人気の秘訣は猫?和風ダシのスパイスカレー店にリピーターが続出

2017.06.01

店舗を複数経営しているのに、レシピが存在しないという飲食店の常識では考えられないカレー店がある。自由な発想のもとに作られる和風ダシが効いたスパイスカレーは、若者だけでなくシニア層からも支持を得ているという。毎日食べても飽きないように、メニューは日替わりにしている。おかげでリピーターが続出だ!(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、和風ダシの効いたスパイスカレーのうわさを調査してきました。

猫が有名なスパイスカレー店!?「旧ヤム邸」

▲後ろにそびえ立つのは大阪城!

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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大阪では数年前からスパイスカレー(※)がブームですが、実はカレーと同じくらい猫が有名なスパイスカレー店があるそうです。どんな猫がいるのか、またどんなスパイスカレーが食べられるのか調査してもらえないでしょうか?
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※スパイスカレーとは…大阪発祥の創作カレーのこと。明確な定義はないが、仕上げにスパイスを振りかけるなど、スパイスの香りを重視したカレーが多い。

井上先生「へぇ~、猫が有名なお店があるのか。スパイスカレーは今年(2017年)あたりに東京でもブームが巻き起こりそうだし、調査しに行ってみるか!」

りか「行きましょう!猫の写真を掲載すれば、記事のPVがアップすること間違いなしですよ!」

井上先生「りかさん、したたかだな…」
やってきたのは、大阪市営地下鉄・谷町六丁目から徒歩4分ほどの「旧ヤム邸」。空堀(からほり)商店街の一角にある、2階建ての日本家屋を改装した建物です。

井上先生「あれ?なんだ『旧ヤム邸』じゃないか!ここなら来たことあるよ。カレーに気をとられていて、猫の存在に気が付かなかった。他にも大阪市内に『旧ヤム邸 中之島洋館』『旧ヤム鐡道』と系列店があるんだ。どこもお店の雰囲気とメニューが異なるから、全店舗行ってみるといいよ」

りか「そうなんですね!それにしても、猫の存在に気が付かないとは。先生のカレー愛には脱帽ですよ」
「いらっしゃいませ!」
出迎えてくれたのは、店長・藤田一也さんと、猫のたろう。

りか「きゃあ~♪ハンサムな顔立ちをした猫ですね」

藤田さん「ありがとうございます。全国各地からたろうの取材が殺到しているんですよ。おかげで『カレーは結構です』なんて言われることもありますが(笑)。ちゃんとしつけしていますので、お客様のテーブルの上に乗ったり、噛みついたりはしませんよ」
▲たろうは人懐っこく、カメラを向けるとちゃんと静止する賢い子です
ちなみに、猫のたろうだけでなく、内装もレトロモダンで可愛らしい作りをしています。古いミシン台やテレビなども置いてあります

和風ダシがベース!カルダモンの香りが立つスパイスカレー

井上先生「ちょっと、りかさん。たろうに夢中でカレーを調査すること忘れてない?」

りか「あっ、すっかり忘れていました!では、カレーを注文しましょう」
▲夜のメニューである「スペシャルミックスカレー(限定)」(税込1,180円)。

藤田さん「こちらは、3種のカレーソースがかかっています。上から右回りで日替わりキーマカレー、ほうれん草カレー、サラっとカレーですね。付け合わせも日替わりで、今日は、しいたけのスパイス漬け、長芋のカチュンバル、イカとアスパラのテルダーラがのっています。ランチは完全日替わりのため、夜の時間帯に注文できるカレーとなっています」

りか「生野菜ものっていて彩り豊かですし、健康にも良さそうですが…、カチュンバルやテルダーラって何ですか?」
▲手前の紫色のサラダが長芋のカチュンバル、その奥がイカとアスパラのテルダーラ

井上先生「まったく~!一番弟子ならそれぐらい知っておかなくちゃ。カチュンバルは野菜を小さく切ってスパイスで和えたインドのサラダのことで、テルダーラはスリランカ式のスパイス炒めのこと。ちなみに、数種類のカレーソースがあいがけしてあるのは、スリランカカレーのスタイルだよ」

りか「す、すみません~!でも調査の回数を重ねるごとに、どんどんカレーについて詳しくなっていますよ」

井上先生「そうだね。とはいえ、カチュンバルやテルダーラなどの用語を使っているということは、さまざまなジャンルのカレーをよく勉強している店だとわかるよ」
井上先生&りか「では、いっただっきまーす!」
▲食べ方に決まりはありませんが、最終的に混ぜて食べるお客さんが多いとのこと
りか「お~!カレーソースは和のテイストが効いた優しい味わいです。しかも日替わりのキーマカレーは、珍しいごまテイストですよ!」
井上先生「ああ。どのカレーもカルダモンの清涼感とブラックペッパーのピリっとした感じも効いている。それに加え、食べた瞬間の香りと、食べ進めたときの香りが若干変わるね。食べている最中も五感で飽きさせないカレーだ。名付けるなら、ブレイクスルーカレーかな」

レシピが無い!?コンセプトは普段使いできる店

「スペシャルミックスカレー」はどうやって作っているのでしょうか?藤田さんに聞いてみましょう!
藤田さん「キーマカレー(写真手前)は日替わりで、今回はローストしたクミンに、鶏挽き肉を使い、ゴマで味を調えています。ほうれん草カレー(写真左上)は、ほうれん草のペーストにタイムなどのハーブやスパイスを加え、チーズも投入。サラっとカレー(写真右上)は、鶏ガラスープに鰹節や干ししいたけのスープをブレンドし、スパイスや醤油などで和のテイストを出しています。どれもカルダモンとブラックペッパーの香りを強調していますよ」
藤田さん「でも実は…うちのお店は基本的にレシピがないんですよ」

井上先生&りか「…レシピがない!?」

藤田さんによると、「旧ヤム邸」の系列店も含め、レシピらしいレシピはほとんどなく、各店長の裁量に任せているのだとか。しかもオーナーチェックも無いといいます。ただし「1.小麦粉を使わない、2. カレー毎にコンセプトを持って作る(この日は和風の素材や調味料を使っている)、3.お客様に出す直前にスパイスを挽いて香りをたたせる」、この3つのルールには重点を置いているとのこと。
井上先生「レシピがないなんて、飲食店の常識では考えられないですよ。しかも多店舗展開をしているのに。なぜ、そのような経営をされているのですか?」

藤田さん「普段使いできるお店がコンセプトなので、お客様が毎日食べにきても飽きないようにしたかったからです。だから、ランチは日替わりにして毎日違う味を提供していますし、夜のメニューも日々マイナーチェンジを繰り返しています。店舗によってメニューが異なっているのも、そのためです。そもそもスパイスカレーとは、完全な創作カレーなので、作り方にルールも何もないんですよ」

一般的にスパイスカレーは若者やカレー好きを中心に人気を博していますが、こういった理由から「旧ヤム邸」のお客さんは、シニア層や近隣に住む方々が多く、リピーター率も高いのだとか!
藤田さん「東京は一つのジャンルに絞っているお店、たとえばインドカレーならインドカレーだけを作っているお店が多いですが、大阪だといいとこ取りです。だからスリランカやネパール、タイカレーの要素を取り入れたり、日本料理の醤油や味噌、山椒も使ったり。何でもアリなんです。他の地域の方からしたら『こんなのカレーじゃない!』と思うかもしれませんが」

りか「なるほど~。大阪でスパイスカレーが流行っている背景には、そういう大阪人の気質があるのでしょうか?」
藤田さん「そうだと思いますよ。音楽でもそうですし。東京だったら、たとえばジャズならジャズを究めるけども、大阪ならいろんなジャンルをミックスさせたような音楽を好む傾向にありますからね」

井上先生「最初はレシピがないことに驚いたが、つまりスパイスカレーには他のジャンルのカレーよりも、クリエイティブな要素が詰まっているということか」
ちなみに猫のたろうは、2011年に「旧ヤム邸」をオープンするにあたり、スタッフさんたちで改装しているときに、どこからともなくひょっこりと現れたそう。現在、お店が繁盛していることから、たろうは招き猫だったのかもしれませんね。

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『旧ヤム邸』のカレーチャートはこちら!」
井上先生「和風ダシをベースにしたカレーソースだったから、コクは4。固定のレシピを作らず、わずかなルールのもと自由な発想でカレーを生み出していたからオリジナリティは5。シニア層にも支持を得ているというのが印象的だったね。猫のたろうが有名だけど、カレーのレベルも相当高かったよ!」

りか「たろう目当てで『カレーは結構です』と言っていた方にも、ぜひ食べてもらいたいです!それに、毎日違う味を提供しているランチにも興味があります!」
▲最後は、たろうも一緒にパシャリ!

大阪で福を呼ぶ猫にも会えるカレー店に行くなら、「旧ヤム邸」へ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。毎日カレーを食べるカレー愛好家で、現在はカレーパンも研究している。カレー大學、カレー大学院卒。趣味はカレーとJリーグ。

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