美味しくて面白い!「米」がテーマのレトロ街道巡り「米米惣門ツアー」

2017.05.07 更新

熊本県の北部にある山鹿市の「豊前(ぶぜん)街道」には、昔ながらのレトロな街並みが残されています。中でも米の流通拠点でもあった「惣門(そうもん)エリア」では、地元の商店主さん達がガイドとなって「米」をテーマに街を巡る「米米惣門(こめこめそうもん)ツアー」が人気です。その魅力を探るべく、体験してきました!

江戸時代の賑わいを今に残す「惣門エリア」を巡るツアー

熊本県熊本市(肥後)から福岡県小倉市(豊前)をつなぎ、参勤交代路としても使われた「豊前街道」。その宿場町だった山鹿市には、今でも街道沿いに当時の趣が残されています。また、熊本県北部を流れる菊池川一帯は熊本でも有数の米処。山鹿市はその流通拠点としても栄えました。街道沿いには米問屋などの商店が立ち並び、その内の数軒は今でも営業を続けています。
▲江戸時代からそのまま残る蔵も
▲タイムトリップしたようなレトロな街並みにうっとり

「米米惣門ツアー」は、そんな歴史と趣ある街並みを、「米」をテーマに巡るツアー(所要約60分、税込600円)。愉快なガイドさんが次々に登場し、軽妙なトークで楽しませてくれます。ちなみに、ツアー名にある「惣門」とは、当時、街道から町に入るために菊池川に架かっていた橋の手前にあった門のこと。治安維持のために、夜間は門を閉じて橋からの往来を制限していたそうです。
▲復元された「惣門」。このすぐ正面には雄大な菊池川が広がっています

米麹専門店「木屋本店」で、昔ながらの長屋を奥の奥まで探検!

ツアーの申し込みは、前日17時までに「山鹿温泉観光協会」へ電話を。時間予約制で申し込めます。

スタート地点は、甘酒や味噌、麹などを製造販売する、創業約185年の老舗麹専門店「木屋本店」。こちらで受付を行い、ツアーがはじまります!最初のガイドは、こちらの9代目店主の井口裕二さん。まずはお店の奥へと誘われます。
▲趣深い看板が目印の「木屋本店」。今は珍しい、昔のままの長屋造りです
▲うなぎの寝床のように細長い長屋を奥の方まで探検!

お店の奥にある蔵を活用した広間で、まずはツアーの概要と街道の歴史の説明を受けます。趣ある空間に、期待度は十分!井口さんの楽しい語りで、山鹿や豊前街道の歴史がスルスルと頭に入ってきます。
▲団体客も十分に入れる広さ。麹菌の香りが漂う空間です
▲昭和レトロな古い配電盤もいい感じ!
▲江戸時代の菊池川流域を写した写真を手に、楽しく解説してくれる井口さん

続いて、「木屋本店」で造られる麹のお話です。米処として知られる菊池川流域のお米を使い、職人によって昔から変わらない製法で手造りされています。天気や気温、そして菌と向き合いながら、手間暇掛ける丁寧な麹造りは、機械による大量生産ではかなわない品質をもたらします。この麹を元に、甘酒や味噌・塩麹などが造られています。
話を聞けば聞くほど、奥が深い…!
▲これが完成した麹。雪のように真っ白!発酵させることで、お米よりもはるかにたくさんの栄養成分が生まれるそう
▲昭和初期から使い続けている「石室(いしむろ)」の中も見学。この扉の奥で麹を発酵させています
▲長屋の中には、懐かしい大正・昭和レトロな雑貨の展示も。「木屋本店」の歴史を感じられます

麹のことが分かってきたところで試飲タイム!「木屋本店」自慢の甘酒をいただきます。
▲老舗の雰囲気溢れる店頭で、手造り甘酒の試飲です
▲「木屋本店」の甘酒は、お米しか入っていないのに、砂糖を入れたかのような豊かな甘みが自慢。もちろん手造り、無添加です

最近は「飲む美容液」「飲む点滴」として、健康や美容への効能もうたわれている甘酒。「飲むと、もっと美人になれるかも!」との井口さんのススメに、試飲をおかわりしちゃいました。
▲お湯か水で溶かすだけで、甘~い甘酒が飲める濃縮タイプの「火の国 甘酒」(税込430円)も購入できる。手造りの味を手軽に家庭で
▲他にも、味噌や塩麹、醤油麹など、さまざまな麹製品が並びます

甘酒がこんなにおいしい飲み物だったなんて、新発見です。他にも、アイスクリームにしたり、ヨーグルトにかけたりと、甘酒のいろんな楽しみ方を教えてもらいました。商品を買う時間もあるので、試飲で気に入った「火の国 甘酒」をゲット!お家で飲むのが楽しみです。

さあ、井口さんが次のお店まで連れて行ってくれます。次はどんな「お米」スポットでしょうか…!

「千代の園酒造」で米処の純米酒の魅力に迫る!

続いて訪れたのは、明治29(1896)年創業の酒造メーカー「千代の園(ちよのその)酒造」。全国でもいち早く純米酒の製造を始めた老舗の蔵元です。こちらの「酒造り史料館」を見学します。
▲歴史の深さを感じさせるレトロな外観が印象的な社屋。このお向かいにある史料館を見学します
▲2人目のガイドさんは、「千代の園酒造」の永田美沙さん。とにかく博識です!

敷地内に入ると、まず目に入ってきたのが背丈よりも大きな大釜と桶。現在では
酒造りに使うお米はボイラーで蒸していますが、以前はこのような大きな釜を使って蒸していたのだそうです。
▲一升瓶2,000本分の日本酒を醸造していた、大きな桶!

史料館側の敷地は、「木屋本店」と同じように奥に深い長屋式の造り。その敷地を奥に進んだら、古い蔵を活用した史料館が見えて来ました。こちらには、「千代の園酒造」で実際に使われていた昔ながらの道具や資料、歴代の酒瓶やラベルなどが展示されています。
▲長屋の奥にある蔵が、「酒造り史料館」です

館内に展示されているのは、機械化される前の酒造で工夫して作られた道具ばかり。一つ一つの使い方を知るだけでも、先人の知恵の素晴らしさに驚かされます。
▲こちらは「阿弥陀車」というもので、重いものを手動で持ち上げるための道具。なんと、90kgの岩を持ち上げています!
▲古いレジスターや計算機の展示も。アンティーク好きにはたまりません
▲一升瓶の十倍の「一斗瓶」。大きい!ただしこちらはディスプレイ用で、実際にお酒を入れることはなかったそうです
▲昔から変わらない「千代の園」のロゴマークにも、味わいがあります

「千代の園酒造」の歴史を満喫したら、お楽しみの試飲タイムです!様々な日本酒を飲み比べできます。それぞれ風味が異なる日本酒の味わいに、ついつい杯が進みます…!
▲コク深くて香り高い「熊本神力(くまもとしんりき)」をチョイス。1種ずつ説明書が付いているので、吟味しながら試飲しましょう!

売店には商品の展示販売もあるので、試飲で気に入った1本を見つけたら、購入するのもオススメです。プレミアムな1本から、女性に人気のリキュール酒や梅酒まで、バラエティも豊かですよ。
▲こちらは永田さんオススメの「桜ほのか」(税込324円・180ml)。さくらんぼ果汁と温泉水入りのリキュール!
▲毎年12月から、季節限定で新酒や原酒の販売も。売り切れ御免の人気商品です

街道沿いにある「光専寺」と「お米」との意外なつながり

さて、ほろ酔いさましついでに、街道を200m程歩いたところにある「光専寺」へ向かいます。昔のままの長屋を活かした建物が並ぶ景色は、とってもフォトジェニック。それにしても、なぜ「米」のツアーなのに寺に行くのでしょう…?疑問に思いながら永田さんについていきます。
▲レトロな景観を保つために電柱はなく、電線などは地下に埋められています
▲文具店や鮮魚店など、様々なお店が昔ながらの古民家を活用しています。瓦は昔のままのものも!

立派な楼門が目を引く「光専寺」に到着!この門が造られたのは約400年前。加藤清正公が熊本城を築城した際、その余りの木材で造られたのだそうです。当時の熊本城は西南戦争などで2度焼け落ちているので、当時のままの姿を残すこちらの門は貴重な建造物となっています。
▲細やかな意匠も魅力的な、大きな楼門。400年以上、ここに建ち続けています
▲隠し扉のように現れた階段。実は楼門の2階には鐘があり、今も毎日住職さんが突いています

ところで、このお寺も「お米」と深い関わりがあるとか。永田さんによると、江戸中期、山鹿一の米問屋さんが米で成した財を地域に還元するために、自ら京都まで出向いてお経3,000冊を持ち帰り、このお寺に寄進したそうです。大金を担いで20日かけて京都まで赴き、お経を受け取り帰ってきたそうですが、その際の領収書が今もお寺に残っています。お経は敷地内の蔵に納められ、地域の人々の心の拠り所となったのだそうです(現在はお御堂に納められています)。
▲当時、お経が納められていた蔵も残っています
▲歴史豊かなお寺の雰囲気は、不思議と居心地の良い空間です
▲職人さんの技術が光る木彫りや建物の意匠を、写真に収めました

3秒で焼けちゃう!「せんべい工房」で米せんべい焼きに挑戦

ツアーの最後に訪れたのは、「せんべい工房」です。熊本県産のお米を使って、せんべいを1枚1枚手焼きしている工房です。こちらで、なんとせんべい焼きの体験ができるとのこと!上手に焼けるでしょうか…?
▲レトロな店構えのせんべい屋さん。ガラス越しに、せんべいが焼かれる様子を見ることもできます
▲こちらのガイドは、「せんべい工房」代表の阪梨(さかなし)文夫さん。とっても語りが愉快な名物ガイドさんです

米せんべいは、山鹿はもちろん熊本で昔から作られてきたお菓子。生米を金型に入れ、熱しながら圧力を掛けて膨らませ、固めたもので、米処・山鹿産のお米を美味しく楽しめるヘルシーなお菓子として人気です。原理はポン菓子と同じ。空気をたくさん含んでフワフワ、サクサクな食感が特徴です。
▲一般的な茶色いせんべいとはまったく違って、お米の粒が見えます。試食させていただくと、軽い食感でサクサクおいしい!薄い塩味で自然なお米の甘さが引き立ちます

さあ、早速体験です。まずは阪梨さんがお手本を見せてくれます。「こう入れて、こう回して、こう!」とあっという間に1枚焼き上がりました。目にも留まらぬ速さ!イマイチどのように焼いたのか分からなかったのですが、「やってみれば分かりますよ!」と阪梨さん。せんべい焼きに挑戦です!
▲「ぎゅっぎゅとして、ほらできた~」と軽快に教えてくれる阪梨さん。テンポ良い語り口が面白い!
▲まずは金型に材料となるお米を入れます。今回は黒米入りのせんべいに挑戦
▲フタをかぶせて、機械の中に入れます。ドキドキ…
▲すぐに上のレバーを回します。その時間、わずか3秒!ポン菓子のような要領で、あっという間にお米がせんべいに
▲焼けた!色も形も上手に焼けました~!

材料はお米だけの、シンプルな製法。素朴なお米の風味が光るおいしさは、なんだかやみつきになります。体にも優しいお菓子なので、子どもや年配の方にも人気なのだそうです。
▲上手に焼き上がりました! サクサク、フワフワ!

ちなみに阪梨さんによると、この「米せんべい」は戦後のお米が貴重だった時代、お米を少しでも集め、膨らませて楽しむお菓子として広まったといわれています。全国的には一度に大量生産できるポン菓子が流行しましたが、熊本では何故か、手間のかかる「米せんべい」の方が根付いたのだそうです。
▲自分で焼いたせんべいは、その場で焼きたてを食べてもいいし、パックに詰めてお土産に持って帰ることもできます。食べるのがもったいない…!

阪梨さんは、実は化粧品店の4代目でもあります。アレルギー持ちだった息子さんが食べられるお菓子を探していたとき、昔よく食べていた「米せんべい」を思い出したそう。そして「このせんべいで手に職を付けよう」と思い立ち、平成6(1994)年にこの「せんべい工房」を開いたのだそうです。今では、1日1,000枚以上を手焼きしているそう!
店内では、そんな阪梨さんが毎日愛情込めて手焼きしている米せんべいの販売も。塩味、えび味、梅しそ味、カレー味など10種類(税込各215円・20g[約10枚]入り)がそろいます。さらに、塩分少なめで体に優しい有機米の無添加せんべいも(5種類・税込各215円・20g[約10枚]入り)。気になるものを食べ比べするのもよいかも。
▲阪梨さんとの記念撮影もパチリ。阪梨さんの軽妙なトークで、あっという間の体験でした!

江戸や明治時代の浪漫を感じながら、豊前街道の歴史やお米のおいしさなどを楽しく学べた、約60分のツアー。これほどに昔のままの景色が残る場所は、奇跡のようにも思えます。そして、何よりもガイドさん達の粋な案内がとっても楽しめました。
歴史好きな人はもちろん、レトロ好き、写真好き、そして美容や健康・食へのこだわりがある人…、いろんな志向の人におすすめしたい、レトロ体験ツアーです!
中川千代美

中川千代美

長崎生まれ、熊本在住。地方出版社に勤めたのち、「チヨミ編集事務所」として独立。地域の子育て情報誌や生活情報紙をはじめ、幅広いジャンルの編集・ライティング・企画を手がける。食欲・物欲・お出かけ欲・温泉欲・ビール欲が赴くままに熊本・九州を駆け回る日々。趣味は二胡。(編集/株式会社くらしさ)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP