千葉の人気ご当地ラーメン「勝浦タンタンメン」に新たな潮流あり!その進化と伝統の味を追う

2017.05.09

千葉県勝浦市のまちおこし団体「熱血!!勝浦タンタンメン船団」が、2015年にまちおこしの祭典「B-1グランプリin十和田」でゴールドグランプリの栄誉に輝き、一躍その名を全国に知らしめたご当地ラーメン「勝浦タンタンメン」。醤油ベースにラー油をふんだんに注ぎいれた、地域独自のローカルフードに今、新たな潮流が生まれつつあると聞きます。今回はその味を確かめるべく、勝浦市を訪れました。

▲真っ赤にたぎるビジュアルと味が特徴の勝浦タンタンメン(写真提供:熱血!!タンタンメン船団)

勝浦タンタンメンに新たなウェーブ!
進化する「勝タン」をいただくべく勝浦へ

勝浦タンタンメンは、1954(昭和29)年に開店した中華食堂「江ざわ食堂」(現在の「江ざわ」)で考案されました。通常のゴマベースの「担担麺」と違い、醤油ベースのタレに鶏ガラスープが基本。これに大量のラー油と唐辛子で炒めたたまねぎとひき肉が乗ります。

勝浦タンタンメンが全国区となった近年、全国からおしかける勝浦タンタンメン略して「勝タン」ファンに応えるべく、ラーメン店以外の店も勝浦タンタンメンを手がけるようになりました。
▲パスタ麺を使用した「勝浦タンタンパスタ」(写真撮影:Banzai Cafe)

とはいえ勝浦タンタンメンを名乗れるのは、B-1グランプリでゴールドを受賞した「熱血!!勝浦タンタンメン船団」の認定店だけ。船団は各店を回り、味の確認や辛さの評価を店に判断してもらったうえで、一覧化したMAPを頒布しています。

船団の方に伺うと、カフェ、洋食店、居酒屋、割烹などなど…勝タンに新たな展開と進化をもたらす波がやって来つつあるとのこと。言わずと知れた有名店の安定した味もよいけれど、勝タンに押し寄せるニューウェーブ、見過ごすわけにはいきません。

名物焼ハマグリなど勝浦の海鮮グルメとともに、まったり楽しむ!「お食事処 樹樹」

▲海辺の素朴な三角屋根の「樹樹」。「ハマグリ」ののぼりにそそられます

まずは勝浦市内を外れ、海沿いを鴨川方面へ。串浜の海岸沿いに店を構える「お食事処 樹樹(じゅじゅ)」です。こちらは、メインは海鮮焼きとお好み焼きの鉄板焼きの店。家族で経営している地元密着の親しみやすいお店です。

新鮮な海産物が豊富な勝浦の、ある意味このあたりでは「普通の」定食屋さんも、「勝タン」ブームの一翼を担って店オリジナルの勝浦タンタンメンを提供するようになっています。まさに勝タンウェーブで町を上げ潮に、という勝浦っ子の気概を感じさせます。

吹き抜けの店内は、海側は座敷席で、店の真ん中に大きな鉄板とカウンター席が設置されています。
▲各テーブルにも鉄板が。店内は海鮮の香ばしい香り

お店の特徴はなんといっても魚介と一緒に勝浦タンタンメンを楽しめるところ。「勝浦タンタンメン」(780円)のほか、「タンタンつけメン」(830円)「チャーシュータンタンつけメン」(1,130円)も。近くの大学に通う学生さんの行き着けになっているそうで、学生さんの要望から、つけメンを提供するようになったのだとか。そちらも気になりますが、今回はスタンダードな「勝浦タンタンメン」を注文。

店の端にはいけすのスペースがあり、サザエやイセエビ(千葉では房州エビとも言います)、そして大きなハマグリ。これは、勝タンだけではなく、海鮮もいただかないと気がすみません。一押しの焼ハマグリ(九十九里産・630円~)をオーダーしてみました。※価格はすべて税込
▲ハマグリは「そっちの大きいの」と選ぶこともできます

「樹樹」の勝タンは、昔ながらの鶏ガラ醤油ベース。具材は定番のひき肉とたまねぎに加えてニラと白髪ネギが乗っています。たまねぎは甘くなるまでじっくりと火を通しているそうで、その甘みが辛いラー油を和らげ、食べやすい一杯に仕上げてくれています。

これをジューシーなハマグリと一緒に頬張れば、口の中でスープと潮の香の見事なコラボレーションが生まれます。海辺の町は数あれど、新鮮な魚介類と勝浦タンタンメンがともに味わえる店があるなんて、まさに勝浦ならではの贅沢でしょう。
▲勝浦タンタンメン。鶏ガラに魚介ベース。名物焼ハマグリと一緒にいただきます

メニューには一番人気の贅沢な海鮮丼、勝浦漁港であがったその日のおすすめの魚や、和田浦であがった鯨も。さすがは魚どころ勝浦、と思わせます。
▲「樹樹」ならではの勝タンは学生さんにも人気

若女将の軽込(かるこみ)さんは、「熱血!!勝浦タンタンメン船団」にも参加して活躍しているそうで、「部活みたいで楽しいですよ」と笑います。船団の仲間も訪れるので、地元の人たちとわいわいやれそうな楽しい店です。
▲「勝タンだけではなく、美味しい外房の魚介もいっぱいですよ!」と若女将の軽込さん

カツオどころ・勝浦の鰹節工場からスピンオフ!勝浦名物がドッキングした「のみ処 佐良屋」

さて、海岸から勝浦の市街地に戻り、商店街を毎年ひな祭りの頃にニュースになる「勝浦ビッグひな祭り」のメインスポットとなる遠見崎神社のほうへと向かいます。その目と鼻の先に赤ちょうちんを出してたたずむのが「のみ処 佐良屋(さらや)」です。
▲場所はあの「日本三大朝市」とひとつとして知られる勝浦の朝市や、「勝浦ビッグひな祭り」で有名な遠見崎神社のすぐ近く。勝浦名物目白押しです

え?今度は飲み屋?と驚きのむきもあるかと思いますが、こちらは勝浦が全国でも有数の水揚げ量を誇るカツオを、鰹節に加工する工場を経営する会社の「直営店」。提供される勝浦タンタンメンにも、スープにはもちろん、トッピングにもたっぷりと花ガツオが乗り、美味しいと評判になり、遠方からも多くの人が食べに訪れる新たな名店なのです。
▲店内は落ち着いた和風のつくり

座敷は間仕切りで三室にも、とりはらって一室にもできるユーティリティ仕様。足元は掘りごたつになっていて足を伸ばせます。
▲自家製「勝ぶし」(350円・税込)。これが乗って不味いわけがないですね
▲勝浦タンタンメン(750円、大盛+100円※ともに税込)。花ガツオが特徴です

こちらの勝浦タンタンメンのこだわりはスープ。自家製の鰹節とさば節、それに煮干と羅臼昆布をあわせ、試行錯誤の末にようやく納得できるブレンドにたどりついた、と女将の保崎(ほざき)さん。早速いただいてみました。

熱血!!勝浦タンタンメン船団公認店MAPによると辛さレベルは控えめの部類に入っていますが、それでもやはり勝タン。かなり強烈な辛さではあります。が、こだわりの魚介スープはきわめてすっきりとして、ラー油の辛さと和風魚介出汁のうまみ、そして香り高い花ガツオが、奥行きのある味わいを形作っています。
▲中細の麺も鰹節とからまってよくスープを持ち上げます

食べた後、すぐもう一杯、と食べたくなるような勝タンです。取材中にも若い女性客や小さな子ども連れの家族が勝タンを食べに訪れていましたが、確かにこれならば、誰にも食べやすく、人気が高いのもわかります。それでいて決して勝タンとしてのパンチ力もはずしていないバランス感覚はさすが。

ちなみに裏メニューとして、残ったスープにご飯とチーズを入れて、チーズリゾットに仕立ててくれるサービスが。これはたまりませんね。
▲女将の保崎さん。他にも女性スタッフが控え、店内は和やかそのものでした

お店は飲み屋さんですのでボトルがならび、勝浦の猟師さんたちも刺身で一杯やっています。勝タンだけではなく、猟師町勝浦の人たちともふれあえる、楽しく親しみやすいお店です。

目の前は一面紺碧の海!抜群のロケーションでいただく勝浦タンタンパスタ!「Banzai Cafe」

3軒目は、再度鴨川方面に戻り、松部の「Banzai Cafe(バンザイカフェ)」を訪れました。こちらは地元魚介や山の幸を使った本格的なイタリアンを提供するカフェレストラン。提供するのは、何とパスタ麺を使用した「勝浦タンタンパスタ」。
▲白壁が明るい、しゃれたイラストのようなエントランス。店内はダイバーズショップにもなっています

ビーチコーミング(漂着物)やダイバーグッズが飾られた店内は2階建てになっており、1階は厨房をL字に囲むカウンターとテーブル席。窓に向かって席が設けられ、オーシャンビューでゆっくりと料理や飲み物を楽しめるつくりになっています。2階は店主の奥様が開くヨガ教室にも使用される、くつろげるスペースに。サンルームのように大窓から陽が降り注ぎます。
▲勝浦の美しい海を眼前にした店舗。ついつい長居してしまいそう

早速、お目当ての「勝浦タンタンパスタ」を注文!ほどなくやってきました。
▲勝浦タンタンパスタ(昼はサラダorライスつきで1,100円、夜は粉チーズサービスで980円、+100円で温玉のトッピングも※すべて税込)

勝浦タンタンメンでありながらパスタという不思議。楕円形の器こそイタリアンですが、見た目は間違いなくラー油で真っ赤な勝浦タンタンメン。ひき肉やたまねぎをすくい上げやすいよう、穴の開いたれんげスプーンがそえてあるのも気が利いてます。

ネギをあしらった下にある定番トッピングのたまねぎは、一般的な勝タンよりは大きめにカットされています。
▲麺は腰がしっかり。ストレートの中華麺といわれればパスタとは気づかないかも

スープをすすると、一瞬で「辛い!」というほどではなく、豊かなコクと甘みを感じさせます。それもそのはず、スープはブイヨンベースに醤油ダレが。でも、調子に乗ってスープをいただいていると、後からやっぱりガツンと辛さが追いかけて効いてきます。間違いなくパンチの効いた勝タンの手ごたえ。ラー油はカイエンペッパーなど西洋の唐辛子5種類をブレンドしたお店こだわりの自家製です。

麺はさすがに生パスタならではのしっかりしたコシがあり、またスープをはじくこともなく適度に吸い上げてくれます。

汗だくで食べていると、ご主人が「粉チーズを入れるとまた味が変わっておいしいですよ」と粉チーズをかけてくださいました。イタリアンならではの「味変」です。味わいがマイルドになり、辛いながらもスープも飲み干してしまいました。
▲オーナーの中村さんと奥様。山登りが趣味だったという中村さん。でもダイビングが趣味の奥様と島や海岸の町をめぐるうち、海もいいなあと思うようになったとか

「でも、どうして勝浦タンタンメンをパスタで?」ご主人の中村さんに伺いました。「元々はまかないで出していたんですが、要望があって表メニューに加えました。せっかく勝浦で店を出しているのでご当地のものを出したいという気持ちもありましたから」
▲店内にはダイバーの奥様撮影の勝浦の海の生物の写真パネルが

「勝浦はワカメやサザエ、イセエビなど海の幸が豊富で、新鮮なものを知り合いから分けてもらうこともたびたび。地元でしか食べられない釜揚げひじきは、乾物のひじきとはまったく別物ですよ。それから山の幸も野菜も豊富。これから春は山菜やたけのこを使ったメニューになりますね」と話してくれました。
今回取材した3軒以外にも、ここぞという店はまだまだあります。もともと古くからの名物や名産品が多く、また風光明媚な土地柄です。勝浦タンタンメンという新しい(発祥は歴史がありますが)名物によって相乗効果で化学反応を起こしつつあるように感じました。

ちなみに、熱血!!勝浦タンタンメン船団の公認店は赤いのぼり旗が目印。壮大な勝浦の海とともに、進化する勝タンを満喫しに訪れてみてはいかがでしょうか。
ホシナコウヤ

ホシナコウヤ

千葉県在住、漫画家兼ライター。代表作「エンブリヲ(2008)」「みくまりの谷深(2017)」など。野鳥や野草、郷土民俗に興味あり。猫は全生物の最高傑作だと思っている。

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