五感で味わう水族館。アクアマリンふくしまを楽しむ7つのポイント

2017.05.26 更新

水族館といえばイルカショーや熱帯魚?いえいえ、それだけじゃありません。福島県いわき市にある「アクアマリンふくしま」は、「海を通して人と地球の未来を考える」の理念のもと、スケールの大きな展示で世界的に注目を集めている「環境水族館」。黒潮と親潮の「潮目」をテーマにした展示や、水族館の裏側をのぞけるバックヤードツアーなどをレポートしながら、大人も子どもも楽しめるポイントを紹介します。

JR常磐線泉駅から小名浜・江名方面のバスに乗ること約15分、「支所入口」で降りて10分ほど歩くと、小名浜港が見えてきます。その港の隣に立つガラス張りの建物が「アクアマリンふくしま」です。オープンは2000年。福島の海に恵みをもたらす黒潮と親潮の「潮目」をテーマに、生き物が暮らす自然環境をまるごと再現し、展示しています。
▲ガラス張りの建物は明るく開放感たっぷり

館内は生き物の「過去・現在・未来」をコンセプトに大きく3つのエリアに分かれています。生物の誕生をひもとく展示エリアを抜け、現在の福島県の川から海へとたどり、黒潮と親潮の源流域の生き物を紹介するエリア、さらに体験を通して未来の海の環境を考えるエリアへ。
まずは「過去」の展示エリアから順に見ていきましょう!

1.生きた化石の代表格「シーラカンス」

明るいエントランスホールを抜けると、第一の展示エリア「海・生命の進化」が現れました。
▲「カブトガニ」や「オウムガイ」といった“生きた化石”を紹介

展示を見ていると、原始の海が生んだ単細胞生物が次第に魚類へと進化していった、その過程がよくわかります。「アクアマリンふくしま」はシーラカンスの研究にも力を入れているとあって、化石標本も多数展示されています。
それにしても、シーラカンスって、なぜこんなに有名なんでしょうか?
▲アフリカ・シーラカンスの標本(写真提供:アクアマリンふくしま)

「魚類から両生類に進化する過程で生まれたとされるシーラカンスは、生物の歴史上、非常に重要な位置にいるんです」と、広報の藁谷(わらがい)桜子さん。

魚でありながら、ひれの位置や筋肉の付き方が哺乳類と似ていると聞いて驚きました。現在確認されている生息地は、アフリカ大陸東側とインドネシアの2カ所のみ。希少なため、捕獲はもちろん、標本の移動にも厳しい国際ルールがあるのだとか。

さすが生きた化石!……でも、「生きた化石」って?

「生きた化石には4つの条件があります」と藁谷さんが教えてくれました。「1つ目は、かつては種類が豊富だったが、現在では種類が減ってしまったこと。2つ目は個体数が少ないこと。3つ目は、広く生息していたが、現在では局地的にしか生息していないこと。そして4つ目は、太古から姿を変えていないこと。要するに、過去に大繁栄したものの、現在は細々と暮らしている生物ですね。たとえばクラゲは太古の時代からあまり姿を変えていませんが、今では種類も個体数も多いので生きた化石とは言えません」

なるほど……レアでないと「生きた化石」の称号はもらえないんですね。
▲天井を泳ぐのは「ダンクルオステウス」という巨大な古代魚の復元模型(実物大)。甲冑のような外骨格を持ち、強い顎で他の魚類を襲う凶暴な魚だったという

2.森林浴気分で学ぶ「ふくしまの川と沿岸」の生態系

「過去」エリアを抜けてエスカレーターで4階へ上がると、明るい日差しと鮮やかな緑が目に飛び込んできました。水のせせらぎが聞こえます。
ここは「現在」。
「ふくしまの川と沿岸」と題したコーナーでは、水辺の生き物たちの生態を、阿武隈山系の川の上流から河口、海へと向かう川の流れにしたがって再現しています。
▲春の芽吹きや紅葉など、季節ごとに姿を変える植物はすべて本物!

上流から河口へと移るにしたがって、生息する魚の種類が変わっていくのはもちろん、種類や数が増えていくのも見どころのひとつです。環境をまるごと再現しているからこその変化が楽しめます。
河口の先には、長さ18mの大水槽が!
福島県の沖合をイメージした黒潮水槽です。マイワシの群れに交じって、彼らを食べるカツオやキハダ、カラスエイといった大きな魚も泳いでいます。
天井からさんさんと降り注ぐ光を浴びた魚たちは、キラキラ輝いて本当にキレイ。
実はこの大水槽、この後出てくる“あるところ”とつながっているんです。
▲マイワシの群れ。鮮魚売り場で見るのとは全く違う躍動感!

さて、親潮の源流域に暮らす海獣も、もちろんいます。
トドは4頭。岩場で日向ぼっこしたり……
水槽内をダイナミックに泳ぎ回ったり。かなり人懐っこく、近くまで寄ってきてくれます。

アザラシは、おなじみのゴマフアザラシに加え、日本でここだけでしか見られないクラカケアザラシも。海獣は種類によって飼育方法が異なるため、飼育例のない種類を飼うのは非常に難しいのだそうです。
▲クラカケアザラシのくらまる。体調によっては展示を中止することも(写真提供:アクアマリンふくしま)
▲この日はぽかぽか日和。このゴマフアザラシはずっとこうして浮かびながら、気持ちよさそうに目を閉じたり開けたりしていた

3.潮流の境目を体感「潮目の大水槽」

ここからは、「アクアマリンふくしま」のテーマ「潮目」(海流の潮境)を意識した展示が広がります。
まずは、「熱帯アジアの水辺」コーナー。黒潮の源流域である熱帯アジアのマングローブの水辺から、サンゴ礁の海へ。
▲熱帯アジアの生き物たち
▲映画「ファインディング・ドリー」でもおなじみのナンヨウハギなどサンゴ礁に生きる熱帯魚たち。降り注ぐ日光を浴びてキラキラ
▲美しいサンゴ礁の海を前に、時間も忘れて見入ってしまう

「サンゴ礁の海」を抜けると、ひときわ大きな水槽が現れました。
「潮目の大水槽」です。日本列島の南と北から数千kmの旅を経て、福島県沖で出合う黒潮と親潮、それぞれの生態系を再現した、「アクアマリンふくしま」一番の見どころです。
▲「潮目の大水槽」、こちらは黒潮側。マイワシの大群の中をカラスエイが悠然と泳ぐ(写真提供:アクアマリンふくしま)

この大水槽の前には「寿司処『潮目の海』」があります。「来館者に魚の資源量について考えるきっかけになれば」とつくられた寿司カウンターでは、水槽の魚たちを眺めながら新鮮な寿司をつまむという、ほかにはない粋な体験ができますよ。
▲左が「寿司処『潮目の海』」。営業時間は11:00~15:00。売り切れ次第終了

寿司処の前のスロープを進むと現れるのが、大迫力、三角形のトンネルです。
左側が親潮水槽、右側が黒潮水槽。2つの海流が出合う海域が「潮目の海」と呼ばれます。そして、さきほど4階の「ふくしまの川と沿岸」コーナーの最後にあった長い水槽は、この大水槽の最上部だったのです。親潮水槽と黒潮水槽を合わせた水量は、なんと2,050トン。

黒潮側の魚たちは、とにかく力強い!カツオ、マイワシ、マグロの仲間などがスピーディーに回遊しています。
対して親潮側はプランクトンの宝庫。海藻類やホヤがびっしり育つ中、岩陰にひっそりたたずむ魚たちを見ることができます。
トンネルの両側に広がる全く異なる世界。海の神秘を感じます。

4.激レア生物に出会える!「親潮アイスボックス」

海の神秘といえば、見逃せないのが、親潮源流の一つであるオホーツク海で採集した「アクアマリンふくしま」でしか見られない激レア生物の数々です。
「アクアマリンふくしま」のスタッフが採集し、発見した新種や、世界初展示の生き物が一挙に展示されている「親潮アイスボックス」は、お子さんにも大人気。
▲30以上の水槽が並ぶ「親潮アイスボックス」(写真提供:アクアマリンふくしま)

各水槽には生き物の説明が書いてあり、「レア度」が★で示されているのですが、★の多い水槽を見つけると、ぐっとテンションが上がります。
▲タマコンニャクウオ(クサウオ科)。レア度★5つ、愛称は「玉こん」!

世界初展示のタマコンニャクウオは水深200~500mの深海に生息するため、採集も飼育も難しい生き物なのだそうです。お腹に吸盤がついていて、岩や水槽のガラス面にはりつく姿はなんともユーモラス。
▲ツヤモロトゲエビ(タラバエビ科)。レア度★5つ

これも世界で「アクアマリンふくしま」でしか見られない激レア生物。北海道は知床からやってきました。とてもおいしいけど、1日数匹しかとれない幻のエビなのだとか。

どれも小さな生き物ですが、形の不思議さや鮮やかな色彩にくぎ付け。海にはまだまだ未知の世界が広がっているんだな、と驚くやら感心するやら。
はっきり言って、かなり興奮します!
▲タカアシガニの群れが歩く水槽は、まるで宇宙のよう

5.バックヤードツアーに参加しよう

展示の鑑賞とあわせて、ぜひおすすめしたいのが、無料で参加できる「バックヤードツアー」。普段は見られない水族館の裏側を、約30分かけてボランティアスタッフが案内してくれます(9:30~15:30まで随時受付)。
この日案内してくださったのは、ボランティアの船生(ふにゅう)さん。展示スペースから職員専用の扉を通って、裏側に潜入します。
▲水族館は裏側にも水槽がたくさん。ミズクラゲなどは予備水槽で飼育し、大きくなったら展示室へ移す
水槽の水を浄化するろ過装置や水温調節の機械などを見学。裏側はどこもかしこもパイプだらけ。生き物によって適切な水温を保っています。展示室のほとんどの水槽の水は1時間で総入れ替えしているのだそう!
こちらは飼育員が毎日水族館の最新ニュースを掲示している「飼育最新情報」掲示板。「健康チェックのため休んでいたトドのイチローが再展示された」などのニュースをここでチェック。

そのほか、生き物たちの体調管理を行う実験室や調餌(ちょうじ)室を見学した後、建物の外へ。
こちらは「潮目の大水槽」に魚を運ぶ「移動式水槽」。大型活魚トラックで運ばれてきたカツオなどをいったんここに入れ、クレーンを使って最上階まで持ち上げ、大水槽に沈めてから、手前の壁をそっと開いて移します。内側の網目模様は、魚が狭い水槽の壁面に衝突しないよう、工夫したものです。

「カツオやマグロははるばる奄美大島から集めてくるのですが、現地のいけすで餌付けを行い十分に体力をつけ、その後活魚トラックで4日間かけてここまで運びます」と船生さん。

最後に、お子さんに人気という、触って学べる標本を紹介してもらいました。
ゴマフアザラシの毛皮をなでなでしたり……
▲ゴマフアザラシ(はく製)の毛並みはやわらかくてふかふか

予備の歯がぎっしり並んだ鮫の歯の標本にびっくりしたり。
▲大きな獲物を噛んで歯が折れてしまっても大丈夫。新しい歯が続々とスタンバイしている

さらに、水族館のスゴさを実感したのがこちらの板。
水槽に使われているアクリル板です。なんと厚さ35cmになるよう板をいくつも貼り合わせて使っているとのこと。「潮目の大水槽」の水量は2,000トン以上。これくらいの厚みがないと重みに耐えられないのです。日本が開発した世界に誇る技術です。

バックヤードツアーはこれで終了。華やかに見える水族館ですが、敷地の3分の2は裏側。展示室を支えるさまざまな工夫と技術が詰まっていました。

6.「アクアマリンえっぐ」と「蛇の目ビーチ」で思い切り遊ぼう!

大充実の展示、バックヤードツアーと見てきましたが、「アクアマリンふくしま」にはほかにもおすすめのポイントがあります。
それは、子どもたちが学びながら楽しめる場所があるということ。

展示室の先にある「アクアマリンえっぐ」は、「未来」を考える体験型施設。子ども目線の水槽や工作コーナー、絵本コーナーがあり、小さなお子さんも生き物を身近に感じながら楽しい時間を過ごせます。
▲ふかふかソファでくつろぎながら、さまざまな角度で水槽を眺められる
▲小名浜港で毎朝採集するプランクトンを生きた状態で観察できる。ボランティアスタッフが手伝ってくれるので子どもも安心
▲はく製やサメの歯を触って学べるコーナーも
▲「シーラカンスの世界」コーナー。洞穴の奥にシーラカンス(模型)がいるよ!懐中電灯で探してみよう

また、施設内の釣場で自ら釣った魚をその場で調理、食べることのできる「釣り体験」や、炭火焼体験やかつおぶし削り体験など、各種体験コーナーも充実(それぞれ別料金が必要)。これは家族やグループで楽しむのに最適ですね!

そして、「アクアマリンえっぐ」を抜けると、そこには水族館とは思えない砂浜が広がっています。
その名も「蛇の目ビーチ」。
広さ4,500平方メートルの敷地に磯・干潟・砂浜が再現された、世界最大級のタッチプールです。
安全に配慮された環境の中、はだしで水の中に入り、ヒトデやナマコなどの海の生き物たちとふれあうことができます。
▲砂浜をはだしで歩くだけでも楽しい

7.レストラン「アクアクロス」で魚介料理を

たっぷり遊んだらお腹が空きますよね。お昼はぜひ、館内のレストラン「アクアクロス」へ。ガラス張りの壁から光が降り注ぐスペースで、魚介類を中心にした豊富なオリジナルメニューを楽しめます。
▲天井が高く開放感いっぱいのレストラン「アクアクロス」(写真提供:アクアマリンふくしま)

「アクアマリンふくしま」では、海の恵みを将来にわたって安心して食べられるよう、数が多く資源量の安定した魚介類を食べる運動「ハッピーオーシャンズ」に取り組んでいます。レストラン「アクアクロス」で提供されるのも、そうした魚たちです。
▲「ヘミングウェイのカジキメンチセット」(880円・税込)は、作家ヘミングウェイの小説「老人と海」がテーマのメニュー。海鮮汁とご飯、サラダ、ドリンクバー付き

食後のデザートにお試しいただきたいのが、「アクアマリンふくしま」のシンボル、シーラカンスを模したオリジナル商品、「ごんべ焼き」。アフリカではシーラカンスを「ゴンベッサ」と呼ぶことからこの名をつけたのだとか。
たまごの優しい味の生地の中に餡が詰まっています。
▲ごんべ焼き(280円・税込)。中身は小倉、クリーム、チョコの3種類ある

隅々まで満喫して建物を出ると、上から「ゴーゴー」という大きな音が聞こえてきました。あっ、あれはトドの鳴き声……!
ちょっぴり名残惜しい気持ちで、水族館を後にしたのでした。

「幼い子どもは生き物を見るだけで楽しめますし、少し大きくなったら環境についても考えてほしい」藁谷さんはそう話していました。
派手なショーはないけれど、生き物が生きる自然環境をまるごと体で感じ、学ぶことのできる「環境水族館アクアマリンふくしま」。近くには「スパリゾートハワイアンズ」もあり、家族旅行にもぴったりです。見て、学んで、遊ぶ、充実の水族館体験をぜひ。

(撮影/池田宏)
髙松夕佳

髙松夕佳

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。文芸、芸術、絵本、育児等に関する記事や書評の執筆、書籍編集、翻訳など多数。全国各地への取材では、土地ことばや風景印、スタンプを集めるのがひそかな楽しみ。

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