山形に“もってのほか”うまい菊があったとさ!

2015.10.13 更新

山形の食文化がメディアでも頻繁に取り上げられるようになり何かと注目されていますが、「もって菊」もその一つ。地元では「もってのほか」という愛称で親しまれ、秋になると家庭の食卓に登場するポピュラーな食材です。その名の由来は「もってのほかおいしい」という説や「天皇家の御紋である菊の花を食べるとはもってのほか」という説も。収穫に励む、武田昌彦(たけだまさひこ)さんの畑を訪ねました。

▲父親の跡を継ぎ、菊を育てています
食用菊というと、古くから延命長寿の花としてお茶や漢方薬に使われてきた黄色い菊をイメージしますが、「もって菊」は紫系の色をした「延命楽」という品種です。

食用に栽培している菊の生産量としては山形が全国1位で、国内全体の6割を占めるほど。武田さんの住む寒河江(さがえ)市は、県内で最も栽培が盛んな地域です。

「1970年前後の減反政策によって、父親や地域の農家の人たちが稲作から菊の栽培に転作したようです。」と武田さん。父親たちから栽培技術や思いを受け継いだ二代目たちがこの寒河江市を有数の産地へと押し上げていきました。

「もって菊」とひと言でいっても種類は多く、中でも特に知られているのは「紅もって」「早生(わせ)もって」「本もって」の三種類。「紅もって」の収穫が最盛期を迎えている武田さんのハウスには、紅紫色の花が見事に咲いています。
▲ハウスの中は菊の香りに溢れています
▲奥様の春美さん(左)と二人三脚で
▲収穫の最盛期には早朝から摘み取り作業。午前中が勝負!
県内では、「紅もって」の収穫期が9月中旬~10月中旬、「早生もって」が10月中旬~下旬、「本もって」は10月末頃に最盛期を迎えます。「紅もって」はその名の通り紅色が強く、花びらの形状が平弁。それに比べ、「早生もって」と「本もって」は紅もってよりも淡い紫色で筒状の細長い花びらが特徴です。
▲色鮮やかな「紅もって」
毎年5月下旬~6月上旬に行われる定植後は肥培管理だけでなく、倒れてこないように土寄せしたりネットを張ったりと様々な作業が。手間暇かけて花の成長を見守っていきます。
▲一株ごとにネットを張って固定
「今年は猛暑だったので水管理が大変で、収穫期が例年よりも一週間遅れました。他の作物と同様に朝晩の寒暖差があったほうが良い菊に育ちます。気温が色の付き具合いにも影響してしまうんですよ」と武田さん。秋の花なので涼しいくらいのほうが、成長が進むそう。

収穫作業はすべて手作業。一輪ずつ大切に摘んでいきます。
一株から枝分かれし、次々とつぼみをつけていくので、一株から5~6回収穫することができます。
▲一つの枝に何輪もの花が咲きます
「えー、菊を食べるなんて…」という声が聞こえてきそうですが、食べるのは花びらだけ。
ほのかに漂う菊の香りとしゃきっとした食感がクセになりそう。ほろ苦さよりも、ふわっとした甘さのほうが強いので食べやすく感じます。
▲散らした花びらだけを食べます
一般的な食べ方は、おひたしや酢の物、和え物など。クセがなく、彩りが良いので、ナスやきゅうりと一緒に漬けたり、甘酢漬けなどの素材としてもおすすめです。
▲一般的な食べ方は「おひたし」
おひたしなどを作る時は沸騰したお湯に酢を入れ、その中に散らした花びらを入れます。サッと湯がいた後に冷たい水にさらすのが基本。酢を入れるのは色良く茹でるため。歯ざわりを楽しむためには茹ですぎないことがポイントです。

「袋に散らした“生”の花びらを入れ、上から酢をかけて密閉し、冷凍保存しておくと、触感や風味そのままに長期保存ができますよ」と春美さんが教えてくれました。
▲春美さんに菊料理のポイントを教えていただきました
パックに詰めて出荷準備OK!

話を伺いながら、生産者の地道な努力があるからこそ、伝統野菜が受け継がれていくことを実感します。でも、後継者不足の問題はどの作物農家にも共通のようです。

武田さんのハウスに別れを告げ、山形市へ。山形市ではこの時期になるとホテル協会、中心市街地施設とタイアップして「やまがた おいしい菊キャンペーン ※2015年は11月3日(火)まで」を開催するなど「もって菊」のPRに力を入れています。

さっそく、「もって菊」の料理を食べに行ってみましょう。

訪れたのは、かつて紅花商人であった長谷川家の蔵屋敷をリノベーションした街なか観光の拠点施設「山形まるごと館 紅の蔵」。その中にあるCafe&Dining「990(クックレイ)」では、この時期、「もって菊」を使った創作料理をいただくことができます。
▲山形市内にはこうした蔵造りの建物が点在しています
▲蔵の中のカフェレストラン「990」
今回いただく料理は「山形もって菊ときのことりんごのソテー」700円(税別)。
秋の食材のきのこ類(ひらたけ、ぶなしめじ、えのき、かきの木茸)、りんご、もって菊を使った「あったかいサラダ」をイメージした料理です。味付けは塩・コショウ、ワインビネガーで。シンプルなのにコクがあり、ワインにもピッタリ。多種類のきのこを使うことで複雑な食感が愉しめる一品です。
▲佐藤シェフが持ってきてくれました
「もって菊は香り付けや彩り用に使うことが多いので、ハーブと同じ感覚ですね」と話すのはシェフの佐藤善太郎(さとうぜんたろう)さん。
▲山形の食材をメインに、創作料理を提案している佐藤シェフ
佐藤さんはフランスの食材ではなく、山形の食材でフランス料理にどうアレンジしていくかをテーマに、固定観念に囚われない料理を提案しています。

高い天井の店内は、レトロ感漂うシェードやフローリングが素敵な空間を演出。市内の平清水焼の皿に盛られるフランス、イタリア料理の数々は、地産地消をコンセプトに地元の契約農家が育てた野菜や果物をふんだんに使い、素材を生かした料理を提供しています。
▲クラシカルな雰囲気漂う店内
「山形もって菊ときのことりんごのソテー」は、「もって菊」が収穫される今の時期だけの提供ですので、ぜひこの機会にご賞味ください。
▲案内板も素敵
やまがた おいしい菊キャンペーン」中は、キャンペーンに参加している飲食店でも菊を使用した料理を食べることができますので、この時期ならではの山形の味を楽しんでみてはいかがでしょうか。
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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