急流観潮船でジブリの世界へ!瀬戸内海に浮かぶ小島で要塞跡巡り

2017.05.20 更新

愛媛県今治市沖に浮かぶ小島(おしま)はその名の通り、周囲約3kmの小さな島。ここには日露戦争前に築かれた要塞が、当時のままの姿を留めています。歴史的に貴重な史跡であるのはもちろんですが、生い茂る緑、鮮やかな花々、そして瀬戸内の青い海に囲まれて佇む要塞は、異次元の世界へ私たちを誘うかのような美しさに満ちています。さあ、ジブリアニメの舞台さながらの風景を探しに出かけましょう。

小島へのルートは海路のみ!急流観潮船で、いざ出発

小島は来島(くるしま)海峡に浮かぶ島です。今治市から瀬戸内しまなみ海道を渡る最初の橋、来島海峡大橋から見えますが、橋から直接上陸することはできず、上陸手段は船だけ。波止浜(はしはま)観光港からフェリーで渡るルートもありますが、今回はまずしまなみ海道で大島まで行き、下田水港から「来島海峡急流観潮船」で小島へ渡るガイド付きのツアーに参加しました。
▲潮風を直接肌に感じられる開放感のある船です

来島海峡は、鳴門海峡、関門海峡と並ぶ日本の三大急潮のひとつです。雄々しく渦巻く潮流の眺めも期待できます。
ちなみに本来は10名以上で船一隻を予約するのですが、今回は特別に観光ツアーの団体さんに同行させていただきました。
▲村上水軍の紋である、上の字に丸のマークが付いた救命具を着て、意気揚々と出航!
▲水しぶきが頰にかかるくらい水面はすぐ近く。小船ならではのエキサイティングな航海です
▲屋根に窓があり、しまなみ海道を真下から仰ぎ見ることもできます

船上ではバスガイドさんならぬ船内ガイドさんが、航路上にいくつもある見どころを、楽しく解説してくれます。
▲船内ガイドの水津(すいづ)さんのお話は、「実は」という豆知識など面白い情報が満載

例えば中世に瀬戸内海で活動した村上水軍の居城跡がある来島には、岩肌に野趣あふれる階段が見えますが、これはなんと当時海賊たちが使っていたものだそうです。
▲海から島へ続く階段は、海賊たちが岩を掘って作ったと伝わる

これは絶対見逃せない!大迫力の潮流と渦

いよいよ潮流の要所にさしかかりました。折しもこの日は大潮。急流観潮には絶好の日です。潮流のスピードは想像以上!大きくうねり、渦を巻きながら流れていきます。直径10mくらいはありそうな巨大な渦が目の前に。ゴウゴウと激しく流れる潮に飲み込まれそうです。
▲潮の流れは6ノット、時速12~13kmのスピードだそうです

さらに注目すべきは、「湧き潮(わきしお)」と呼ばれる潮の様子です。海底からゴボゴボと湧き上がってくるかのようです。
▲海水の塊がグッとせり上がってくるように見えます
▲白く泡を立てながら渦巻く湧き潮
海の底の岩礁に波が持ち上げられて、このように潮が隆起するのだそうです。目の前で、うねり、立ち上がり、渦を巻いて流れる潮は大迫力。一見の価値ありです。
渦の見え方は天候や潮流の状態に影響されるので、可能であれば大潮の日を狙って訪れることをおすすめします。

島の自然と歴史が誘う、ジブリさながらの世界へ

下田水港から約30分。さあ、いよいよ小島へ到着です。船着場には大砲が見えます。「要塞」という言葉の意味が、急に現実味を帯びて感じられてきました。
▲銃砲口を海に向けた大砲が見えます

上陸すると、この日小島を案内をしてくれるガイドの御手洗(みたらい)さんが迎えてくれました。これから約1時間30分の要塞巡りのスタートです。
▲資料を片手に掲げながらわかりやすく説明をしてくれるガイドの御手洗さん

日露戦争前、日本はロシア海軍の攻撃に備えて、ここ小島に要塞を築きました。「でもロシア艦隊はここまで来る前にやっつけられたんです」と御手洗さん。当時30万円(現代だと60億円くらいに相当とも)という巨額を投じ1899(明治32)年に着工した要塞は、使われることなく終戦を迎え、現在もほぼ当時のままの姿を留めています。明治時代の海岸要塞で完全に近い状態で残っているのは日本でここだけともいわれている、とても貴重な史跡なのです。
▲口径28cmの大砲・榴弾砲(りゅうだんほう)のレプリカ。NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」のロケにも使用されたそうです

要塞を巡るコースは、遊歩道を進むだけでも、多くの魅力溢れる風景を目にすることができます。
通り抜けた先で不思議な生き物に出会えそうな緑のトンネルや、足元に椿の花が散り敷き、頭上に桜が咲き乱れる幻想的な椿道など、まるで物語の世界に足を踏み入れたかのようです。
▲木漏れ日が足元を照らす緑のトンネル。「となりのトトロ」に出てきそう…
▲椿の赤、桜の淡いピンク、そして緑。絵画のような美しさです

緑の小道を歩き、まず見えてきたのは「発電所跡」です。赤煉瓦に三角屋根、奥に煙突が立つ建物は、ともすれば軍事施設であることを忘れそうな可愛らしささえ感じる外観です。
▲大きな枝を広げる椿の木陰で、赤煉瓦が映える発電所跡
▲中から見ると、鉄格子の嵌った窓が物々しい雰囲気
▲台所らしい設備も見られます

さらに進んだところにあるのが石造りの「中部砲台跡」。榴弾砲が配備されていた場所です。斜め上へ向けて発射する大砲で、海上からは見えない構造になっています。
▲28cm榴弾砲が合計6門置かれていたそうです
▲石づくりの地下室。地下と言っても山の側面を穿った形なので建物が地上にあります

さらにその奥には、赤煉瓦づくりの「地下兵舎跡」が並びます。隙間なく積まれた四角い煉瓦と、入口上部のアーチ曲線とのコントラストが印象的です。
▲幾何学模様を描いて整然と並ぶフォトジェニックな兵舎跡。まるで「天空の城ラピュタ」の世界観
▲内側の天井は、丸いカーブを描いています

展望台になっている司令塔跡へは、砲座跡と地下兵舎跡の間にある石段から登ります。白い石と赤い煉瓦に挟まれた細長い階段は、見上げると真っ青な空を背景に白とピンクの花が咲き乱れています。
▲かなり急な角度の階段なので、足元に気をつけて
▲青空に向かって登っていくような気分になります

登りつめたところにある司令塔跡からは、空と海の青が視界に広がりました。「ここが島の最も高い場所です」と御手洗さん。しまなみ海道も同時に眺められる、なんとも贅沢な風景です。海は穏やかに凪いで、船上で見た激しい潮流が信じられません。
その手前を見下ろすと、先ほどの砲座跡と草に覆われた地下室の屋根が見えます。ここに大砲が据えられ、海に向かって首を上げ、発砲の時を待っていたのです。
▲花に囲まれた砲座跡は、なんだか物悲しく見えます
▲司令塔跡は文字通り「跡」が残るのみ

観光コースは天候や参加者の年齢層などを考慮して調整されることがあり、今回は代表的なスポットを巡りましたが、島の中には他にも数々の貴重な史跡が残っています。
例えば「爆薬庫跡」もその一つ。不思議な存在感を持ち、森の奥で息を潜めているかのようです。
▲「弾薬庫跡」は屋根が無くなっていますが、並んだ煉瓦の直線に凛々しさを感じます
▲「弾薬庫跡」内部の様子。植物が侵食した様子も「ラピュタ」のようです

かつて日本が戦争に備えて作った要塞は100年以上の時を経て、周囲の自然と一体になり、幻想的なジブリの世界を思わせる風景を作り出しています。花や海の鮮やかな色彩に囲まれた静かな史跡の姿は、その美しさが逆に切なさを強く感じさせる、そんな余韻を残す旅になりました。

急流観潮船も小島の要塞跡巡りもワクワクするような体験で、素晴らしい風景をたくさん見ることができますので、ぜひ一度、訪れてみてください。
矢野智子

矢野智子

愛媛県在住。愛媛県出身ながら高校卒業後ほとんどの時間を県外で過ごした後、生活の拠点を愛媛に定めた現在、改めて気付く地元の魅力に感動しきり。 人生を豊かにするものは「食」と「読」と信じ、そこに情熱を傾ける日々。

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