初夏の山形で紅花体験。見て、染めて、食べて、紅花の魅力を体感!

2017.06.26 更新

室町時代から紅花の栽培が行われている山形県。江戸時代には全国の出荷量の半分近くを占めていたと伝えられるほど「紅花」の一大産地として知られ、北前船で京都、大阪に染料の原料として出荷していました。今回は、当時の様子を知ることができる河北町(かほくちょう)の「紅花資料館」を訪ね、紅染めにも挑戦してきましたよ!

▲1mほどの茎丈に育つ紅花。鮮やかな黄色から徐々に赤くなっていきます

「紅花大尽」の館を改修して資料館に

山形県のほぼ中心部に位置する河北町は、かつて最上川舟運の紅花の集散地として栄えた町です。「紅花資料館」は、江戸時代から明治期に紅花商を営み、財を築いた富豪「堀米四郎兵衛(ほりごめしろべえ)」の屋敷跡を町が譲り受け、修復した後、1984(昭和59)年に開館したもの。
▲元富豪の屋敷跡に、改築した蔵などが立ち並ぶ「紅花資料館」
▲江戸末期に建てられた「格子片番所付長屋門(こうしかたばんしょつきながやもん)」が印象的な屋敷

門をくぐると、目の前に広大な庭園が広がります。敷地の広さは15,746平方メートル(4,762坪)。園内には紅花の歴史がわかる「紅の館」、紅染め体験ができる「紅染工房くれない」、江戸時代に農兵隊の武器庫として活用された「武者蔵」、納戸蔵として江戸時代中期に建てられた堀建式の蔵「座敷蔵」などが点在していて、散策しながら見学ができます。
▲小川が流れているほどに敷地が広くてびっくり

半夏に咲く花、紅の花

▲花が咲きだす合図のように、最初に一輪だけ咲く紅花

ところで、皆さんは紅花ってどんな花か知っていますか?茎丈は1mほどで、アザミのような棘があります。山形では紅花の開花時期を「半夏(はんげ)の一つ咲き」と表現します。

半夏(または半夏生/はんげしょう)とは夏至から11日目、新暦では7月2日頃のことを言い、その頃に紅花は一輪だけポッと咲くのです。それから、他の紅花も追うように咲き、7月10日頃が摘み頃になります。

紅花には棘があるので、摘むのは朝の4時半~5時頃。朝露に濡れている状態のほうが棘がささりにくく、摘みやすいのです。
▲7月の園内は紅黄色に染まります(写真提供:河北町観光協会)

紅染めに初挑戦!

園内を散策する前に、楽しみにしていた「ハンカチの紅花絞り染め」体験をするために「紅染工房くれない」へ行くことに!

教えてくれるのは「河北町べに花染研究サークル」の遠藤美代子さんと鈴木喜美子さん。

「よろしくお願いします~」
▲「最初に“紅花染のできるまで”を説明しますね」と遠藤さん(右)
▲摘んできた紅花の花粉を水で流し、そのまま置いて発酵させます(写真提供:河北町観光協会)
▲3日置くと自然に赤くなり、次第にしっとりとしてきます(写真提供:河北町観光協会)
▲4日経ってしっとりした状態になったら団子のように丸めます(写真提供:河北町観光協会)
▲丸めたものをせんべいのように平たく潰します。紙を敷き、風通しの良いところで完全に水分がとれるまで天日で干します。干してせんべい状態になったのが「紅餅(べにもち)」です(写真提供:河北町観光協会)
▲江戸時代の交易では、「紅餅」の状態で京都に運びました(写真提供:河北町観光協会)
▲今日作るのはコレ!絞り模様を入れた、可愛いピンク色の絹のハンカチ

ひと通り説明を受けた後は、染めるハンカチに輪ゴムを使って絞り模様を入れていきます。
模様は3カ所。
▲染める布は絹を使用。輪ゴムを伸ばしながらくるくるっと巻いていきます
▲伸縮性のあるゴムなので初めての人でも意外と簡単にできます

染液を作るにも手間がかかります。水を入れたポリバケツのような容器に紅餅を入れた布袋を浸しておき、日に3~4回水を交換し、黄色の色素を取り除きながら4日間かけて紅汁を抽出します。紅花の99%は黄色の色素で赤い色素は残りの1%だけだそう。

その紅汁に炭酸カリウムを入れると、不思議なことに液はみるみる赤くなっていき、ヌルヌルとした手触りに。昔は木あくを水に溶かした上澄み液を使用したとか。

「河北町べに花染研究サークル」の方たちが準備してくれた染液を使い、体験教室での染め作業はここからがスタート。
▲染液は35度まで温めてタライに入れ、色素を定着させ、発色を良くするためにクエン酸を加えます
▲クエン酸を入れるとたちまち泡が出てきました。伝統的な技法では梅酢を加えて行うそう

先程のハンカチをタライの中に沈め、ムラにならないように15分ほど布を操ります。
▲色が入るように、絞ったところもしっかりとこすって
▲鮮やかなピンク色になってきました
▲うわ、手も真っ赤!
▲仕上げは、氷酢酸(ひょうさくさん)を入れた水に15分ほどおいて色止め
▲水洗いをしながら「しっかり色入ってるね」と鈴木さん
▲水を絞った後に、輪ゴムを外して。しっかり巻いているのでなかなか取れません
▲きれいに模様が入りました!
▲完成!絞り模様を入れる位置によってハンカチの表情が変わりますね

草木染めで、これだけ鮮やかな色が出るのは紅花だけだそう。それもそのはず、他の草木染めは主に葉や樹皮などを使いますが、紅染めは花を使用する珍しい染め方なんです。きれいなピンク色をした優しい色合いのハンカチは、自分だけの一枚。輪ゴムを使って絞るので模様付けも意外と簡単です。大人から子どもまで気軽に楽しめますよ。

紅染め体験は、アイロンをかけて仕上げるまで約1時間のコース。ハンカチの大きさは2種類あり、今回染めたのは45cm×45cmのハンカチ(1,600円・税込・入館料込)。体験は5人から受付、7日前までに予約が必要です。

園内を散策!栄華を極めた当時に思いを馳せる

紅染め体験を楽しんだ後は、園内をのんびり散策。
今回、園内を案内してくださるのは「べに花ガイド会」の阿部俊(さとし)さん。「べに花ガイド会」に1週間前までに予約すると無料で案内してくれます(所要1時間~)。ご希望の方は河北町観光協会(0237-72-3787)まで。

最初は、それぞれの時代のお雛様や絢爛豪華な紅染衣装などを展示している「紅の館」から見学します。
▲「紅の館」には数多くの享保雛(写真)や古今雛などの逸品が飾られています

河北町がある村山地方は、最上川がもたらす肥沃で広大な畑地と盆地性気候とがあいまって紅花の生育に最適な条件を満たした地域。特に最上川河畔に位置する河北町は、紅花生産の中心地でした。江戸時代中期以降は全国生産量の半分以上を占めたと言われています。
▲「紅餅」を酒田まで運んだ小鵜飼舟を復元したものが展示されています

江戸時代、染料や紅の原料となる「紅餅」を最上川で酒田まで運び、酒田から北前船で京都へ。帰りの船によってお雛様や華やかな京文化が運ばれてきました。
▲等身大ほどの大きなお雛様。江戸時代の公家の衣装を忠実に再現しているそうです
▲「紅花は米の100倍、金の10倍という値がついていた」という、阿部さんの話を聞き、「紅餅」の当時の価値に驚くばかり。「紅花大尽」と呼ばれる豪商が存在していたことにも納得

続いて訪れたのは「武者蔵」。
▲7挺の大砲や武器が収蔵されていたという「武者蔵」

堀米家によって1853(嘉永6)年に建てられたもので、1863(文久3)年から1868(慶応4)年にかけては、幕府の命によって組織された農兵隊の武器蔵として活用した蔵だそう。
▲「武者蔵」には堀米家の当時の繁栄を表すものも展示されています。取引額が大きかったことを示す、上二下五玉のそろばんもその時のもの
▲園内には、朱印状を収蔵していた「御朱印蔵」が。唐破風向拝(からはふこうはい)付入母屋造の土蔵は、郷土の名匠の手によって1863(文久3)年に建てられたもの
▲あまりに庭が広いので、散策はヒールの低い靴かスニーカーで

「座敷蔵」は江戸中期頃の掘建式の蔵。当時6棟あった土蔵の一番蔵と呼ばれていたところです。
▲床の間の蹴込み(けこみ)には鶴と亀の彫刻が施され、襖絵は安政時代の伊達藩の絵師、縉斎(しんさい)の作
▲三方をガラス戸に囲まれた客間。日差しが気持ちいい!

出口近くの売店には、紅花染のスカーフや「べにばな茶」などお土産に喜ばれそうな品物がたくさん並んでいます。
▲コーヒーが飲めるスペースもある売店
▲紅花染のピンク色のスカーフが可愛い!こちらは1枚3,000円(税込)~
▲優しい色合いのスカーフも購入できます。1枚4,000円(税込)~
▲スリッパの産地、河北町らしいお土産品1,400円(税込)
▲食用紅花乱花200円(税込・写真左)、べにばな茶(焙煎種子入り)5袋入りで300円(税込)

女性の憧れ、紅の色。紅染めした絹のハンカチはもったいないので大事にしまっておきます(笑)
紅花に囲まれ、繫栄した時代に思いを馳せながら過ごすひとときは、とても満ち足りた時間でした。紅花が満開の時にまた来たいな!

撮影:佐藤友美

紅花にちなんだ料理を楽しもう!

山形市では、毎年、紅花の咲く時期に「べに街道キャンペーン」を行っており<2017年は6月17日(土)~7月17日(月・祝)>市内のホテルや料理店など8店舗で紅花にちなんだ料理が楽しめます。その中から一部をご紹介しますね。
▲紅の蔵「そば処・郷土料理 紅山水」の紅ご膳1,410円(税込)※提供期間:7月1日(土)~7月31日(月)11:00~15:00(写真提供:山形べに街道キャンペーン実行委員会)
▲ホテルキャッスル「和乃匠」の牛あみ焼重と紅花ドレッシングサラダ1,200円(税込)※提供期間:6月17日(土)~7月17日(月・祝)11:30~14:30(L.O.14:00)(写真提供:山形べに街道キャンペーン実行委員会)
▲紅の蔵「Cafe&Dining990」の魚介の紅花入りマリニエール1,700円(税込)※提供期間:6月17日(土)~7月17日(月・祝)11:00~14:30(写真提供:山形べに街道キャンペーン実行委員会)

他にも、山形七日町ワシントンホテル「三十三間堂」、山形グランドホテル「コーヒー&レストラン ラ・セーヌ」、ホテルメトロポリタン山形「最上亭」、水の町屋 七日町御殿堰「Classic Cafe」、山形まなび館「Dom Cafe」でも紅花にちなんだ料理を提供しています。
山形の花「紅花」をふんだんに使ったご膳を堪能できますよ。
※提供期間や時間は各店とも異なります。提供料理に関することは各店へ直接お問い合わせください。
紅花は口紅の原料として使われていただけでなく、「紅花で染めた布を身につけると血行が良くなり、体が温まる」と言われ、昔から女性に重宝されてきました。最近では顔のシミやシワの原因を取り除く効果もあると期待されています。

紅染め体験や紅花の料理を通して、山形の歴史を繋いできた紅花の魅力を再発見してみませんか?
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
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