リンゴ農家が醸造する、リンゴ感たっぷりのお酒「kimoriシードル」

2015.08.20

青森県は日本で生産されるリンゴの半数以上を占める、言わずと知れたリンゴ大国です。なかでも弘前市は、全国市町村別リンゴ生産量がダントツ1位。そんな弘前市で、2014年5月、リンゴ農家が造るリンゴのお酒「kimori(キモリ)シードル」が誕生しました。

▲リンゴは主に10月~11月に収穫する
「kimoriシードル」を見て、まず驚くのはその濁り。リンゴ果汁がぎゅっとつまったような濁りがありますが、飲んでみるとすっきりしていて、酸味と甘みのバランスが調度いい。

奥深い味わいで、シードルというよりリンゴジュースのような印象が残ります。お酒が苦手な方でも飲みやすいのではないでしょうか。
▲リンゴの果汁がつまったようなkimoriシードル
実はこの「kimoriシードル」はリンゴ農家が自ら育てたリンゴを使って醸造から出荷までを行っています。
▲kimoriの工房内の様子
人工的に炭酸を加えるのではなく、リンゴに酵母を加えてタンクの中で発酵させます。発酵時に発生する炭酸をそのまま果汁に溶け込ませてつくるため、舌触りの良いきめ細かな炭酸が特徴です。
▲青と黄色のパッケージのkimoriシードル
種類は「ドライ」と「スイート」の2つ。使用しているリンゴはどちらもふじ、王林、ジョナゴールドといった代表的な品種で、発酵時間によって種類が変わります。4~5週間発酵させる「ドライ」はリンゴの酸味が生きたすっきりした味わい、 3~4週間発酵させる「スイート」は酸味を抑えたまろやかな味わいです。

りんご畑の中にポツンと白いピラミッド?

▲リンゴ公園で行われた野外イベントの様子
弘前市の中心市街地から車で10~15分程郊外へ行くと、「りんご公園」という弘前ならではの公園があります。

ここでは東京ドームよりやや広い約5万2000平方メートルの敷地に、リンゴの生産体験用や品種見本として、65品種 約1,300本のリンゴの樹を栽植。人工授粉、摘果(みすぐり)作業、収穫といった体験ができるほか、もちろん園内を自由に散策したり、リンゴの木の下でピクニックなんてことも。
▲リンゴ畑の中にある白い建物
青々としたリンゴの木の中をよく見てみると、ピラミッドのような白い三角屋根の建物があります。この三角屋根の建物こそ、「kimoriシードル」の醸造所「弘前シードル工房kimori」。リンゴの木に囲まれた場所で、リンゴのお酒は造られているのです。

建物内にはウッドデッキがあり、リンゴの木箱と同じ材木で作られたテーブルやイスがあります。冬の暖炉に使われる薪はせん定でいらなくなったリンゴの木で、香りが良いと評判がいいそうです。
▲kimori店内にあるリンゴの木のテーブルと椅子
▲入り口の看板も、農家が収穫に使った脚立をリメイクして再利用
▲開放的な場所に建てられた「弘前シードル工房kimori」
ちなみに「kimori」という名前は、収穫が終わった時に一つだけリンゴの実を残し神様に捧げ、来年の豊作を祈る「木守(きもり)」という風習から名付けられました。

「kimori」の開発にはリンゴ農家ならではの発想があった

▲百姓堂本舗の代表・高橋哲史さん
「リンゴの木の下にみんなで集まって楽しみたい」と、「kimori」を運営する百姓堂本舗の代表・高橋哲史さんはその思いを語ります。

高橋さんはリンゴ農家の生まれ。進学で一時は東京に上京しますが、母親の病気がきっかけで実家に戻ることになります。

青森県のリンゴ農家は家族経営が多く、高橋さんも家業を手伝うことになったのです。リンゴ農家の仕事に触れ、リンゴ作りの大変さや楽しさ、やりがいに気付いたと言います。
▲リンゴは日の光を浴びて赤くなっていく
そんな中、2009(平成20)年に青森県の広範囲で甚大な雹(ひょう)被害が発生しました。ほとんどのリンゴが出荷できないという被害を受け、高橋さんも出荷できなくなったリンゴが捨てられていく様子を目の当たりにしたそうです。

その時、傷がついたリンゴでも、加工品にすれば少しでも商品価値が残ることに着目。そして、みんなで集まって楽しむ時に欲しいもの=「お酒」というアイデアとミックスし、これがシードル作りのきっかけとなりました。

「kimori」の次の試み、リンゴ農家の日常をレジャーに!?

▲ハンモックを支える道具も脚立を利用している
「kimori」にはハンモックがあり、高橋さんもついここで昼寝をしてしまうと言います。リンゴの木の下で、心地よい日差しや風を感じながらハンモックに揺られる。こんな贅沢、一度は体験してみたいですね。

こうしたリンゴ農家だからこそできる体験を、高橋さんは新しい挑戦として実現させようとしています。世界自然遺産・白神山地の麓で「キモリキャンプ」と題したレジャーイベントです。

リンゴ農家が体験しているような日常をレジャーとして楽しむ企画で、白神山地の大自然に囲まれた場所でディナーを食べたりトレッキングを楽しんだり、ゆくゆくはこの世界自然遺産にグランピング施設を作りたいと笑う高橋さん。


世界自然遺産の雄大な自然を満喫しながら、リンゴのお酒を楽しむ贅沢なレジャーが、近いうちに実現するのかもしれません。
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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