ギャグ?自虐?「すなば珈琲」は鳥取をコーヒーの聖地にする意気込みだった!

2017.05.26 更新

「スタバ(スターバックスコーヒー)はないが鳥取には日本一のスナバ(砂場)がある」。県知事の名言に便乗(?)して誕生した「すなば珈琲」が、今、スゴイことになっていると聞いて、居ても立ってもおられず訪問することに。宿敵スタバの登場にもかかわらず、独自路線で大人気の店になっていました。

実はスタバを凌駕するコーヒー業界の最先端!?

すなば珈琲は鳥取県内に8店舗を展開(2017年5月現在)。さて、どこの店に行こうかと考えましたが、やはり本丸から攻めるのが王道だろうと、本店のある鳥取市に足を運ぶことに。
▲JR山陰本線の鳥取駅は山陰の東の玄関口

列車を乗り継ぎ、到着したのはJR鳥取駅。山陰には新幹線がないので、大阪からは「特急スーパーはくと」で約2時間30分。広島や東京からの場合は高速バスという手段もあります。
▲JR鳥取駅前の交差点

この日はあいにくの空模様で、どんよりとした雲が広がっていました。ちょうど、ポツポツと雨が降り始めていましたが、すなば珈琲の本店(鳥取駅前店)は駅から徒歩2分。駅前の大きな交差点を渡ればすぐの場所にあるので、傘を忘れたことなど気にせず店に直行します。
▲意外と地味なファサードで、ちょっと拍子抜け

今回はご当地コーヒーとしてのすなば珈琲をレポートするだけでなく、何かと話題をふりまく店舗戦略にも踏み込みたかったのですが、本店の外観が予想に反して地味だったことに、まずは驚きです。
▲砂丘とラクダをモチーフにしたロゴマーク

というのも、鳥取県が平成28(2016)年に行った調査の「鳥取県の観光地認知度」では、鳥取砂丘、水木しげるロード、大山(だいせん)のBIG3に次いで、すなば珈琲が第4位に。2017年3月発表の同調査では「鳥取県に関する話題の認知度」で堂々の1位に輝くという偉業まで達成しているんです。もはや鳥取県を代表する観光地と言ってもいいのに、そんな派手さはまったく感じられず、看板も控えめ。
▲入口では萌えキャラのような看板がお出迎え

ともあれ、外観でコーヒーの味が決まるわけでもなく、飲まないことには始まらないと、さっそく店内に入ってみます。が、これもスタバのような洗練された空間ではなく、良く言えば落ち着いた雰囲気で……、やはり地味です。
▲店内もスタバとはまったく異なる雰囲気

何だか、のっけから地味だ地味だとdisってしまいましたが、どうやら、すなば珈琲はスタバと競合するセルフ式カフェではなく、昔ながらの喫茶店のようです。スタバを意識した店だろうと想像していただけに、これはちょっと意外でした。
▲メニューには大きく「サイフォンコーヒー」の文字

メニューを見ているうちに、すなば珈琲のコンセプトがようやく見えてきました。まず、注目すべきはサイフォンコーヒーであること。豆や焙煎方法にもこだわっていて、いわゆるコーヒー業界のサードウェーブ(第3の波)そのもの。そういった意味では、すなば珈琲のほうが流行の最先端ってこと!?

コーヒーもフードもご当地性をしっかりアピール

▲年配には懐かしく、若い人には新鮮なサイフォン式

昭和の純喫茶では定番だったサイフォンですが、最近ではすっかり影をひそめ、20代ではサイフォンの存在すら知らない人も多いのだとか。
▲サイフォンで淹れたコーヒーを飲むのは久しぶり

理科の実験のようで、コーヒーが抽出される様子を見ているだけでも楽しいサイフォンコーヒーですが、味が濃厚で、豆や焙煎の違いがダイレクトに愉しめるのも特徴です。
▲ブレンドコーヒー税込324円

豆はブラジル産で、鳥取砂丘の砂と混ぜて焼く独自の焙煎方式を採用。深煎りで苦味を感じさせる独特の香ばしさがあり、サイフォンで淹れることもあってガツンとしたコーヒーの味が愉しめます。
▲3連のサイフォンで次々とオーダーをこなす

スタバのようなエスプレッソも美味しいのですが、すなば珈琲の店の雰囲気にはサイフォンが似合います。ちなみに、アイスコーヒーも8時間かけて水出しするこだわりようで、すなば珈琲の本気ぶりが感じられます。
▲もさえびホットサンド(税込702円)

続いてはフードメニュー。砂場のシャレどうかは分かりませんが、サンドメニューも充実しています。中でも気になるのが、「もさえびホットサンド」。
もさえびは県外に出荷されることがほとんどないため「幻のエビ」とも呼ばれるご当地名物。そのもさえびを殻ごと揚げてミンチにしてボリューム満点のカツにしています。シャキッとしたキャベツやらっきょう入りのタルタルソースとも相性がよく、ぜひ味わってもらいたい一品です。
▲もさえびカレー(税込648円)

こちらは、もさえびの素揚げにもさえびカツ、オニオンリングがトッピングされた「もさえびカレー」。スパイシーでコクもあり、カレーとしての完成度も高いのですが、カリッカリッに揚げたもさえびの香ばしさと美味しさは申し分なし。
▲すなばパンケーキ(税込1,080円)

パンケーキも名物メニューのひとつで、バナナやキウイ、マンゴーなど5種の定番フルーツに季節のフルーツもどっさり。センターにはバニラアイスの上にホイップクリームのタワーが立ち、見た目のインパクトもバツグンのデザートです。

すなば効果?コーヒー購入額で鳥取市が1位に!

平井伸治県知事の「すなば発言」があったのは2012年10月。翌2013年の3月には隣りの島根県にスタバがオープンして、鳥取県はついに全国で唯一スタバの無い県になってしまいました。
「ちょうどその頃に、グループの居酒屋を喫茶店に業態変更しようという計画があり、店名は知事の発言をヒントにさせてもらいました」と話してくれたのは、すなば珈琲を展開する「ぎんりんグループ」の東田慶(ひがしだけい)専務。
▲「どんなことでも話題になるのは嬉しいこと」と東田専務

2014年4月のすなば珈琲オープンから半年後にはスタバが鳥取県1号店をオープンすると発表しましたが、結果的にこれがまた話題を呼ぶことになり、すなば珈琲の知名度は一気に向上。移動販売車で全国のイベントにも参加するようになったそうです。
▲イベントに引っ張りだこの移動販売車もある

知名度ではすっかり鳥取県の顔になったすなば珈琲ですが、その影響もあったのか一般家庭が2015年にコーヒー購入に充てた平均額は同県が8,125円で全国トップ(総務省家計調査)。しかも、前回調査の29位から急上昇というから、これは「すなば効果」と言ってもよさそうです。
さらに、2016年9月には鳥取市内で「第1回世界コーヒーサミット」を開催するなど、本気で鳥取県をコーヒーの聖地にしようと取り組んでいます。
▲すなばギフトセット(税込3,240円)

来店者の8割が観光客ということもあり、すなば珈琲ではカフェショコラクランチ(税込702円)やすなば珈琲せんべい(税込648円)などのオリジナルスイーツも販売しています。中でもマグカップやコーヒー豆、ドリップコーヒー、カフェショコラクランチがセットになったすなばギフトセットはお土産として大人気とのこと。
▲スタンプカードで鳥取観光の後押しも

山陰の秀峰として名高い大山の近くにあるお菓子の壽城店や水木しげるロード店など、すなば珈琲は県内の主要な観光地にも出店。8店舗すべてを巡ればオリジナルマグカップがもらえるスタンプカードも発行しているので、鳥取観光の際はすなば珈琲も併せて愉しみたいものです。
▲大山が一望できるすなば珈琲お菓子の壽城店(米子市)

シャレと悪ノリだけかと思っていましたが、すなば珈琲のコーヒーに対する思い入れや地域活性の意気込みは本気そのものでした。
鳥取県の観光地(?)としてはNo.1の手軽さなので、コーヒー好きはもちろん、話のネタとしても訪れる価値はありそうです。
廣段武

廣段武

企画から取材、撮影、製作、編集までこなすフリーランス集団「エディトリアルワークス」主宰。グルメレポートの翌日に大学病院の最先端治療を取材する振り幅の大きさと「NO!」と言わ(え?)ないフレキシブルな対応力に定評。広島を拠点に山陽・山陰・四国をフィールドとして東奔西走。クラシックカメラを語ると熱い。

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