ご当地カレーが進化!切り干し大根の旨み引き立つインドカレー

2017.09.15

公共施設内で本格的なスパイス料理を出す町がある。「飲食店があれば人々が集うのではないか?」という考えのもと、スパイス料理店が選ばれたのだった。このお店のカレーには、本来カレーには使わない、生ウコンや切り干し大根が使われている。地域の食文化とスパイス料理の文化をミクスチャーさせた、新しいご当地カレーのあり方だろう。(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、生ウコンや切り干し大根を使ったカレーのうわさを調査してきました。

公共施設の中にあるスパイス料理店「三条スパイス研究所」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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新潟県燕三条市に「三条スパイス研究所」という不思議な名前のスパイス料理店があり、「フレッシュターメリックカレー」「打ち豆と干し野菜カレー」というちょっと想像がつきにくいカレーが看板メニューだそうです。どんなお店で、どんなカレーを提供しているのか調査してきてもらえないでしょうか?
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井上先生「ああ、このお店は知っているよ。東京・押上にあるスパイス料理の名店『スパイスカフェ』のオーナーシェフである伊藤さんがプロデューサーとして携わっているんだ。気になっていたが、ここ最近は新潟県に行く機会がなくて…」

りか「『スパイスカフェ』の伊藤さんが関わっているんですね!それなら、ぜひ調査に行ってみましょう!」
ということで、やってきたのはJR弥彦線・北三条駅から徒歩3分ほどのところにある「三条スパイス研究所」。実はこちらの建物、「ステージえんがわ」という三条市の公共施設。高齢化の進む地域の高齢者の外出機会を増やそうと、給食センター跡地に建てられたのだとか。その一角に「三条スパイス研究所」が入っています。
「こんにちは!」
出迎えてくれたのは、ディレクターの山倉あゆみさんと、シェフの岩田靖彦(やすひこ)さん。

山倉さん「ここは三条市の新しい公共施設として2016年にオープンしました。屋根付きシースルーの屋内屋外スペースで、たとえるなら可視化された公民館。だから、誰もが自由に使える施設なんです。『そんな場所にカレー店を作ったらおもしろいんじゃないか?』という行政担当部署の提案から、『三条スパイス研究所』をオープンするに至りました」
▲店内は、おしゃれにディスプレイされている

三条市は、カトラリーや包丁などの金物製品を中心とした、ものづくりの町として知られています。そのため職人さんが多く、さっと食べられるカレー文化が元々根付いていたといいます。

山倉さん「どんなカレーを提供するかプロデューサーの伊藤シェフと一緒に考えていたところ、三条市の山間地域に住み、ひとりでウコンを栽培している農家・山崎一一(かずいち)さんに出会ったんです!」
▲三条市の山間地域で栽培したウコン

ウコンは暑い地域で育つ植物で、新潟県のような寒冷地では本来育てることはできません。しかし山崎さんは越冬技術を独自に開発。いつの間にか、地元では供給が間に合わないほどの人気商品になっていたのだとか。それでこの生ウコンをメインにした「フレッシュターメリックカレー」を作ることになったそうです。ちなみに、ウコンの英名はターメリックであり、実は同一のものです。

新潟の食文化とスパイス料理のミクスチャー!

三条市の取り組みを詳しく聞きたいところですが、まずはカレーを食べてみましょう!
▲料理の注文は、施設の中央にある「三条スパイス研究所」のカウンターから
▲「ターリーセット」(税込1,296円)。カレー2種、スパイスと野菜のおかず4種がのったライス、デザート、ドリンク、水がセットになっている

カレーは常時4種類から選べ、今回は看板メニューである「フレッシュターメリックカレー」と「打ち豆と干し野菜カレー」をオーダー。メニューは定期的に変わるそうです。
▲スパイスと野菜のおかずは、左から「春キャベツのマリネ」「春カブとコリアンダーのサブジ」「トマトのフェンネルシード焼き」「しぎ茄子のクミンとターメリック和え」

岩田さん「ぜひ、プレートの上でカレーと野菜のおかずを混ぜながら食べてみてください!いくつもの風味がミックスされ、その時だけの香りや味わいを楽しめますよ」

りか「色とりどりで美しいですね!こんなおしゃれなターリー(※)を、市の公共施設内で提供しているなんてすごい」

(※)ターリー…インド料理の定食のこと。インドではよく見られる料理の提供形態
井上先生&りか「いっただきまーす!」
▲「フレッシュターメリックカレー」
りか「う~~ん♪おいしい!刻みウコンが入っていて、ウコン特有の苦みを感じます。でも味のバランスがいいというか。鶏肉がゴロゴロ入っているのもうれしいです。このカレーは、どうやって作っているのでしょうか?」
岩田さん「カルダモンやシナモン、クローブなどのスタータースパイスで油に香りをつけてから、玉ねぎを炒めます。生ウコンは、春ウコンをすりおろしで、秋ウコンを刻んで使っているんです。その後トマトを加え、コリアンダー、チリパウダ―などのパウダースパイスを投入。最後に、ガラムマサラやはちみつで2日間マリネしてから焼いた鶏肉を入れ、1時間じっくり煮込みます」
井上先生「なるほど、春ウコンと秋ウコンの両方を使っていることで、こんなにもウコンの味が際立っているのか。本来カレーには、色がきれいに出る秋ウコンを乾燥させたターメリックのスパイスしか使わないんだ。カレーに生の春ウコンを使うのは珍しいよ」
▲「打ち豆と干し野菜カレー」

りか「先生!こちらのカレーには、切り干し大根が入っていますよ。大根の旨みが生かされています。こんなにもカレーに合うとは!」

岩田さん「実は、切り干し大根は新潟でよく食べられる食材なんです。切り干し大根だけでなく、乾燥ニンジンと乾燥ゴボウも入っています。しっかり旨みが出るように、戻し汁もすべて使っていますよ」

井上先生「戻し汁がポイントなんですね。ところでメニュー名にもある“打ち豆”とは何でしょうか?」
▲丸くて黄色いのが打ち豆
岩田さん「打ち豆も新潟では昔から食べられている大豆の加工品で、保存食です。大豆を水に浸してから木槌などで潰し、乾燥させてあります。打っておくことで調理時間を短縮できるんです。寒い地域の人の知恵ですよね。じつは打ち豆以外にも、豆を5種類使っているんですよ」
岩田さんによれば、下準備として、レンズ豆など3種類の豆をペーストにしたところに、打ち豆を加えるとのこと。そしてスパイスの代わりに、ウラドダール、チャナダールといった豆で油に香りをつけていくのだとか!

岩田さん「豆でとろみ付けと旨みを出すんですよ」
りか「豆を油の香りづけに使うテクニックがあるとは知りませんでした!」

井上先生「そうだね。それに、ご当地の食材を欧風のカレーソースにただ入れただけの“ご当地カレー”は多いけれど、食材の味をこんなにも生かした本格インドカレー系のご当地カレーはなかなかないよ」
▲食べ終わったら、香ばしいターメリックティーでお口直し

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『三条スパイス研究所の』のカレーチャートはこちら!」
井上先生「三条市でとれたウコンを使っていること、また切り干し大根や打ち豆といった地域の食文化を生かしたサラっとしたカレーだったので、ご当地グルメ度は5。なにより公共施設内にあるというのがおもしろいよね。それに豆をホールスパイス代わりに使うなどのテクニックも見られたので、スパイステクニック度も5」

りか「おもしろいテクニックが満載でしたね。こんな素敵な公共施設とスパイス料理店のある三条市がうらやましいです!」
▲新鮮なウコンを持ってパシャリ!

三条市で郷土愛にあふれた本格インドカレーを食べるなら「三条スパイス研究所」へ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。毎日カレーを食べるカレー愛好家で、現在はカレーパンも研究している。カレー大學、カレー大学院卒。趣味はカレーとJリーグ。

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