青森を代表するアートスポット「青森県立美術館」で、この土地にしかない芸術体験

2017.05.06 更新

誰にも邪魔されずゆっくりとアートに触れたり、時間を忘れてのんびりと過ごしたりしたいと思うことはありませんか?そんな人におすすめなのが、展示作品はもちろん、美術館そのものをアートとして楽しめるとウワサの「青森県立美術館」です。県立美術館ながらも全国的に人気が高く、一般的な県立美術館とはちょっと違う魅力があると聞き、さっそく行ってみました。

▲「Miss Forest / 森の子」 (c) Yoshitomo Nara

県外からも多くの人が訪れる県立美術館

青森県立美術館へのアクセスは、JR新青森駅からシャトルバス「ねぶたん号」を使って約10分。青森空港や青森市街からでも車で約20分という立地です。全国に美術館はたくさんありますが、2006(平成18)年に開館したこちらは「十和田市現代美術館」と並んで青森の2大アートスポットと言われるほど人気の施設。全国から訪れる観光客も多く、青森県出身で現代美術家の奈良美智(ならよしとも)の常設展示もあります。
▲白を基調とした外観の青森県立美術館。建築家・青木淳による設計

まずは縄文遺跡から着想を得た建物に注目しよう

さまざまな見どころが多い青森県立美術館ですが、まずはその建物に注目してみましょう。こちらの美術館は日本最大級の縄文集落跡と言われる「三内丸山遺跡」に隣接し、建物自体が縄文遺跡の発掘現場から着想を得て作られました。
▲美術館に隣接する三内丸山遺跡

発掘現場にあるトレンチ(掘り出す場所を設定する区画のこと)のように地面が幾何学的に切り込まれ、その上に白い凸凹の構造体が覆いかぶさっているというコンセプトで建てられたのです。
▲床の土色部分は三内丸山遺跡の土を、白い部分は現代を象徴している

凸凹の構造体は手積みした白いレンガで作られ、その数は約43万個!場所によっては地面と白いレンガの塊の間に隙間があり、トレンチの上に「覆いかぶさった」という設定に、細部までこだわっていることに気づきます。
▲白いレンガの塊が上から覆いかぶさり、地面との隙間(トレンチ)を表現している

不思議で独特な空間、その理由は?

青森県立美術館の建物そのものが楽しめる理由は、館内にある文字のフォントやピクトグラム(案内サイン)のデザインがすべてオリジナルという点にもあります。縦と横、そして斜め45度の直線だけで構成された文字のフォントは、この美術館でしか見ることができません。
▲案内図のフォントやピクトグラムはすべて美術館のオリジナル。デザインしたのはアートディレクターの菊地敦己
▲立てかけてあった時計の文字にもオリジナルフォントを使用!

また、ロッカールームやトイレなども含め、館内はすべて白で統一されています。ロッカーもすべてオリジナルで設計・施工されており、ロッカールームをこっそり写真に収める人も多いとか。(館内は基本的に撮影NGです)
▲ロッカールームは館内に3カ所用意されている

そして、見逃せないのは、夜に点灯する外壁のネオンサインです。閉館間近(季節によって閉館時間は異なります)になると点灯し、閉館後30分間だけ点灯します。「木」と青森の頭文字「A」をモチーフにした大きさ30cmほどの美術館のシンボルマーク222個が、白い外壁に輝く光景はまさに幻想的。なんとも言えない色合いをいつまでも眺めていたい、そんな心地にさせられます。
▲ネオンサインは全6カ所。それぞれ6つある館内入口の場所を教える役目も果たしている
▲うっとりと長く見ていたい

青森出身の現代芸術家や世界最大級の作品群

それではいよいよ館内へ。建物は地上2階、地下2階の4階建てで、そのうち展示フロアは地下1階、地下2階になります。エントランスで観覧料を払った後、まずはエスカレーターで地下2階に降りることになります。そこで最初に現れるのが、20m四方の立方体の広さがあるアレコホールです。
▲4階分の吹き抜けがあるアレコホール

ここは常設展示室となり、20世紀を代表する画家マルク・シャガールが描いたバレエ「アレコ」の背景画4作品のうちの3作品が展示されています(上写真は展示前)。作品の大きさは1枚あたり縦9m、横15m。「アレコ」を展示するために作られたというこの展示室は世界でもかなり巨大で貴重な空間です。

しかも、2017年4月25日から、アメリカ・フィラデルフィア美術館に収蔵されていた残り1作品が展示される予定で、期間限定(2021年3月頃まで)で全4作品が集まります。この4作品が同時に展示されるのは、2006(平成18)年に青森県立美術館が開館した時以来のこと。3作品だけでも圧巻でしたが、全作品が見られるまたとないチャンスですね。
▲奈良美智の展示室 (c) Yoshitomo Nara

次に鑑賞するのは、青森県出身で現代美術家の奈良美智の展示室です。絵画を中心に常時30点以上の作品を展示。睨みつけるような目つきだけど、どこか愛らしい奈良作品をいつでもここでは楽しめます。
▲ガラス窓越しに見る「あおもり犬」 (c) Yoshitomo Nara

そして、この美術館を象徴する作品が「あおもり犬」です。ここは館内で唯一写真を撮ることもできます。奈良美智が制作した立体作品で、高さは8.5m。三内丸山遺跡の地中から出てきた犬を表現していて、屋外のスペースに展示されています。
▲地元の幼稚園児たちにも人気者の「あおもり犬」 (c) Yoshitomo Nara

積雪していない季節には、連絡通路(降雪期間閉鎖)を通じて「あおもり犬」の目の前まで行くこともできます。遠くから眺めているだけでも癒される「あおもり犬」を、ぜひ近くで体感してください。
▲常設エリアの棟方志功展示室

また、青森県出身で20世紀を代表する「板画家(はんがか)」棟方志功(むなかたしこう)の常設展示も外せません。棟方志功は木版画(板画)だけでなく、実は油絵や「倭画(やまとが)」と呼ばれる肉筆画も残しています。青森県立美術館ではそんな棟方作品20点以上を展示しています。

奈良美智の新作のブロンズ像が登場!

そして、最後に鑑賞するのは奈良美智の新作「Miss Forest / 森の子」。2016年12月に青森県立美術館10周年を記念して作られた、高さ6mを超えるブロンズ像で、「あおもり犬」に続く新たな注目作です。
▲「Miss Forest / 森の子」。取材時は雪が周りに積もっていた (c) Yoshitomo Nara

「森の子」は美術館南側に位置する「八角堂」で常設展示。この八角堂は名前の通り八角形のお堂のような建物で、以前は入口を除く7面を使って奈良美智の絵画を6点展示していました。ここも「あおもり犬」の展示スペースと同じく屋根のない空間であるため、季節や天候、時間によって作品の見え方が違います。
▲外から見ると「八角堂」から「森の子」の頭が飛び出ている

なお、八角堂は通年、美術館の開館時間に合わせて、なんと無料で観覧が可能なんです!四季ごとに比較して鑑賞するとおもしろいかもしれませんね。

美術鑑賞の後はおみやげやスイーツを満喫

作品を鑑賞した後は、館内にあるショップやカフェで、まだまだアートを堪能しましょう。まずは、オリジナルグッズや関連書籍などを揃えているミュージアムショップへ。ちなみにショップとカフェは東棟1・2階にあり、展示棟とは独立してあるため直接入ることもできます。
▲1階東棟にあるミュージアムショップ。展示スペースとはエントランスが違うため無料でも入ることができる

オリジナルグッズの中には奈良作品のぬいぐるみや缶バッジなどの関連商品があり、ここでしか買うことができません。青森のおみやげとしてもおすすめですよ。
▲美術館のシンボルマークの入った関連商品も

そして、アートの余韻に浸りながら心ゆくまでリラックスできるのがカフェ「4匹の猫」。ミュージアムショップに隣接するこのカフェは、青森県産にこだわった食事やスイーツのほか、企画展や催し物にあわせた期間限定メニューなども取り揃えています。
▲カフェ「4匹の猫」の落ち着いた店内。窓の外には八角堂を見ることができる
▲1つの絵本となっているメニュー表

なかでも人気メニューは、青森県産のリンゴとカスタードクリームが入ったアップルパイ。パイ生地には猫のモチーフがくり抜かれています。カスタードクリームのほどよい甘さとパイのサクサク食感が、コーヒーとの相性抜群。館内を歩き回った疲れがあっという間に吹き飛びます。
▲猫型がポイントのアップルパイ(税込580円)

ほかにもあった美術館の魅力

常設展だけでも時間を忘れて回ってしまいますが、そのほかにも青森県立美術館には無料で楽しめるコミュニティホールや図書室、映像作品や演劇の上演などが行えるシアター(有料)があり、1日いても飽きずに時間を過ごすことができます。
▲無料の休憩所としても使える吹き抜けのコミュニティホール
▲企画展などに合わせてラインアップも変えるという図書室

また、地元で活動するアーティストたちの発表の場として使われるコミュニティギャラリーもあり、新しいアートに出合うきっかけになりそう。思いも寄らない発見ができそうです。

青森というと、ねぶたや自然を連想してしまいますが、青森県立美術館のように現代アートに触れられるおしゃれなスポットがたくさんあります。アートや芸術がわからなくても、なんとなく落ち着いた気持ちになれるのも青森県立美術館の魅力のひとつ。約5000年前の縄文時代から人が住んでいたというこの地で、現代アートを味わうという独特の体験をしてみませんか。
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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