ディープすぎる!別府現代芸術フェスティバル2015「混浴温泉世界」

2015.09.03 更新

源泉数・湧出量ともに日本一を誇る温泉の街、別府。この湯けむりに包まれる街を舞台に、アートファンを魅了してやまない芸術祭が開かれています。熱帯夜をさらに熱くする真夏の夜の芸術祭をレポートしました!

芸術文化の源泉地・別府で現代アートに触れる

いちばんに訪れたのは、元ストリップ劇場の「永久別府劇場」です。ここを舞台に開催されるのは、「永久別府劇場・恐怖の館」。なんと、現代美術家や照明デザイナー、システムデザイナー、パフォーマーたちでつくる最先端(!?)のお化け屋敷です。

チケットを買っている傍から「キャーッ」という悲鳴が聞こえてきます。薄暗い建物のなかを歩いていくと、恐怖と不思議に満ちた別世界が広がっていました…。
▲トキハ別府店7階の展示会場。絵画からオブジェまでさまざまな作品を一堂に展示

お化け屋敷のドキドキがとまらないまま、「わくわく混浴デパートメント」へ。普通に営業しているデパートが会場です。

若手作家による作品展示のほか、ライブペインティングやパフォーマンスなど、さまざまなイベントを展開。期間中、作品数はどんどん増え続け、訪れるたびに進化していく「わくわく混浴デパートメント」には、現在、なんと103組(8月末調べ)のアーティストが参加。その数はさらに増えているそうです!
▲トキハ別府店の屋上に描かれた淺井裕介の大作「海と山の間で生きている」

デパートの屋上にも大型作品が出現。また、舞台美術家や画家として活躍しているイワモトジロウによる、廃材を集めて骨組からつくられたイベントステージ「トキハ天空混浴劇場」では、毎週土曜日になるとアーティストたちによる「わくわくサタデーヒットパレード」ライブやパフォーマンスが行われます。
▲営業中の共同温泉「末広温泉」の壁には大平由香理の新作「女湯=由布岳 男湯=鶴見岳」が登場(写真は「女湯=由布岳」)
▲街中にも忽然と壁画やインスタレーションが現れる。写真はHITOTZUKI「Evidence Clouds」

別府現代芸術フェスティバル2015「混浴温泉世界」の開催期間中は、共同温泉の2階にある公民館やカフェ、空きスペースをリノベーションしたギャラリーなど、街全体がアート空間に変わる市民文化祭「ベップ・アート・マンス2015」をはじめ、さまざまなイベントが同時に行われています。

街全体がアートにどっぷり浸かる芸術祭は、老若男女問わず楽しめるお祭りでもあるのです。
▲「清島アパートにようこそ!」と入居中のクリエイター。左から関川航平さん、小野愛さん、中野莉菜さん

毎年、公募で選ばれたアーティストやクリエイター8名が1年間入居して創作活動を行う「清島アパート」では、オープンアパートが催され、1階の部屋を展示場として開放しています。毎週日曜日の16時から18時には、楽しい何かが起こるそうですよ!
ここで、街をぶらぶらと歩いていていた時から気になっていた黄色のポスターを発見。

「岩を持ち上げられない」は、関川航平さんのパフォーマンス。ポスターを持ち帰ってもらい、どこまで告知が広がるかの実験をしているのだとか。

遠い異国の地へ渡り、掲示されたポスターもあるそうです。面白いですね~。
次にお邪魔したのは、ロサンゼルスの大学で写真を学び、昨年11月から別府に移り住んだ中野莉菜さんの部屋です。

別府で撮りためたフィルム写真の中から、無意識に向けられていた視点を整理したという今回の作品。幼い頃のかすかな記憶、日常で無意識のうちにインプットしているカタチなど、何かを見て過去の記憶とリンクさせる感覚について話してくださいました。

アーティストとの距離が近く、その想いに触れられるのも清島アパートの魅力です。

案内人に導かれ、時空をさまよい歩く特別なアートツアー

▲大友良英のインスタレーション「バラ色の人生 LA VIE EN ROSE」。昭和家電によるオーケストラです!

「混浴温泉世界」のメインがこちら、「アートゲートクルーズ」です。

明治4(1872)年に別府港が開かれて以来、日本の近代化と寄り添いながら街が形成されていった別府には、アメリカ兵で賑わった戦後の歓楽街、約50年前に閉鎖した地下街、地元で当たり前の存在だった共同温泉2階の公民館など、”別府”ならではの景色が残されています。

その場所を舞台に招聘されたのは、枝史織、蓮沼執太、クワクボリョウタ、大友良英の4人のアーティスト。彼らが思い思いに作品を展示する5つの会場を案内人とともに訪ねます。どの会場も五感で感じられる仕掛けがいっぱい。案内人が語る別府の歴史と重ね合わせていくことで、その作品の深味が一層濃くなります。

案内人に導かれるまま歩いていくと、色褪せた路地裏には営業しているのかいないのかわからないお店がちらほら。

「別府の街は、今でも日々刻々と変わり続けています。その時間の移り変わりや独特な空気感を肌で感じていただくために、細い路地裏を通ったりするルートを設定しています」と事務局の松田さんは話します。
▲枝史織のインスタレーション「終焉 End」。おびただしい数の裸婦が祈りを捧げているかのよう

「アートゲートクルーズ」のラストを飾るのは、小さなバー。終戦後、アメリカ兵を相手に強く逞しく生きた女性たちが立っていたであろうバーのカウンターにあるのは、おびただしい数の裸婦。湧き出る温泉をぐるりと囲み、懸命に祈りを捧げているように見えます。

完全予約制の「アートゲートクルーズ」は、その時、その場所でしか味わえない仕掛けがたっぷりと施されていて、商店街や路地裏を彷徨いながら歩いているうちに、ふわふわとした不思議な感覚に包まれます。夢なのか、現実なのか、さまざまな物語を紡いできた場所に身を置いて、全身でアートを感じられるツアーは、口コミでその面白さが伝わり、連日満員御礼の盛況ぶり。特に週末は、早めに予約した方が賢明です。
そして、時刻は夜8時。別府の中心地が夜の顔に変わる頃、待ち合わせの場所にどこからともなく人が続々と集まってきました。間もなく、「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」がスタートします。

完全予約制のツアーは、毎週金曜日と土曜日を中心に開催。別府の街のどこかで、3組のダンスパフォーマンスが繰り広げられるというツアーでは、その日の参加アーティストや演目は、当日まで知らされません。どんなパフォーマンスと遭遇できるのか、ワクワクしながら夜の街を歩きはじめます。
▲「戦士の隣人」振付・出演:大園康司、橋本規靖(かえるP)


地下へ続く階段の入り口に、何やら怪しい二人羽織姿の人がいました。気になりながらも導かれるまま地下にある会場へ。ほどなく、先ほどの二人羽織のふたりによるパフォーマンスがはじまりました。

普段の生活に根ざしたことにこそ、ダンスの身体の在り様があるのではと考え、創作に取り組むダンスユニット「かえるP」の大園さんと橋本さん。軽快な音楽に合わせて踊ったり、息をのんでしまうほどの静寂に包まれる中で独特な動きをしたり。

観る人と演じる人の距離をぐっと近づけるパフォーマンスにどんどん引き込まれてしまいました。
▲「Void」(竹瓦バージョン)振付・出演:東野祥子(ANTIBODIES Collective)

最後に案内されたのは、近代化産業遺産に認定されている「竹瓦小路」です。

ピンク色のネオンが妖艶に灯る「スナックゆき」から登場したのは、夜の路地裏に青く浮かび上がるひとりの女性です。官能的でありながら刹那的で哀愁に満ちた踊りは、激動の時代を過ごした女性の生き様を映しているかのようです。

演じるのは、「Dance Company BABY-Q」を主宰する振付家の東野祥子さん。最後は、大きな拍手が沸き起こりました。

潮風が纏わりつく肌の汗ばむ感覚さえも心地よく思えてくる真夏の夜の芸術祭。独特の世界観に心揺さぶられる別府現代芸術フェスティバル2015「混浴温泉世界」は、この夏来訪必至のアートイベントです。

隠岐ゆう子

隠岐ゆう子

大学でデザインを学んだ後、大手印刷会社に入社。制作ディレクターとして5年勤めた後、フランス・パリに語学留学へ。現在は、九州・山口を中心に編集・ライターとして活動している。無類の旅好きで、暇とお金さえあればヨーロッパを中心に旅する行動派。旅、温泉、スイーツのキーワードに目がない。

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