盆栽の聖地!大宮盆栽村で癒し効果バツグンの盆栽ワールドに浸る

2017.07.13

日本を代表する芸術「盆栽 BONSAI」。埼玉県さいたま市には、名品盆栽の聖地として世界に知られる「大宮盆栽村」があります。2017年4月には第8回世界盆栽大会が28年ぶりにさいたま市で開催され、話題となりました。「大宮盆栽美術館」近くの盆栽園では初心者でも手軽に“マイ盆栽づくり”に挑戦できると聞き、行ってみました!

▲大宮盆栽美術館の盆栽庭園

大宮盆栽村があるのは、さいたま市北区盆栽町。東武アーバンパークライン・大宮公園駅で下車すると、そこはもう盆栽一色。
▲街灯には「盆栽村」の看板や美術館ののぼりが

道幅は広く、大きな邸宅の並ぶ閑静な住宅街といった趣ですが、よく見るとどのお宅の庭にも立派な植木や盆栽が……。

それにしても、いったいなぜこの地が「盆栽村」と呼ばれるようになったのでしょう。
大正12(1923)年、多くの盆栽業者の集まっていた東京都文京区千駄木周辺が関東大震災で大きな被害を受けると、多くの業者が東京を離れ、よい土と水に恵まれた大宮の地へ移り住んだのです。
大宮盆栽村は、そうした盆栽業者の自治共同体として大正14(1925)年に生まれました。最盛期の昭和10(1935)年頃には、約30の盆栽園が軒を連ねていたのだとか。

今は6軒の盆栽園が営業中。各園こだわりの盆栽を気軽に鑑賞することができます。
今回は、そのなかで洒脱で現代的な雰囲気の盆栽が人気の「盆栽町 清香園(せいこうえん)本店」を訪ねてみることにしました。

老舗盆栽園「清香園」で彩花盆栽づくりに挑戦!

清香園は嘉永6(1853)年創業の老舗盆栽園。昭和18(1943)年に東京から大宮の盆栽町に移り、現在では盆栽の販売やメンテナンスはもちろん、初心者向けの盆栽教室も開いています。
▲のれんをくぐった先には、販売用盆栽や苗木が並ぶ

「彩花(さいか)盆栽教室」は、NHKのテレビ番組「美の壺」や「オイコノミア」にも取り上げられるほど人気の教室。参加者の9割は意外にも女性なんだとか。

月に1度、季節に合った盆栽を合計7鉢つくることのできる、全10回コース(入会金10,800円、材料費込みの月謝8,400円・いずれも税込)の教室や、1日体験レッスン(7,560円・税込)は予約申し込みが必要ですが、実はふらっと訪れても大丈夫。平日の日中など、比較的空いている時間ならその場でマイ盆栽づくりを体験することができます(実費<苗・鉢代>3,240円~+講習料1,080円・いずれも税込)。
大宮出身で子どもの頃から盆栽が大好きだったという神山聡さん(写真提供:清香園)

今回教えてくださるのは、講師の神山聡さん。好みの盆栽のスタイルや要望を聞いたうえで、どんな盆栽にするか提案してくれます。
「今人気なのは、単品よりも寄せ植えでちょっと華やかに仕立てる『彩花盆栽』です」

盆栽というと「一盆一樹」、1つの鉢に1本の木が基本ですが、初心者が楽しむには手入れや値段の面で少しハードルが高い。そこで最近は、比較的若くて手頃な木を主木に草花と一緒に植える、即興性の高い「彩花盆栽」をおすすめしているのだそうです。
年々幹が太くなり、小枝も増えていくので、育てる楽しみも大きいと聞き、期待がふくらみます!

今回は夏に向けて、涼やかなイメージの盆栽をつくるべく、素材を一緒に選んでいただくことに。
▲豊富な種類の苗から選べる

メインとなる主木には、3本のヒメシャラを選びました。
「3本を1鉢に植えることで、雑木林のような風景をつくりだすことができます」と神山さん。
さらに白花ミヤマナデシコとセキショウを主木の下に添える下草としてチョイス。より自然な風景を目指します。

次は、鉢選びです。
▲サイズ、色、形のバリエーションが豊富なオリジナルの鉢から選べる

わー、いろんな鉢がありますね。
「主木のみの盆栽と違い、雑木林を表現する場合は、少し面積のある鉢を使ったほうが作品に広がりができます。ヒメシャラのように春に芽吹いて秋に紅葉する落葉樹には、釉薬(ゆうやく)のついた華やかなものがいいですよ」
▲選んだのは、こちらの涼やかな色合いが美しい鉢

鉢を決めると、全体のイメージがはっきりしてきて、テンションが上がります!

鉢の準備

素材が決まったら、次は下準備です。
▲盆栽づくりに欠かせない道具たち(左から針金切り、根かき、割り箸、やっとこ、ハサミ、ピンセット)

まずは鉢底の中央に開いた穴の上に網を乗せ、針金を10cm程度に切ったら、鳥居型に曲げます。
これを鉢の内側から外側に向かって通し、外側から飛び出た部分を倒して鉢に固定します。
▲網止めをした鉢の内側

次に、「根止め」用の針金を準備します。根止めとは、木を鉢に固定する作業のこと。盆栽は木の大きさに対して鉢が小さいため、木をしっかり鉢に固定し、根を止めておく必要があるのです。

先ほどより少し太めの針金を2cmほど切ります。それから網止めに使ったのと同じ太さの針金を植える木の本数分、鉢の直径の約倍の長さに切って、太い針金に巻きつけ、その針金を鉢の外側から内側に通したら、植え込み作業の邪魔にならないよう広げておきます。
▲鉢の下準備完了。鉢の中に巨大な蜘蛛がいるような形に

いよいよ植え込み作業へ

次に、鉢の底に土を入れます。
盆栽の苗は約2年間同じ鉢の中で過ごすため、排水性がとても大事。水はけのよい環境をつくるため、まずは赤玉土の大きめの粒(ごろ土)を敷きます。
▲底に敷いた網が隠れる程度に入れる

ごろ土を敷いたら、その土が隠れるくらい薄く、赤玉土の極小粒を入れます。
▲植え込み用の土は粒が小さくやわらかい

次に、苗の根ほぐしを行います。
苗をカップから出し、下のほうから360度回しながら、根をほぐしていきます。
「ここで古い土を払い、新しい土と入れ替えてあげるんです」と言いながら、ばっさばっさとほぐす神山さん。
▲大胆に根をほぐす神山さん

あの、なんか土と一緒に根っこが切れちゃってますけど……。
「大丈夫です、気にせずほぐしてください」
土がかなり飛び散るので、エプロン持参がおすすめです。

「半分くらいほぐれたら、鉢に入るくらいのサイズまでトリミングしてください」
▲さらに大胆に根っこをカットする神山さん……

そんなに切って大丈夫なのかな、とハラハラしながらも、残りの2本も根ほぐし完了。鉢にぴったり収まりました。
いよいよ植え込みですね!と鼻息荒く手を動かしていると、「ちょっと待ってください。その配置で大丈夫ですか?」と微笑む神山さん。

「盆栽には正面があり、ゆるやかな三角形を描くのが基本です。真ん中に背の高い木を置き、幹や枝ぶりの形がよいところを手前にすると、大木感が出て盆栽らしくなります」
ほんとだ、これじゃM字状で三角形じゃないですね……。

鉢は足の切れ込みが裏の目印。切れ込みのないほうを正面に向けます。
「それから、これは難しいのですが、木はただすっと立っているわけではなく、流れがありますのでそのへんも注意して」

株元をぎゅっと寄せ、中心より少し奥に配置するのもポイントです。手前に空間をつくることによって、奥行きが出るのだそう。
3本のヒメシャラの手前にオヤマナデシコを置き、土を入れます。

植え込み用土を鉢がいっぱいになるまで入れたら、割り箸でざくざく押していきます。根っこをほぐしてできた隙間に新しい土を入れてあげるイメージで。
▲木が動きやすいので、株元を押さえながら土を押していく

だいたい土が入ったなと思ったら、さっき準備した針金で株元を固定していきます。外側から内側に株元を押さえながら針金をひねるのですが、これはちょっと難しい……。
▲株を針金で鉢と固定する

ヒメシャラの後ろにセキショウを植えたら、首の長いジョウロでやわらかな水をたっぷりかけていきます。
「最初は鉢の底から茶色い水が出るので、下に水が抜けるところでかけるといいですよ」と神山さん。
▲鉢の底から水が出るくらいまで、たっぷりかける

仕上げの苔張り

土が水を吸ったら、こちらも水をたっぷり含ませた苔を土の表面に張っていきます。
苔張りはまさにパズル。少しずつちぎっては余白を埋めるように乗せ、ピンセットで押さえてしっかり植えつけていきます。
▲縁はピンセットで押し込んでいく

「そうだ、この余白を生かして道をつくってみましょうか」と、神山さんが土を掘り始めました。
「どこかへ旅をしたような、物語を感じる景色をつくることができますよ」
▲掘った溝を避けて苔を張り、最後に化粧砂を溝に敷く

砂を敷いたら、ジャーン!完成です。
▲ヒメシャラ1本1,080円×3、オヤマナデシコ1,080円、セキショウ540円、苔シート864円、鉢3,240円、講習料1,080円。合計10,044円(すべて税込)

所要時間は約45分。ヒメシャラの林の下には白いナデシコと白い道。ふかふかした苔に包まれて、なんとも爽やかで涼しげな作品になりました。

鉢の色ともよく合っていて、うっとり……。神山さんに手伝ってもらったとはいえ、苗選びから自分の手で作り上げたからでしょうか。なんともいえない愛おしさが。丁寧に育てていかなくちゃ!

「お手入れ入門」と書かれたパンフレットと一緒に盆栽を包んでもらい、体験コースは終了です。

名品の宝庫、「大宮盆栽美術館」へ

次に向かったのは、清香園からJR土呂駅方面へ徒歩3分ほどのところにある、「さいたま市大宮盆栽美術館」です。
ここは2010年3月に開館した世界で初めての公立の盆栽美術館。国宝級の名品盆栽100点以上のほか、器や石、絵画・歴史・民俗資料などを通して盆栽の魅力をたっぷり味わえます。
▲落ち着いた佇まいのエントランス

建物に入ると、大きなサツキの盆栽が出迎えてくれました。
▲「季節の一鉢」の表示があり、撮影が可能

1本の木に赤・ピンク・白と3色の花が生き生きと咲いていて、見事の一言です。
訪れたのは企画展「さつき盆栽展」の会期中だったため、屋内の展示作品はすべてサツキの盆栽になっていました。

美術館主事の五味貴成さんの案内で、館内を見学します。まずは盆栽文化の基礎をパネルで伝える展示室へ。
「当館では、盆栽だけではなく、鉢や鑑賞石も展示しています」と五味さん。
鉢は盆器(ぼんき)、石は水石(すいせき)といい、盆器と盆栽と水石、そして掛け軸などを合わせて全体の景色をつくるのが盆栽なのだそう。

「自然のままに育てた花や実を楽しむ鉢植えに対し、人の手を加えて景色をつくり上げるのが盆栽の大きな特徴です」
▲ツツジの木陰には釣りをする男性。池に見立てた水の中ではメダカが泳ぐ。盆栽ならではの遊び心が

盆栽の見方を押さえよう

器や石も大事なことはわかりました。でも肝心の盆栽自体は、どう鑑賞したらいいのでしょう?
鑑賞の際、気をつけるとよいポイントを五味さんに教えていただきました。

まずは、盆栽の基本形です。
正面は幹が枝に隠れずによく見え、枝がバランスよく配置され、少し前屈み。横から見るとお辞儀をしているような形をしていて、後ろの枝が奥行きをつくっている、これが基本です。

「下から見上げて盆栽の持つ大木感を感じるのも大切です」
限られた空間の中で繰り広げられる凝縮した美しさの中に、小宇宙を感じるのが盆栽の醍醐味なのです。
「ものによっては、上から見るのと下から見上げるのとでは全く違った表情をしていますよ」

どれどれ……。このサツキの盆栽で見てみましょう。
▲上から見たところ
▲下から見上げたところ

……大木感、ありますね!!三角形の樹形にどっしりとした幹とバランスよくついた枝ぶりがよくわかります。
下から見上げると、まるで自分が小人になって、木の根元に立っているような不思議な感覚に。
次に、盆栽鑑賞に欠かせない5つのポイントや樹種と樹形について、パネルを見ながら学びます。
詳しい説明はここでは割愛しますが、入り口で借りられる「音声ガイド」(有料)は、一鉢ごとに見所を丁寧に解説してくれるのでおすすめですし、館内の盆栽コレクションをガイド付きで参照できるタッチパネル式機器もありますので、ぜひ実際に行って学んでみてください!

盆栽の晴れの舞台、「座敷飾り」

盆栽の基礎知識を学んだところで、次の展示室へ。
おや、お座敷ですか……?
▲「座敷飾り」の展示室へ

「こちらでは3種類の形式に分けられた座敷に、盆栽、水石、掛け軸を飾る『座敷飾り』を展示しています」と五味さん。

世界で人気の「BONSAI」、技術では海外にも日本人顔負けの腕をもつ方がたくさんいますが、そこからもう一段上の「飾りの型」を学ぶとなるとハードルが高い。飾り方を学びたい外国人の盆栽愛好家の方が、こちらの展示をよく参考にしているのだとか。

左から「行(ぎょう)の間」「草(そう)の間」「真(しん)の間」と並び、草・行・真の順に格式が高くなります。
▲最も格式の高い真の間。床の間には、紋付の縁を使った畳が敷かれている

座敷の種類によって、飾る盆栽も違ってきます。真の間には大きな力強い「松柏(しょうはく)盆栽」を、窓辺には季節感のある「花もの盆栽」などを「添え」として飾ることが多いといいます。
盆栽の晴れの舞台はやはり座敷なのですね。

いざ、名品の並ぶ「盆栽庭園」へ!

さて、ここからは屋外の庭園へ進みます。
わー、見事な盆栽がたくさん!
展示室で鑑賞のポイントをばっちり学んだので、初めてでも余裕をもって見られそうです。
お、これは真柏(しんぱく=ミヤマビャクシン)の、幹の形に変化がある「模様木」ですね。下から見上げてみましょう。
さすがの大木感!シャリ(枯れて白骨化した幹)と生きた枝の織りなす白と茶のコントラストも美しい。

こちらの松は、樹皮が何層にもなっていて、深い樹齢を感じさせます。
ちょっとポイントを押さえただけでぐっと親しみがわき、楽しくなってくるから不思議。まるで盆栽の声が聞こえてくるようです。

庭園にはここでしか見られない名品の数々も展示されています。
▲大隈重信が所蔵していた松。大きくてどっしりしている
▲推定樹齢1000年以上の蝦夷松。銘「轟(とどろき)」
▲「うろ」と呼ばれる穴とシャリの造形が美しい

各作品にはプレートがつけられており、中には銘のあるものも。銘のある盆栽は非常に格が高いとされています。
こちらは「双鶴(そうかく)」、2羽の鶴という銘の入った五葉松の盆栽。
▲シャリの中央が割れ、2羽の鶴が寄り添っているように見える
▲美術館所蔵品のうち最大級の盆栽、五葉松・銘「千代の松」。大きすぎて持ち上げられないため、台を回して日当たりを調節する
▲真柏盆栽の超名品。銘「寿雲」。樹齢約600年

これはまたシャリの造形美が見事……というか、ほとんどがシャリですね!
「寿雲」の名は、枝ぶりが雲が浮かんでいるように見えることにちなんでいるそう。

「盆栽の表と裏のよい見本が、こちらにあります」と五味さんが指したのは、この黒松の盆栽・銘「岩松庵(がんしょうあん)」です。
▲正面はどっしりとした幹がよく見え、枝ぶりのバランスがよい
▲横から見たところ。前傾姿勢になっていることがよくわかる
▲裏にも枝が見事に配置され、正面から見たときの奥行きを支えている

教科書通り!学んだ基本形を実物を通して復習できるのは、名品のそろう美術館ならではです。

「これは、日本の貴重盆栽第1号。非常に重要な作品です」と五味さんがいうのは、岸信介、佐藤栄作と歴代の総理大臣が所蔵していた花梨の盆栽。
根元と立ち上がりの力強さ、そして枝先に向かって炎が立ち上がっていくような雰囲気があり、雑木のもつやわらかさとともに力強さも備えた名品です。
▲「青龍」と名付けられた五葉松。大きく吹き流れた全体をシャリとなった根元が支えている

見るうちに、だんだん樹種や樹形の見当がつくようになってくるから不思議です。基本を押さえるだけで、こんなに楽しいなんて。

最後に、美術館2階のテラスに上がってみました。
盆栽庭園を眺めながら、ベンチに座って一息つくことができる癒しのスポット。美術館内は基本的に撮影不可ですが、このテラスからと、庭園の入り口、ロビーだけは写真撮影が許されています。
▲池の周りにぐるりと盆栽が配置されている盆栽庭園

盆栽村は緑のパワースポット

すばらしい名品の数々を堪能してすっかり盆栽の虜になってしまいました。心なしか、体と心に元気がみなぎってきたような気が。……これが、盆栽の癒し効果?
五味さんは盆栽の魅力を、「完成していないところ」と言います。
「絵や写真と違って命そのものである盆栽には、奥から訴えるものがあるような気がするんです」(五味さん)
ロッカーに置いていた「マイ盆栽」を取り出しながら、この子をこれからどう育てていこうかな、と考えると、もはや盆栽は他人事ではありません。

今回は盆栽づくり体験からスタートしましたが、まずは美術館で基礎知識を学んで名品に触れてから、近くの盆栽園でさらに鑑賞し、自分だけの作品をつくってみるというのもいいですよ。
清香園のほかにも、蔓青園(まんせいえん)、芙蓉園(ふようえん)など盆栽園は徒歩圏内にいくつもありますし、大宮盆栽美術館でも月に1度、第3日曜日に季節にあった盆栽づくりワークショップを開催しています(要事前申し込み、別料金)。

世界の盆栽ラバーを魅了する街「大宮盆栽村」で、盆栽の奥深い魅力にぜひ触れてみてください。
髙松夕佳

髙松夕佳

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。文芸、芸術、絵本、育児等に関する記事や書評の執筆、書籍編集、翻訳など多数。全国各地への取材では、土地ことばや風景印、スタンプを集めるのがひそかな楽しみ。

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