希少な国産「線香花火」、筒井時正玩具花火製造所で自分だけの花火を作ろう!

2015.08.31

日本の夏の風物詩である、線香花火。夏の日の夕暮れ、ゆらゆら揺れる火の玉に想いを馳せながら、誰が一番長持ちするか競い合う。なんて思い出を持つ方も多いかもしれません。しかし線香花火の国内での生産者は3社を残すのみ。そんななか、2014年に、福岡県みやま市に線香花火作りが体験できる「花火ギャラリー」が誕生しました。

世界でたった一つの線香花火が作れる場所

福岡市内から車で1時間ほどのみやま市。ブドウ畑の一角にある「筒井時正玩具花火製造所」は、子供向け玩具花火の製造を90年以上行っています。
これまでは一般の人の立ち入りが禁止となっていた花火製造所の敷地内に、三角屋根の建屋が登場。なんとこれ、国内で初となる、室内で花火が楽しめる「花火ギャラリー」なんです!
ここでは和紙に火薬を乗せて手で縒(よ)っていく、線香花火づくりの体験ができます。一見簡単そうにも見えるのですが、繊細さを極める職人技。いざやってみるととっても難しい!売っている線香花火のようにピンとまっすぐにならなかったり、なぜか短く仕上がってしまったり…。
そう簡単には作れませんが、自分が作った線香花火が果たしてちゃんと燃えるのか?をその場ですぐに確認できるのです。黒い壁の部屋の真ん中には水の溜まった大きな水槽。この空間であれば、昼間でも花火の体験が可能です。

線香花火の一生

「火をつけてから線香花火が4つの表情を見せたら成功ですよ!」

そう教えてくれたのは、筒井時正玩具花火製造所の3代目、筒井良太さんです。
短くも、目まぐるしく表情を変え、最後には儚く散りゆく「線香花火」。筒井さん曰く、その趣の変化にはそれぞれ名前が付けられており、さながら人の一生を思わせます。

まず、火を灯してから、まるで命でも宿ったかのように、火の玉がだんだん大きくなる「蕾」。
▲今にも弾けだしそうな「蕾」は、内に秘めた才能を開花し始めた子供のよう
次いでパチッ、パチッと火花が咲き始める「牡丹」。
▲「牡丹」は迷いながらも一歩一歩、歩みを進める青春時代を彷彿とさせます
そして、ついに激しく火花が弾けだす「松葉」へ。
▲明るく優美に輝く「松葉」は、結婚・出産など、自然と幸せな瞬間を想起させてくれます
最期は、菊の花が一枚一枚散っていくように、小さくも美しい火花を咲かす「散り菊」。こうして、線香花火は四変化を経て、短くも儚い一生を終えるのです。
▲「散り菊」は、晩年の静かに過ごす余生を思わせます
ただ、線香花火といえば、火玉が途中で落ちたりしてしまうこともしばしば。こんな風に燃え方が綺麗に変化するのも、稀ですよね。

「四変化できるかどうかが、作り方ひとつで決まるんです。火薬の量は0.08g。多すぎても少なすぎてもダメ。そこに私たちはこだわりを持って、がんばっています」

西と東の線香花火

実は国産線香花火のシェアは市場のわずか0.1%。筒井時正玩具花火製造所では、その貴重な国産線香花火を後世に伝えていくという使命感を持って活動しています。自社の「花火ギャラリー」での体験ワークショップやイベントはもちろん、出張ワークショップなども時々開催しています。

「江戸時代、女性が花火を香炉に立てて楽しんでいる様が“線香”のようだったことから、線香花火と呼ばれるようになったんですよ」
筒井良太さんの奥さん、今日子さんが、弾けんばかりの笑顔で、線香花火の由来を教えてくれました。

ん?香炉に立てる?私が幼い時から慣れ親しんだ線香花火といえば、上述の体験で作るものと同様で、下向きに垂らしながら楽しむもの。とても香炉に立てられるような固さではありません。

そう首をかしげていると、「これが線香花火の原型です」と、今日子さんが見せてくれたのがこれ。
▲関西地方を中心に親しまれてきた「スボ手牡丹」
持ってみると、柄の部分が固い。それもそのはず、ワラで作られたものでした。

「線香花火には2種類のタイプがあるんです。これが“スボ手牡丹”と呼ばれる、関西地方を中心に親しまれてきたもの。一方、カラフルな和紙で縒られた“長手牡丹”と呼ばれるものは、関東地方を中心に親しまれてきたものなんです」
▲関東地方を中心に親しまれてきた「長手牡丹」
米どころが多くワラが豊富だった関西に対し、紙すきの盛んだった関東では、ワラの代用品として和紙が用いられるようになったんだとか。なんと、線香花火にも地域性があったとは!

その「スボ手牡丹」を現在製造するのは、筒井時正玩具花火製造所だけ。一時消滅しそうになった「スボ手牡丹」の製造を、筒井さんが技術継承のために修行して引き継いだのです。
▲斜め上に向けて楽しむ「スボ手牡丹」

他では真似できない、オリジナルの国産花火

「今や花火の原料を作る職人さんも希少で、国産の原料を仕入れるのも至難ですが、他では真似できないオリジナルの花火を作れないかと思って」

そう話す筒井夫妻は、これまでにない“大人の線香花火”も生み出しました。
▲花々(40本/1箱+和蝋燭+ロウソク立て) 10,800円(税込)
草木染めにした地元、八女産の手漉き和紙を用いて淡い花びらを表現したこちらの花火は、桐箱に入っていて、贈答用としても人気を博しているそう。贈りモノとしての線香花火って、今まであるようでなかった代物です。

いつの時代にも私たちを楽しませてくれる線香花火。一度自分で作ってみると、日本の職人の技のスゴさを知ると同時に、一本一本の貴重さを実感せずにはいられません。

世界に一つだけの線香花火を作りに、筒井時正玩具花火製造所の「花火ギャラリー」へ遊びに行ってみてはいかがでしょうか?
長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

広告出版社を退職後、世界一周、日本一周を経て「くらしさ」を設立。全国各地のモノ・コト・ヒトを伝え、つないでいく活動に尽力している。全国の仕事人に会いに行ける旅「Life Design Journey」も運営。http://lifedesign-j.com/

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