よこすか海軍カレー/全国カレー巡礼の旅Vol.1

2015.06.19

今や世界中で愛されるカレー。しかし、ひと言でカレーといっても日本人に馴染み深い欧風カレーに始まり、スープカレーやキーマカレー、さらには独自の進化を遂げた個性派カレーまで、カレーの世界というのは本当に奥深いもの。この企画では、これまで7,000店舗以上のカレー店を制覇したカレーの第一人者・井上岳久先生(株式会社カレー総合研究所代表取締役)と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

記念すべき第1回目にやってきたのは……じゃんっ! 横須賀中央駅です!

そこに「こんさん、お待たせ!」と井上先生が登場。
ズンッ。
ズンッ。
井上「今日はよろしくお願いします」
こん「こちらこそご指導のほどよろしくお願いします! カレーは私も大好きなのですが、恥ずかしながら今の私のカレー偏差値はお話にならないレベルです。その代わり! 今日はカレーライスっぽい服装でのぞみます」
こん「先生、第1回目はどんなカレーを紹介していただけるんですか?」
井上「今日はズバリ、『よこすか海軍カレー』をご紹介します。のちほど詳しく解説しますが、この企画を始める上で外せないアイコン的なカレーなんですよ!」

認知度No.1カレー! そのルーツは海軍にあり!

井上「横須賀ではカレーイベントとして最大級の『カレーフェスティバル』が毎年開催されるんですが、今日のお店はもう10回以上参加している人気店で……あ、ここです」
やってきたのは「横須賀海軍カレー本舗」さん。1階はカレー関連商品が揃うアンテナショップで、2階がレストランです。
戦艦三笠の船内をイメージした店内はクラシックな雰囲気。
じゃんっ! こちらが先生おすすめの「よこすか海軍カレープレミアム」1,850円(税込)。
実はこのカレー、開発の際に先生がアドバイスしたメニューなのだとか!
カツが乗ったライスとは別に、ルウはポットに入っています。付け合わせはサラダと牛乳、そして薬味。

こん「うわー! 美味しそう! 見た目は一般的な欧風カレーですね。そういえば、『よこすか海軍カレー』という名前があるからには何か定義があるんですか?」

井上「そのとおり。よこすか海軍カレーとは、カレーの街よこすか推進委員会が定めた条件を満たしたものを指します。まず、レシピ。日本海軍の軍隊食について記された『海軍割烹術参考書』(明治41年発行)という、まぁ今でいうレシピ本を元にしていることが大前提です。これ、大事!」
井上「次に、横須賀市内で食べられること。ほかにも『サラダと牛乳がセット』などの条件をクリアして初めてよこすか海軍カレーと呼べるんですよ……ん?」
井上「こんさん、聞いてる?」
こん「(……ハッ)すみません、カレーの香りがあまりにもそそるもので! えっと、カレーの条件でしたっけ」

井上「しょうがない。まずは食べましょうか! 話はそれからです」
こん「やったー! いただきまーす!」

(パクッ)
こん「んんー! マイルドで食べやすい! けど、スパイスがあとからじんわり効くような……。あとこれ、このカツなんてスプーンで切れちゃうくらい柔らかい! 肉汁とルーの組み合わせが最高ですね」
こん「で、話を戻すと、委員会の認定なしに『よこすか海軍カレー』を名乗ってはいけないんでしたよね」

井上「そう。厳しい条件を設けることで横須賀市のまちおこしにもつながったし、『カレーの街』として宣言することもできた。よこすか海軍カレーの認知度ってすごく高くて、平成26年にカレー総研が行った調査では全国のご当地カレーの中で知名度第1位だったんですよ。これは『ご当地カレーといえばよこすか海軍カレー』と思っている人が一番多かったということなんです」

こん「たしかに、私も子どもの頃から横須賀=カレーというイメージがありました。それにしても、国民食の代表格であるカレーのルーツが昔の軍隊にあったなんてびっくりです!」
井上「うんうん。さらに言えば、もともとカレーはイギリス海軍の軍隊食でした。正確に言うとカレー味のシチューですけど。当時、厳しい軍隊生活にメリハリをつけるため日本海軍では『金曜日はカレーの日』とされていたそうですよ。大鍋1つあれば作れる簡単料理なのに、スパイスには食欲を増進する健胃・健腸の効果もちゃんとある。カレーって本当にすごい。だってほら、スパイスって中国ではすべて漢方になるものばかりでしょ。チョウジ(クローブ)、ウコン(ターメリック)とかね……」
こん「な……なるほど(先生が……止まらない……)」

井上「そして人参・玉ねぎ・じゃがいもという食材もポイント! これらはなんといっても腐りにくく、軍隊生活にぴったりですよね。イギリス海軍が食べていたカレー味のシチューに小麦粉でとろみをつけたものが、よこすか海軍カレーの原型なんです」

こん「イギリス海軍あってこそなんですね! ところで、軍で食べられていたカレーが日本全国に広まることになったのはなぜですか?」

井上「いい質問ですね! 実は、海軍でカレーの作り方を覚えた若者たちが地元に帰って家族や友人にふるまったことから一般家庭に広まったといわれています。当時、カレーはまだ希少価値が高く、庶民には全く馴染みのないものでした。そんな高級料理だったカレーは、レストランで食べると現在の8倍くらいの値段だったそうですよ。安く、そして簡単に作れる海軍のレシピは庶民にとって大変嬉しいものだったでしょうね。そうだ、こんさん。そろそろ付け合わせのサラダをカレーに混ぜて食べてみてください」
こん「え、サラダを? ……わ! 生野菜のみずみずしさが意外に合う」

井上「でしょ。カレー界では今、野菜ブームが来ているんです。ちょっと前に『スープカレー』が流行りましたよね。あれもさまざまな野菜が素揚げされて入っています。また『金沢カレー』は、胃粘膜を保護すると言われるキャベツがルーの上に乗っています。キャベツと一緒に食べるとカツの濃厚さが緩和されるんですよ」

こん「(金沢カレーの話になっている……!) つまり、サラダと牛乳がセットになっている『よこすか海軍カレー』は栄養面でも理にかなっているんですね!」

連日、地元の方のみならず遠方からも訪れる人が絶えないという人気店「横須賀海軍カレー本舗」。横尾店長にも話をうかがいました。
横尾店長「最近だと、某艦隊ゲームのファンの方々にも来ていただいていて、大型連休のときにはおかげさまで4時間待ちになるほど大盛況でした」

こん「そんなに!」

横尾店長「2005年にオープンしてから今日まで、続けてきて本当に良かったと思います」

それでは、最後に本日の「カレー格言」を発表します!

じゃんっ!
井上「日本のカレーのルーツを知って食べればより美味!!」
こん「これぞ日本のカレー!」

海軍とともに歩んできた横須賀。ここは、私たちが思い浮かべる「日本のカレー」が生まれた聖地のような存在といっても過言ではありません。その誕生の歴史に思いを馳せつつ食べるカレーは、以前より何倍も感慨深いものがありました!
「横須賀海軍カレー本舗」さん、ありがとうございました。
さぁ、無事スタートを切ったカレー巡礼の旅。次回は一体どんなカレーに出合えるのか!? お楽しみに!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。


井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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