能登唯一のクラフトビール「奥能登ビール日本海倶楽部」。チェコ人のブラウマイスターが醸す本場の味

2015.09.01 更新

能登半島の先端に近い石川県鳳珠郡能登町に、能登で唯一のクラフトビール工場があります。そこに併設するレストラン「日本海倶楽部」では、ビールの本場、チェコのブラウマイスターが醸す、出来たてのクラフト生ビールを味わうことができます。

工場では、「ピルスナー」「ダークラガー」「奥能登伝説」「ヴァイツェン」といった4種類の地ビールが造られています。その中で最も人気のあるピルスナーは、「日本海倶楽部」の看板ビール。インターナショナル・ビア・カップにて4度受賞の功績をもち(銀賞2008・2010・2011、銅賞2007)、奥能登誇りのローカルブランドとなっています。

一口飲むと、生きた酵母の持つ特有のまろやかさと爽快さが体に染み渡り、キレのあるのどごしが夏の暑さも疲れも吹き飛ばします。
▲黄金色に輝くピルスナーはホップの爽やかな香りと程よい苦み。300mlグラス460円(税込)、500mlジョッキ750円(税込)。写真は300mlグラス
昨年は、ビール文化の育成、発展に貢献したビール会社などに贈られる「ビールのノーベル賞」と呼ばれる「ブルワリー・オブ・ザ・イヤー2014」を受賞した「日本海倶楽部」。その誕生は平成10年、重度障がい者を対象とする児童施設や更生施設を主に運営していた社会福祉法人「佛子園(ぶっしえん)」が初めて取り組む、授産施設として始まりました。

障がい者就労施設としても、その取り組みとしてもユニークなのが、「日本海倶楽部」は地ビール工房、レストラン、牧場、海辺の公園を運営する、新しいリゾートエリアになっているところです。家族で一日ゆっくり過ごせる場所として、地元の人々からも親しまれています。
▲目印は朱鷺のイラスト。少し入り組んだ場所にあるのでこの看板をたよりに行きましょう
▲手入れの行き届いた庭に囲まれた二階建てのレストラン「日本海倶楽部」とビール工場
▲美しい入り江を望む高台に建つ「日本海倶楽部」敷地内には、長い滑り台を降りて向かう海辺の公園などもあります
▲大きなビール釜があるレストランの中はまるで海外のリゾート地のような雰囲気。テラス席もあります

日本一背の高いブラウマイスターが醸す、本場チェコの味

工場でビールを造るのは、ブラウマイスターとしてチェコからやってきたユジ・コティネックさん。能登歴9年、同僚や常連客には「コチャス」の愛称で親しまれています。
▲身長198㎝のコチャスさんは日本一背の高いブラウマイスター
「私はチェコのビールの美味しさを日本の皆さんに知ってもらうためにここへ来ました。厳選した材料と本場の技術、徹底した品質管理で造った本物のビールを、一人でも多くの人に味わってほしいです」

使用するモルト(麦芽)とホップは、チェコやドイツなどヨーロッパから厳選したものを直輸入し、それをコチャスさんが本場の技術で醸造しています。
▲左はピルスナーの原料のモルト、右はダークラガーや奥能登伝説の原料のブラックモルト
▲醸造中のビールからは、湯気と共にイーストが発酵しているような香りが立ちこめる

発酵文化が根付く北陸にふさわしい発酵飲料のビール

冬の寒さが厳しい北陸地方では、先祖代々、冬の保存食として「魚醤」のほか、糠や麹を使った「なれ鮨」、「こんかいわし」などの発酵食品が大切に作られてきました。加えて能登は代表的な杜氏集団の一つ、「能登杜氏」輩出の地であることからわかるように、古くから日本酒の醸造が盛んでした。

こうした土地柄と食文化に則った事業として、「せっかく作るなら奥能登から全国に発信できるほどの製品を生み出したい」と日本海倶楽部のスタッフが研究を重ね、障がい者就労施設の作業品目としては珍しい、発酵飲料としての地ビールの製造を始めることにしたのです。

佛子園の理事長、雄谷良成(おおや・りょうせい)さんは、ヨーロッパ各地を巡っていろいろなビールを味わい、日本海倶楽部で造るビールはピルスナーにしようと決めたそう。

「なぜなら日本で最もポピュラーに飲まれているビールはラガービールで、その代表がピルスナーですから。そしてピルスナーの発祥地はチェコなので、チェコの職人に来てもらいました」

ピルスナーに代表されるラガービールは、低温で長時間発酵させて造られます(下面発酵ビール)。その特徴は、えもいわれぬ美しい色と、爽快なキレ味、目が覚めるようなきりっとした口当たりに、心地いい苦みと麦芽の深みの絶妙なバランス。冷やすとより際立つキレ味でピルスナーにしかない喉越しを味わえます。

「日本海倶楽部」では、ピルスナーの他に、ダークラガー、奥能登伝説といった3種のラガービールが飲めます。
▲ダークラガーは、その名の通り、濃い黒色が特徴。口に含むと香ばしさが広がる、濃厚なコクの深い味わい
奥能登伝説は仕込み水に能登沖の海洋深層水を使用し、イングランド産のホップをふんだんに使用した芳ばしい香りと強い苦みが特徴のオリジナルビールです。 2014年度「インターナショナル・ビア・カップ」で銀賞を受賞。

「日本海倶楽部」では、ラガービールのほかに常温の短期間発酵(上面発酵)で造られるエールビール「ヴァイツェン」も製造しています。その特徴はなんといっても麦芽からくる甘みと、柑橘類を思わせる風味、芳醇な香りにあります。

強いキレ味が特徴的なラガービールに比べて、泡が少なくコクをじっくり味わえるのがエールビール。麦芽の甘みとホップの苦みがバランスよく味わえ、苦みが少なく、冷やしても常温でも香り高く美味しく飲めるので、特に女性に人気だそう。
▲「日本海倶楽部」唯一のエールビール、ヴァイツェン。柑橘系のフルーティーな香りと甘み、深く香ばしい旨みが魅力で、個性的な味わい
レストラン内のショップでは、お持ち帰り用のボトルビールも各種販売しています。
▲330mlボトル580円(税込)、500mlボトル840円(税込)
また、施設内には牧場や公園があり、エミューやミニホースが飼育されています。
「能登はきれい。ずっとここで変わらぬ美味しさのビールを造って暮らしたい」

そう話すコチャスさんの造るビールは、味よし・色よし・香りよし、とあって近隣の店にも卸され大人気。奥能登が醸す酵母が生きたままの地ビールをじっくり味わいながら、日本海を眺める贅沢なひとときをぜひご賞味ください。
中乃波木

中乃波木

東京に生まれ、幼少期はインドネシア、芦屋と移り住む。13歳の夏に母と二人で能登に移住したことから能登の原風景に魅了される。美大卒業後、広告制作会社amanaに入社。アシスタントを経て独立後2007年に写真集「Noto」を出版(FOIL刊)。2010年より季刊誌「能登」にてフォトエッセイ大波小波を連載中。写真家としての活動を軸にイラストレーター、ライター、ムービーカメラマンとしても活動している。(編集/株式会社くらしさ)

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