飛騨の匠と出会う。彼らがつくり出す家具に触れる。自らも職人になる。木工房をめぐる秋の旅へ出かけよう
シンプルなスタイル、優美な曲線。気候風土が似ているからなのか、飛騨でつくられる家具はどこか北欧家具に通じるものがある。そのつくり手である18の工房が広く一般に開放され、モノづくり体験もできるイベントをご紹介しよう。

アートから普段遣いの家具・雑貨・知育玩具まで。行きたい工房ばかりで、体が3つくらい欲しくなる2日間
そうした、つくり手たちと出会い、製作風景を間近に眺め、お気に入りの作品に出合うことのできるイベントが「飛騨の木工房めぐり」だ。
6回目となる今年は、若手を中心とした18の工房が参加。岐阜県の飛騨地方各地に点在する工房では、それぞれに趣向を凝らした展示だけでなく、一部工房ではワークショップも開催される。
日程は飛騨の紅葉シーズンでもある、2015年10月24日(土)、25日(日)の2日間(一部工房は26日もオープン。詳細は工房めぐり公式サイトにてご確認を)。
さっそく、工房のいくつかをご紹介しよう。

造形家 たしまねん
岐阜県高山市朝日町甲259
0577-55-3099


kochi(コチ)
岐阜県高山市西之一色町3-813-7
0577-35-5176

kino workshop(キノ ワークショップ)
岐阜県飛騨市古川町太江490
0577-73-6212

ファニチャースタジオnoco(ノコ)
岐阜県高山市清見町牧ヶ洞1500
0577-68-1141

白百合工房
岐阜県高山市国府町瓜巣550-1
0577-72-3733
自分でつくってみたい、そんなあなたは本格的な家具づくりワークショップを
ここでは、職人が実際に使用する工具を使って、本格的な家具や木工品の製作を体験することができる。
今回特別にプレ体験をさせていただくとともに、オーナー職人の福田和也さんにお話を伺うことができた。体験の様子をご覧いただく前に、その作品同様、静かでありながら破天荒な部分を持つ、福田さんという職人について知っていただきたい。

「何か」を探し、長崎の若者は旅に出る。そして見つけた「飛騨で家具をつくる仕事で生きる」こと
高校卒業後、長崎市の大学に進学した彼。文系だからと経済学を専攻したが、その正体は金融工学。つまり、数式づくめの世界だ。
そのギャップに苦しみつつも、3年間は我慢した。が、ついに「このまま就職するのは自分の人生、何か間違っている気がする」と、「何か」を探すための旅に出る。20歳のことだった。
主な移動手段は自転車とヒッチハイク。アメリカのロードムービーのような彼の旅は、1年に及んだ。
そんな旅の途中、車に乗せてくれた大学生の紹介で、長野県森林組合の仕事をしながら一冬を過ごしたことが、その後の人生を決定付ける。

旅を続ける中、見知らぬ人の優しさに幾度も助けられたからだろうか。人に似た温もりを持つ「木」を使って、人を温かい気持ちにさせる何かをつくりたい。それを仕事として生きていきたい。
そう思い始めた頃、高山市内に職人を養成する学校があると聞いた。
こうして彼は、家具職人としての第一歩を飛騨の地で踏み出すこととなった。
入学当初は、カンナに触ったこともない素人だった福田さん。しかし卒業後、希望通り無垢材を用いた家具工房に職を得ることができた。さらにそこで、自らの工房の名前にするほど愛着のある木「ウォールナット」と出会う。
他の木と比べ、ウォールナットは肌触りが柔らかく、人肌に似た不思議な温もりを持っている。使い込むうちに艶を帯び、独特の味わいも出てくる。
このウォールナットを使って、長く人と共に生きる家具をつくりたい。
「何か」を探す旅に出てから10年。2002年に独立し、2005年には現在の場所へ工房を移転。同じく家具職人を志し他県から移住してきた妻と共に、静かな山間で家具や木工品をつくっている。

釘もまっすぐ打てない女のスプーンづくり。その結果やいかに…
1週間ほど前にどんな物をつくりたいかメールで連絡すれば、必要な材料の準備から製作工程の段取りまで、事前に準備してもらえる。
そして今回、私がお願いしたのは「大口開けてもりもり食べる、ちょっと深めのスープスプーン」。素材はもちろん、ウォールナットである。

今回、大きさの目安としてサンプルとなるスプーンを持参したため、これをなぞる形でベースの線を引き、目指す形へと修正を加えた。小物類の場合、理想に近いサンプルがあれば持参すると便利。なくても当日、フリーハンドで思うままに描けばいい。
何ということのない作業に見えるが、木目の流れを読み、形状に合わせ最も加工しやすい部分を見極めることが重要。もちろん、こうした素人には難しい作業は福田さんがサポートしてくれる。

しかし電動工具なんて、中学校の技術の実習以来ウン十年触っていない私…。
モーターが高速で回転する音にも、刃が木材に当たる歯医者のドリルのような音にも正直、腰が引ける。
意を決し、凶暴なミシンのような帯ノコと対峙したが、最後までへっぴり腰だったのは言うまでもない。

意気揚々と、余分な部分と一緒に削り落した正面図を再度引く。しかし、定規を使ってもまっすぐに線を引けない不器用モノゆえ、きれいな左右対称にならない…。結局、福田先生に手直しをいただく。

ここで登場するのが、電動彫刻刀。見慣れた彫刻刀を少しゴツくした感じだが、「押して削る」という基本は同じ。安全装置が機能するとはいえ、固定して下さる福田さんの指を削るんじゃないかと、内心ヒヤヒヤしながら彫り進む。
「もっと攻めても大丈夫ですよ」と、さらなる深彫りを福田さんに促されても、そうは大胆になれない小心な私であった。


どういうわけかこの工程は性に合うようで、「いいですよー」と福田さんからも褒めていただく。



こうした木工製品の扱い方を学ぶことができるのも、職人と触れ合うこのイベントならではのオマケ。


ここまで仕上げるのに私が要したのは、約3時間。個人差はあるものの、5~8時間あれば、イスを作ることも可能とのこと。ただその場合、昼を挟んでのワークショップとなるので、あらかじめ昼食を準備してから訪問するのがベター。
当日の状況によっては飛び入り参加も可能だが、作業スペースに限りがあるため、作りたいものと合わせて事前に連絡することをお勧めする。
実際にワークショップを体験して気付いたのは、手元の一点を眺めて作業に集中していると、自然に人は無口になり、思考が内側に向くと言うこと。
このワークショップを体験することが、あなたの探していた何かを見つける旅になるかもしれない。

ウォールナットファクトリー
岐阜県高山市久々野町山梨847-5(ワークショップ会場)
※ホームページより、メールにてお問い合わせいただけます。
[体験料金(税込)]ノーマルなスプーン3,000円~、大きめのスプーン5,000円~、肘掛け付きの椅子50,000円~。詳細は事前の打ち合わせにてご確認ください。
0577-53-3133
飛騨の木工房めぐり2015~つくり手たちのいるところ~
飛騨の木工房の会事務局/岐阜県高山市天満町5-1-25 飛騨地域地場産業振興センター内
2015年10月24日(土)・25日(日) 10:00~17:00
※一部工房は26日(月)もオープンいたします。
※各工房の所在地など詳細な情報は、公式サイトにてご確認ください。
※公式サイトから、木工房めぐり2015のパンフレットをダウンロードいただけます。ぜひご利用ください。
0577-35-0370 担当/打保(うつぼ)

船坂文子
農家・ライター。本籍地は生まれた時から飛騨。情報誌出版社にて15年間、人材・旅行領域の広告・編集記事作成に従事。若い頃から「田舎に帰って百姓になる」が口癖で、退職後は農業大学校での研修を経て就農。一畝の畑を耕し野菜を販売する傍ら、ライターとしても活動。「人」を通して物事を伝えることを心がけている。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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