焼きとり日本一の街・久留米で、巻物串発祥の店「鉄砲」を訪ねる

2017.05.21 更新

日本人が大好きな焼き鳥。ついつい仕事帰り、ビールと一緒に食べたくなる~!って方も多いのではないでしょうか。そんな日本人のソウルフード・焼き鳥の日本一が、福岡県久留米市だと知っていますか。何の日本一?久留米の焼き鳥の特徴って?どんなメニューがあるの?…全部お答えします!

焼き鳥店が密集!久留米市は焼き鳥の街

焼き鳥好きの日本人。焼き鳥屋が多く、街全体で力を入れている“焼き鳥の街”は日本各地に点在しています。中でも「全国七大やきとりの街」と呼ばれる都市は、北海道の美唄(びばい)市、室蘭市、福島県福島市、埼玉県東松山市、愛媛県今治市、山口県長門市、そして福岡県久留米市。
▲“やきとりの街”の焼き鳥は各地でそれぞれの特徴がある。埼玉・東松山の「やきとり」は鶏肉ではなく豚のカシラ肉に特製味噌だれをたっぷり

久留米市は、福岡市、北九州市に次いで、福岡県で人口第3位の都市。そんな久留米市、何が焼き鳥の日本一かと言うと、その答えは“人口比”。人口1万人あたりの焼き鳥店の数が2003年当時7.46軒で日本一だったのです(同年・久留米市ふるさと文化創生市民協会が「焼きとり日本一」を宣言)!それだけ久留米市では焼き鳥が愛されている、ということ。

その後2005年に市町村合併により久留米市の人口が30万人に増加。残念ながら埼玉県東松山市に次いで日本2位になってしまいましたが、「焼きとり日本一」を宣言した街として、街全体で「久留米焼きとり」をPR。毎年10月には「久留米焼きとり日本一フェスタ」を開催し、多くの焼き鳥ファンを喜ばせています。

串に刺せばすべて“焼き鳥”! さらに、巻物串もあるからメニュー豊富に

▲炭火でじっくりと。肉の香りが食欲をそそります

豚肉+玉ねぎの串に甘いタレと洋ガラシを付けて食べる「室蘭やきとり」や、豚のカシラ肉+長ネギの串に味噌だれを付けて食べる「東松山のやきとり」、鉄板で鳥皮をこんがり焼く「今治やきとり」など、各地には特徴となる焼き鳥がそれぞれあります。そこで言うと「久留米焼きとり」の特徴は、“メニューの多さ”。串を刺せば何でも“焼き鳥”になるんです。
▲「焼とり鉄砲」では焼き鳥メニューだけで25種類も!

豚バラ串、牛タン串、牛サガリ串…ほか、人気なのがアスパラやうずらの卵など、色んな食材をベーコンで巻いた「巻物串」。福岡県において焼き鳥メニューはバラエティー豊か。ぎんなんや海老など、旬の食材も串に刺していれば焼き鳥のメニュー欄に載っています。

中でも「巻物串」はお店によってオリジナルのものがあったり、トマトやチーズなど子供が好きな食材が巻かれていたりと、人気のメニュー。“何でも串に刺せば焼き鳥”“何でも巻いて巻物串に”のゆる~い特徴で、焼き鳥のメニューが豊富になったのでしょう。
そしてこの巻物串、発祥の店が久留米市にあるんです。
▲巻物串発祥の店「焼とり鉄砲本店」。道路に面したテラス席もあります。夏はココでビールが最高でしょうね

西鉄久留米駅から徒歩8分ほどの場所にある「焼とり鉄砲本店」は、1979(昭和54)年開業のお店。現在は本店を含め4店舗を構え、うち3店舗は「焼とり鉄砲」、1店舗は和食の店「魚処きのした」を営業しています。

店内は、というと…炭火の煙でもくもくしているイメージだったので、油が壁や床に染み付いたようなカウンター席ばかりかと思えば、いえいえ広々とした清潔感溢れる個室中心の店でした。5年前に店舗をリニューアルし、2名からでも個室でゆっくり楽しめる店に。もちろん、カウンター席もあります。
▲2名~40名まで収容できる個室があります
店の入り口から入って正面に見えるのが、店名の由来にもなっている「鉄砲」のオブジェ。織田信長が鉄砲を使った戦術で成功を収めたことにあやかろうと、「鉄砲」と名付けられたそうです。

この日は営業時間前に伺ったため、厨房は串刺し作業の真っ最中。
鳥皮や砂ずりなど、下ごしらえした人気の串が次々とバットの上にキレイに収められていきます。こちらの店では、毎日13時~17時までが串刺しの時間。あらゆる焼き鳥が、この時間に仕込まれているのです。
▲こちらはスタッフさん。店長の井上絢矢(じゅんや)さん含め5名ほどで作業されるそうです

本数はだいたいどのくらいですか?の問いに、井上さん曰く「う~ん、あんまり数えないからなぁ。だいたい5,000本くらいですかね?」と。すごい!
▲玉ねぎを刺したあと、次々と鳥皮を畳んで刺していきます
▲キレイに並べられた鳥皮。同じ大きさで串に刺すのが難しいそうです
▲こちらは砂ずり。地域によっては砂肝と呼ぶところもありますね
▲1つのバットにだいたい100本くらい並びます

「巻物串」の誕生は、一人の男性から

そもそも、「久留米焼きとり」の始まりは昭和30年代の屋台。焼き鳥とは言いながら、鶏肉メニューはあまりなく、ダルム(主に豚の腸)や豚バラが中心だったそう。リーズナブルで手軽な「久留米焼きとり」は、久留米のゴム加工工場で働く方や医学生に人気だったとか。

そして1979年。リーズナブルで手軽な焼き鳥を、もっと美味しく老若男女みんなに食べてもらいたい、という思いを持った男性がいました。関西のホテルで料理の修業をしていた創業者の木下敏光(としみつ)さんです。木下さんは、食材の組み合わせを独自に研究し、当時高級食材だったアスパラガスを豚バラで巻く「巻物串」を誕生させます。

そして、ゆっくり落ち着いて食事をして欲しいと、ここ久留米に屋台ではなく、「鉄砲」という店舗を構えます。そこで焼き鳥とともに巻物串を提供し始めると、その美味しさと手軽さから瞬く間に人気となり、全国各地で巻物串が展開される現在に至ります。
▲左から「えのき巻」「アスパラ巻」「しそ巻」各200円(税込)

食材を巻く肉にベーコンを使用する店舗も多いですが、「焼とり鉄砲」では豚バラ肉を使用します。豚の旨みと甘みが中の具材に染み込むため、より素材そのものの味が活きるのだとか。燻製しているベーコンだと、どうしてもベーコンの味が強くなってしまうそう。

日々新メニューが誕生する「巻物串」の進化

アスパラ巻に始まった「巻物串」は、えのき巻やしそ巻などとともに定番メニューとして定着しています。また、久留米の焼き鳥店では、お店ごとにオリジナル串があるのも楽しみの一つ。「焼とり鉄砲」でも日々新しい巻物串を考案し、メニューに載ることも。人気が高ければそのまま定番メニューとして提供されるそうです。
コチラは店長・井上さん考案の「レタチーズ巻」(200円・税別)。チーズを包んだレタスを豚バラ肉で巻いた逸品。コクのあるチーズと豚肉の脂の旨みをさっぱりしたレタスの食感が中和しています。女性好みの串ですね!こちらは定番メニューとして人気の串になっています。
コチラは豚バラ肉ではなく、鳥皮で巻いた「鳥皮のニンニク巻」(150円・税別)。厳選した青森産のニンニクを使用しているため、翌日のニンニク臭の心配なし!甘辛いタレがたっぷり絡んでいて、美味し~い!香ばしく焼き上げた鳥皮とほっくりニンニクが相性抜群です。

センポコ、ダルム…珍しい部位も、「久留米焼きとり」の特徴

「久留米焼きとり」の特徴としてもう一つ挙げられるのが、センポコ、ダルムといった聞きなれない部位のメニュー。センポコは主に牛の大動脈、ダルムは主に豚の腸です。
▲手前:ダルムの唐揚げ(450円)、奥:センポコ塩焼(420円)※ともに税別。センポコは串でも食べられます

「久留米焼きとり」が誕生した昭和30年代の屋台では、鶏肉よりもこれら内臓系の肉が多かったのは前述の通り。その理由としては、久留米に肉卸業者が多くあり、余る内臓系の部位を安く入手しやすかったからだと言われています。今でも、久留米の焼き鳥店ではダルムやセンポコは定番メニューとして残っており、地元の方に愛されているのです。

え、大動脈や腸?と思わずに、一度食してみてください。味はもちろんですが、センポコはコリッと、ダルムはホルモンらしい弾力があり、いずれも食感まで楽しめる食材です。

もくもくと立ち上る煙…これぞ焼き鳥の醍醐味!

「焼とり鉄砲」では焼き鳥メニューが常時25種類以上揃います。なので、焼き場は常にフル回転!もくもくと煙が立ち上っています。「串は焦げないよう先端に大きな具を、手元に小さな具を刺す」「なるべく同じタイミングで提供できるよう、火の入りにくい串から先に焼く」など、細かい配慮もされつつ焼かれています。
「切る」「串で刺す」「焼く」。調理はシンプルだからこそ丁寧に。塩や豚肉、野菜なども厳選したものを使用しています。
▲どれにしようか迷う~って方は、とりあえず7本の串がセットになった「焼とりコース」からどうぞ

お勧めは何ですか?の問いに、井上さんが答えてくれたのが、「焼とりコース」。つくね、牛サガリ、ねぎ焼、アスパラ巻、えのき巻、しそ巻、手羽先の7本の串が付いて1,250円(税別)。福岡県では焼き鳥は、酢醤油のタレがかかったキャベツとともに提供されます。

そしてこのキャベツが、まさに万能選手!
焼き鳥を待っているときは、キャベツのみでお酒のアテに。種類の違う料理を味わうときは、合間に食べて口直しに。焼き鳥と一緒に串に刺して食べるのもサッパリしてお勧めです。

「焼とり鉄砲」をはじめ、ほとんどの店舗でキャベツはお替り無料なので、ぜひ福岡県の焼き鳥での定番・キャベツも味わってくださいね。
▲一番人気の串は「鳥皮」120円、「豚バラ」「つくね」各150円(すべて税別)。鳥皮とつくねは基本はタレですが、塩でも対応してもらえますよ

久留米市民が愛してやまない、焼き鳥店は街の至る所に

今や久留米市の焼き鳥店は約200軒ほどあると言われています。繁華街では、赤ちょうちんを掲げた焼き鳥の店が軒を連ね、夜になると華やかなネオンが灯ります。今回は巻物串発祥の店「焼とり鉄砲」を紹介しましたが、魅力ある焼き鳥屋さんは他にもたくさん!それぞれの店にオリジナル串や看板メニューがあり、味もさることながら、活気あふれる雰囲気や、人情味あふれる久留米という街で出会う人たちもきっと魅力的ですよ。
▲カウンターで乾杯!至福のひと時~

「帰りに、美味しかったよ!と声をかけて貰うのが、やっぱり嬉しいんです」と井上さん。
「仕事帰りに、大きな声で笑いながら焼き鳥をほおばったり、お客さん同士で知り合いになったり、会社の上司と部下らしき人たちが焼き鳥を食べて仲良くなっていたり。ちょっと立ち寄れる、という気軽さが焼き鳥屋の良いところですよね」と笑います。

リーズナブルで気軽に楽しめる焼き鳥屋は、2軒・3軒のハシゴだって可能。まだ知らない味や素敵な店主、お客さんに出会えるかもしれません。ぜひ、色んな店で「久留米焼きとり」を味わってみてくださいね。
桑野智恵

桑野智恵

フリーの雑誌ディレクター/ライター。福岡生まれ、福岡育ちの博多女。3つの出版社を渡り歩き、雑誌編集歴20年弱。食育アドバイザー、フルーツ&ベジタブルアドバイザー。

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