丸亀はうどんだけじゃない!日本一のうちわの町でマイうちわ作り

2017.06.23

香川県の中でも、讃岐うどんの名店が多い丸亀市。でも、名物はうどんだけじゃありません。年間で1億本以上の生産量を誇る、日本一のうちわの町でもあるのです。伝統ある歴史や製作の実演風景に触れられるだけでなく、うちわ作りも体験できる、とっておきのミュージアムを訪ねました。

江戸時代から続く、「丸亀うちわ」の伝統

古くから、金刀比羅宮(ことひらぐう)、通称“こんぴらさん”への参拝客の海の玄関口として栄えた香川県丸亀市。潮の香りが漂う丸亀港に面して建つのが、「うちわの港ミュージアム」です。JR丸亀駅からは、徒歩15分の距離。
▲ミュージアムの愛称はポルカ(POLCA)。「港のうちわ館」を意味するスペイン語の略称だそう

「丸亀うちわ」の発祥は江戸時代。こんぴら参りのお土産として、朱色に丸金印のうちわが考案されたことがきっかけとなり、地場産業として発展しました。現在では、日本国内のシェアは9割にも及び、生産量は香川県うちわ協同組合連合会の実態調査によると、年間1億本以上。量も形の多様さも、日本一を誇ります。
▲館内には、丸亀うちわの歴史や古い道具などがわかりやすく展示されている
▲丸金印のうちわは、現在もお土産として販売されている

現在は骨がプラスチック製のものも増えましたが、本来の丸亀うちわの特徴は、柄と骨が一本の竹からできていること。しなりのよい竹は、仰ぐと気持ちのいい風を生み、うちわに最適の素材です。

また、全部で47もの工程のほとんどが、職人の手仕事によるもの。平成9(1997)年には、国の伝統的工芸品に指定されました。伝統的工芸品に指定されているうちわは、昔ながらの技法に沿って竹を加工し、手漉き和紙を貼って仕上げられています。
▲館内に展示されている、表面に柿渋を塗った江戸時代の渋うちわ。このうちわの発見が、伝統的工芸品に指定されるきっかけとなった
▲館内に飾られている、柄も形もさまざまなうちわ

館内の奥に進むと、視界が開けて明るい空間が出現!天井も壁も、うちわの骨で覆われ、隙間から降り注ぐ陽光が、美しい影を作っています。これは、瀬戸内国際芸術祭で発表された作品を再生展示したもの。天候の変化によって変わるうちわの骨の表情の豊かさに、しばし見とれました。
▲西堀隆史作「うちわの骨の家」を、解体後に再生展示した空間。うちわの骨越しに、港の景観も垣間見える

この展示スペースには、現代の作家による作品も飾られていました。現在、昔ながらの技術を守り受け継ぐ「伝統工芸士」だけでなく、さらなる人材育成や技術の継承を願って、「丸亀うちわニュー・マイスター」制度が設けられています。
うちわづくりの技術をひととおり身につけ、ニュー・マイスターに認定された人たちの作品は、伝統を守りながらも、どこか軽やかな作風が印象的でした。
▲ニュー・マイスターを始めとする現代の作り手たちのうちわ

鮮やかな実演で、竹のしなやかさを実感!

館内では、熟練の伝統工芸士による、うちわ制作の実演も行われています。訪れた日に技を披露してくれたのは、今年(2017)でこの道17年になる浅野貴徳(あさのたかのり)さん。ふだんはひとつの工程に集中することが多いそうですが、特別に順を追って見せていただきました。

丸亀うちわづくりの工程は、「骨」と「貼り」のふたつに大別されます。実演で見られるのは、骨づくりの工程。最初は「木取り(きどり)」という作業から始まります。材料の真竹(まだけ)を一定の幅にナタで割るのですが、気持ちいいくらいまっすぐにスパンと割れるのは、竹ならではの性質。そういえば、さっぱりした気性の人を「竹を割ったような」と例えたりしますよね。
▲ナタで竹を割る浅野さんは、竹採りも自分で行うそう。「粘りやしなりがあるものを選ぶようにしています」

割った竹の節や内身を取り除いたら、「割き(わき)」という作業。「切込機(きりこみき)」という専用の道具を使って、「穂」の部分にたくさんの切り込みを入れていきます。穂とは、紙が貼られる部分の骨に当たるところ。穂の数はうちわの種類や大きさによって異なりますが、だいたい32~42本くらいだそう。均等な間隔で素早く裂いていく様は、目にもとまらぬ早業です。
▲切込機を使う浅野さんの鮮やかな手さばきに、熟練の技が光る

その後、10cmくらいの長さの切り込みを入れた竹を手にした浅野さん、クニャッと曲げて左右にひねり始めました。すると、切り込みがどんどん深くなり、見る間に節の近くまで到達!これが「もみ」と呼ばれる工程です。
▲竹を飴細工のように曲げて、節までもみおろしていく浅野さん。柔らかそうに見えるが、やらせてもらったら力がうまく入らず全然できなかった

丸亀うちわは一本の竹からつくるので、節から下は柄の部分として残しておきます。作業を間近で見ていると、青竹のさわやかな香りがふんわりと漂ってきました。
▲もみおろした後に、穂を広げるとこの通り!均等な太さの穂が美しく並ぶ

次に、丸亀うちわの曲線美を表現する大切なパーツである、細い棒状の「鎌」を、別の竹を削って作ります。さらに、柄の節の部分に鎌を通す穴をあけ、持ちやすいように柄を削ったら、穂の下のほうを糸で編んでいきます。
▲「編み」の作業を行う浅野さん。編んだ部分は「糸山」と呼ばれる

そして、骨づくりの最後は「付け」という工程。柄にあけた穴に鎌を通し、編んだ糸をそれぞれ鎌の両端に結んで綴じ付けます。鎌が弓のようにしなってテンション(張力)がかかることで、穂の美しい曲線を保つのです。
▲糸山や柄に通した鎌が美しい曲線になるように、穂を整えながら仕上げる

見事な技を披露してくれた浅野さん、実は大阪出身。自然素材を使ったものづくりに携わりたいと、丸亀うちわの門を叩いたといいます。
そんな浅野さんにうちわづくりの醍醐味を聞くと、「竹という素材の性質を、存分に活かしているのが丸亀うちわ。自然素材だから均一じゃないんですが、それをいかに使いやすく均一なクオリティで仕上げられるかが、難しくもあり、やり甲斐でもありますね」と、笑顔で答えてくれました。
▲10年以上前に作った自作のうちわを、今も愛用している浅野さん。「使っていくうちに、竹の柄に艶が出て、だんだん飴色のいい風合いになりますよ」

好きな柄を選んで、マイうちわをつくろう

見学の後は、うちわづくりにチャレンジ!骨はあらかじめ用意されていて、「貼り」の工程を体験できます。館内の壁には、作業の流れが分かりやすく展示されていました。
▲貼りの工程。所要時間は40~50分だが、そのうち乾かす時間が20分くらいあるので、作業自体はさほどかからない

まずは、「地紙(じがみ)」という、うちわに貼り付ける紙を選びます。今回は、たくさんある中から、涼しげなキキョウ柄をチョイスしました。
▲豊富な色柄が揃う体験用の地紙。仙貨紙(せんかし)と呼ばれる、うちわ専用の軽くて丈夫な紙が使われている

次は、台の上にうちわの骨を置き、骨に糊付けします。
▲骨を台の上にセッティング。後から切り取るため、穂は少し大きめにつくられている

刷毛に糊をたっぷりつけて、少し落としてから、穂先のほうに向けてスッと刷毛を動かします。表裏それぞれ2度塗りしてから、地紙の端にも糊付けします。思ったより糊の量は多めでしたが、ここで塗りムラがあると、骨から紙が浮いてしまうのだそう。
▲端のほうまで糊が均一に乗るよう、刷毛を滑らかに滑らせます

糊付けが終わったら、糸山のカーブに合わせて、その7mmくらい下側に地紙を貼り付けます。裏側も同様に白い地紙を貼り付けたら、なんとタワシが登場!穂と紙が隙間なくぴったり貼り付くよう、穂に沿ってやさしくこすります。確かに、毛先が細かいタワシだと、わずかな凹凸もスムーズに撫でられる感覚です。
▲この作業は「ささらがけ」と言って、昔はささらという松葉を束ねた道具を使っていたが、現在はタワシを使うことがほとんどだそう

次は、うちわについた糊を乾かします。本来は一晩置いてじっくり乾かしますが、体験では扇風機を使ってスピーディに乾燥させます。
▲15~20分くらいかけて乾かしている間は、館内見学などのブレイクタイムに

うちわが乾いたら、「たたき鎌」という金枠を当てて、上から木槌で叩いて余分な部分を切り取ります。うちわの形に応じて様々な種類のたたき鎌があり、今回は角がやや張った「はまぐり形」を使います。3カ所に分けて叩くのですが、最後にスパンと切り取れたのが、かなり快感でした!
▲上端、真ん中、下側の順に木槌で叩く。たたき鎌は片側半分のサイズなので、表を叩いたら、裏返してもう半分を叩いて切り取る

最後は「へり取り」という仕上げの作業。「へり紙」という細長い紙に糊を付け、うちわの周囲を少しずつ挟みながら貼っていきます。その後、鎌の両端に「みみ」という小さな紙を貼って補強します。緩めの糊なので、少し中心がずれてもすぐに修正できてホッとしました。
▲うちわの曲線部分にへり紙を貼る際は、とりわけずれやすいので慎重に

これで、マイうちわの完成です!仰いでみると、竹が程よくしなって、柔らかな風が送られてきました。これから夏に向けて、大活躍しそうです。
▲できあがったマイうちわ。鎌の両端のオレンジ色の紙の部分が「みみ」。へり紙もみみも、数種類の色から選べる

多彩なデザインから、お気に入りをお土産に

館内には、色も形もさまざまなうちわがたくさん並ぶ販売コーナーもあり、お土産選びに目移りしてしまいます。香川らしいうどんモチーフも楽しいし、伝統の柄も竹の骨だとシックで大人の印象。
▲浴衣と合わせたくなる菊柄は、左から865円、1,300円。右のうどん柄は小判形と呼ばれる縦長の形で540円(全て税込)

ポップなデザインの布を貼ったもの、イラストレーターとのコラボ作品、柄に編みひものストッパーがついていて、手のひらに引っ掛けて仰ぐことができるものなど、軽やかでモダンなうちわも魅力的です。
▲ニュー・マイスターのひとり、兵藤恵子さんが手がけたうちわ。左と右は布貼りで、右はストッパー付き。真ん中はイラストレーターのオビカカズミさんとのコラボレーション。左から、1,080円、1,620円、1,620円(すべて税込)

見て、作って、買ってと、丸亀うちわを堪能できる「うちわの港ミュージアム」。なかでもぜひ、実際にうちわ作りを体験してみて、その魅力を存分に感じてください。
puffin

puffin

東京でのライター生活を経て、現在は縁あって香川県在住。四国のおおらかな魅力と豊かな食文化に触発される日々。取材で出会うモノ・コトの根幹に流れる、人々の思いを伝えたいと願っている。

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