いにしえの風情に浸りながら味わう「山寺御膳」

2015.10.06 更新

山形市の観光名所として名高い「山寺」。国の名勝・史跡にも指定されている東北屈指の霊場で、慈覚大師円仁が貞観2年(860年)に開山したとされています。実は「山寺」というのは通称で、宝珠山阿所川院立石寺(ほうじゅさんあそかわいんりっしゃくじ)というのが正式な寺名。1,015段の石段でも有名です。

▲四季折々に表情を変える山寺全体の風景
その歴史や景色もさることながら、旅の楽しさはココでしか味わえない料理に出会うこと!山寺にも名物料理があると聞き、さっそく行ってみたいと思います。
▲東北の駅百選に選ばれた寺社造りの駅舎から山寺地区へ向かいます
▲街の中心を流れる立谷川と赤い宝珠橋が印象的

山寺らしい精進風の料理を堪能

その名物料理の名は「山寺御膳」。五年前に「山寺地区の地物を使ったメニューを作ろう」と、山寺文化観光推進協議会が中心となり発案。会には山寺地区で食堂などを経営しているメンバーが多く、その“食のプロ”たちがアイデアを出し合いながら、山寺らしさと地産地消にこだわった精進風料理を作り上げていきました。

「これまで、山寺の名物というと『玉こんにゃく』でした。でも、玉こんにゃくだけに頼らず、山寺に来てくださる方々に喜んでいただけるような新しい“名物”を作っていかなければならないという思いが私たちの中にあったので、試作を繰り返しながら作っていきました。」と話すのは、山寺文化観光推進協議会のメンバーで
山寺観光協会観光施設部長でもある遠藤定治(えんどうていじ)さん。
▲遠藤さんの言葉の端々から山寺への思いが伝わってきます
現在、「山寺御膳」を味わえるのは、遠藤さんが経営する「ふもとや」と「お休み処対面石」の2店舗。いずれの店も、山寺のメインストリート沿いにあります。
▲11品の料理が並ぶ「山寺御膳」2,500円(税込)は1日限定50食(3日前までに要予約)
運ばれてきた「山寺御膳」を見た瞬間、一人で食べきれないほどの品数とボリュームにびっくり!

どれから箸をつけようか迷いながらも、まずは料理のメインであるニジマスの田楽からいただくことに。

山寺の街の中心を流れる立谷川(たちやがわ)で育ったニジマスは、身が厚く、清流で育つだけに川魚独特の臭いもありません。甘めのみそ味が、魚のおいしさをさらに際立たせてくれます。
▲ニジマスの脇に添えてあるのは“さくらんぼ漬”
▲身が厚く、食べごたえあり!
▲清流立谷川で育つニジマスだけを使っています
続いて、山形の蕎麦。「山寺御膳」の蕎麦は田舎蕎麦ほど太くなく、食べやすい太さ。コシがあって喉越しの良い蕎麦です。手打ち蕎麦も味わえ、得した気分!
▲蕎麦だけでお腹が満たされてしまう程の量
▲山形と言えば、蕎麦!
その他にも、海藻の「えご草」を煮溶かして冷やし固めた「えご」(山形ではお盆や仏事に食べられています)や、口当たりまろやかな「くるみ豆腐」等、山寺地区で昔から食べられてきた料理を味わうことができます
▲茶碗二杯分くらいありそうな秋の味覚キノコご飯
季節によって付け合わせは変わりますが、旬の野菜の天ぷらや地元で採れたきゅうりの酢の物、菊のお浸し等、新鮮な素材を生かした料理もうれしい限り。

どこまでも「山寺」にこだわった「山寺御膳」。その土地でしか食べられない料理を味わうと旅の楽しさも倍増です。

※「山寺御膳」は、3日前までの事前予約が必要です。
山寺観光案内所(023-695-2816)、またはふもとやまでご連絡ください。

山寺名物、二つの“ほうじゅっこ”

山寺の名物料理は「山寺御膳」だけではありません。山寺風おやき「宝珠っ子」と、デザート感覚で食べられる「宝珠っ娘」も味わってみたい一品です。

どちらも読み方は“ほうじゅっこ”。立石寺の許可をもらい、山号の「宝珠山(ほうじゅさん)」から名付けました。

山寺風おやき「宝珠っ子」に使われているのは、山形の伝統野菜「山形青菜(せいさい)」。山形県では初雪の便りが聞こえてくると、各家庭で冬の保存食「青菜漬」作りが始まります。

大量に漬けるために、食べきれず酸味が出てしまった青菜漬はごま油で炒め煮にします。こうすると、ごま油の風味が効いた漬物のリメイク料理に。
昔ほど大量に漬け物をつくる家庭も少なくなってきましたが、この“二度おいしい”食べ方は山形の家庭では一般的に行われてきたこと。

この青菜漬の炒め物が「宝珠っ子」の具。山形独特の食文化がたっぷり詰まったおやきです。
▲手軽に食べられるおやきはとても好評。1個150円(税込)
▲中には青菜漬の炒め物がたっぷり
一方、「宝珠っ娘」は、道明寺を生麩で包み、地元の枝豆を使って作った“ずんだ”をのせたもの。“ずんだ”は枝豆をつぶして作る餡で、県内の地域によっては “ぬた”と呼ばれています。餅のような食感と優しい甘さの“ずんだ”。お茶のお供にピッタリです。
▲山寺の参拝の前後に「宝珠っ娘」で一服。1個170円(税込)
▲「宝珠っ子」と、「宝珠っ娘」はポスター、のぼりが目印の店舗で販売。遠藤さんが経営されている「ふもとや」でも食べることができますよ

絶景ポイント、記念殿へ

お腹も一杯になったので山寺散策を。山寺に来て、石段を上らないわけにはいきません。遠藤さんオススメのスポット、「記念殿」まで行ってみることにしました。
「山寺というと五大堂、奥の院からの眺めが有名ですが、その間に立つ記念殿から見る景色は格別ですよ。」と遠藤さん。それではさっそく…。


山門をくぐり、1,015段あるという石段を上っていきます。周りには僧たちが修行を重ねたという奇岩・怪石が点在し、その迫力に圧倒させられます。

元禄2年(1689年)7月、山寺を訪れた俳人・松尾芭蕉が詠んだ「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」の一句。その句をしたためた短冊を、弟子たちが埋めて石碑を建てたという「せみ塚」を通り過ぎると、右側に直立する岩が「弥陀洞(みだほら)です。高さ4.6メートルの岩が雨風に削られ、その姿が阿弥陀如来に似ていることから「丈六の阿弥陀如来」と呼ばれています。
▲弥陀洞は歳月が創りあげた芸術品のよう
▲岩壁には刻まれた岩塔婆
▲岩に食い込んでいる賽銭
▲弥陀洞から眺める仁王門
嘉永元年(1848年)に再建された仁王門。門の左右にある、仏師・運慶の弟子たちの作といわれる仁王尊像も一見の価値ありです。
▲欅で造られた仁王門
山寺の歴史は約1,200年と長く、各地から僧たちが集まり、奇岩の上に建つお堂等で修行しました。厳しい修行の中では、新芽が息吹く季節、山が彩る紅葉、墨絵のような佇まいの雪景色…季節の移ろいが、僧たちにとって唯一の癒しだったのかもしれません。
▲断崖に突き出すように建つ五大堂
▲五大堂(左)と、立石寺を開いた慈覚大師円仁を祀る開山堂(右)
右手に金乗院を眺めながら左に曲がると、ようやく記念殿に到着。記念殿は明治41年9月18日に当時、皇太子だった大正天皇が山寺を参詣された時に休まれた建物
です。
▲毎年9月に一般公開を行っているので中に入ることができます
▲桜を模した鉄塀
五大堂、奥の院からの眺めも良いですが、地元の人だからこそわかる
記念殿からの絶景ポイント。ここはオススメです!
▲記念殿から眺める山寺の街並み

秋には「野点」のイベントも開催

山寺では、毎年10月中旬の日曜、秋の行楽シーズンに合わせ、山寺観光協会主催の「野点(のだて)」が開かれます。裏千家の青年部の方たちが点てた抹茶とお菓子が無料で振る舞われるとあって、毎年大変な人気。1,000人分用意した抹茶は、お昼過ぎには無くなってしまうそう。
開催場所は根本中堂広場。根本中堂は、立石寺の本堂にあたる御堂で、国の重要文化財にも指定されています。
町全体が厳かな空気感に包まれている山寺で、ゆっくりと名物料理を味わうことができました。継承されてきた歴史と新しい文化が共存する町で、心地よい時間を楽しんでみませんか?
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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