まずはここを押さえておこう。香川・さぬきうどん巡りのツボ3店

2015.10.14

半ば自嘲気味に「うどん県」を名乗ってしまうほど、そこいら中にうどん屋のある香川県。その数は約700軒、ただ数が多いだけでなく、メニュー内容も営業スタイルもバラバラ。様々なうどんが楽しめる反面、訪れる店を選ぶとなると骨が折れる状態です。

そこで、まずここへ行けばさぬきうどんの何たるかが分かるという3店をセレクトしてみました。案内は不肖・麺通団のS原が務めさせていただきます。

レトロな雰囲気も一緒に楽しめる製麺所

まず最初は、恐らく香川にしかないタイプの店「製麺所付きうどん店」。普通は麺の製造だけで飲食はできないはずの製麺所で、うどんが食べられます。ここで紹介するのは坂出市の「がもううどん」。では行ってみましょう。
「がもううどん」の前に続く行列
看板は半分木々で隠れていますが、営業中は店の前に列ができているのですぐ分かるはず。駐車場に車を止めて列に並びましょう。入口までたどり着いたら、うどんが茹でられてる大きな釜の前で注文します。選べるのは「つめたいん」と「ぬくいん」の2種類と玉数のみ。うどんを受け取ったら、天ぷらやアゲを好みで選んでお金を払います。後は、出汁とネギを自分でかけて完成。出汁は熱いのが鍋、冷たいのはタンクの中に入っています。ちなみに私のおすすめは冷たい麺に熱い出汁ですが、県外の方にはぬるく感じられる方もいるそうなのでお好みで。オプションは大きなアゲがいちおしです。
オプションでいちおしのアゲ
ここまでで気づかれたかも知れませんが、メニュー数もシステムも必要最小限しかありません。これが製麺主体で、そのかたわらで食べさせてくれる「製麺所付きうどん店」の特徴。店内には食事用の席すら数えるほどしかなく、ほとんどの人が外で食べています。しかし簡素な店のつくりに反して、その味は絶品。麺づくりのプロがつくった出来たてのうどんは喉越しが抜群。ふんわりした表面が、素朴な出汁を程良くまとい、食べ終わった後も旨さの余韻がしばらく残るのがなんともいえません。特等席は店の前にある木の椅子。外で食べる開放感もこの味に一役買っているはずです。これでうどん小150円(税込)、アゲと合わせてもわずか250円(税込)ですから。なんてお財布にも優しい。また、昭和から時間が止まっているような店内も見所がいっぱいです。
オススメの冷たい麺に熱い出汁
がもううどん店内

名店の味を受け継ぐ珠玉のセルフ店

次は今ではすっかりおなじみになった「セルフタイプ」の店です。ちなみに自分で麺を温めてから出汁をかけるところまでやるのがフルセルフで、出来たうどんを席へ運ぶだけのものはハーフセルフと呼びます。さっきの「がもううどん」もセルフの仲間ですね。それはさておき、ここ「手打ちうどん 松岡」は、今時の小ぎれいなセルフ店とは全く趣が違う、非常に地味な印象のお店。一応街道沿いにあるのですが、看板は小さくて建物が道から奥まっているため、通り過ぎること必至。でも地味すぎる外観からは想像できないほど、ここのうどんは「旨い」んです。
「松岡」の外観。暖簾がかかっていないと通り過ぎてしまいそう
こちらもメニューは少なめ。しかもほとんどの客は、冷たい麺に熱い出汁をかけたかけうどん「ひやあつ」(小250円・税込)を頼みます。メニュー表に「ひやあつ」とは書いてないんですが。これはさっきの「がもう」でもおすすめした組み合わせ。さぬきうどんは、茹でた麺を一度冷水で締めることで、コシや喉越しが良くなります。それを湯で温め直すと、せっかくの冷水効果が薄れるので、冷たい麺に直接熱い出汁をかけて食べるわけです。出汁が少しぬるくなることより麺の状態を優先する、非常に香川県人らしい食べ方といえるでしょう。

「松岡」のうどんは、弾力が強く表面がツヤツヤ。全体がらせん状に捻れているのは「うどん打ち名人」と呼ばれた「宮武(現在は閉店)」の師匠譲りの技です。滑るような喉越しはまさに至福。加えて、さぬきうどんには欠かせない、イリコを使ったかけ出汁が素晴らしい。素朴すぎず上品すぎないギリギリのバランスに惚れ惚れしてしまいます。また冬場のみ登場する、根菜や鶏肉がたっぷり入ったあたたかい「しっぽくうどん」も絶品。
「松岡」の「ひやあつ」。ツヤツヤの麺にほれぼれ
セルフ店のもう一つの楽しみが、自分で選べる天ぷら類(1個110円~・税込)。中でもこちらのゲソ天は、分厚くサクサクした衣と、すっと噛み切れる柔らかなイカゲソがたまりません。藤原屋さんという老舗の天ぷら卸し店から仕入れていて、衣が黄色い昔風の天ぷらです。
老舗天ぷら屋「藤原屋」の天ぷら

恍惚の出汁に魅了される釜あげ専門店

ラストは、注文して席に座って待っていると、うどんが運ばれて来るタイプのうどん店。「一般店」とか「フルサービスの店」などと呼ばれています。こちら「長田(ながた) in 香の香(かのか)」は、釜あげうどんの専門店。釜あげとは、茹で汁と一緒に茹で釜から直接取った熱々のうどんを、出汁につけて食べるメニューです。水締めの過程を行わないので、独特のふわりとした食感や小麦の香りが強く楽しめ、人気があります。
白い暖簾がはためく「長田 in 香の香」
店は大きな通りに面していて、駐車場も看板も完備されているので、たやすくたどり着けるはず。昼しか開いてない店が多いさぬきうどん店の中では、比較的営業時間が長いので、ツアーに向いています。でも土・日曜や祝日は、開店前から行列ができていることもしばしばなのでご注意を。

まずレジでメニューを注文し、支払いを済ませたら、店のあちこちにたくさん置かれている「おちょこ」を取って、席を確保。このおちょこは、つけ出汁用ですが、お茶や冷水も兼用なので、飲み物が欲しい人は2個必要です。
つけ出汁&お茶用の湯のみ。店内のあちこちに置かれている
うどんが出てくるまで、レジ横に置いてあるご飯物を食べながら待つのも良し。そこにはなんとおはぎまで置いてありますが、これは香川の人は甘い物好きが多いためのようです。実際、おじさんがおはぎを食べているのをよく見かけます。
隠れた人気メニュー「おはぎ」
▲おはぎは、こし餡ときな粉が1つずつ入って200円(税込)

ほどなく熱々の釜あげうどんが運ばれてきます。お湯が白く濁っているのは、釜から直接取った証拠。茹で上がりのタイミングでしか出せない釜あげうどんが、これほど短い待ち時間で食べられるのは専門店の特権です。うどんと一緒に付いてくるのが、大きなトックリ。中には熱々のつけ出汁が入っています。

ここで小技をひとつ。トックリの口のヒモを持って、底をテーブルにつけたままゆっくり倒していくと、出汁を上手におちょこへ注げます。

出汁の中へネギとショウガを投入したら、いざ実食。
熱々の「釜あげうどん」
▲釜あげ(小)は250円(税込)

口当たりは、釜あげ麺独特のふわっと柔らかいものですが、しっかりとコシもあります。生地づくりから茹で加減に至るまで、釜あげを追求する専門店だから出せる麺。喉越しは、水で締めたものとはまた違う、滑るような感じが心地良く、どんどん箸が進みます。しかし最大のポイントは、ちまたで“恍惚の出汁”と呼ばれるつけ出汁。昆布とイリコを主体に、ウルメやメジカなど様々な素材の旨みが溶け合ったその味は、まさに恍惚と呼ぶにふさわしいもの。これがうどんの旨さを何倍にもしてくれるのは言うまでもありません。うどんを食べ終わっているのに、出汁を少しずつ飲んで余韻に浸っている人をよく見かけますが、その気持ちは痛いほどよく分かります。
以上「押さえておくべき3店」を駆け足で紹介しました。これを参考に、ご自分なりのツアーコースを組んでみましょう。それではよいうどんツアーを。
篠原楠雄

篠原楠雄

香川県のタウン誌・TJかがわ編集部で14年間在籍した後独立し、フリーライターに。5年間に渡り香川県内に新しくできるうどん店を取材し続けたおかげで、すっかりメタボ体質に。さぬきうどんブームを仕掛けた「麺通団」の初期メンバー・S原でもある。

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