山形の今昔かき氷を楽しむ/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩き vol.18
「すだまり氷」、という言葉を皆さんはご存知だろうか?山形県の南東部にある山辺(やまのべ)地区だけで食べられている珍しいかき氷なのだが、名前の通り、かき氷にお酢をかけて食べるという、全国でも類を見ない斬新なスタイルである。イチゴ味やメロン味の甘いシロップの上に酢醤油という組み合わせ。なんとも不思議なご当地かき氷を食べてみたくて、山形を訪れてみることにした。

山辺町限定・酢醤油をかけるかき氷「すみどや」「山辺温泉保養センター」

まず訪れたのは、JR羽前山辺駅から徒歩2分ほどの「すみどや」。酢醤油を入れてあるのは大抵サイダーの空き瓶で、口の部分には杉の葉がぎっちりと差し込まれている。これは防腐剤の役割と、かけすぎ防止の役割を担っているそうだ。注文したイチゴのかき氷に酢醤油を振りかけてみると、杉の葉を伝ってポタリポタリといい塩梅に氷の上にかかる。


今回僕がかき氷を食べた「すみどや」は本来たこ焼きのお店だ。地元客も観光客も楽しそうに熱々のたこ焼きを頬張ってはかき氷を味わっていた。

すみどや
山形県東村山郡山辺町大字山辺2946-3
[かき氷提供期間]7月上旬~9月末
[営業時間]10:30~17:30
[定休日]月曜(祝日の場合営業、翌日休)
023-665-9909

もう1軒、山辺温泉保養センターの食堂では、「シロップはいらないよ!酢だまりだけかけて!」と風呂上がりのお父さんが酢醤油だけのかき氷を食べていた。「温泉後にはこれがいいんだよ!」とかき氷で涼む姿を、気持ち良さそうだなあ、と羨ましく感じた。
山辺温泉保養センター
山形県東村山郡山辺町大字大塚字近江801
[かき氷提供期間]5月下旬~9月末
[営業時間]11:30~14:30
[定休日]第4月曜、1月1日
023-664-7777
蔵王温泉を2倍楽しめるかき氷「音茶屋」


ほどなくして運ばれて来たかき氷は素朴な印象だが、なんとも心惹かれるものがある。ゴロゴロとさくらんぼのコンポートがのった「さくらんぼミルク」に、スパイスがしっかりと効いた「カルダモンミルク」。これは当たりだな、とニヤニヤとしてしまった。

「さくらんぼミルク」のかき氷は丁寧にきめ細やかに削られ、山形らしく大きなさくらんぼをコンポートにしたものをたっぷりかけてある。「音茶屋」では、できるだけ果物は県内産のものを使うようにしているという。
山形県産のさくらんぼをこんなにたっぷり食べられるなんて、なんと贅沢なかき氷だろう!一度にこんなにたくさんのさくらんぼを食べたのは生まれて初めてだなぁなどと考えながら一つ、もう一つとさくらんぼの淡い香りを存分に楽しんだ。

もう一つ注文していた「カルダモンミルク」は、まさかこの味が山形で食べられるとは…と驚く味わいだった。甘ったるくなくすっきりとした仕上がりで、カルダモンのスパイシーな香りをしっかりまとわせたミルクが氷にしっとりと染みている。
実は「音茶屋」ではカレーも有名だということで、スパイスの扱いに慣れているのであろう。カレーを食べて汗をかいた後にこのかき氷を食べたとしたら…きっと最高であろう。ああそうすればよかった、とちょっと後悔だ。
それでもかき氷の美味しさにすっかり満足して、再訪を心に誓いながらお会計をしていると店主さんに「かき氷、お好きなんですか?」と声をかけられた。
「ずっと食べ歩いているんです、でもこちらのことは知らなくて……看板見て入って来たんですよ」と答えると、「昨日、看板書いたんです。よかった、看板書いて!」とのこと。なんとまあ、見事な看板効果。きっとご縁がある店なのだろう、とかえって嬉しくなった。

「音茶屋」では、旬の果物や野菜を使ったかき氷を出しているので、果物の旬が終わったらメニューも終了。さくらんぼ、桃、プラム、かぼちゃ…と変わってゆく旬の味と蔵王温泉をセットで楽しんでみてはいかがだろう。
音茶屋
山形県山形市蔵王温泉935-24
[かき氷提供期間]4月~9月頃
[営業時間]10:00~20:00(12~3月は~24:00)
[定休日]水曜(12月~3月は月1回不定休)
023-694-9081
畑に囲まれたジャム屋の絶品かき氷「ぽたじぇ」
ネットで山形のかき氷の情報を探している時にたまたま見つけた店主のSNSを見て、「どうしても行きたい」と1日かけてその店へと向かった。その店が開いているのは週末のみ。かき氷も売り切れじまいなので、朝一番を目指すしかない。




この美しすぎるかき氷にしばし呆然としてしまった。この鮮やかさは見たことがない。驚くほど芳醇な香りを放ち、すもも独特の酸味とそれを超える濃厚な甘さのバランスが素晴らしい。「ぽたじぇ」のかき氷は全てミルク付きになっているのだが、「すもも」にはヨーグルトソースがかかっており、果物の美味しさをひきたててくれる。

次に提供されたかき氷も、これまた美しい姿だ。今まで食べ物に対してそう思ったことはないのだが「可憐」という言葉が浮かんでくる。とても可愛らしく、儚げであり、それでいて力強い。山形県産の桃と店主が育てたラズベリーの2色がけのかき氷「桃と木苺」だ。
桃のピンクがかった果肉ソースの上に、まるで発色しているかのごとく輝いているラズベリーシロップ。見ていて飽きない美しさなのだが、かき氷はそうも言ってられない。それぞれのシロップがどちらも抜群にうまいのだが、ふたつのシロップが混ざると新しい美味しさが生まれる。ふたつのシロップを重ねるとき、その重ね方に店主の感性が表れているような気がする。僕はこの店主の感性が大好きだ、と思った。

もうこうなると1人1品なんて言ってられない。他のお客さんがやってくる前に2つかき氷を追加注文だ。
まずは山形県産のメロンを使った「マスクメロン」。これはまた、ここでしか食べられないのではないかと思わせる、マスクメロンそのものを味わえるかき氷である。メロンが完熟するまでじっくりと待って、最高の状態になった時にメロンそのものの美味しさを楽しめるシンプルなシロップに仕上げている。まるで瑞々しいメロンを1個食べきった気分になる。

最後にお願いしたのは「和栗のモンブラン」。これは今までの3つとは毛色が違っていた。自家製栗をペーストにしてクリームソースと合わせた、まるでケーキのような味わいのかき氷。シンプルなかき氷も、手を加えて洋菓子のように仕上げたかき氷も、どれも素材の味を活かしながら色々な手法で果物の美味しさを追求している店主の姿勢が見えてくるような、丁寧で美しく、美味しいかき氷だった。


ぽたじぇ
山形県西置賜郡飯豊町萩生4091-1
[かき氷提供期間]7月~9月上旬頃(気温により変更あり)
[営業時間]金・土曜11:00~17:00(16:30L.O.)
[定休日]日~木曜(臨時休業あり)
0238-72-3915

小池隆介
かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
この記事の関連キーワード
こちらもおすすめ
山形県で体験できるプラン
-
オンライン予約OK
【山形・鶴岡】さくらんぼ狩り60分食べ放題 被り物写真も◎屋…
約60分|1,400円(税込) / 人
鶴岡
-
オンライン予約OK
【山形・上山温泉】さくらんぼ30分食べ放題!山形名産の佐藤錦…
約30分|1,800円(税込) / 人
山形市・蔵王・天童
-
オンライン予約OK
【山形】ぶどう狩り 60分「粒」とり食べ放題!シャインマスカ…
約60分|1,400円(税込) / 人
鶴岡
-
オンライン予約OK
食べ放題付!ぶどう狩りプラン
約30分|850円(税込) / 人
山形市・蔵王・天童
-
オンライン予約OK
【山形・高畠】600円時間制限なしぶどう狩り食べ放題 デラウ…
約60分|600円(税込) / 人
米沢