世界一のクラゲ水族館がオモシロイ!

2016.05.01 更新

山形県の庄内地方に世界一の“クラゲ水族館”があります。50種類以上のクラゲを展示しているのは、世界中探してもここだけ。クラゲの展示種類数でギネス世界記録にも認定されたことのある、こだわりの水族館にやってきました!

▲加茂水族館で繁殖したミズクラゲ

小説家の藤沢周平が生まれた町として知られる鶴岡市街地から日本海に向って、車を走らせること15分。海を見下ろす高台に建つ、白壁の建物が見えてきました。ここが、山形県内では唯一の水族館「クラゲドリーム館」です。鶴岡市立加茂(かも)水族館が正式な名前。
▲曲線が印象的な建物

訪れた日は、あいにくの曇り空。「天気が良ければ、空と海の青さと白い建物のコントラストが最高だろうなあ」と思いながらアプローチを進み、入口へ。

まったりほわん、ほわん。愛されキャラのクラゲたち

さてさて、皆さん、クラゲって何でできているか知ってますか?
クラゲは体の約90%が水分でできているゼラチン質のプランクトン。
水の中でいつもゆったり、まったり浮遊している生き物です。

そんな涼しげな形状と水の中をゆったりと漂う姿が、特に女性に人気。
ほわんほわんした動きのリズムに癒されながら、人気なのもわかる気がするなあ。
▲色のバリエーションにびっくり。ペット用にも人気が高く、フィリピン等から輸入されている「カトスティラス」

館長の奥泉和也(おくいずみかずや)さんに案内をお願いしました。奥泉さんは、かつて閉館の危機に直面したこの水族館を救った「赤ちゃんクラゲ」を発見した方なんですって。
▲奥泉和也館長

明るいエントランスホールから、照明を落としたクラゲ展示室「クラネタリウム」のほうに進むと、ぷかぷか気持ちよさそうに漂う白いクラゲたちが目に飛び込んできます。

4,000匹のミズクラゲが圧巻の「クラゲドリームシアター」

「クラゲドリーム館」の目玉は何と言っても「クラゲドリームシアター」。直径5m、水量40tの円形型の水槽で、中には約4,000匹のミズクラゲが漂っています。展示されているすべてのミズクラゲは、ここで繁殖させたものなのだとか。繁殖技術も最先端を行くクラゲ水族館なんですね!

深いブルーの明かりに照らされ、悠然と漂うクラゲの姿を見ていると、現実から解き放たれたような心地良さを感じます。本当に幻想的な世界!
▲直径5mの巨大水槽に所狭しとクラゲが漂う様子は圧巻です
▲団体で訪れるお客さんも多く、子どもたちからは歓声があがります
▲レインボーの光を受けて幻想的な雰囲気

閉館の危機を救ったのは、偶然発見したクラゲの赤ちゃん

加茂水族館の成り立ちを遡ると、約85年前に地元の有志者が出資し、「山形県水族館」として建てられたのがはじまり。昭和39(1964)年に新築移転し、年間20万人が訪れる県内有数の観光施設として賑わいを見せていました。ところが、1997年に隣県に水族館がオープンした影響などもあり、年間入館者数が9万人まで激減。閉館の危機に直面してしまいます。そんな時、偶然の奇蹟が水族館を救うことになるのです…。
▲リニューアルする前の二代目加茂水族館

「昭和50年代以降は徐々に入場者が減少していき、いつの間にか、小さくて古い“地元からも見捨てられた水族館”というレッテルを貼られてしまっていました。起死回生を狙ってアシカショーやラッコショーを始めたり、魚どころかサルまで飼ってみたりしたもののすべて空振り。そんな状況の中、企画展として『生きたサンゴと珊瑚礁の魚展』を開くことになりました。準備をしていた時に、偶然、サンゴの水槽に3~4ミリの小さな生き物が30個体程泳いでいるのを見つけて。それがサカサクラゲの赤ちゃんだったんです。餌を食べさせ、500円玉くらい大きくなった段階で展示をしてみたら、“気持ち悪い”と言いながらもお客さんの反応が凄かったんですよ」と奥泉さん。
▲窮地を救った「サカサクラゲ」

クラゲを飼育するためには、水槽内に水の流れをつけなくてはなりません。
初めは、魚を飼育する水槽に仕切りを入れて、いくつも穴を開けた塩ビパイプを設置し、水を吹き出させてみましたが、クラゲがパイプに引っかかってしまったり、水槽の隅にたまってしまったりと上手くいきませんでした。

でも、当時、海外の水族館で使われていたクラゲ用の水槽はとても高くて購入するのは無理なこと。そこで、クラゲ用の水槽を自分で作ってしまおうと思い立った奥泉さんは、自ら設計した水槽を製作。専用水槽の10分の1の費用でオリジナルの水槽を開発したのです。その後、何度も改良を重ね、加茂水族館はもちろんのこと、全国の水族館で使われるようになりました。

ここまで来るのには様々なドラマがあったんですね。
▲瓜の形に似てる!「ウリクラゲ」
▲成長すると傘に斑点が出てくる「ブラウンドットジェリー」
▲食用として中華料理などに使われる「ビゼンクラゲ」

初めて見るクラゲたちにびっくり!こんなに種類があるんですね!
レアなクラゲが多い「クラゲドリーム館」。高い繁殖技術と根気強い飼育努力があればこそ。
▲大西洋や地中海に生息する希少な「ルテウム」。水族館で飼育しているのはウィーンにあるシェーンブルン水族館と加茂水族館の2カ所だけ
▲タコのような足が特徴の「タコクラゲ」
▲世界最大級のクラゲの一つと言われる「パシフィックシーネットル」。傘の直径は50cmくらいまで成長します
▲触手が髪の毛のように見える「カミクラゲ」

ここで紹介したのはクラゲ水族館で展示されているクラゲのごく一部。現在はギネス記録に「クラゲ展示最多種類」という記録カテゴリはなくなってしまいましたが、ここクラゲ水族館のクラゲの種類は間違いなく世界トップクラスです。

下村教授のノーベル賞受賞で一躍有名に

さらに、生物学者の下村脩(おさむ)教授によってオワンクラゲの発光するしくみが解明され、「緑色蛍光タンパク質GFPの発見と開発」でノーベル化学賞を受賞したことから、オワンクラゲを飼育している加茂水族館にも注目が集まり、一躍全国的に有名な水族館になりました。
▲名誉館長の下村教授を紹介しています

自然界から採取したオワンクラゲは発光しますが、通常水族館で繁殖させたオワンクラゲが発光することは少ないそうです。そこで、下村教授のアドバイスのもと公開実験を行い、緑色の発光に成功しました。今も、ここ「クラゲドリーム館」では発光中のオワンクラゲの展示を見ることができます。
▲発光中の「オワンクラゲ」

クラゲの生態を観察できる「クラゲバー」

様々なクラゲを観ながら進むと、「クラゲバー」があります。ここは、バーカウンターに見立てた展示スタイルでクラゲの給餌解説やライフサイクルを紹介するコーナーです。
多くのクラゲは、受精卵から「プラヌラ」と呼ばれる幼生が生まれ、「ポリプ」というイソギンチャクのような形になります。その後、ポリプにくびれができて、赤ちゃんクラゲが形成される「ストロビラ」になり、赤ちゃんクラゲ「エフィラ」の状態を経て成体へと変化していきます。
水温が低いほど、ポリプは赤ちゃんクラゲへと変化するんだそうです。
▲クラゲの生体についてわかりやすく解説してくれます
▲日ごとに変化する様子がわかります
▲「カギノテクラゲ」のポリプが見える!

ゴム手袋を借りてクラゲを触ってみると…。「ナタデココ」のような、ふにゃんとして弾力のある手触り。子ども達だけでなく、大人も夢中になってしまうクラゲの体験コーナーです。
▲触ったのは直径20cmくらいの「ミズクラゲ」
▲さかなクン自筆のイラストを発見!

クラゲの他に、「食育」にも力を入れている「クラゲドリーム館」。魚は庄内地方の海や川に生息するものだけを展示しているそう。その魚を使った郷土料理のレシピも教えてくれます。
▲悠々と泳ぐ「シロザケ」

人気のショータイムで子ども達も大喜び

ショータイムでは、ウミネコの餌付けも体験できます。
▲鐘を鳴らした瞬間、空から野生のウミネコたちが集まってきます
▲「ウミネコが餌を狙ってくるので注意してくださいね」とスタッフ

ウミネコの餌は15cm程のアジ。餌をずっと持っていると危険なこともあるので、投げるタイミングに気をつけるようにとのアドバイスを受けスタンバイ。

虎視眈々と狙いを定めているようなウミネコたちに少々ビビりながら、アジの尻尾を持って空に目がけてポーン!
ウミネコが勢いよく飛んできたかと思ったら、シュッと餌をキャッチ!
▲スリルを楽しめるウミネコの餌付け

2016年は加茂水族館にとって嬉しいニュースも。3月にアザラシの赤ちゃんが生まれました!産毛が生え変わると性別がわかるので、その後に名前を公募するそうですよ。
▲白い産毛は3週間程で抜けてしまいます

ココでしか食べられないユニークなクラゲ料理

クラゲの展示とショータイムを楽しんだ後はランチタイム。
館内のレストランではユニークなクラゲ料理を食べることができます。

まずは、噂に聞いていた海月(クラゲ)ラーメンからいただくことにしましょう。
▲特製海月ラーメン750円(税込)
▲クラゲの他に木くらげも。クラゲ三昧!

あっさりめの醤油味のラーメンは、クラゲを乾燥させて作った粒子を練り込んだ太めのちぢれ麺が食べごたえあり。スープと馴染んで旨い!
▲麺の上に小さな「エチゼンクラゲ」がまるごと一匹

麺の上には細切りにしたクラゲがたっぷりとのっています。その中にひと際存在感を放つ、形そのままのクラゲ。コリッコリ、コリッコリとした食感がたまりません。
ここでしか味わえないラーメン。水族館を訪れたら必ず食べたい一品です。
▲麺はおみやげ用に売店でも販売。2食入650円(税込)
▲クラゲ定食もオススメ!850円(税込)
▲刺身専用の「白頭クラゲ」
▲クラゲの粒子を練り込んだ団子
▲海を見ながら食事。ロケーションも最高!

また、ここに来たら絶対食べたいのがクラゲソフトクリーム。
ソフトクリームの上にかけられた、刻んだクラゲが大胆過ぎる(笑)! 濃厚でなめらかな口当たりのソフトクリームとコリコリ食感。やみつきになりそう。
▲味は、ミルク、チョコレート、ミックスの3種類各350円(税込)
▲常時10種類あるクラゲアイスもどうぞ!上からオレンジ風味のイタリアンブラッドオレンジ、黒ゴマ、クリームチーズ。トリプル550円、ダブル400円、シングル300円(いずれも税込)

レアなおみやげ品がいっぱい!

売店では水族館オリジナルのおみやげ品をたくさん販売しています。
▲クラゲ入り塩大福650円(税込)
▲山形名物玉こんにゃくのような丸いくらげこんにゃく800円(税込)
▲クラゲの形をしたぬいぐるみは「クラゲドリーム館」オリジナル450円(税込)~各種販売

他の水族館と違うことをし続けるという熱意

この水族館のスゴイところは、独自に作り上げてきた様々な技術や研究によって得た知識を惜し気もなく公開してしまうところ。
奥泉さんは「自分達もわからないことがあれば他の水族館から教えてもらったり、運営面などで困難な時もインスパイアされながら育ってきたので、水族館同士で情報交換し合い、良い展示をしていければ…という共存共栄のスタンスでやっています。海外からも視察に来て研修していきますよ。他の水族館より規模が小さいので同じことをしても喜ばれません。独自の方法でおもしろいことをやっていこうと、いつもワクワクしながら頑張っています。地元の人に“うちの町にはこんな水族館があるんだよ”と自慢してもらえるような水族館になれるように」と話してくれました。
▲撮影を演出してくれるクラゲたち

家族で、カップルで、もちろん一人でものんびりとした時間を楽しめる「クラゲドリーム館」はリピートしたくなる水族館でした。

撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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