観光列車「伊予灘ものがたり」に乗って ~吸い込まれそうな絶景とあたたかなおもてなし~

2015.09.25 更新

2014年7月に運行をスタートした愛媛県の観光列車「伊予灘ものがたり」。地元素材たっぷりの食事をいただきながら、美しい瀬戸内海や田園風景、雄大な肱川(ひじかわ)の絶景を楽しめると、人気を集めています。

JR松山駅のホームにとまった「伊予灘ものがたり」
ミーーーンミンミンミン。セミの鳴き声がシャワーのように降り注ぐ8月某日の朝。JR松山駅のホームに、ゆっくりと茜色の列車が入ってきました。「伊予灘ものがたり」は2014年7月に運行を開始した、四国初の観光列車。土・日曜、祝日に、愛媛の中心地・松山から南予の大洲・八幡浜間を、1日4便運行しています。
にこやかに出迎えてくれたアテンダントさん
天候は晴れ、絶好の旅日和にワクワクしながら列車に向かうと、上品な制服を身にまとったアテンダントさんが、にこやかな笑顔で出迎えてくれました。「今日はよろしくお願いします!」
1号車の「茜の章」の内観
今回乗車する「大洲編(松山駅~伊予大洲駅)」は、松山から“伊予の小京都”と呼ばれる大洲までを走る便。運よく先頭車両の「茜の章」の窓側の席を予約できました。車内はレトロモダン。グリーンの座席に赤いクッションがアクセントになっています。定刻通り出発した列車を、駅のホームからJR四国のスタッフさんたちが手を振り、送り出してくれました。「いってきまーす!」
ホームからスタッフの皆さんが見送ってくれる様子

さすが走るレストラン!愛媛産が盛りだくさんのモーニング

大洲編で頂けるモーニングプレート(予約制)
▲サンドは「ローストポークのアジア風サンド」や「旬魚カレー風味のムニエルとグリル野菜サンド」など4種。税込2,500円(要予約※9月からメニュー変更)。

車内では素敵なアテンダントさんの挨拶の後、予約していたモーニングプレートが運ばれてきました。「大洲編」の料理は、松山市の人気宿「道後やや」とレストラン「ヨーヨーキッチン!」によるもの。

この日のプレートは八穀パンのサンドがメイン。「ヨーヨーキッチン!」の自社農園で収穫した野菜を使っているので、どれもシャキッと新鮮でおいしい!ふわふわの泡でふたをしたミニカップには、愛媛の特産品であるみかんのゼリーが隠されていました。2カ月ごとにメニューが変わるのも楽しみ。
食後のコーヒー
食後は、西条市の自家焙煎カフェ「branch coffee」のコーヒーでまったり。コーヒーカップは愛媛の伝統工芸・砥部焼(とべやき)の器。この列車のために砥部焼の女性作家グループ「とべりて」がつくられたそうですよ。さらに、箸置きは四国中央市の伝統工芸「水引」と“愛媛づくし”のおもてなしが嬉しいですね。
車窓から眺める伊予灘の海
ガタンゴトンガタンゴトン。出発から30分ほど走ったところで、一気に視界が開けました。「わーーーー海だ!」穏やかな伊予灘の海が目の前に!海面に太陽の光が反射してキラキラと輝いて、吸い込まれそうな美しさです。乗客のみなさんも夢中で写真を撮っていました。
下灘駅から眺める伊予灘の海
海岸線沿いを少し走ると、鉄道写真の撮影の名所として全国各地からファンが訪れる「下灘(しもなだ)駅」で途中停車。目と鼻の先に海が広がるこの駅は、映画やドラマのロケ地としても使われています。無人駅にもかかわらず、たくさんの花が植えられていて、この日はホーム横でひまわりが咲いていました。沿線にお住まいの「日喰(ひじき)老人会」の皆さんが、「乗客の皆さんが楽しめるように」と、構内の花壇を毎日お世話してくださっているそうです。素敵なおもてなしに、胸があたたかくなりました。
列車内の洗面鉢
列車は再び海沿いを爽快に進みます。「2号車はどんな感じだろう」と後ろに向かっていると、洗面鉢に目が留まりました。「むむ!まさかこれは、砥部焼?」。さすが愛媛の観光列車、洗面鉢も砥部焼です。しかも季節ごとにデザインの違う鉢に交換しているのだそう。細部まで手を抜かないこだわりに驚きながら、2号車「黄金の章」へ。こちらはアクセントに黄色を配した内装です。
2号車「黄金の章」の内観
オシャレなバーカウンター
そして車両前方にはオシャレなバーカウンターが。俳句の町・松山ならではの俳句ポストも置かれていました。「車窓からの絶景を眺めながら、一句というのもオツですなー」。ポストの横には、海に沈む夕日をあしらったデザインの乗車スタンプも。
列車内に置かれた俳句ポスト
伊予灘ものがたりの乗車記念スタンプ
途中、列車は東にカーブして清流・肱川(ひじかわ)沿いへ。緑鮮やかな田園風景を抜けたところで、スピードをゆるめながら五郎駅へ。そこで歓迎の看板を片手に列車を待っていたのは沿線にお住いの方々。着ぐるみを着た名物・たぬき駅長とともに、にこやかに手を振ってくださいました。「しかし、なぜたぬき駅長なのか」。アテンダントさんに聞くと、よく駅に野生のたぬきが出没し、地元の方々がお世話をしているからなんですって。
五郎駅付近で列車を出迎えてくれた、地域の方々とたぬき駅長
▲こちらは助役の鉄子ちゃん

田園地帯を抜け、車窓が町の景色に変わると、そろそろ終着の伊予大洲駅です。名残惜しい気持ちを抑えて下車すると、ホームに何やら人だかりが。地元・大洲市の「中野食品」さんが名物「ミルクパン」(税込1本200円)を販売されていました。
「中野食品」さんのミルクパン
「わーーーこれ好きなんよー」と即購入。待ちきれずにベンチに腰掛け、ひとかけらだけ味見。ふんわりとした食感とほんのりとした甘みが、なんとも懐かしい味です。「そうそう、これこれ。このやさしい甘さよ」とにんまりしていると、折り返し運行の「双海(ふたみ)編」に乗車するお客様がホームに集まってきました。みんなワクワクした表情で列車と記念撮影をしています。その様子を見て、「せっかくだから私も見送る側になってみよう」とホームで待機。期待に胸をふくらませた乗客を乗せ、走り出した列車に、「素敵な旅になりますように」と思いを込めて手を振ったのでした。
伊予大洲駅のホームで折り返しの出発を待つ「伊予灘ものがたり」
愛媛産の心づくしのおもてなしと、沿線の方たちのあたたかさが詰まった「伊予灘ものがたり」。今度は下灘駅で夕日が楽しめる「道後編」に乗ってみたいなぁ。
伊藤秀美

伊藤秀美

愛媛生まれ、愛媛育ちの編集者。地元の出版社でタウン情報誌、女性誌の編集を経て、旅雑誌「四国旅マガジンGajA」の編集長に。食べること・飲むこと・自然の中で遊ぶことが大好きで、不便さや田舎っぷりもひっくるめて四国を愛している。リサーチ(仕事)と称し、年中、四国中をふらふらしている。

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