別府温泉のおすすめ3大レトロ共同浴場。歴史と風情とあっちい湯!

2017.03.09 更新

源泉数は2,000本以上、1日の湯の総湧出量も全国第1位の毎分87,346リットル、さらに日本にある10種の泉質のうち7種を有する大分県別府市。市内に8つの温泉地があるこの地は「別府八湯(はっとう)」とも呼ばれています。今回はその八湯の1つ「別府温泉」をピックアップ。おすすめの3大ジモ泉(せん)と共にご紹介します。

昭和の雰囲気を残す町なか、路地裏に湯を持つ「別府温泉」

西に鶴見岳、東に別府湾に挟まれた形で、南北長く広がる別府市。おんせん県大分を代表する湯の町には、山手、海辺、町なかなどそれぞれのエリアに、8つの温泉地が点在しています。
▲JR別府駅前にある手湯(無料)。その上に別府八湯の名前がズラリ

「別府温泉」はJR別府駅前を中心とした繁華街にあります。昭和の雰囲気を今も残し、数々の温泉宿のほか、古くから地元に愛される共同浴場、通称“ジモ泉”が点在。その特徴は泉質の多彩さと、どこも源泉温度50度前後という、けっこうなあつ湯。それゆえ、湯上りは実に爽快!
▲駅前通りと流川通りを結ぶアーケード・ホットストリートやよい
▲アーケードの両脇にはこんな狭い路地がいっぱい

こういった路地の間に、共同浴場がポツンポツンとあります。昭和レトロな町を散歩しながら、湯めぐりができるのも別府温泉ならではの特徴です。

めざせ88湯制覇!温泉道を究める湯めぐりアイテム「スパポート」

別府には別府八湯を制覇したい、温泉道を極めたい、という人向けの湯めぐりアイテムがあります。その名も「スパポート」。
▲「別府八湯温泉道」実行委員会が発行する湯めぐりパスポート。JR別府駅構内にある別府観光案内所にて販売(1冊税込100円)
▲本物のパスポートのように身分証明ページの他、出入国スタンプならぬ、入湯証スタンプページもあり

「別府八湯温泉道」が選んだ88の名湯に入る毎に、各湯のスタンプを押していきます。スタンプ8つで「温泉道初段」に認定。その後、8湯ごとに段位が上がり、スタンプ80個で「別府八湯温泉道十段」、さらに88湯で「名人」に。また、段位ごとに別府八湯温泉道事務局に申請すると認定タオルと認定証がもらえます(別途認定料が必要)。

ちなみに88湯めぐりは、携帯電話やスマートフォンを使った「ケータイ温泉道」(※携帯電話、スマートフォンのみ対応)でも参加できます。スパポートと共に、別府の温泉巡りにぜひ利用して楽しんでください。

ではそろそろ、別府温泉を代表する3つのジモ泉をご案内。まずはJR別府駅の目と鼻の先にある「駅前高等温泉」へ。

あつ湯とぬる湯の2つの浴場を持つ、大正レトロな共同浴場「駅前高等温泉」

JR別府駅の東口を出て、駅前通りを下ること徒歩1分。とんがり屋根と白壁のレトロな洋風建築。これぞ、大正13(1924)年の開館以来、駅前町民に愛され続ける「駅前高等(こうとう)温泉」。
▲玄関前にある手湯と足湯の下から、弱アルカリ性単純泉の湯が湧くそうです
入口を開けると即、番台。敷地内に2つの源泉をもつこちら。入口前に湧く弱アルカリ性単純泉は、番台右の「あつ湯」、建物の左横から出る単純泉は、番台の左から入る「ぬる湯」で楽しむことができます。
▲あつ湯の男湯。脱衣所から階段を下りて浴場へ

まずはあつ湯をチェック。別府には写真のように浴場が脱衣所よりも低い階、場合によっては地下に設置しているところがけっこう多い。ポンプなどがなかったころに作られたものは、温泉が湧いているところより下に浴槽を作らざるをえなかったようです。源泉からの湯が湯船の底の横穴から注がれ、やがて浴槽を満たし、そのまま洗い場へと流れだす、まさに源泉かけ流しスタイル。

温泉ツウによると、こういった脱衣所と浴場の位置関係は、質のいい湯、ホンモノの温泉を見極める際の1つのポイントでもあるそうです。
▲若干、薄緑色の湯に映り込むピンク格子のガラス窓。このちょっとムーディーな雰囲気も、開館当時のまま

浴槽の横に水道の蛇口がありますが、ハンドルは外されています。つまり水うめ厳禁。源泉のまま入れ!という地元の方の強い意志を感じます。それゆえこの湯は「あつ湯」。源泉温度は59.3度。ですが一旦、タンクを経由するので、浴槽の温度は42~3度。確かにあついですが、このくらいなら、九州各地の湯を経験したライター山田、耐えられます。

また、基本的にジモ泉の浴室には石鹸やシャンプー、リンス類は置いていません。番台で販売するところもありますが、あらかじめ自前のおふろセットを用意したほうがいいでしょう。
▲ぬる湯の男湯。あつ湯同様、階段を下りて浴場に行くスタイル

こちらの浴槽横の水道蛇口はハンドルが付いている、つまり「熱かったら水を入れてもいいよ~」とのお許しを得ています。シャワーも2つあり、銭湯感覚で利用できそうです。浴槽の温度も「あつ湯」よりもぬるめの40度に設定。この写真からは見えませんが、実は浴槽はもう1つ。
脱衣所の真下に隠れるようにあります。天井もあって、ちょっとした洞窟風呂みたい。手前の湯よりももう少し設定温度が低い。つまり、「ぬる湯」のぬる湯が楽しめます。

入浴後はスパポートにスタンプポン!88湯のスタンプは全て異なるデザインです。
▲駅前高等温泉のスタンプは、象徴的な2階建ての姿

また、駅前高等温泉は宿泊施設も兼ねています。2階には約3畳のシングルルーム、2人部屋、ドミトリータイプの大広間の計7室を用意。トイレは共同ですが、各部屋にTV、エアコンがあり、1人に1枚、浴衣も用意。
▲最大10人が泊まれる大広間。1人1,700円~(入湯税100円込)

国内外のバックパッカーたちはもちろん、電車に乗り遅れた方なども利用するそうですよ。

激あつの湯と砂湯が楽しめる、別府温泉のシンボル的ジモ泉「竹瓦温泉」

大正レトロスタイルな「駅前高等温泉」を出て駅前通りを下り、レトロなアーケードと路地を抜けて歩くこと約5分。
▲和風旅館のような立派な唐破風造りの屋根を持つ木造2階建ての「竹瓦(たけがわら)温泉」

これぞ、別府温泉のシンボル的ジモ泉「竹瓦温泉」。明治12(1879)年に建設された竹屋根葺きの浴場がはじまり。その後、瓦葺きに改築されましたが、当時の姿を偲んで「竹瓦温泉」と言う名になったそうです。その後も何度か改装され、現在の建物は昭和13(1938)年築のもの。
昔ながらの引き戸を開けると、広い板張りの休憩室がドーン!こちらも外観同様、昭和13年当時のまま。奥には畳の小上がりもあります。
▲「いらっしゃいませ~、お風呂ですか、砂湯ですか」と気さくに声をかけてくださった受付の脇田さん。スパポートを見せると「はい、ハンコですね。押しますよ~」
▲竹瓦温泉だけに、スタンプも「竹」をモチーフにしたデザイン

駅前高等温泉と同様に、竹瓦温泉も敷地内に泉質の異なる2つの源泉を持っています。湯ざめしにくい塩化物泉は男湯に、美肌の湯とも言われるナトリウム炭酸水素塩泉は女湯に使用。
「それがね、ここ数年、男湯の方がぬるくなってきたのよ。源泉温度が46、7度になってね」と、脇田さん。いや、46度でも十分熱いんですけど。
では、休憩所の右側にある大浴場へ。
▲駅前高等温泉と同様に、脱衣所から階段を下りて地下の浴場へ

大浴場に入った途端、高い天井に響くざばーんざばーんというかけ湯、そしてカランコロ~ン♪という洗面器の音。なんだかワクワクしますね~。脱衣所の竹かごに服を投げ込んで、10段ほどの石段をテンテンテンと降りて、亀の甲羅のようなタイルと広い浴槽の浴場へ。

浴場にはシャワーもカランもありませんから、体を洗う時も浴槽のそばで。浴槽に洗い湯や泡が入らないように、気を使いながらざばーん、ざばーんとやります。
受付の脇田さん曰く、「外国からのお客さんはもちろん、日本の子も、この手のお風呂や入り方を知らない人が多くてね。いちいち説明するのも面倒だから、入る前に一度、脱衣所からのぞかせてあげるの。怖気づいて『あ、やめます』って男子、けっこういるのよ」
▲吹き抜けの天井で実に開放的。浴槽を満たす湯はほんのり緑色

「熱いですか?」と先客さんに尋ねると、「まあ普通。でも昔に比べたらちょっとぬるくなったかなぁ」。もう一人のご老人も「うん、今日は特にぬるい」と言いながら、なにげに湯船の奥にある水道近くに移動。「だから水を入れるなよ!」という静かなプレッシャーを感じます。
訝しみながら、まずはかけ湯。あっちい!やっぱりあっちいじゃないですか!

覚悟を決めて湯に入り、微動だにせず、じーっ。動けば熱さ倍増!しかししばらくすると、何かが肌にグイグイ、ジンジン沁みこんでくるような感覚に。それはやがて、じんわり心地よく体全体を包み込み、なんとも気持ちいい。まさにあつ湯の向こう側にある快感、とでもいいましょうか。湯上りの爽快感もひとしお。早く休憩室で牛乳が飲みたい!

さて、竹瓦温泉のもう一つの魅力と言えば、砂湯。休憩室の左側にある脱衣所で、専用の浴衣に着替えて、砂湯場へ。
砂湯は混浴。砂湯用の砂場が2つ。一方の砂場にお客さんを入れている間、もう一方の砂場に女湯にも使用されるナトリウム炭酸水素塩泉を流し込んで、砂に温泉成分と熱を加えます。
▲15cmほど掘られた溝にあおむけになって横たわります

そこへ「砂かけさん」と呼ばれるスタッフが、温泉成分を吸収したあったかい砂を心臓から遠い足首あたりから、ザックザックとかけていきます。首から下をすっぽり砂で覆ったら、そこから15分。たっぷりの汗と共に体内の老廃物を出しまくったら、砂から身を起こし、はい、お疲れ様。砂湯を終えた皆さんは、だいたい放心状態です。
砂湯を出たら脱衣所に併設の浴槽で砂を流します。ここも女湯と同じ炭酸水素塩泉ですが、砂湯の火照った体に合うように、普通浴の湯よりややぬるめに設定しているそうです。水道の水もガンガンいれてもいいそうです。

砂湯は混浴で、最大8人を収容。ある程度人数が集まって入浴開始となるので、場合によって30~40分、混雑の状況等により、それ以上待つ場合もあるそうです(事前予約は不可)。

飲んで味がしたら健康注意!肌と胃腸を労わる「紙屋温泉」

3つのめのジモ泉はJR別府駅から南へ徒歩15分の「紙屋(かみや)温泉」。
▲温泉マークの建物の1階が紙屋温泉
▲ベンチを挟んで右が女湯、左が男湯。ドアに貼られた目隠し用?切り絵も渋い!

入口の横に足湯と手湯があり、湯口には柄杓が置かれています。つまりこの湯は飲泉OK。昭和初期には胃腸病などに効くと評判から「薬湯」として、船で関西に送られていたこともあったそうです。一口飲んでみたら、ちょっと甘味を感じました。
さて、ドアを開け、番台に座るおばさまにご挨拶。
「こんにちは。表の温泉をのんだら、ほんのり甘くておいしいですね」と言うと、
「え?この湯は無味無臭だよ。飲んで味を感じるときは、どこか体が悪いって証拠らしい。90歳になる常連さんがそう言ってた。あんた、風邪とかひいとらん?」
確かに数日前から偏頭痛がありますね、というとおばさまは得意顔で「ほらね~」。

こちらの湯は江戸時代からあったそうで、それを明治7(1874)年に一般開放。実は周辺に印刷用の紙屋さんがあり、そこからの由来で「紙屋温泉」という名に。泉質はナトリウム炭酸水素塩泉で、源泉温度54度。ここもかなりのあつ湯です。

「このまわりにも共同浴場はあるけど、ただ熱いだけで、湯もキシキシする感じ。でもここの湯はやわらか。熱いけど、お肌がしっとりするのよ」と番台のおばさま。
さっそく、暖簾の先の男湯へ。
▲湯船はスクエア型で、一度に8人は入れる広さ。もちろん、源泉かけ流し。カランやシャワーもなし

浴場には先客がお二人。奥のおじさまが平然とかけ湯をしています。

浴場に入り、先客の方にご挨拶。洗面器で浴槽の湯を汲み、かけ湯をして、悶絶!先に入った竹瓦温泉の比じゃない、激熱です!とりあえず、この熱さになれるために、ばっしゃんばっしゃん湯をかけますが、そのたびに「あっつ、あっつ!」と叫んで身をよじりまくり、でもがんばって湯をかける続けること約10回。
そおっと湯船に足を入れますが脛のあたりで、撤退。
▲この湯に平気で入っている2人は仙人か?!(笑)

見かねた先客さんが「もう水を入れなよ」。
お言葉に甘えて、浴槽の角にある蛇口を全開し、なんとか身を沈めました。

しばらくすると、竹瓦温泉の時のようにやってきました、あつ湯の向こう側の快感が!いや、こっちの場合はご褒美とも言うべきか!なめらかで優しい湯ざわり。腕を湯から出して触ってみると、肌がもっちり。おっさんだけど、ちょっと嬉しい。なんだか若返った気分。

ちなみに3日前の予約で貸切湯にすることも可能だそうです(1時間税込1,000円。人数制限なし)。
▲こちらのスタンプは、入口横の看板にもある「紙屋温泉のみ湯の図」
いかがでしたか?歴史と風情とあつ湯を持つ、別府温泉を代表する3大共同浴場。別府に来たらぜひ、チャレンジしてください。
▲「いらっしゃ~い」と別府観光のパイオニア「油屋(あぶらや)熊八」センセイもJR別府駅前で待っています

もっと深く「別府温泉」を楽しみたい方は地元のボランティアガイドが案内するまち歩きツアー「竹瓦かいわい路地裏散歩」にぜひご参加を。今回紹介した3湯を含め、レトロな路地裏、怪しい喫茶、謎の建築物などに出会えますよ。
山田誠

山田誠

新潟県十日町市生まれ、現在は福岡県福岡市在住のフリー編集者・ライター。九州の宿や温泉、飲食、雑貨系のショップ、さらに漁村、農村、道の駅など、暮らしと休日に関わるスポットをほぼ毎月、年間150軒以上を取材。取材後は必ず近隣の直売所で地元食材を買って帰る。1児の父。

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