街全体が美術館!アートの街・十和田で刺激的な現代アートに触れる旅

2017.07.27 更新

青森県十和田市は「アートによるまちづくり」をコンセプトに掲げる街。街全体が美術館に見立てられ、数々のアート作品が点在しています。その中心となる「十和田市現代美術館」は、世界的なアーティストの作品を常設しているだけでなく、青森にゆかりのある芸術家の企画展なども開催しているとか。地域に根付いた作品もたくさんあるアートの街へ足を運んでみました。

▲十和田市現代美術館を代表する「フラワー・ホース」(チェ・ジョンファ作)

街を巻き込んだアートプロジェクトの一環

十和田市現代美術館へのアクセスは、東北新幹線・八戸駅から十和田観光電鉄バスに乗車し1時間程度。常設展チケットと八戸駅から美術館前までの往復券がセットになったお得なバスパック(税込2,650円)もあるので、こちらもおすすめです。
▲設計したのは西沢立衛(りゅうえ)。金沢21世紀美術館を手がけた建築家ユニット「SANAA」としても活動する

十和田市現代美術館の特徴は「アートのための家」というコンセプトのもと、一つの作品に一つの展示室が設けられていること。それぞれ独立した大小16個の白い立方体の建物(展示室)が林立しています。また、官庁街通りというメインストリートに面しており、通りからも作品を見ることができる開放的な作りとなっています。
▲高さ5.5mのカラフルな馬のモニュメント

入口にあるのは、十和田市現代美術館を代表する作品「フラワー・ホース」。十和田市は昔から馬セリが行われ、明治以降も軍馬育成所(後の軍馬補充部)が開設されるほどの馬産地でした。そんな十和田と馬の関わりを、四季を彩る花々で表現したのがこの作品です。

フラワー・ホースを後にして建物の中に入ると、エントランスホールの床一面も、フラワー・ホースの多彩さが連続するような、ポップな印象となっています。実はこれも「ゾボップ」(ジム・ランビー作)というビニールテープで床一面を覆ったアート作品でした。
▲色鮮やかなエントランスホールの床自体が作品

館内のアート作品を見る前からすでに作品に触れることができるのは、まさに「アートによるまちづくり」を発信する美術館ならでは。でも、アート鑑賞の本番はこれからです。

館内には巨大作品や参加型作品など仕掛けもたくさん

それぞれ独立した展示室内にある作品の1番目は、「スタンディング・ウーマン」(ロン・ミュエク作)。高さ4m近くある巨大な立体作品です。
▲「スタンディング・ウーマン」

360度、どの角度からも見ることができるこの作品の作者は、オーストラリア出身の気鋭のアーティスト、ロン・ミュエク。リアルで緻密な作りで、怒っているようにも、普段通りに振る舞っているようにも見えてしまうちょっと不思議な作品です。
▲結婚指輪をしているといった、女性の人生にあるドラマを感じることもできる

一つの作品に一つの展示室となっているため、次の作品を見るためには次の展示室へ移動する必要があります。各展示室をつなぐガラス張りの廊下の外にも、さまざまな作品が展示してありました。その中の代表作が、ジョン・レノンの妻としても知られる芸術家オノ・ヨーコの「念願の木」です。
▲「念願の木」(オノ・ヨーコ作 ) (C)Yoko Ono All Rights Reserved.

これは願いごとを書いた短冊を結びつける参加型の作品で、「ウィッシュ・ツリー」という平和祈願プロジェクトの一環で制作されたもの。青森の名産「リンゴ」の木を使用しており、春は白い花、夏は青々とした葉、秋にはリンゴがなるといった具合に四季によって彩りが変化するのも魅力の一つです。

そのほかにも、階段がアート作品になっていたり、天井裏にある秘密の作品を覗き込めるようになっていたりと、館内の至るところにアートを楽しめる仕掛けがたくさんありました。
▲3階吹き抜けの階段塔自体がアートになっている「ウォール・ペインティング」(フェデリコ・エレーロ作)

作品は屋外にも!これがアートの街・十和田の醍醐味!

館内の作品を満喫したところで、忘れてはいけないのが、十和田市現代美術館は「アートによるまちづくり」の中心となる美術館であること。街の中にも作品が展示されているので、美術館を飛び出し、アート散策に出かけてみましょう。
▲壁一面に描かれた高さ約9mの「夜露死苦ガール2012」(奈良美智作)

美術館の外壁に描かれている「夜露死苦ガール2012」は、青森県出身の現代美術家・奈良美智(よしとも)が2012年に開いた個展の際に描いたもの。奈良作品らしい憎めない女の子のイラストで、同じポーズで写真を撮る人も多いとか。ついやりたくなってしまいますね。

美術館に面した官庁通りを渡り、その先にあるアート広場にもさまざまなアート作品が展示されていました。
▲独特の水玉模様が描かれている「愛はとこしえ十和田でうたう」(草間彌生作)

まずは世界的アーティスト・草間彌生の「愛はとこしえ十和田でうたう」。草間作品を象徴する水玉模様が施された少女や犬、かぼちゃなどが広場の一角に鮮やかに並びます。作品の中を歩いて見ることができるため、まるで作品の一部になったような気分になります。
▲2つの黒い点があるだけでお化けと認識してしまう作品「ゴースト」(インゲス・イデー作)

ドイツのアーティストグループ「インゲス・イデー」による「ゴースト」は、高さ6mの白いお化けが浮遊しているような作品。隣接するトイレの外壁には、窓に垂れ下がって中を覗いているような「アンノウン・マス」という彫刻作品もあります。
▲「アンノウン・マス」(インゲス・イデー作) (C)Sadao Hotta

さらに歩道や街中にもアート作品やストリートファニチャーが点在していて、新しい驚きや発見があります。
▲バス停のベンチが作品となっている「トゥエルヴ・レヴェル・ベンチ」(マイダー・ロペス作)

芸術鑑賞の後はショッピングにティータイム

館内外でアート鑑賞を楽しんだ後は、美術館に戻りティータイム。高さ9mの吹き抜けになったカフェ「cube」で休憩しましょう。ここの床もアーティストの作品になっており、台湾出身のマイケル・リンの絵画作品「無題」が床一面に描かれています。
▲通り側は一面が窓ガラスで、外を一望できる

こちらのカフェで食べることができるのは、青森県産の食材を使った軽食やスイーツ。十和田産の長ネギやニンニクから作られたタルタルソースを使った「ハムレタスサンド」(税込600円)や、青森県産のリンゴを使った「青森スペシャルスイーツ」(税込680円)などがあります。
▲「青森スペシャルスイーツ」はホテルメイドの贅沢なアップルパイ

また、コーヒーや紅茶を提供するカップは草間彌生デザインのものを使うという贅沢ぶり。まさに芸術を「味わう」ことができる空間です。

休憩の後は、カフェ併設のショップでここにしかないアイテムをおみやげに買っていくのがいいかもしれません。企画展の限定商品などが並ぶこともあるため、貴重なグッズが手に入ります。
▲カフェとショップは入場券がなくても立ち寄ることができる

そして十和田にゆかりのある企画展も

2017年6月17日~9月24日までは、企画展「横尾忠則 十和田ロマン展 POP IT ALL」を開催中。美術家の横尾忠則が、1970年代初頭に日本各地を旅して描いた「日本原景旅行」シリーズの「十和田湖 奥入瀬」がルーツとも言われている「瀧」の連作を含む、名作や新作合わせて27点を展示しています。
▲新作や立体作品もある。中には十和田の個展開催を予言したような森と馬をモチーフにした作品も
▲開催前日の6月16日に開かれた記者会見の様子。横尾忠則(写真中央)は、81歳になった現在も意欲的に創作活動を行っている

本邦初公開の作品もあり、その中でも、近年亡くなったばかりという愛猫を描いた「たま、帰っておいで」は、37枚の絵を並べた愛猫に対する愛情を感じられる作品となっていました。
▲十和田滞在時と、企画展開催日に公開制作で描いた2枚を追加し、現在は39枚展示されている

季節や時間によって楽しめる作品もある十和田市現代美術館

屋内外で数多くのアートを楽しむことができる十和田市現代美術館。実はまだ紹介できていない作品がありました。それは夜にのみ見ることができます。
▲光を扱うインスタレーション作品である髙橋匡太(きょうた)の「いろとりどりのかけら」

こちらは白いキューブ状の美術館を活用した光のアートで、外壁にさまざまな色がリズミカルに投影されていきます。ランダムに色が変化していくので、一瞬ごとに表情が変わっていく、まさに幻想的な光のアートです。(照明は日没から21時まで)

そのほか、冬季には約30万球もの青色LEDがアート広場全体を覆いつくす「アーツ・トワダ ウィンターイルミネーション」(12月上旬~翌1月上旬)といった取り組みも行われ、近年注目を集めています。
▲光のじゅうたんが広がる「アーツ・トワダ ウィンターイルミネーション」

アートに興味のない人をも惹きつけるたくさんの魅力が詰まった十和田市現代美術館。「アートによるまちづくり」という街を巻き込んだ地域活性化プロジェクトが、県外からの人をも巻き込み、さらには世界中からも多くの人々が訪れる美術館へと発展していました。

アート鑑賞や観光といった側面だけではなく、さまざまな楽しさを見つけられるような美術館。一度訪れてみてはいかがでしょうか?
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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