自分で電気を作り出せるって本当!?神奈川県・藤野地区が行う持続可能なまちづくり

2015.09.02

神奈川県の北西端、山梨県との県境に位置する相模原市の藤野地区。ここでは足もとにある豊かさや地域にあるものを見つめて、みんなでつながりながら楽しく暮らす地域活動「トランジション藤野」が活発に行われています。その活動のなかの一つ「藤野電力」についてご紹介します。

「藤野電力」ってなに?

2011年5月に始まったという「藤野電力」の活動。きっかけは同年3月11日に起こった東日本大震災です。藤野地区は計画停電エリアでもあったことから、不自由な生活を余儀なくされ、それまで当たり前としていた暮らしの中の常識が崩れました。

そんななか、住民の有志が集まって話し合いが持たれます。「従来の電力会社から供給される電気ではなくて、自分たちの手で電力を生み出すことは出来ないものか」。その結果、自立分散型の自然エネルギーを生み出す「藤野電力」が結成されました。
▲「藤野電力」は、会社でもNPOでもない任意団体で、参加したい人が参加したい時に参加する組織
まず取り組んだのが、毎年夏に行われている地域の芸術祭「ひかり祭り」で使う電気を自家発電したこと。光と音楽が融合し、全国から表現者が集結する祭典の電力をすべて賄えたといいます。
▲2015年の「ひかり祭り」の様子
▲「ひかり祭り」会場の旧牧郷小学校に設置された、太陽光パネル

電力づくりを体感できるワークショップ

「自分たちの手で電気がこんなに簡単に作れるというのは、目からウロコでした。でも一度知ってしまえば、身近にある車のバッテリーなどからでも電気は作れてしまうんですよ」

そう語る「藤野電力」創設メンバーの一人である小田嶋電哲(でんてつ)さんを中心に、「藤野電力」では電力づくりのワークショップを開催するようになり、これまでに全国各地で百数十回実施しています。
ワークショップは3~4時間ほど。ソーラーパネルやバッテリーなどの機器を配線でつなぐだけで、簡単にミニ太陽光発電システムが完成します。
“電気”という日常生活で誰もが使う身近なものだからか、参加層の年齢も幅広く、ワークショップには老若男女が参加するといいます。そして、参加者の大半は「想像していたよりも簡単でびっくりした」と驚くそう。

ちなみにワークショップで用意している組み立てキットのソーラーパネルは、晴天時に1日およそ200W発電。消費電力50Wのノートパソコンであれば4時間、消費電力20Wの蛍光灯形電球であれば10時間の使用が可能になります。

住民主体の、持続可能なまちづくり

藤野地区は、新宿から電車で約70分という都心からも近い場所ですが、そこには豊かな自然と地域コミュニティのつながりが強く残っています。

藤野はもともと第二次世界大戦の最中、藤田嗣治(つぐはる)など日本を代表する近代画家たちが疎開し、創作活動をしていた場所だそう。

その後、昭和61年(1986年)に神奈川県と相模川流域12市町の共同でスタートした、まちづくり構想プロジェクトで「森と湖の創造の拠点」として位置づけられ、独創的なまちづくりとして「藤野ふるさと芸術村構想」の理念が提唱されたのだといいます。
▲中央高速から山の中腹に見える巨大ラブレターも藤野の芸術作品
そんなまちづくりに共感し、平成16年(2004年)に「パーマカルチャーセンタージャパン」(地球への思いやり、人への思いやり、地球にあるものを分かち合うという原則の上で農的な暮らしをデザインする手法を学ぶ場所)、平成17年(2005年)に「学校法人シュタイナー学園」(知性だけでない子どもの心や体、精神性をも含めた全人教育を目指す学校)がそれぞれ藤野に開校。

地域外から藤野を訪れる人が増え、移住者も増えました。現在は1万人程の人口のうち、約半数を移住者が占めているというから驚きです。

そして、平成21年(2009年)に、「トランジション・タウン」としての活動をスタート。「トランジション・タウン」とは、2005年にイギリスの町で始まった市民運動で、市民の創意と工夫、そして地域の資源を最大限に活用しながら脱石油型社会へ移行していくための活動を指します。

日本では藤野、神奈川県の葉山、東京都の小金井の3つの町から始まり、現在は全国で50か所以上の町へトランジション・タウン活動が広がっています。

「トランジション藤野」では、「藤野電力」の活動のほか、“できるコト”と“してもらいたいコト”をシェアし住民同士が助け合っていく「地域通貨」の仕組みや、地産の農業から食を考える「お百姓クラブ」、藤野の森を整備し材を活かす方法を模索する「森部」など、住民主体の様々な活動を行っています。

藤野を体感しに出かけよう!

「僕も移住者なんですが、藤野に来て生活がガラッと変わりました。藤野ではとにかく人とのつながりが濃くて、知り合う人の数が圧倒的に多い。藤野電力もみんなで活動している過程が楽しいんです」と小田嶋さん。
▲藤野電力の創設メンバー、小田嶋電哲さん
「藤野電力」をはじめ、「トランジション藤野」の活動に興味を持った方は、ぜひ一度藤野に足を運んでみませんか?

ただし、外から見ているだけではなかなかその実態にはたどり着けないかもしれません。随時開催されているさまざまなイベントに実際に参加し、小田嶋さんをはじめ藤野に住む人々と直接触れ合うことで、はじめて活動の一端に触れることができる気がします。

トランジション藤野を訪れるイベント

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

広告出版社を退職後、世界一周、日本一周を経て「くらしさ」を設立。全国各地のモノ・コト・ヒトを伝え、つないでいく活動に尽力している。全国の仕事人に会いに行ける旅「Life Design Journey」も運営。http://lifedesign-j.com/

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP