金沢「武家屋敷跡 野村家」で江戸時代にタイムトラベル!武家文化と美しい庭園に感激

2017.07.28

加賀百万石の城下町、金沢。加賀藩の武士たちが屋敷を建てて住んでいたエリアである長町(ながまち)は、石畳や土塀など今も往時の面影が色濃く残る街並みです。その長町界隈にある「武家屋敷跡 野村家」は、武家文化を伝える屋敷と庭園が見学できるとあって、国内外から多くの人が訪れています。

藩政時代の面影を辿って

金沢駅から徒歩約25分。石畳の道に木端葺きの屋根や土塀などが続く長町は、金沢最古の大野庄用水が流れる水と土塀の街です。

かつては加賀藩の中級武士だけが住むことを許された界隈でした。
現在はカフェや工芸店などさまざまなお店が観光者を迎え入れていますが、半分近くは実際に市民が暮らしている一般住宅です。
▲石畳の道を歩いていると、まるで江戸時代にいる気持ちになってきます

土塀に囲まれた屋敷が続く小路には、かつて藩士やその奥方たちがここで暮らしていたことを思わせる名残がそこかしこで見られます。例えば、道端の角にある石は「がっぽ石」といい、降雪期、下駄に挟まった雪を叩いて落とすのに使われていたとか。

ちなみに冬期間は土塀を雪の浸透から守るため、わらのむしろを土塀に掛ける「薦掛け(こもがけ)」が行われます。
▲12~3月の冬期間に見られる薦掛け

薦掛けを見ると冬支度と感じる人も多いほど、雪吊りと並ぶ金沢の冬の風物詩です。冬に訪れた時は注目してみてくださいね。

長町で一般公開されている武家屋敷跡

長町界隈で武家屋敷跡と庭園を一般公開しているのが、加賀藩士・野村伝兵衛信貞(のむらでんべえのぶさだ)の屋敷跡「武家屋敷跡 野村家」(以下、野村家)です。

2009年に発行された、日本を訪れる外国人観光客向けガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で二つ星と評価され、米国の庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」誌の日本庭園ランキングでは3位に選ばれるなど、国際的にも高い評価を受けています。
▲野村家は8:30から開館
▲玄関に野村家に伝わる甲冑が展示されています

11代に渡って、主君が乗った馬の周りを警護する御馬廻組(おうままわりぐみ)組頭や各奉行職を歴任してきた野村家ですが、明治時代の武家制度の解体によって住人も変わりました。土塀や庭園の一部を残して加賀大聖寺藩(だいしょうじはん)の北前船の豪商、久保彦兵衛の邸宅を一部移築し、現在に至っています。
▲書院造りの部屋からも庭園が見られます

書院造りの部屋を過ぎた先にある「上段の間」と「謁見の間」。移築前、実際に藩主が招かれたそうで、上を見上げると総桧づくりの格天井が見られ、床板は六尺もの桐板張りだそう。
▲手前の「謁見の間」の白い牡丹の襖は山口梅園によるもの

奥の「上段の間」の襖は加賀藩のお抱え絵師、狩野派の佐々木泉景(せんけい)によるもの。どちらの画も、ふたつの間をより格式あるものに感じさせます。
▲「上段の間」には入れませんが、ぜひ近くで見てみてください
▲加賀藩13代藩主と14代藩主の書も飾られています

濡れ縁のすぐそばにせまる曲水と落水

加賀藩祖、前田利家公が金沢に城を築いた時に、野村家もこの地に屋敷を構え、庭園も造られました。設計者は不明ですが、当時の庭の一部を残しつつ上段の池などに手を加えて現在に至っているそう。
▲濡れ縁からゆっくり眺めたい美しい庭園

こちらの庭園は平面だけでなく立体的でダイナミックな構図も特徴です。大野庄用水から水を引き入れて池を2段に分け、水が流れる様子が見られます。

また、樹齢400年のヤマモモ、椎の木の古木や六尺に及ぶ大雪見灯篭、桜御影石の大架け橋、そして濡れ縁のすぐ下にまで水がせまる曲水、落水を配した佇まいは屋敷と庭園の調和が絶妙で、ため息が出るほどの美しさです。
▲濡れ縁に座って観賞してみるのもおすすめ
▲美しく立派な錦鯉は外国人旅行者に人気

常に流れることでよどむことのない池には、色鮮やかで立派な錦鯉が悠々と泳いでいます。池をよく見ると稚鯉の姿もありました。

2階の茶室でお抹茶がいただけます

濡れ縁を進んだ先にある石造りの階段を上ると、数寄屋建築の茶室「不莫庵(ふばくあん)」があり、そこではお抹茶とお干菓子をいただくことができます。
▲茶室へと続く石造りの階段
▲茶室「不莫庵」の天井は神代杉の一枚板という珍しい造り

茶室の窓からも庭園を眺めることができます。2階から見る庭園は、また違う趣を感じられます。でも、手すりに寄りかからないようにご注意を。
▲お抹茶とお干菓子(300円・税込)

大樋焼(おおひやき)などの器で心静かにお抹茶をいただくと、水の音が聴こえてきます。ひとくちサイズのお干菓子はほのかに甘く、お抹茶のおいしさと引き立て合っていました。

展示資料館も必見

「謁見の間」を濡れ縁の方面へ行かずに奥へ進むと、展示資料館「鬼川文庫」があります。野村家伝来の刀剣や書状、絵、蒔絵が施された硯箱などさまざまな資料が展示されています。
▲土蔵を改装した展示資料館「鬼川文庫」
▲1階のみでシンプルな展示となっています
▲2振りの脇差。左の銘は加州清光、右は陀羅尼橘泰平(だらにたちばなやすひら)
▲九谷中興の祖、九谷庄三の赤絵大鉢
▲西村松逸(にしむらしょういつ)作の「蒔絵松図硯箱」

戦国時代はもちろん、明治、昭和あたりの資料や作品も展示されていて、いずれも時代を切り取ったかのような魅力に満ちています。
江戸時代にタイムトラベルしたかのようなひとときを感じられる「武家屋敷跡 野村家」。とても立派な屋敷と庭園ですが、写真ではゆっくりと流れる時間や水の音、木の香りなどがなかなか伝わりづらいかもしれません。特に世界が絶賛する庭園は一見の価値あり。流れる水や柔らかく差し込む光、その奥行きを感じに、ぜひ訪れてみてください。
SARYO

SARYO

石川県の温泉地として名高い南加賀在住のライター・エディター、時々シナリオライター。北陸の地域情報誌に10年勤めていた経験と、国内も国外も興味津々な好奇心をフル活用し、さまざまな情報をお届けします。歴史、神社仏閣、旅、温泉に強く、利用者と同じ目線を重視するスタイル。

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