八甲田のスノーモンスターを見に冬山トレッキングに行ってきた

2017.03.10 更新

「スノーモンスター」とは雪や氷が樹木を覆い、大きな怪物のように見える樹氷のこと。氷点下の銀世界が生み出す、全国でも限られた場所でしか見ることができない大自然の芸術です。そんなスノーモンスターを探しに青森県八甲田へ。今回はスノーシューツアーに参加してきました。

▲八甲田のスノーモンスター

初心者でも大丈夫!そもそもスノーシューって何?

青森県の中央に位置する八甲田。映画『八甲田山』でご存知の方も多いのではないでしょうか。しかし、八甲田山という山は実はありません。八甲田とは、青森県を東西に分けている1,000m級の18の山々によって形成されている火山群の総称。十和田八幡平国立公園に含まれたエリアで、手つかずの大自然が今もなお残っています。
▲遠くから見れば、単独峰ではないことがはっきりとわかる

今回はここ八甲田で、スノーシューを履いて冬山トレッキングに挑戦します。スノーシューとは、ふわふわの雪の上でも埋まることなく歩くことができる歩行具のこと。スキーやスノボが苦手な人でも簡単に雪山の魅力に触れることができます。

参加したのはスキーレッスンやトレッキングツアーなどを主宰する「八甲田パーク」のスノーハイキングツアー(税込6,000円)。天候や参加者の体力などによってルートは変更となる場合もありますが、今回は最もスタンダードで、子どもでも大丈夫という3~4時間のルートに参加しました。八甲田ロープウェーで田茂萢岳(たもやちだけ・標高1,324m)の山頂を目指し、その後、ダイレクトコースと呼ばれるスキーコースの周囲を歩きながら、下山するという内容です。
▲「八甲田パーク」のガイド、田中日出雄さん

案内していただいたのは、地元・青森出身の田中さん。長年山の開発関係の仕事に携わった経験を生かし、退職後にガイドとして活躍されています。八甲田の魅力を「青森市内から1時間もしないアクセスで山頂まで登れることや、山全体が開発されていないこと」と話します。

登山前の準備、そして山頂へ

出発する前に入念に確認したことは、防寒対策です。田中さんによると、山頂付近はマイナス10度以下になることもしばしば。しっかりした装備でないと登ることは危ないそうです。アウターは一般的なスキーウエアで大丈夫ですが、ゴーグルは必要ということでお借りしました。こちらのツアーでは、スノーシューやウエアなど必要なものはすべて無料でレンタルできます。
▲もちろんスノーシューはレンタルできます
▲手ぶらで来るお客さんにも対応。防寒具などもすべてレンタルできる

ちなみに、防寒機能ウエアを何枚も重ね着をしてしまい、山頂で暑くなって逆に脱いでしまうようなケースもあるようです。アウターの中には防寒機能ウエアだけでなく、吸汗速乾性のあるインナーも着ればなお良いとのことでした(インナーはレンタル不可)。では、出発…と、その前にもう一つ田中さんにアドバイスをいただきました。山頂の天気を確認することです。
▲八甲田ロープウェー山麓駅のチケット売り場にある、山頂の天候を案内する電光掲示板

「山の天気と女性の心は変わりやすい」なんて言葉があるように、山麓と山頂でも天気や気温はまったく異なります。事前の準備として山麓駅に設置された電光掲示板を見て、山頂の状態を確認することが大事。八甲田ロープウェーのホームページからは天候だけでなくロープウェーの運行状況も確認できます。
▲八甲田ロープウェーに乗り込み、いざ出発!(ロープウェー料金はツアー料金に含まれていません)

八甲田ロープウェーには、一般のスキーヤーやスノーボーダーも乗車します。天然のパウダースノーの上を滑ることができるため、リピーターが多いとか。近年では海外からのお客さんも多いようです。
▲窓ガラスの霜が凍っていました

乗車時間は約10分。標高差約650mを登ります。到着した山頂公園駅には売店のほか、トイレもあり、出発前の準備ができます。2階にはカフェ&レストラン「ひなざくら」があり、こちらにある「山頂カレー」は一流ホテルの料理長を経験したシェフが作っています。まずはここでトレッキング前に腹ごしらえもいいかもしれません。ご希望の方はガイドさんに相談してみてください。
▲「山頂カレー」(税込900円)。ドライにんにくやレーズンがアクセントとなる甘みのあるカレーで、山の形をした盛り付け

氷点下の厳冬が生み出すスノーモンスターの絶景

山頂公園駅に着くと、まずは山頂付近を散策。スノーシューはここから装備し、トレッキングへ出発です。スノーモンスターを見る予定でしたが、外に出てみると、この日はホワイトアウト寸前の天候でした。
▲ガイドの田中さん以外、何も見えない

山頂駅を出てすぐに、スノーモンスターはうっすらと確認できますが、10~20m先は全く見えません。強風と雪が襲いかかり、カメラのレンズやストラップまで凍りついてしまうような世界です。しっかりとした防寒具のおかげで寒さはそんなに感じません。もちろん肌が出ている顔は寒くて痛いですが…。

スノーモンスターは晴天が続き気温が上がると溶けてしまいます。12~3月頃のこういった吹雪の中で形成されていくもの、それがスノーモンスターなのです。写真に残せるようなスノーモンスターに出会えることは一年でも限られ、「何日も滞在してそのチャンスを狙っているカメラマンもいますよ」と田中さんは言います。
▲積雪は約3m。その雪上を歩くため、スノーモンスターの高さは3~4mほどに見える

スノーモンスターになる木は「アオモリトドマツ(学名:オオシラビソ)」といい、冬になると幹に蓄えていた水をいったん排出し、自ら凍ることを防ぐそうです。

では、実際に晴れている場合、山頂付近のスノーモンスターがどのように見られるのかご紹介します。

まずはロープウェーで標高が高くなるにつれ、徐々に木の形が分からなくなるくらい樹氷の雪が積もっていく様子をご覧ください(筆者が後日撮影してきました)!
▲まだ木の形が分かります
▲山頂付近では木の形がまったくわかりません
▲そして山頂付近のスノーモンスター
▲山頂公園駅からは、晴れていれば津軽海峡まで一望できる

カメラマンの間では、スノーモンスターの中でも「エビのしっぽ」を撮ることを目標にしている人が多いと言います。「エビのしっぽ」とは、まさにそのものの形をした樹氷で、横から吹き付ける強い風があるからこそできる形をしています。
▲スノーモンスターの「エビのしっぽ」。風が吹き付けることでできる

なお、体力に自信があれば、酸ヶ湯温泉方面へ下りていくルートや山頂エリアを広く歩くルートもあります。その先にはスノーモンスターが広がる幻想的な景色があり、厳冬の八甲田だからこそ見ることができる貴重な世界を楽しむことができます。
▲冬の八甲田

見るだけじゃない!雪山トレッキングは楽しみ方がいっぱい

山頂付近を散策した後は下山します。体力に自信のない方や下山が不安な方は、ここから再びロープウェーで降りることもできます。天候は想定外でしたが、今回は予定通りダイレクトコースを下りていくことにしました。
▲あいにくの天気ですが、それもまた一興

下りていくと、運良く出来かけのスノーモンスターがありました。スノーモンスターの幹の周りは吹雪を受けてもあまり積雪しないため、枝木との間に空間が生まれます。中は大人4、5人は入れそうな空間が広がっており、なんとスノーモンスターの中に入れるんだそうです!
▲スノーモンスターの中へ入る田中さん
▲スノーモンスターの中はとても幻想的!

さらに下りていくと、少しずつ晴れてきました。山頂から200~300m下りるとスノーモンスターを見ることはできませんが、木肌の色と雪のコントラストが美しい樹氷が連なる白銀の世界を歩くことができます。
▲次第に晴れてきた八甲田
▲たまに太陽が顔を出すような天気。山頂の天気とは違うことがわかる

基本的に下りなので、体力の消耗はあまり感じません。雪質は見事なパウダースノーで、未踏の雪の中を歩きます。参加する子どもたちは、はしゃぎながらふかふかの雪の中に飛び込むこともあるといいます。
▲雪の感覚がやわらかく歩くだけでも楽しい

「転びそうになったらお尻から倒れたら大丈夫」と田中さんからのアドバイス。実際倒れてみましたが、お尻が痛いと感じることはほとんどなく、むしろそのまま座り込んでしまいたいくらいの座り心地の良い雪質でした。

また、お尻で滑って下りていくこともできるということで、田中さんに先導されてお尻で滑ってみました。
▲お尻で滑っていく田中さん

そのほか、風のいたずらでできる変わった形の樹氷を見つけたり、天然氷のつららを食べ比べてみたり、と楽しみ方はいろいろ。リスやタヌキといった野生の動物に出会えることもあるとか。スノートレッキングは、当日の天気とお客さんの体力に合わせて楽しむことができると田中さんは話します。

そして、スタート地点の八甲田ロープウェー山麓駅に戻ってきました。レンタルしたものなどをお返しすればツアーはおしまいです。今回3時間程度の時間がかかったルートでしたが、まったく時間を感じさせない、さまざまな冬の景色を楽しむことができた体験でした。
▲都会では決して見ることができない世界が広がっている

最後に田中さんから助言をいただきました。氷点下の世界を写真に撮りたいとスマホを持ち歩く方が多いようですが、寒さのため電池がすぐに切れてしまうそうです。体に一番近い場所のポケットの中に入れておくことをお勧めしていました。

青森の中でもさらに積雪が多く、厳冬という言葉がふさわしい冬の八甲田。そんな環境だからこそ生まれる自然の美しさを、スノーシューで体感してみませんか?
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP