神秘的な地底空間「あぶくま洞」には大自然の不思議と感動がいっぱい!

2017.06.04 更新

福島県田村市にある「あぶくま洞」は、鍾乳石の種類と数の多さでは東洋一の鍾乳洞ともいわれています。およそ8000万年の歳月をかけて自然がつくりだした造形美とそれらを美しく演出する光の芸術はロマンチックでカップルにも大人気。2016年には福島県唯一の「恋人の聖地」にも選定されたと聞き、太古のロマンを体験しに行ってきました!

JR磐越東線の神俣(かんまた)駅からタクシーで5分ほど山道を走ると、あぶくま洞に到着します。ここはもともと石灰岩の採石場。目の前には採掘の跡も生々しい白い岩山がそびえています。

鍾乳洞が発見されたのは昭和44(1969)年。次の採石場を求めて山をダイナマイトで爆破した作業員が偶然見つけたのだそう。開洞は4年後の昭和48(1973)年、約40年前のことです。
▲白い石灰岩がむき出しの岩山。この中にあぶくま洞はある

約8000万年をかけて形づくられてきたという大きな鍾乳洞が、誰にも知られることなくひっそりと存在しつづけていたなんて……。まさに大自然のロマン! 
しかもここあぶくま洞は、鍾乳石の種類と数では東洋一ともいわれる鍾乳洞だと聞けば、自然と期待が高まります。

雨水と石灰岩がつくる鍾乳石

見学できる洞内は全長約600m。人口通路の完備された一般コース(大人1,200円・税込)に加え、途中、アドベンチャー気分を満喫できる探検コース(一般コース料金にプラス200円・税込)を進むルートもあります。今回は、よりスリルを求め、探検コースを行くことに。
▲「あぶくま洞」の洞内マップ(画像提供:あぶくま洞管理事務所)

「コース上には階段が全部で300段ほどありますし、特に探検コースは足場が不安定なところが多いので、動きやすい服装と靴でお越しください」と、今回特別に案内してくださった、あぶくま洞管理事務所の青木菜々さん。

洞内温度は年間通して15度程度。夏場は外との気温差が大きく寒く感じるので、羽織るものが一枚あるとよいとのこと。逆に冬は暖かく感じてコートを脱ぐ方が多いそう。
▲鍾乳石がつくられる素となる石灰岩の壁の間を縫って歩く

いざ、洞内へ。湿度約90%とあって、空気はしっとりしています。
ピチャン、ピチャン、という水の音が聞こえてきました。

「鍾乳石は、雨水の作用でできるんですよ。雨水は降ってくる途中に大気中の二酸化炭素を吸収します。さらに地中に染み込む際には、腐食した生物が発する二酸化炭素も吸収して、酸性になります」と、青木さんが教えてくれます。

その酸性の水がアルカリ性の石灰岩の上に落ちて、長い歳月をかけて石灰岩を溶かしていくのですが、その際、石灰岩から溶けだした炭酸カルシウムが、洞穴の天井や壁面を流れるうちに再び結晶化。そうしてできるのが鍾乳石なのだそうです。
▲光っているのは、今も炭酸カルシウムを含んだ水が流れ続けているところ。これがのちに大きな鍾乳石へと成長する

大自然のアート「妖怪の塔」と「白磁の滝」

少し進むと、不思議な岩が。
「妖怪の塔」と呼ばれる奇岩です。
どことなく、映画「スター・ウォーズ」に登場する“ダース・ベイダ―”に似ているような……。
こちらは「白磁の滝」という鍾乳石。ライトに照らされた表面は、白くてなめらかな陶磁器のようです。結晶化して間もない鍾乳石は、とくに真っ白できれいなのだそう。

いざ、冒険気分を味わえる「探検コース」へ!

▲ここが運命の分かれ道!探検コースは右へ

歩き始めて200mほどで、行く手が2つに分かれました。今回は右手、全長120mの探検コースを進みます。人口通路を歩けばよかった一般コースに比べて足元の悪い探検コースはかなりスリリングとのこと。

コースに入るなり、ザーザーとすごい水音が。
「天井が低くなりますので、頭上注意でお願いします」
青木さんの声が洞内に響きます。

まず見えてきたのが、光に美しく映える「洗心の池」。
▲光に照らされた水は透明度抜群で、本当に心が洗われそう

このあたりから鍾乳石が増えてきました。これまで見てきた石灰岩とは明らかに違うなめらかな姿に、鍾乳石と石灰岩の違いを実感。
鍾乳石は天井いっぱいに広がっています。一つひとつの石を見たいけれど、足元や頭上にも注意が必要なので、なんだか忙しい!さすが「探検コース」です。
▲こんなふうにかがまなくてはいけないポイントもしばしば。心配な方は、ニット帽をかぶるのもおすすめ

洞内は意外と広いんだなあと思いながら腰を伸ばしていると、「実は、公開部分はごく一部なんです」と青木さん。

公開されているルートの奥に、職員の方さえも足を踏み入れることが禁じられている未公開エリアがなんと2,500m以上も広がっているのだとか。そこでは破格のスケールの鍾乳石がいくつも発見されており、学術的にも貴重な研究資料となっているそう。大自然の不思議は奥が深~いのです。
▲「地底の精霊」。ニョキニョキ生えている鍾乳石が精霊のように見える

あのう、さっきから独特の筆跡の名札が立てられていますが、これは……?
「1969年に鍾乳洞発見に携わった方々が名づけ、設置されたものです」(青木さん)

なかなか独特のネーミングセンスですが、よくみると鍾乳石の特徴を見事に言い当てていて、観察が楽しくなってきます。
思ったより険しい道のりに、重い機材を担いだカメラマンの息が上がってきました。
「探検コースを選ぶ場合は、荷物は最小限にしたほうがよさそう」と思いながら進んだ先に……
じゃーん!
あぶくま洞最大のホール、「滝根御殿(たきねごてん)」が現れました。ここで探検コースは終わり、一般コースと合流です。

最大の見どころ、「滝根御殿」は鍾乳石の宝庫

高さ29mの巨大空間はどこか厳粛で、歴史ある大聖堂のよう。実際、毎年冬季期間中にはここでさまざまなジャンルの音楽コンサートが開催され、人気を博しているとのこと。見どころの鍾乳石はさまざまな色に美しくライトアップされています。

「滝根御殿」はまるで鍾乳石の博物館。見渡す限り鍾乳石です。ここでしか見られない、珍しい種類の鍾乳石がざくざく見られます。

1cm伸びるのに70~100年かかると言われる鍾乳石は、でき方の違いで主に3種類に分けられます。

まずは「石筍(せきじゅん)」。上から垂れた水滴が地表で再石灰化し、次第に上へと筍(たけのこ)のように伸びていく鍾乳石です。
上から垂れる水滴がそのまま再石灰化していったのが「つらら石」。
下から伸びる石筍と上から伸びるつらら石が合体すると、「石柱(せきちゅう)」になります。

青木さん曰く、「石柱こそが、鍾乳石の最終形です!」
このポイントを押さえたうえでそれぞれの鍾乳石を見てみましょう。
▲洞穴シールド(左上の白いつらら状の石)は、上部が円盤状になっている非常に珍しい鍾乳石で、通常のつらら石とは異なる。下からは石筍が伸びてきていて、もうすぐ石柱になるかも?
▲水しぶきが頻繁に跳ねる場所で形成される「洞穴サンゴ」。跳ね返ったしぶきが岩に付着しつづけて結晶化する
▲「白銀の滝」。石灰成分を含んだ水が壁を伝って成長した、いわば鍾乳石のタペストリー
▲再結晶化したての鍾乳石は、手触りなめらか。つるつるして気持ちいい。ざらざらした石灰岩と触り心地を比べてみるのも楽しい
▲「クリスタルカーテン」。石灰成分を含んだ水が流れ、幕のように結晶化した鍾乳石。水が伝わった線が透き通るほどに薄いものは大変珍しい
▲「ボックスワーク」。天井や壁面に網目状に形成される、非常に稀少な鍾乳石
写真右寄りの上部に見える、クラゲの大群のような部分は、「ビッグフローストーン」と呼ばれる珍しい鍾乳石です。壁面を流れ落ちるしずくが再結晶化し、滝のようになったもので、こちらは高さ20m。国内5位の大きさですが、洞内の未公開部分にはなんと国内最大、45mのものがあるのだそうです。
なかでも驚いたのが、「滝根の斜塔」と名付けられた、こちらの鍾乳石(写真中央下)です。不自然に曲がっていると思いませんか?石灰岩を含んだ水の流れまでが斜めになっているため、できあがってから曲がったとしか考えにくいとのこと。

よく見ると、斜め上にも不自然に切れた「つらら石」が。もしかしたらこの2つはかつては「石柱」で、地殻変動によって巨大な力が加わった結果、ポキッと折れたのではないか……? 
太古のミステリーに思いを馳せ、ぞくぞくします。

「そして、こちらが鍾乳石のラスボスです!」
青木さんがテンション高めに叫ぶ先には……
「黄金柱」と書かれた巨大な石柱が!
ここまで大きな石柱に成長することは極めて珍しいのだそうです。いったい何万年かかってできたのだろう……と、思わずため息が。

洞内に響く、「誓いの鐘」

さて、2016年に「恋人の聖地」に選定された「あぶくま洞」。先ほど通った探検コースと一般コースの合流地点から、一般コースを少し逆戻りしてみてください。滝根御殿に向かう途中に”聖地スポット”があるんです。
▲洞内に設置された「誓いの鐘」。鳴らすとかなり遠くまで音が響く

鐘の近くには、ピンクのハートのイルミネーションも光っていて、ロマンチックな気分を盛り上げます。ぜひここにも立ち寄ってみてくださいね。

第2の見どころ「竜宮殿」

まだまだ見どころは続きます。
高さ約13mのホール、「竜宮殿」にやってきました。ここにも、「滝根御殿」にはない個性的な鍾乳石がたくさんあるとのこと。
▲「きのこ岩」。見上げると、表面の凹凸がきのこのよう
▲「樹氷」(左)と「クリスマスツリー」 

一見そっくりなこの2体ですが、実は左の「樹氷」のほうがステイタスは上。
よく見ると天井についていますよね。つまりこれは「石柱」、完成形です。一方、天井についていない「クリスマスツリー」は石筍で、まだまだ未熟者なのだそう。

それにしても2つ並んでここまで大きくなったというのはかなり珍しいこと。長い間隣り同士で生きてきたんでしょうね。
▲「リムストーン」。上部から順繰りに水が流れ落ちていくことによって壁が形成され、棚田のようになった珍しい鍾乳石

最後の見どころ、幻想的な「月の世界」

あぶくま洞の最後を飾るのが、「月の世界」と呼ばれる空間です。
石筍、石柱、リムストーンなど、主な鍾乳石がすべて見られる貴重な場所で、美しい光の演出を楽しむことができます。日本の鍾乳洞で初めて舞台演出用の調光システムを導入、夜明けから夕暮れまでの太陽の光の移り変わりを約2分間のサイクルで表現しています。
▲夜明け
▲昼間
▲夕暮れ

刻々と変化する光によって浮かび上がる鍾乳石の美しい形。フィナーレにふさわしいロマンチックな演出にうっとりします。

鍾乳洞で熟成させた、とっておきワインをお土産に

出口にほど近いところに、なぜかワイン貯蔵庫が。
ここでは、地元・田村市滝根町で採れた山ブドウを使ったワイン「北醇(ほくじゅん)」を貯蔵しています。年間通して気温変動の少ない洞窟内で半年~1年ほど寝かすと、味がまろやかになるのだそう。
酸味と渋みが癖になる、とリピーターも多いロングセラー商品です。
大自然がつくりだした鍾乳洞の中でじっくり熟成した地元産山ぶどうワインだなんて、なんだかロマンチック!
▲「あぶくまわいん 北醇」(720ml)は売店で購入できる。通常貯蔵1,600円・洞内貯蔵2,000円(いずれも税込)

これで洞内の見学は終了です。
1cm成長するのに70~100年かかるといわれる鍾乳石の神秘にうっとりし、探検コースではハラハラドキドキ、そして最後にはまるで舞台のような「月の世界」を堪能。わずか1時間足らずとは思えない、充実の鍾乳洞体験でした!

洞窟の外にも広がる「恋人の聖地」

洞窟から外に出ると、空気がさわやかです。敷地内の斜面に広がる庭園の中ほどにも「誓いの鐘」がありました。
あぶくま洞では2017年6月10日(土)~7月2日(日)の期間中、ラベンダー園が開園されます。敷地内の斜面一面に約5万株のラベンダーが咲き誇るガーデンを自由に散策できるほか、摘み取り体験や手芸教室も。

さわやかなラベンダーの香りに包まれながら「誓いの鐘」を鳴らすなんて、考えただけでロマンチックです。昨年はここでプロポーズをしたお客様もいらしたそうですよ!
▲ラベンダーが満開の時期はとくにおすすめ(写真提供:あぶくま洞管理事務所)

スリル満点の探検コースを共に歩き、さまざまな形の鍾乳石を学びながら大自然の神秘に驚き、美しい「月の世界」を堪能した後に、ラベンダー園で「誓いの鐘」を鳴らす――2人の絆がぐっと深まる旅に、出かけてみませんか。

(撮影/池田宏)
髙松夕佳

髙松夕佳

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。文芸、芸術、絵本、育児等に関する記事や書評の執筆、書籍編集、翻訳など多数。全国各地への取材では、土地ことばや風景印、スタンプを集めるのがひそかな楽しみ。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP