この旨さで500円!?元建築デザイナーが作る究極ショウガカレー

2017.08.20

元建築デザイナーが繰り出す世にもスタイリッシュなカレー店が新潟にある。ショウガを効かせた独創的なカレーは、まさかの500円!都内では1,000円とれるレベルだ。しかもワンオペ、ワンメニューという理想の飲食店経営を実現している。材料を低コストに抑えているのに、おいしい。まさに究極のカレー店だ!(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、500円で食べられる究極のショウガカレーのうわさを調査してきました。

店主は元建築デザイナー!「ミヤウチショウガカレー研究所」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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新潟県長岡市に「ミヤウチショウガカレー研究所」というカレー店があります。メニューは500円の「ショウガカレー」一品だけで、店主がひとりで切り盛りしているそうです。行ってみたいのですが、なかなか入る勇気がありません。代わりに、どんなお店なのか調査してきてもらえないでしょうか?
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井上先生「おぉ、この店はずっと行ってみたいと思っていたんだ。というのも、私は『カレー総合研究所』という会社を経営していて、同じ『カレー研究所』だからね。どんな人がどんなカレーを出しているんだろうと気になっていたんだ」

りか「なんとなく個性的な店主の予感がします(笑)。ぜひ、調査しに行ってみましょう!」
ということで、やってきたのはJR信越本線・宮内駅から徒歩2分ほどの「ミヤウチショウガカレー研究所」。以前写真屋だった物件を居抜きにしたカレー店です。店内では、どんな研究がされているのでしょうか…?
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは店主・花田圭太さん。
▲店内は、カフェのようなスタイリッシュな空間。テーブル席とカウンター席、そして小上がりがあります
▲棚には、CDやレコードなどがたくさん。もしかして、花田さんも元バンドマンなのでしょうか!?

花田さん「いやいや、私は元バンドマンじゃないですよ。以前は、建築会社でデザイナーをやっていました。カレー作りの趣味が高じ、2012年に脱サラして、このお店を始めたんです」

井上先生「りかさんは、バンドマン好きだからなぁ。ところで、店名の“ミヤウチショウガカレー研究所”とは、どういう意味なんでしょうか?」
花田さん「この辺の地域を“宮内”というんです。また新潟5大ラーメンの一つに『長岡生姜醤油ラーメン』というご当地グルメがあって。ラーメンがあるなら、カレーがあってもいいかなって…」

井上先生「研究所というぐらいだから、何か特別なショウガを使っているのでしょうか?」

花田さん「特別なショウガは使っていないですねぇ。というのも、食材にこだわらないのがこだわりだからです。食材は全部スーパーで買えるもので、カレーはエスビーの赤缶(※)で作っていますよ」

(※)エスビーの赤缶…エスビー食品株式会社の看板商品で、1923(大正12)年に日本初のカレー粉として製造開始。2017年現在、カレー粉のシェア数No.1である

井上先生&りか「…そうなんですか」

食材は普通なのに独創的で絶品!「ショウガカレー」

飄々としている花田さんに、少し不安を覚えた私たち。ここは気を取り直して、まずはカレーを食べてみましょう!
▲「ショウガカレー」(税込500円)。カレーソースの上にクリーム、糸唐辛子がトッピングされている。ごはんは国産コシヒカリを使用したターメリックライス
▲スプーンにのっているのは、フードプロセッサーで刻んだキュウリのピクルス

りか「わぁ~!色鮮やかですね。お店の内装同様、おしゃれなカレーです」

井上先生「これでワンコイン!?ボリュームもあるし、東京じゃ考えられないよ。テイクアウトならまだしも、イートインなのがすごい。とはいえ、おいしくなかったら元も子もないからね。まぁ、食べてみましょう」
井上先生&りか「いっただきまーす!」
▲パクっ

りか「う~~んっ♪おいしい~!カレーソースはトマトがベースのようですね。それにクリームの甘さに、ショウガの辛さも効いています。食べ進めたら体がぽかぽかしてきそうです。これは新潟の寒い地域にぴったりのカレーですね。先生も食べてみてください」
井上先生「りかさん、だいぶ食レポうまくなったんじゃないの?どれどれ…」
井上先生「…(おや?カレーソースは、トマト以外にも複雑な味わいで、旨みが効いている。これはだしを使っているな。鶏肉もしっかり下味がついている。赤缶を使っていると言っていたが、それにしてはスパイス感があるな)」

りか「…先生?」
井上先生「…(なにより大阪のスパイスカレーのように、仕上げにスパイスが振りかけられているじゃないか。キュウリのピクルスもただ刻んだだけではなさそうだぞ。これは色々なテクニックが隠されているに違いない)」

りか「先生、黙っちゃってどうしたんですか!?」
井上先生「ああ、ごめんごめん!色々なテクニックが見え隠れするカレーで、これで500円はすごいと思ってね」

「創作」と「効率」を両立させた究極のショウガカレー店!

「ショウガカレー」はどうやって作っているのでしょうか?花田さんに聞いてみましょう!
花田さん「玉ねぎを炒めてからトマト、りんごやももなどのフルーツを入れ、トマトスープ風にしてから、赤缶とショウガをペースト状にしたもの、さらに鶏肉を入れて完成です。ショウガは一般的なカレーに比べて大量に入れていますね。あと、あまり煮込みません」

井上先生「え、それだけですか?カレーソースは複雑な味わいで、旨みがあったと思うのですが…」

花田さん「…あぁ、昆布などの既製品の和風だしを数種類ブレンドして使っていますね」
井上先生「(やっぱり隠し味があったか!)鶏肉にも下味がついているように思ったのですが」

花田さん「…えーっと、鶏肉は赤缶をベースに、ニンニクと、クミンやナツメグといったスパイスをまぶして、オーブンで焼いて肉汁を出してから投入していますね。ごはんやカレーソースをよそったあとにもガラムマサラなど、香りを立てるスパイスを振りかけています」
井上先生「(やっぱり~!鶏肉の下味に使ったスパイスが、カレーを引き立てていたのか)あとキュウリのピクルスにはどんな工夫が?」

花田さん「…キュウリのピクルスは数種類ミックスさせています。とはいえ、材料はすべてスーパーで買える市販のものですよ」

りか「そんなにもテクニックが隠されていたとは!しかし、なぜ食材にこだわらないのでしょうか?」
花田さん「カレーを500円で提供するためです。実は、高校生がデートにも使えるファストフード店がコンセプトなんです。あと建築業界にいた人間ですから、作業員さんにも満足してもらいたくて、安い価格設定にしています。しかもワンオペ(※)なので、ワンコインだとお会計がラクなんですよ。メニューが一品なのも、そのためです」

※ワンオペ…ワン・オペレーションの略称。店員一人で、店舗を運営する方法のこと

花田さんによれば、「最初は入りづらかった」というお客さんが多いようですが、一度来てしまえば、メニューも一品でオーダーしやすく、リピートして来店してくれるそう。また、ショウガが多くて胃もたれしないカレーなので、近所に住むご年配の方にも好評だとか。
井上先生「なるほど。『創作』と『効率』を両立させたというわけか。一般的にカレー店のタイプは、食材や作り方にこだわり、それなりの価格で出す創作重視の店か、カレーの味は普通で効率重視の店か、どちらかに分かれるもの。両立できるのは、やはり店主が建築デザイナー出身というのがあるのかな。ワンオペ、ワンメニューは効率がいいし、それで利益が出せるなら、飲食店経営者にとっては理想の形態だよ」

りか「効率のため一品にしていると言っていましたが、ショウガカレーはオリジナリティに溢れていて、確かな自信が感じられました。飄々としている店主に最初は不安を覚えましたが、謙遜しているだけだったんですね」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『ミヤウチショウガカレー研究所』のカレーチャートはこちら!」
井上先生「カレーのビジュアルは色鮮やかで独創的。作り方もショウガを大量に使ったり、鶏肉は複数のスパイスで下味をつけていたり、ピクルスは数種類ミックスしていたりと、様々なテクニックが見られた。また創作と効率を両立させていたので、オリジナリティは5。和風だしをブレンドして使っていて旨みがあったので、コクは4」
りか「ところで、このショウガカレーの作り方はどうやって思いついたのでしょうか?」

花田さん「作っていくうちに、偶然こうなっただけですよ」

井上先生&りか「またまたご謙遜を~(笑)」
▲最後は店主の花田さんとパシャリ!

長岡市でショウガの効いた体温まるカレーを食べるなら「ミヤウチショウガカレー研究所」へ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

吉祥寺在住のフリーライター。カレー大學を卒業し、現在カレー大学院で猛勉強中(じつは井上先生の座を狙っている)。カレーパン伝道師。趣味はカレーとJリーグ。

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