佐伯市民のソウルフード「チロリン」を、伝説の店「にっぱち」で!

2015.09.09

大分県北の中津・宇佐の唐揚げは、今や全国区。一方、県南・佐伯の唐揚げは、地元民に親しまれ「チロリン」と呼ばれる、佐伯のソウルフードだ。醤油にんにくの効いた味付けで、揚げたて熱々を頬張ると、ジューシーな旨みがあふれ、ビールをぐびっといきたくなる。

100人いたら、100人が食べるメニュー!

佐伯市の中心地にある居酒屋「にっぱち」の名物「若鶏のチロリン揚げ」(通称・チロリン)は、鶏のぶつ切りを揚げたもの。一番人気の「若鶏の唐揚げ(もも)」(通称・もも唐) に次ぐ人気のメニューで、どの部位がでるかは運まかせだ。

骨つき、骨なし、手羽、どの部位も美味しく、それぞれに旨みがある。さっぱりしていて食べやすいのが骨なしだが、骨つきは骨の旨みが良くいつまでも食べていたい。いずれにしてもアツアツの揚げたてには、とにかく生ビールが良く合う。

味付けは、にんにく、酒、醤油ベース。だからか、お酒が良く進む。唐揚げ担当のスタッフは「にっぱちに来たら、これを食べんと!と思ってくれるお客様のためにも、日によって味が変わらないように気をつけています」と語る。

お客さんが100人いたら、100人が唐揚げを注文するそうで、「にっぱち」の鶏肉消費量は相当なもの。

テイクアウトもあり、クリスマスには「にっぱち」という家庭も多く、過去には1日で、「もも唐」2,000本、「チロリン」1,000個を売ったこともあるそう。

※「にっぱち」一番人気のメニュー「もも唐」は、素揚げに塩のみのさっぱり味の唐揚げ。
▲美味しさのコツは、さっと、カラッと高温で一気に揚げることだそう

何故、鶏の唐揚げを「チロリン」と呼ぶの?

不思議な響きの「チロリン」とは、いったいどこから来たのだろう?「にっぱち」の前身で、惜しまれながら引退した「二十八萬石」(通称・にっぱち)の園田夫妻に聞いてみた。

「二十八萬石は別府が本店やあけぇ、別府店の初代・尾林格一さんが名付け親なんよ」

尾林さんは戦後、大陸から引き上げ、昭和24年(1949年)、別府に大衆酒場「二十八萬石」を開店した。「チロリン」という名前は、海外に行った際に見つけた、村の名前だったそうで、その可愛らしい響きに惹かれて名付けたのだという。

「二十八萬石」ならではのネーミング「チロリン」は、いまや佐伯の市民権を得ているといえる。

引き継がれた老舗居酒屋

園田夫妻は元々、旦那さんが別府店で働いていて、仕事ぶりを買われ佐伯店を任されるように。佐伯店オープンから55年。平成26年(2014年)9月末日を持って、高齢を理由に引退したが、 その夏、佐伯は閉店の噂で持ちきりとなった。

「にっぱち(二十八萬石)が無くなる?」「そんなはずねぇ!」「もも唐やチロリンが食べれんくなるん??」
▲平成26年9月30日、「二十八萬石」最後の店に立つ園田夫妻
誰もが閉店を惜しんでいたところ、現「にっぱち」のオーナーである歳納勇二(としのゆうじ)さんが、店を引き継ぐことに。二十八萬石の愛称であった「にっぱち」を店の名前にし、佐伯の老舗居酒屋は今なお健在という訳だ。

「二十八萬石」は、佐伯の文化ともいわれる伝説の居酒屋。半世紀続いた大衆酒場独特の雑多な雰囲気と、いつも迎えてくれる店員の笑顔。とにかく安くて旨い、たくさんのメニュー。ここに来れば馴染みの顔があって、ついふらりと足を運んでしまう。だからこそ、「にっぱち」として次の世代に引き継がれ、なお多くの人を惹きつける店としてあるのだろう。
▲スタッフ20名のうち、新人3名。17名は昔からのスタッフが働く
ちなみに、「二十八萬石」の由来を知っている人がどれだけいるだろうか。開店した昭和24年当時、別府温泉の湧水量が一日あたり二十八万石だったこと、そして、末広がりの意味を込めて付けられたという。

由来を知る人は今となっては少ないだろうし、ましてや、佐伯市民にとってみれば、別府の湯量だとは思いもよらないはずだが、いかがなものか?
▲一番人気の通称「もも唐」。TVのバラエティ番組でも紹介された

安くて美味しい、家庭の味が人気

「にっぱち」のメニューは120種類以上。若鶏のチロリン揚げ1皿350円、若鶏の唐揚げ(もも)1本350円、チャンポン530円、巻き寿司(太巻き)580円、鳥天定食750円。一番高くて、にぎり寿司(7貫)980円(全て税込み)。どれも手頃な値段なので、思う存分飲み食いしても3,000円あれば納まってしまう。そんな訳で、週に5日来る常連さんもいるというから驚きだ。

人気の秘密は値段ばかりではないようで、家庭料理により近い優しい味も、常連の集う理由のよう。ホール責任者の西田崇志さんは「なるべく以前の店の雰囲気に近づけて、味も変わらないよう努力を惜しまずに、佐伯のソウルフードを守っていきたいです」そして何より、お客さんの要望に応えられる店を目指しているのだと、穏やかな笑顔で語ってくれた。

週末の夜、のれんをくぐると、雑多な空間は飲兵衛たちで賑わっていた。そしてお馴染み「ドンドンドドドーーーン!!!」という、客を迎える太鼓の音が以前と変わらず響いている。
▲半世紀に渡り鳴り続ける、お客を迎える太鼓。ホール責任者の西田さんが鳴らす
さあ、今日も「チロリン」を食べに、「にっぱち」へ行こう。
そめやひろこ

そめやひろこ

大分県在住。ライター、エディター、デザイナー業を経て、現在はオーガニックカフェを営む。大分の自然、温泉、うまいもんと人が好きで、大分の魅力を発掘する日々。 (編集/株式会社くらしさ)

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