、豚肉をしっとりジューシーな仕上がりにしてくれる絶妙な温度。この手法は低温調理と呼ばれ、イタリアンやフレンチでも注目されている調理方法です。

しかし普段この湯治豚が食べられる場所は数少なく、松之山の一部の飲食店と旅館のみ。通販も行っていません。
今回はそんな貴重なスポットを3カ所、ご紹介します!

気軽に湯治豚を食べるなら、絶品ラーメンのチャーシューで

まずは、温泉街の中心に暖簾を構える「手打ちラーメン 柳屋」さん。
こちらではタレに1日漬け込んだ妻有ポークのモモの部位を、約3時間温泉に浸けて湯治豚にして、チャーシューとして使っています。
▲断面がロゼ色になっているのが湯治豚の特長。稀釈したラーメンのタレで下味がついており、切っているそばから厨房に醤油とダシが調和した芳ばしい香りが漂います

チャーシューに湯治豚を使うことを思いついたのは、二代目のご主人であり、麺に温泉を配合するなど好奇心旺盛な柳松夫さん。湯治豚が誕生して、旅館がメニューに取り入れ始めたのを聞いて、ひらめいたそうです。

待つこと10分弱、お待ちかねのラーメンがこちらです!
▲中華そば(税込600円)。テーマは「食べる温泉」ということで、麺に温泉も練りこまれたThe松之山な一杯。手前のチャーシューが湯治豚を使ったもの

透き通ったスープは豚骨や鶏がら、アゴ、昆布、生姜を煮たたせないように朝3時から煮込んでおり、あっさりとしながらも旨みたっぷり。
麺は温泉の源泉や米粉も入れて手打ちをした、中太ちぢれ麺です。

注目のチャーシューは、食べ応えがしっかり!
身崩れすることなく弾力がある程よい柔らかさ。噛むほどに旨みがじわじわと口いっぱいに広がります。スープがあっさりしている分、しっかりとチャーシューそのものの味を感じることができるナイスコンビネーション。
もう一種類湯治豚ではないバラ肉で作ったチャーシューも乗っているので(写真奥)、湯治豚との食感や味わいの違いも楽しめます。
▲観光客にも地元の人にも人気というのも納得!スープも飲み干しました

湯治豚を思う存分味わいたかったら、チャーシューが約6枚のったチャーシューメン(税込850円)や、おつまみになるチャーシュー単品(税込250円)もおすすめ。どちらもラーメンと同じく半分が湯治豚のチャーシューになります。
▲昭和10(1935)年頃から営んでいる、松之山では一番古い食堂。麺類のほかご飯ものも充実しており、気さくなお店の人との会話も楽しみの一つ

「ちょっとお腹がすいたり、食べ損ねた人、飲んだ後の締めに」と、11時から休憩なしで22時まで営業してくれるという心遣いも嬉しいお店です。

スキーヤーの心と胃袋を鷲掴み! 一面お肉びっしりの湯治豚丼

さて2軒目の湯治豚グルメスポットは、雪国・松之山らしいスキー場になります。
いざ、湯治豚をたっぷり食べられるゲレンデ飯にアタック!
▲バラエティ豊かな5本のコースを有する松之山温泉スキー場

こちらの食堂「レストハウス雪椿」さんで提供されているのが、2015年度の登場以来人気を博している「湯治豚丼」です!
松之山は旅館やタクシー、レジャー、農家など、業種の垣根を越えて地域振興の活動が活発な土地。もともと旅館が提供していた湯治豚丼が評判となり、「松之山全体で盛り上げていこう!」とゲレンデ飯にも採用したとのことで、今や欠かせない定番メニューになっています。

キッチンで腕をふるう滝沢恵治(けいじ)さんにお話を伺うと、「ちょっと高いと思うかもだけど、おいしさには自信があるよ!」とのこと。食べてみるのがとっても楽しみです。
▲湯治豚丼に小鉢など全7品で税込1,200円。ゲレンデ飯とは思えない豪華さ!

早速注文してみると、登場したのはご飯が見えないほどのお肉が乗った丼とたくさんの小鉢。
詳しく伺うと、丼に乗っているのは妻有ポークの肩ロースを塩胡椒・生姜で下味をつけて、湯治豚にしたもの。それをスライスして5~6枚どーん!
▲とろける脂身の柔らかさと、赤身のしっかりとした食べ応えが同時に楽しめます

こちらの湯治豚の第一印象は「しっとり」。
見た目にはそれほど脂身は目立ちませんが、赤身の中に細かく入っている脂のバランスが良く、どこをかじってもしっとりと口の中で脂がとろけます。少し厚めにスライスされているので、肉自体の旨みもしっかり味わえて、そして何よりも何枚も食べられるのが嬉しい(笑)!

しっとり感の秘密は温度にあるとのことで、肩ロースの湯治豚の柔らかさを生かすため、加熱しすぎて肉が固くらないように気を配っているそうです。

お米はもちろん魚沼産コシヒカリ。「ちょっと多いかも?」と女性のみなさんは思うかもしれませんが、甘めの醤油ダレとシャキシャキの白髪ねぎ、湯治豚の下に隠れている大葉と海苔のコンビネーションも見事で、あっという間に完食できちゃいます。
▲もはや汁気がほとんど見えないほど、具がてんこ盛りの妻有汁

セットになっている「妻有汁」は、山菜が入ったけんちん汁で、約10種類もの具材がどっさりと。体の芯からあったまります。

小鉢も地元の食材がたっぷり使われており、旅行気分を高めてくれます。
これだけ美味しいものでエネルギーチャージできれば、「もう一滑り!」の元気も湧いてきますね。
スキー目的ではなく、ガッツリ湯治豚を堪能するためだけの来訪ももちろんOK。お店はゲレンデのふもと、リフトに乗らずに気軽に食べに行くことができます。湯治豚丼、全力でおすすめです!

口の中でとろける! 分厚い湯治豚のステーキが幸せを運ぶ

そして、じっくり湯治豚を味わうにはこちらの一品が外せません。
場所は「ひなの宿ちとせ」さん。温泉街の中心、1軒目の「手打ちラーメン 柳屋」さんとも徒歩2分くらいの距離です。
▲松之山で一番歴史のある宿。階段右脇にスロープがあり、館内もバリアフリーが徹底され、幅広い年齢層のゲストに優しい造りになっています

口に入れた瞬間、思わず目をつぶって噛み締めてしまったほどの喜びが湧いたメニュー。それがこちらで宿泊するとオプションでオーダーできる湯治豚のステーキです!
▲「湯治豚 ポークソテー風120g」(税込2,300円)

「湯治豚はここでしか作れない、私たちの地域の名物です」と胸を張って紹介してくださったのは、こちらの宿の若旦那柳一成(かずなり)さん。湯治豚をはじめ、松之山を盛り上げる取り組みを企画している方で、「真空パックして温泉に入れるので、ムラなく温度が入って全体がおいしく柔らかくなるんです」と説明していただき、期待値がぐんぐん高まります。

肩ロースの湯治豚を分厚く切って、少しだけ焼いたら出来上がり。
シンプルな調理法ですが、すでに温泉で低温調理されているので、越乃紅が持つ旨みがしっかり引き出され、たっぷり堪能できる逸品になっています。
▲一切れの大きさが一目瞭然。薬味として藻塩、まんまの実(自家製味噌のブレンド)、ピリリと辛い神楽南蛮を醤油で煮出したものが添えられています

それではいざ、いただきます!

一口食べれば、そのレベルの高さは明白。
とにかく柔らかさが抜群で、もう脂が口溶け良くじゅわっととろけるとろける…。豚肉ってこんなに甘いんですね。あんなに厚いのに、噛んでも肉の繊維質がほとんど感じられないほどの柔らかさでした。
▲食べた瞬間、脂の口溶けの良さと肉の甘みにノックアウト

何度も「脂が」と書いていますが、とっても軽く全然もたれることもなく、このあとあっという間に完食。名残惜しかった……。

他にもちとせさんでは、日帰りのお客様も湯治豚を楽しめる「湯治豚丼定食」(税込1,300円)を提供中。
▲丼から湯治豚がはみ出してる!!ランチは11:30~14:00、月曜定休(祝日の場合は翌火曜休)

日帰り温泉も楽しめる宿なので、食べて浸かって、こちらでぎゅっと松之山の温泉パワーを体感してみるのもおすすめです!
でもやっぱり宿泊してステーキも食べて欲しい!
また春から秋にかけては、足湯もある古民家「地炉(じろ)」で湯治豚づくり体験も開催しているので、興味のある方は体験してみるのもおすすめです。
▲湯治豚づくり体験は完全予約制。1回約2時間で、約250gの湯治豚を作れます(1回税込1,000円)。写真提供:松之山温泉合同会社まんま

「ここでしか出会えない味」を味わいに、ぜひ松之山へ!

この湯治豚が食べられるエリア「妻有」という言葉にピンと来た人もいるかもしれません。
妻有は湯治豚の産地であると同時に、近年現代アートの祭典「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の会場として、世界中から人が集う場でもあるのです。そして見渡すとアート作品だけではなく、四季折々の自然が織りなす美しい景色が広がっています。
▲大地の芸術祭は3年に一度開催される、世界最大級の国際芸術祭。常設のアートも多数あり、会期以外でも楽しめます

そして日本三大薬湯と言われ、温泉基準成分の15倍もの成分を含む、豊富な湯量の天然温泉も、松之山に行ったら欠かせません。

鑑賞して、遊んで、お腹が減ったら、待っているのは栄養価が高くて疲労回復や美肌にも働きかけるといわれる豚肉の、しかも格別美味しい湯治豚!
▲「生産者も『こんなにおいしくなるなんて!』と驚いたんですよ」と柳一成さんが誕生ストーリーを教えてくれました

松之山だからこそ誕生した、ここでしか出会えない味が、あなたを待っています。ご紹介した3スポット、それぞれ部位や調理法が異なり、一言で「湯治豚」と言ってもそれぞれ異なる魅力がありました。例えば「柔らかさ」一つを取っても、弾力があるものもあればしっとりしたもの、溶けちゃうような食感まで三者三様。ぜひ、食べ比べて湯治豚の多彩な表情を楽しんでみてください。
丸山智子

丸山智子

ライター・コピーライター。新潟をもっと楽しくするWEBマガジン「にいがたレポ」参加ライター。東京の編集プロダクション、広告制作会社を経て2014年より新潟でフリーランスに。イベントの宣伝・広報、地方情報誌、住宅情報誌、会報誌等での執筆、広告の企画制作などの分野で活動中。関心分野は、和菓子・日本文化・舞台芸術。

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