“東洋のナイアガラ”群馬「吹割の滝」で、涼を感じる遊歩道散策

2017.08.09 更新

「吹割(ふきわれ)の滝」は、群馬県沼田市の片品渓谷にかかる名瀑です。幅30m、高さ7m。その圧倒的な迫力から、“東洋のナイアガラ”とも呼ばれています。周囲の遊歩道には吊橋や観瀑台もあり、緑の中を歩きつつ、さまざまなポイントから滝川を観賞することができます。夏でも涼風が吹き抜ける渓谷を、のんびり散策してきました。

落差15mの「鱒飛の滝」が最初の見どころ

吹割の滝へは、車なら関越自動車道・沼田IC下車、国道120号(通称「日本ロマンチック街道」)を尾瀬方面へ直進でおよそ20分。公共交通機関利用の場合は、JR上越線沼田駅からバスで40分ほど。東京からは、片道2時間半ほどで行くことができます。

この日は、東京から車で向かいました。目的地に近づくと、国道120号沿いにはおみやげ屋さんや飲食店が増えてきます。やがて道の左側に「吹割の滝 ←0.1km」と書かれた看板を発見。ここが遊歩道の入り口です。

遊歩道は滝を囲むように環状に整備されていて、反時計まわりに進みます。渓谷の東側斜面を下りて滝を間近に見たあと、川を渡って西側斜面を登り、再び国道120号に戻ってきます。
▲遊歩道入り口付近の坂道には、雑多な品ぞろえのおみやげ屋さんが
▲「手造りまんじゅう」1個100円(税込)。散策前の腹ごしらえにぴったり

渓谷斜面を下りきって川沿いに着くと、まず目に飛び込んでくるのが「鱒飛(ますとび)の滝」です。落差15m。ごうごうと大きな音を立てて、水がうねりながら落ちていきます。舞い上げられた細かなしぶきが、冷たくて気持ちいい。
▲鱒飛の滝。下り坂の途中から滝音が聞こえてくる(写真提供:沼田市教育委員会)

海から川を上ってきた鱒が、この滝から上流には行けなくなってしまうことから、かつては「鱒止(ますどまり)の滝」と呼ばれていたそうです。それがいつしか「鱒飛の滝」に。鱒の苦労が偲ばれます。

自然がつくりあげた雄大な芸術。奇岩・巨石に目がくぎづけ

鱒飛の滝をあとにして歩みを進めると、「般若岩」が姿を現します。ここ片品渓谷は奇岩・巨石の宝庫でもあり、自然がつくりあげたダイナミックな地形も見ごたえ充分。清流だけでなく、散策中は360度、全方位に心をうばわれる自然美が次々登場します。
▲般若岩。大きくえぐられたくぼみが、口をあけた般若の顔に見える(写真提供:沼田市教育委員会)
▲ごつごつした岩肌は、地質好き女子にはたまらない
▲岩肌を乗り越えて、さらに進むと……
▲ついに登場、「吹割の滝」!(写真提供:沼田市教育委員会)

ぱっくりと割れた大地と大地のあいだに、「どどどどどっ!」と白く砕けた清流がのみ込まれていきます。さすが“東洋のナイアガラ”といわれるだけあって、すごい迫力。
▲離れて見ると、その大きさがよくわかる

この滝は、約1300万年前の火山の噴火によってつくられた溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)という岩石からできています。およそ1万年前、約750m下流の片品川と栗原川合流地点に滝が誕生し、その後浸食によって現在の地点まで徐々に後退してきたそうです。1年で約7.5cm移動した計算になります。

名称の由来は、「まるで巨大な岩石が吹き割れたように見える」ことから。昭和11(1936)年には旧文部省より、「吹割渓ならびに吹割瀑」として国の天然記念物および名勝に指定されました。
▲滝を過ぎると畳千枚分の広さにたとえられる「千畳敷」が広がる
▲遊歩道は渓谷東側の斜面をゆるやかに登り始める
▲浮島橋を渡って、川中に浮かぶ浮島へ向かう
▲橋からの眺めもすばらしい。千畳敷の向こうに般若岩が見える

名匠・左甚五郎がつくった金色の観音像にお祈り

浮島にたどりつくと見えてくるのが「浮島観音堂」。平安初期の延暦14(795)年に創設されたという由緒あるお堂です。
▲現在のお堂は、昭和59(1984)年に新築されたもの
▲5m四方ほどの小さなお堂だが、おごそかな雰囲気が漂う

お堂の中には、名匠・左甚五郎(ひだりじんごろう)がつくったとされる、木彫り(金箔塗り)の浮島如意輪観音がまつられています。
▲一段高いところに安置されている金色の観音像

甚五郎は、寛永時代(1624~1645年)、「日光東照宮」の大造営に彫刻の棟梁として参加した名工です。あの有名な「眠り猫」をはじめ、数千もの彫刻を手がけたとされています。

東照宮完成後も何度か日光を訪れていたという甚五郎が、その帰りがけに付近の村に宿泊した際に、たった一夜で彫りあげたのがこの観音像だそうです。
▲観音像にお祈り
▲お供え用の線香は1本100円。火をつけると……
▲観音様が現われた!
▲長年、浮島観音堂に勤めている尾池さん(左)と星野さん(右)。お守りや干支のキーホルダー、おみくじも
▲道は吹割橋に続く。渡って渓谷の西側へ

緑のなかを散策。上から見下ろす滝も絶景

散策もいよいよクライマックスへ。渓谷西側の遊歩道はゆるやかな山道が続きます。

「詩(うた)のこみち」と名づけられた区間の道端には、この土地にちなんだ俳句が刻まれた石碑が並んでいます。
▲詩のこみち。道の右側に句碑が建てられている
▲俳句を鑑賞しながら山道を登ると、第一観瀑台が
▲割れた滝の形がはっきり見える。あらためて滝の雄大さを実感!

遊歩道には、全部で3か所に観瀑台が設けられています。上から見下ろすと、地形全体がはっきりと見えて、自然の力のすごさにあらためて感動します。高台から眺める滝もいいものですね。

第三観瀑台を通過すると遊歩道も終わりに近づきます。ゴールの目印は、赤い鳥居。
▲国道120号沿いの出口には「十二様(じゅうにさま)」といわれるお社が
▲ゴール付近にかかる吹割大橋からの景色
▲国道120号沿いの「六角堂」で一休み

約1時間、涼を感じながらの気持ちよい散策でした。このまま帰ってもいいのですが、せっかくここに来たのなら、ぜひ足を延ばしたいところが。

散策の疲れをバラ風呂で癒す。「老神温泉」へ

吹割の滝から車で約10分。20軒弱の温泉宿が集まる「老神(おいがみ)温泉」では、気軽に日帰り入浴が楽しめます。散策の汗を流してのんびりするのにぴったりですよ。

なかでもおすすめなのが「湯元華亭」。日帰り入浴専門の温泉で、4月~11月は10:00から20:00まで、12月~3月は12:00から21:00まで入浴できます(ともに土日祝日の営業時間)。
▲湯元華亭に近づくと、かすかに硫黄のにおいがしてくる

入館料は、3時間で大人700円(税込)。「打たせ湯」「寝湯」「岩風呂」などのほか、夏季は「足湯」を含めて男女日替わりで8種類のお風呂が楽しめます。ボディーソープ、シャンプー&リンス、ドライヤーは無料で、販売フェイスタオル、貸バスタオル、貸浴衣は各300円(すべて税込)。手ぶらで訪れても問題ありません。

女性にとくに人気なのが「バラ風呂」(5月から11月下旬まで、女湯のみ)。地元のバラ生産組合から仕入れた色鮮やかなバラが、毎朝、「寝湯」または「鏡の湯」に浮かべられます。バラがすーっと湯面をすべると、ほのかにいい香りが。入浴した妻も「ちょっとだけお姫さま気分を味わえました(笑)」と満足気でした。
▲色とりどりのバラが浮かべられるバラ風呂。周囲の緑とのコントラストが美しい
▲露天風呂も広々。聞こえてくるのはお湯の流れる音と、時折鳴く鳥の声だけ

老神温泉の泉質はアルカリ性の硫黄泉で、刺激が少なく肌にやさしい。筋肉痛や関節痛のほか、アトピー性皮膚炎をはじめ皮膚病にも効果が期待できるとされており、「美人の湯」とも言われているそうです。たしかに、入浴後は肌がしっとりして、心もちツヤが出た気がします。なにより、気分がほぐれて、散策の疲れも忘れてしまいました。
▲気軽に利用できる足湯(夏季限定)。足の疲れがじんわり癒されていく
▲足湯に浸かりながら木漏れ日を浴びていると、だんだんまぶたが重たく…

湯元華亭では、群馬の名産を使った料理を味わうこともできます。朝から散策をして、ちょうどお腹がすいていたので、お店の方おすすめの品を注文しました。
▲群馬名物のまいたけの天ぷらがついた「舞茸天ざるそば」950円(税込)
▲地域のブランドポークを使った「上州麦豚ロースカツ定食」1,050円(税込)
▲片品渓谷の景色を眺めながら食事が楽しめる

体を動かしたあとなので、ひときわおいしく感じられました。
吹割の滝の遊歩道散策は、体力に自信がない人にもおすすめです。登山ほどキツイ思いをすることなく絶景に出合え、自然の雄大さ、力強さを全身で感じることができます。
涼しい。爽快。リラックス。
片品渓谷の心地よい空気を吸いながら、緑のなかを歩いてみませんか。

写真:河野豊
相澤良晃

相澤良晃

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。地方生活を勧める雑誌や医療系情報誌の編集などを行う。趣味は将棋、フットサル。これまで編集を担当した本に『腎臓病の食事療法とかんたん献立』(池田書店)、『新しい自然免疫学』(技術評論社)、『新幹線を走らせた男 国鉄総裁十河信二物語』などがある。

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