清流・高津川が誇る天然鮎は超美味!名店「美加登家」で鮎三昧を楽しむ!

2018.08.05 更新

中国山地の懐に源流を発し、島根県吉賀町や益田市を経て日本海に注ぐ高津川(たかつがわ)。国の水質調査で何度も日本一と評され、中国地方屈指の清流として名を馳せています。その流れに育まれる天然鮎の美味しさは、全国の食通も唸るほど!地元の鮎料理の名店「割烹 美加登家(みかどや)」で、その格別な味を堪能してきました。

釣り人の聖地!高津川で育った天然鮎は格別の美味

高津川は、1,000m級の山々が連なった中国山地の南西部に位置する、島根県吉賀町の湧水池「大蛇ヶ池」に流れを発する一級河川です。一級河川の中でも源流が特定されているケースは珍しく、また、支流を含めてダムが一つも設置されていないことも国内で唯一だそう。
▲上流部は美しい渓谷の様相。透明度は抜群で深い場所でも川底まではっきりと見える

国土交通省による水質調査においては、過去に何度も「最も良好」(つまり日本一のレベル!)と評されており、その美しい環境の中で育まれる川の幸は、安土・桃山時代には既に流域の名物として知られていたといいます。特に、天然鮎の美味しさは際立っており、鮎釣りを楽しむ人々にとって高津川は「聖地」ともいえるスポットなのだとか。
▲鮎漁解禁中(毎年6月1日~9月30日)は、川のあちらこちらに釣り人の姿が見られる

では、なぜ鮎が格別に美味しいといわれるのか――。それは冒頭に述べた「ダムがない」という点にも理由があるようです。

流れを堰き止めるものがないということは、源流から河口までどの地点においても川の水は常に新鮮。澄んだ水の中で良質の苔が育ち、その苔をエサとする鮎も、薫り豊かに育つといわれているのです。

そして、高津川の天然鮎の美味しさを知り尽くす名店の存在も見逃せません。今回は、全国の食通も通う知る人ぞ知る「割烹 美加登家」(以下、美加登家)で鮎三昧を堪能し尽くします!

創業80余年の老舗割烹。高津川の天然鮎を味わうなら「美加登家」へ!

「美加登家」があるのは、高津川の中流に位置する島根県津和野町日原。支流・津和野川との合流地であり、江戸時代には銀や銅が豊富に産出されたことから、幕府直轄の天領として栄えていた山あいの小さな町です。
▲中国自動車道・六日市(むいかいち)ICから国道187号を経て車で約40分。山口・津和野方面(国道9号)、岩国・広島方面(国道187号)への分岐点でもある

その日原の中心地、市街地内を通る旧街道沿いに同店は佇みます。創業80余年という老舗であり、和会席やふぐ料理などを提供。中でも高津川産の天然鮎料理は創業以来の“看板”で、それゆえに鮎料理が提供される期間は漁の解禁中のみなのです!
▲創業以来の姿をそのまま残す「美加登家」。石州瓦の赤い屋根はこの地域ならでは

その味を楽しみに、全国各地からわざわざ足を運ぶ人も多く、シーズン中は休日を中心に予約であっという間に埋まってしまうそう。なお、同店には東京支店「新ばし 鮎正」があり、『ミシュランガイド東京 2009』に一つ星として掲載されたこともあるのだとか。
▲建物に設置された外壁の生け簀には元気いっぱいの天然鮎が!高津川産の鮎を中心に、品薄の場合は近隣の宇佐川産の鮎も使用される

古き良き面影をそのまま残す店内は、一昔前にタイムスリップしたかのよう。土間の広い玄関、軋みが小気味よい板張りの廊下、障子張りの引き戸に欄間、その奥に広がる和室…初めて訪れたのになんだか不思議と居心地の良さを感じます。
▲郷愁を誘う風情ある店内にワクワク。料理への期待も否応なく高まる

料理は6部屋ある個室でいただきます。かつて旅館を営んでいたことから、お部屋は欄間や床の間など純和風の造り。鮎の姿をした置物が飾られたお部屋もあります。
▲欄間など室内の意匠にもぜひ注目を

天然鮎料理のフルコースに舌鼓!至福の味わいに感動の連続!

天然鮎コースは価格別に3種あり、今回いただくのは真ん中の10品11,000円のコース。ほかに、10品9,000円、12品13,000円のコースがあります(すべて税・サ別、要予約、2人より受付 ※価格は漁獲量によってシーズンごとに変動)。
▲11,000円の天然鮎のコース。いずれのコースも、1人前で7~8匹分もの鮎が使われている
▲11,000円コースのお品書き。これから目の前で繰り広げられる“鮎づくし”、どれも美味しそう~!
▲箸置きとコースター。料理以外の鮎の演出にも注目を

席に着くと、目の前には鮎の形をした箸置きと、鮎の文字をあしらったコースターが!お部屋の鮎の置物といい、視線の中に鮎を見つける度にはしゃいでいると、お品書きの1品目、まずは“変わり種”といえる珍味の「子うるか」が運ばれてきました。
▲涼しげな器に盛られた「子うるか」。前年のシーズン後半に仕込まれ、8カ月以上熟成させる

「子うるか」とは、前年に捕れた鮎の卵と白子を塩漬けしたもの。まずは一口…、卵のプチっとした食感に続いて、白子の濃厚な味わいが広がります。海、川の違いはありますが、他の魚の白子と比べるなら、その味わいは優しくもありキレもあるという感覚。“クセになりそう”な美味しさです。

お酒のあてにぴったりな「子うるか」…となれば、同店自慢の「あゆ酒」も外せません。一日かけてじっくりと炙った鮎を地酒に浸すという、いわゆる「骨酒(こつざけ)」です。
▲別注できる「あゆ酒」(1合1,480円 ※税・サ別)。津和野の酒蔵が醸す地酒に浸す(写真提供:美加登家)

2品目は御造りの「背ごし」です。背ごしとは、鮎を背骨ごとスライスしたお刺身で、鮎料理の定番。身の旨みに加えて柔らかな背骨の歯ごたえが特長的です。
▲背ごしは同店特製の醤油でいただく。捌きたての活鮎の身の張り、骨の食感をお楽しみあれ
▲内臓を取り除いた身を丸ごとスライスすることから「筒切り」ともいわれる

3品目は碗物「白味噌仕立て」。白焼きされた鮎2匹(サイズによっては1匹)が白味噌汁に浸されています。
▲碗物「白味噌仕立て」。鮎の旨みと味噌の旨みが、さらなる食欲を掻き立てる

白焼きされた鮎の身には、白味噌のコクがしっかりと染みわたり、両者の風味が鼻腔をくすぐります。汁を一口、そして鮎も一口…、なんという優しいお味、そして、さらなる食欲が~!

鮎といえば塩焼き!シンプルゆえに最も難易度の高い料理

4品目は焼物「鮎塩焼き」の登場。鮎料理の定番ながら、板長の山根さんが最もこだわり、そして「最も調理が難しく、最も美味しい」と話す渾身の逸品です。
▲自慢の天然鮎の塩焼き(1人前2匹)は、20~30分かけてじっくり焼き上げる

頭はぱりっと、身はふっくらという具合に仕上げるためには、全体に満遍なく、そして芯までしっかりと火を通す“遠火の強火”を操る技術が必須とのこと。目の前に運ばれてきた塩焼きからは、思わず恍惚としてしまいそうなほどの美味しそうな香りが~!口に運ぶ前にしてはや興奮…、さっそく、頭からかぶりつきます。
▲思いきり、頭から大きくかぶりつくのがおすすめ

あまりの美味しさに、しばし無言…。香ばしさに続いて身の豊かな旨み、内臓の苦味が次々に口に広がったかと思いきや、それがやがて渾然一体となって至福の味わいに~!筆者は、これほど“凄い”鮎の塩焼きにかつて出合った記憶がありません。

まだまだ続く鮎の絶品料理!〆の「鮎めし」は別途お土産の注文もOK

続いては、地元ならではの一品、煮物「うるか茄子」。鮎の生うるか(内臓部分)を茄子とともに炊き上げたもので、鮎の産地ではなじみの料理です。しかし、ここ「美加登家」では独自の楽しみ方があるそう。
▲ごはんとともに運ばれてくるのが「美加登家」流の「うるか茄子」

二つ並んだ器のふたを開けてみると、一方はごはん??なんでも、うるかの旨みをまとった煮汁があまりにも絶品で、ごはんに絡めて残すことなく食べたいという常連客のリクエストで生まれたペアリングなのだとか。

まずは、「うるか茄子」だけをいただきます。ふっくらと炊き上げられた茄子は、煮汁をたっぷり含み、一口味わうと…茄子の甘味とうるかの苦味が、口の中で絶妙に絡み合います。これもまたお酒と相性がよさそう…、すかさず「あゆ酒」に手が伸びます。
▲茄子を食べきったら、ごはんと煮汁を絡める。煮汁まで残さず食べ尽くしたいという思いに納得!ああ、このうるかの苦味最高~!

6品目はまたまた鮎が丸ごと一匹!同店の創作メニュー、強肴「味噌包み焼き」の登場。背開きの鮎に特製味噌を挟んで蒸し焼きにした逸品です。
▲柔らかくほぐれる鮎の身に味噌の甘辛い味わいがアクセント。鮎の風味が味噌に負けていない!
▲さらに酢物「鮎昆布〆」。濃厚な品が続いた後だけに、土佐酢とともにいただく鮎の切身の味わいがとても爽やか

そして、満を持して〆の「鮎めし」が登場です。鮎出汁の炊き込みごはんの上に、白焼きのほぐし身がこれでもかとのせられているではありませんか!
▲ほぐした白焼きの身がふんだんにまぶされている「鮎めし」

見た目はシンプルですが、一緒に口へ運ぶとなんとも深い味わい。鮎の身とごはんに染みたお出汁の味が合わさって、鮎の豊かな旨みと香りを増幅させます。

同店特製の香の物も侮れません。茄子の辛子漬け、たくあん、きゅうり、人参の漬物などなど、野菜の旨みがぎゅっと濃縮された絶妙の漬かり加減の味わいは、鮎とともに“忘れられない”ほどです。
▲最後に御菓子「青梅甘露煮」で締めくくり。梅のエキスが染み出した氷と一緒にいただこう
▲「塩焼き」と「鮎めし」は持ち帰りも可能。「塩焼き」は1匹1,500円~、「鮎めし」は2,000円(2人前より)※いずれも税・サ別(写真提供:美加登家)

「子うるか」に始まり「鮎めし」まで、鮎の美味しさにここまで驚かされるとは…。お腹いっぱいながら、すでに「また食べに来たい!」という気持ちが沸々と湧いてくるほど大満足の内容でした!

美加登家のこだわりは活きた鮎!熟練の釣り人から毎日新鮮な鮎を直接入手

板長の山根さんによると、「美加登家」ではできる限り活鮎を料理に使うそうです。その理由は、内臓まで美味しく味わってもらうためには、砂をしっかりと体外に出した鮎であることがポイントだから。

「調理する直前まで生け簀で泳がせて、しっかりと砂を出させます。そうでなければ、頭からかぶりつける鮎料理は提供できません。ちなみに、高津川の鮎はとても香りが豊かです。その味わいを存分に堪能してもらうために、骨も内臓も全て美味しく味わえる調理、そして手を加えすぎないという点に特にこだわっています」
▲釣り人によって持ち込まれたばかりの鮎。たらいの中で勢いよく跳ね上がる!

同店では、鮎の丁寧な扱いに長けた熟練の釣り人から、その日に釣り上げられたばかりの活きた鮎を直接買い取っており、時折、鮎を持ち込む釣り人の姿を見ることもできます。

また、わざわざ北海道から訪れるお客さんもいらっしゃるそうで、「鮎は川が異なれば、味も全く異なります」と山根さん。高津川の鮎の美味しさが国内でも屈指のものであることを、全国各地から「美加登家」へ訪れる鮎通や、早朝から川へと訪れる釣り人たちが証明しているといえますね。

10月限定の逸品!天然子持ち鮎を「生あぶり」でいただく!

なお、10月1日からは「天然子持ち鮎の生あぶりコース」(13,000円 ※税・サ別、要予約、2人より受付)が数量限定で提供されます。「生あぶり」とは、炭火で燻すように長い時間をかけて火を通す、塩焼きとは異なる薫製に近い調理法とのこと。
▲子持ち鮎のお腹には卵がぎっしり。「生あぶり」は塩焼きとは全く別物で、これを楽しみに秋を待つファンも少なくない(写真提供:美加登家)

炙り鮎は、同地域に伝わる保存食で、雑煮の出汁などに使われます。完全に炙りきらずに、卵や身をしっとりとした状態で仕上げるのが同店オリジナルの「生あぶり」なのだとか。お腹が膨らんだ子持ち鮎ならではの食べ方です。

「美加登家」で堪能した高津川の天然鮎の美味しさは、記憶に鮮明に刻まれるほどの感動でした。遠方からわざわざ足を運ぶリピーターが多いことにも納得!筆者もそのひとりとなりそうです。
兼行太一朗

兼行太一朗

フリーライター・カメラマンとして、山口県を拠点に活動中。 主に旅行、グルメ、歴史、地方創生などについての書籍やウェブサイトを中心に取材・執筆を行っている。拠点とする山口市では、歴史資源を生かした地域活性化に取り組むNPO法人「大路小路まち・ひとづくりネットワーク」にも所属し、守護大名大内氏や幕末に関する史跡、ゆかりの場所や人物についての取材を担う。(編集/株式会社くらしさ)

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