自家製麺率日本一!麺にこだわる「酒田のラーメン」個性派揃いの3軒を食べ歩き

2017.06.03

ラーメン消費量(外食)日本一の山形県(平成26年総務省家計調査)。冷たい美味しさがクセになる「冷やしラーメン」や煮込んだ「とりもつ」が醤油スープと好相性の「新庄ラーメン」など、県内各地にご当地ラーメンが存在する、とにかく麺類には熱い県なのです。今回は自家製麺の比率が80%以上という、麺にこだわりを持つ「酒田のラーメン」から3店舗をピックアップしてご紹介します。麺づくりに情熱を傾ける店主たちの“こだわり”をめしあがれ!

▲「花鳥風月」の海老ワンタンメン780円(税込)

美味しいラーメンの追求に妥協はない!酒田のラーメン

山形県の日本海側に位置する港町、酒田。この街には1990年に発足したラーメンの味を追求し続ける「酒田のラーメンを考える会」があり、15店舗が加盟しています(2017年5月現在)。酒田のラーメンの特徴について会長の石垣洋平さんにうかがいました。
▲ご自身も「麺工房さらしな」を経営されている石垣会長

「酒田のラーメンの特徴は自家製麺率が8割超と日本一高いこと、昆布、煮干し等の魚介で出汁をとった透き通った醤油味のスープが特徴です」と石垣会長。
▲モチモチ感のある多加水麺にこだわる酒田のラーメン
▲昆布、煮干し、さば、かつお等の魚介出汁が基本

「酒田ラーメンではなく、あえて酒田“の”ラーメンと言っているのは、お店によってメニューが違うからです。自家製麺、魚介出汁をベースにそれぞれの店が独自の味を研究し、クオリティの高いラーメンを提供しています」と石垣会長。

今回ご紹介するラーメン店は3軒、メニューは「海老ワンタンメン」「しょうゆつけ麺」「しょうゆラーメン」の3種。お店によって個性の違うラーメンを味わえるのも酒田のラーメンならでは!ラーメン店のハシゴを楽しんじゃいましょう。
▲赤いのぼりのある店が「酒田のラーメンを考える会」加盟店です

ぷりっぷりの海老ワンタンメンで人気の「花鳥風月」

酒田のラーメンと言うとワンタンメンが有名です。その筆頭格である「満月」で修行した若手店主が発信する「花鳥風月」の海老ワンタンメンは、魚介系の出汁が効いた醤油味のスープと極薄の皮で包んだ海老入りワンタンのとろけるような食感が人気。

2017年4月にニューヨークで開催された【ニューヨーク ジャパン フェス ストリート ラーメン コンテスト】へ出店するなど、今、勢いに乗っているラーメン店です。
▲緑色の外観が目印の酒田本店を含め、山形北町店、鶴岡店の3店舗で食べることができます
▲オーナーの佐藤勇太さんが、酒田のラーメンを全国区にしたいという思いで店を開いたのは10年前、24歳のとき。海老を包む“薄皮”ワンタンは研究を重ねながら作り出した独自のもの

独自に粉を配合した、もちもちの手もみ熟成多加水麺

麺は製造してから2~3日間熟成させる、手もみ熟成多加水麺を使用。
「もちもちっとした食感に加え、しっかり熟成させたコシのある麺が特徴です」と佐藤さん。
数種類の粉を独自の配合でブレンドし、醤油ベースのスープに合う麺を開発しました。
▲中細のちぢれ麺。スープが麺によく絡みます

スープは醤油味。鯛の煮干しをベースに、カタクチイワシの焼干し、かつお節、さば節を入れて丁寧に出汁を取ります。魚臭くない上品な風味と飽きの来ない味わいに、ファンが多いのも頷けます。
▲スープは透明感のあるまろやかな醤油味

技巧を凝らした薄い皮が自慢の海老ワンタン

「花鳥風月」の技巧を凝らした薄皮の海老ワンタン。こちらの皮ももちろん自家製で、薄いのに破れない皮づくりには、熟成させて作る麺づくりのノウハウが詰まっています。

その日の湿度や気温によって粉の配合や厚みを加減し、製麵の何倍もの工程を手の感触だけを頼りに作っていくのです。
▲皮の厚さは均一で、向こう側が透けて見えるほどの薄さ!
▲毎日、ひとつひとつ丁寧に包みます
▲海老好きにはたまらない、このビジュアル!

ぷりっとした大きな海老と、口の中に入れると溶けてしまいそうな薄皮だからこそのとろんとした食感がたまりません。肉ワンタンとはひと味違った味わいは病みつきになりそう。
▲チャーシューは一枚一枚丁寧に炙ります

オーダーを受けてから炙るチャーシューも「花鳥風月」ならではのこだわりが。
醤油漬けにしておいた肩ロースとバラ肉を一枚ずつ切って炙っていきます。
▲炙った風味が口の中に広がります

昭和35(1960)年創業で“酒田のワンタンメン”の名を広めた人気店「満月」。そこで教えてもらった技を基本に独自の生地を開発し、海老ワンタンでさらに伝統を広げていこうと頑張る佐藤さん。それは酒田のラーメンの素晴らしさを広く知ってほしいという思いと、酒田の街が大好きという気持ちがあるからこそ。

口の中でとろんととろけるワンタンのヒミツは特製の極薄生地にありました。そして、海老ワンタン、チャーシューといった具の味を生かす醤油味のスープと、もちもちっとした中細のちぢれ麺。バランスよく旨みが絡み合う、何度も食べたくなるラーメンです。

一杯入魂のつけ麺「つけ麺道 癒庵」

関東にある中華料理店で修業し、その店のトップまで登りつめた店主が満を持して開業。料理人育ちの技術力が生かされた「つけ麺道 癒庵(ゆあん)」のつけ麺を求めて多くのファンが訪れます。
▲住宅地に佇む「癒庵」は2011年にオープン
▲しょうゆつけ麺780円(税込)
▲父親の病気を機に、故郷・酒田に戻り店を開いた三浦純一さん

「生き物の命をいただいているということを頭において仕事をしています。感謝の気持ちを持って丁寧につくれば、自然と美味しいものができてくると思うから」と話す、店主の三浦さん。

丁寧にじっくりと。こだわり抜いたスープ

その思いを表現しているのがスープ。しょうゆ味の濃厚なスープは、下処理から仕上げまでを2日間かけてじっくり作り上げる、こだわり抜いたスープなのです。
▲材料は丁寧に扱うことをいちばんに!
▲ゲンコツ(豚の大腿骨)を丁寧にじっくりと煮込んでいく

一晩かけて血抜きをしたゲンコツを10時間かけて丁寧に煮込み、さらに利尻昆布、片口平子、うるめ、かつお節等の魚介類を煮込んだ出汁と野菜を入れて煮詰め、濃度をあげていきます。肉、魚介、野菜、どの材料も突出することなくバランス良く調和されたスープ。
▲半熟卵、細切りしたチャーシュー、なるともスープの中にたっぷり
▲こってり感があり、後を引く美味しさ

アレルギーのある人にも食べてもらいたいという思いで作ったオリジナル麺

▲ストレートで弾力のある太麺。頼めば「温盛(おんもり)」も可能

ある時、卵アレルギーの子どもが麺を食べられずにいる様子を見た三浦さん。自身もアレルギーを持っていることもあり、みんなに麺を安心して食べてほしいという思いから、アレルギーの要因となる材料を使わず、打ち方を工夫して独自の麺をつくり始めました。

何度も試行錯誤を繰り返しながら完成させた麺は、太麺で食べごたえがあり、コシの強さが特徴。スープの濃さと麺の太さが相性良く、食べた後、記憶に残る美味しさです。
▲並盛りでも210gとボリュームたっぷり。315gの中盛りを頼んでも同じ値段というのもうれしいサービス(420gの大盛りは50円増・税込)※写真は中盛り
▲とろっとした半熟卵も美味しい

休日ともなると、県内はもとより隣県や関東からもラーメン好きが訪れ、行列ができることも。今回ご紹介したしょうゆつけ麺以外にも「みそ野菜ピリ辛つけ麺(950円・税込)」や「完熟トマトとモッツァレラチーズつけ麺(830円・税込)」等、たくさんのつけ麺メニューがありますので、自分の好きな味を見つけてみては。

酒田ラーメンの系譜を継ぐ老舗「三日月軒」

酒田ラーメンのルーツを辿っていくと、1930(昭和5)年に出店した「大来軒(だいらいけん)」が最も古いと言われています。3軒目にご紹介するのは、その「大来軒」の流れを汲む「三日月軒」。酒田を代表するラーメン店の一つです。
▲東中の口店は1967(昭和42)年に開店。地元の人たちに愛されてきました
▲訪れた著名人の色紙が所狭しと貼ってある店内
▲昔ながらのしょうゆラーメン650円(税込)
▲二代目の佐藤裕司さん

鉄棒を使って昔ながらの麺づくり

この店の真骨頂は何と言っても麺づくり。鉄棒を使って麺を打つ「棹麺(カムミュン)」と呼ばれる伝統技を受け継ぎ、守り続けています。「棹麺」は中国から日本に伝来した麺づくりの製法。昔は竹棒を使っていましたが、今は鉄棒を使用。鉄棒に足をかけ、体重を縦横交互に打ち重ねていくことでコシと歯ごたえのある麺を作り出すのです。
▲「棹麺」は、テコの原理を応用して少しずつ鉄棒を回転させながら生地を延ばしていきます

また、麺づくりに欠かせない「かんすい」にはモンゴル産天然かんすいを使用。前日に水で溶いて一晩寝かせ、上澄みのきれいになった部分だけをすくって使っています。よく味が馴染むように入れる塩も、まろやかさが特徴の自然塩を使うこだわりよう。

加水率はその日の湿度や温度によって毎日変えています。コシも旨みも加水率で決まるため、経験と勘だけが頼りです。

圧延(生地を延ばすこと)を4回繰り返したら、製麺機の幅に合わせて細長く切り、麺棒に巻きつけていき「麺帯」を作ります。巨大なバームクーヘンの形をした「麺帯」は6時間程寝かせて熟成させるのです。
▲麺棒に生地を巻きつけ、「麺帯」にして熟成させます
▲寝かせた「麺帯」を麺の太さに切り、さらに冷蔵庫に入れて3日間ゆっくり熟成させます
▲こうしてできた細ちぢれ麺。麺にスープが絡んで絶品!

あっさり目なのにコクがある。そのヒミツは出汁にある!

スープは3種類の鶏ガラと、昆布をはじめとする10種類の魚介系の材料に加え、5~6種類のしいたけ等の乾物系を混ぜて出汁を取ったもの。「味のバランスが大事」と、佐藤さん。
▲あっさり目なのにコクがあり、出汁の旨みが効いているスープ

チャーシューは庄内豚の肩ロースを使って。肉そのもののやわらかさを大事にすることと、肉の味がスープの旨みに極力影響しないように、あまり煮込まないように仕上げているそう。
▲庄内豚を使ったチャーシューはやわらかく、噛みしめると肉の旨みが口中に広がります
▲シャキッとした歯ごたえのメンマは、乾燥メンマを戻して味付け

製麺機が普及した今も、昔ながらの製法を守り続ける「三日月軒」。昔懐かしい「しょうゆラーメン」は、ほっとする優しい味です。
3軒を訪ねて驚いたのが、自家製麺と昆布、煮干し等の魚介を使った醤油味のスープを基本に、各店とも違うメニューで勝負しているところ。「酒田のラーメンを考える会」に加盟している15店それぞれが特徴あるラーメンを提供していますので、自分のお好きな「酒田のラーメン」を見つけてみてください。何度訪れても新しい発見があるはずですよ。

撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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