可愛いかがり手まりが、自分でも作れる!香川の伝統工芸を旅の思い出に

2017.04.02

色とりどりの糸でかがられた幾何学模様の、華やかで美しいこと!「讃岐かがり手まり」は、香川が讃岐と呼ばれていた昔から、女性たちの手で受け継がれてきました。そんな伝統工芸品が、初心者でも気軽に手作り体験できる教室があるんです。色合わせや模様が選べるのも楽しいもの。自分だけのかわいい手まりを、香川の旅のお土産にしてみませんか?

草木染めの木綿糸を使った「讃岐かがり手まり」は、優しい色合いが魅力

美しい模様が織り成す球体の美は、まるで万華鏡のよう。ひと針ひと針、丁寧にかがられた細やかなモチーフや優美なグラデーションに、うっとり魅入られてしまいます。

手まりが生まれたのは、平安時代の宮中。お姫様の玩具としてつくられていたものが、時代が下るにつれて庶民にも広まり、女の子たちは数え唄をくちずさみながら遊んでいたといいます。昔は讃岐国(さぬきのくに)と呼ばれていた香川県では、名産品である木綿の糸を使って手まりがつくられてきました。
▲幾何学模様のバリエーションは多種多様。右は「つるばら」、左は「野菊」

ゴムまりの普及で次第に忘れ去られていった手まりを復活させ、現代に伝えているのが「讃岐かがり手まり保存会」。現在は、高松市を拠点にして、代表の荒木永子(あらきえいこ)さんを始めとする保存会の皆さんが手まりづくりを行い、活動の一環として教室やワークショップを開催しています。

旅行者でも気軽に参加できる体験教室は、事前に予約すればOK。基本は2名以上ですが、月に一回程度、ひとりでも参加できるプログラムが用意されています。所要時間は約2時間30分で、料金はひとり5,400円(税込)です。
▲高松駅から徒歩5分ほどの場所にある「讃岐かがり手まり保存会」。シルバーのシンプルな外観が目印です

保存会の中に入ると、ずらりと並ぶ糸の陳列棚に圧倒されます。「150~200色はありますね。糸の染色もこの工房内でしているんですよ」と語るのは、保存会の鳥居加奈子(とりいかなこ)さん。
▲壁一面に並ぶ糸の陳列棚。「黄色は刈安(かりやす)という草で染めることが多いですね」と鳥居さん

日本各地に手まりは伝わっていますが、讃岐かがり手まりの特徴は大きく分けて4つあり、保存会で大切に守られています。

まず、讃岐三白のひとつだった、木綿の糸を使うこと。現在は既製の糸を使っていますが、将来的には讃岐の木綿を復活させて使えたらうれしい、とのことです。
▲素朴な木綿糸は、ほのかな光沢とふくよかな質感が魅力。染め終わった糸の束は、後で規定の長さに切り分けられます

2つめは、昔ながらの草木を使って染めること。天然染料ならではの優しい色とマットな風合いは、化学染料では得られない味わいです。重ね染めすることで、濃淡の豊かなバリエーションを作っているそう。
▲草木染めの材料の一例。栗のイガはベージュに、ざくろの皮は黄色や緑に、茜(あかね)は赤に染まります

3つめは、籾殻(もみがら)を薄手の紙で包んで、手まりの芯にしていること。稲作の盛んな日本らしい素材で、地元の農家の方から分けて頂いているそうです。
▲作り手さんが籾殻を包んでいるところ。作る手まりの大きさによって、籾殻の量を調整します
▲薄紙の上から細い木綿糸をぐるぐる巻いて、土台を作っているところ。まんまるな形にするのは、経験と勘が必要だそう

4つめは、ひとつひとつ、手で丁寧に模様をかがること。さまざまなかがりの技法でつくる模様は、100種類以上に及びますが、作る人の個性や色合わせの感性によって、同じ柄でもまったく印象が変わるのだそうです。

「まずは基本の模様かがりを、ぜひ体験してみてください」と鳥居さん。
▲土台の上には、最初に、模様をつくる案内線となる「地割り線」をかがります。模様によって様々な分割の仕方があります

手作り体験は、模様と色選びからスタート

では、いよいよ体験教室の始まりです。初心者向けの3つの模様から選ぶことができるとのこと。今回はいちばん難易度の低い「やさしい菊かがり」を選びました。8枚の花びらから成る「菊かがり」は、多くの模様の基本となる技法なのだそうです。
▲「やさしい菊かがり」の完成パターンいろいろ。土台の色やかがり糸の配色次第で、印象ががらりと変わります

教えてくれたのは、講師の溝渕友恵(みぞぶちともえ)さん。手芸には自信がないと伝えたところ、「大丈夫です!間違ってもやり直しが簡単にできますし、模様が完成していく過程は楽しいですよ」との優しい言葉にホッとしました。

最初に土台と糸の色を選びます。土台だけでも10色以上、かがり糸は陳列棚に並ぶ100種類以上の中から、好きな色を6色選んでいいと言われ、選択肢の多さにびっくり。土台と糸をあれこれ合わせながら、かなり悩みました。
▲色とりどりの土台。既に地割り線がかがられていて、この状態でも既に可愛い!

迷った末に、薄いイエローの土台と、グリーン系、珊瑚色系のグラデーションの糸をチョイス。どんな仕上がりになるのか、始める前からドキドキします。
▲体験教室で使うキット。土台、木綿糸、待ち針のほか、定規代わりの紙テープや詳しいテキストも揃っています

「まずは“赤道”に帯の模様をかがります」と溝渕さん。まりを地球に例えて、赤道、北極、南極というふうに位置を表すのがユニークです。

長くて太いふとん針にかがり糸を2本通し、針をまりに突き刺してから赤道付近に出します。そこから糸をぐるぐる帯状に巻いていきます。針を刺すと、中の籾殻に当たってサクッといい音!
▲左手で糸を押さえて、2本の糸が並行に隙間なく、かつねじれないように巻きます
▲赤道の地割り線に揃うように、北極側、南極側それぞれ3周ずつ巻いて帯の完成

次は、菊模様の位置決めの準備です。テキストでは紙テープを使う方法が紹介されていますが、体験教室では、さらに分かりやすいよう、あらかじめ線のついた紙が用意されています。この線に沿って、まりに印をつけていきます。
北極の中心に待ち針で紙を刺し、コンパスのように回転させながら、線の場所に当たる地割り線に、ボールペンで印をつけていきます。

その後、印の場所に待ち針を打って、菊模様の目印にします。ふとん針に糸を通し、待ち針の位置に針を入れて、ジグザグに花びらをかがっていくのですが、終始、玉結びはしません。

「万が一間違えても、糸を切ることなくすっと抜けるので、簡単にやり直しできるんです」とは、うれしい工夫です。
▲花びらをかがっている途中。テキストでも、プロセスやコツが詳しく説明されています

途中で色を変えて、少しずつ薄い色にしてグラデーションを作っていきます。2本どりでかがっていくのですが、難しかったのは、2本の糸をもつれさせないようにすること。糸がきれいに揃って並んでいかないと、美しい面にならないのです。

また、花びらの角に当たる部分は、ほんの少しだけ針を通すのですが、思い通りの場所に針の先端が出せなくて苦労しました。とはいえ、最初に言われた通り、徐々に模様ができていくのが楽しくなってきて、気が付けば無心の極地でした。
▲テキストのように、花びらの縁の部分を、ほんの少しだけ針を通してかがるのは、最初はなかなか難しいもの
▲花びらの途中まで進んだところ。この後、緑色の帯の辺りまで、徐々に薄い色の糸で花びらを伸ばしていく予定

体験教室に割り当てられた時間は2時間30分ですが、ここまでで既に2時間経過。「早い方でも、できるのは半分くらい。花びらの部分は基本的に同じパターンの繰り返しなので、残りは頑張って家で完成させてくださいね」と溝渕さん。

残りの時間で教えてもらったのは、帯留め模様である「千鳥かがり」。最初に巻いた帯の部分を、ジグザグに糸を通してかがっていきます。
▲ジグザグ模様の千鳥かがり。帯と糸の色を変えると、ラインが引き立ちます
▲やさしく丁寧に教えてくれた講師の溝渕さん。正確で鮮やかな手さばきはさすがです
▲本日の成果。溝渕さんの手まり(左)に比べ、筆者(右)のは、花びら部分の糸が重なりすぎてしまいました

糸をもつれさせず、きれいに揃えることを念頭に置いて、家に帰ってからさっそく続きを開始。またもや無心になること3時間余り、ついにマイ手まりが完成しました!
▲完成間近の行程。メシベにあたる模様をかがっているところ
▲インスタ映えしそうな仕上がりに、「可愛いすぎる!」と思わず自画自賛です

自宅で手掛けた反対側の面は、糸の線もきれいに揃って、グラデーションもいい感じ。「一度体験したら、ハマってしまう方も多いんですよ」と保存会のお二人も言っていたように、次は他の模様にもチャレンジしてみたい!という意欲が湧いてきました。

アートのような作品や、暮らしに馴染む品々も

保存会には、まるでアートのようにフォトジェニックな手まり作品がたくさん展示されています。菊を始め、薔薇や山茶花(さざんか)、星や蝶々など、昔ながらの伝統柄から新たな感覚を盛りこんだものまで、多種多彩。手まり文化の奥深さを実感させられます。
▲左手前から時計回りに、「つるばら」16,200円、「東ちぢみに小花」19,440円、「コットンフラワー」37,800円(すべて税込)
▲左手前から時計回りに、「十二菊」32,400円、「野菊」12,960円、「鹿の子」30,240円(すべて税込)
▲手前の「巻き麻の葉」を始め、色も模様も無限大です

また、ストラップや香手まりなど、現代の暮らしに馴染む手まり商品も魅力。「手まりストラップ」は、小さいだけに熟練のかがりの技が必要だそう。土台手まりに雅な香りをしのばせた「にほひ手まり」は、美しい色のグラデーションを各種揃えたくなります。
▲多彩な模様の手まりストラップ。手前は「三角ぼたん菊」2,916円、奥のふたつは「菊かがり」各2,160円(すべて税込)
▲桐箱入りの「にほひ手まり」。手前は「茜」、奥は「藍」各3,780円(ともに税込)

今回、実際に手を動かしてみることで、「受け継がれてきた美しい手仕事を、暮らしの中で愛でる」という、讃岐かがり手まりのエッセンスの一端を感じられた気がします。多少いびつなところもありますが、マイ手まりは可愛らしさもひとしお!手のひらに載せて愛でたくなる、大切な宝物になりました。香川の旅の思い出に、ぜひ自分だけの手まり作りを体験してみてください。
puffin

puffin

東京でのライター生活を経て、現在は縁あって香川県在住。四国のおおらかな魅力と豊かな食文化に触発される日々。取材で出会うモノ・コトの根幹に流れる、人々の思いを伝えたいと願っている。

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