衝撃的迫力!!片貝まつりで世界最大の正四尺玉花火を体感!

2017.08.25

新潟県小千谷市(おぢやし)の片貝町(かたかいまち)は、「正三尺玉発祥の地」として知られる、人口4,000人ほどの小さな田舎町。この町の「花火の奇祭」をご存知ですか?多い年には2日間で20万人もの観光客が訪れるという「片貝まつり」(毎年9月9日・10日)は、ギネスブックにも掲載された世界最大の「正四尺玉」など大玉の花火がこれでもか!と打ち上がるお祭り。世界的にも類を見ない、早朝から深夜まで花火に熱狂する片貝まつりの見どころをご紹介します。

▲9月10日22時打ち上げの「正四尺玉」(玉名:昇天銀竜黄金千輪二段咲き)

関越自動車道小千谷ICから車で約10分、上越新幹線JR長岡駅から急行片貝経由小千谷車庫行バスで約30分の山間の静かな集落・片貝町。ここで毎年9月9日・10日におこなわれる「片貝まつり」は、江戸時代以来400年の歴史があると言われる伝統あるお祭りです。

世界的にも最大の大きさの「正四尺玉」2発をはじめ、他の花火大会では目玉となる大きさの「正三尺玉」、日本唯一の「真昼の正三尺玉」などのほか、関東近郊では大玉と呼ばれる「尺玉(十号玉)」をスタンダードに、19時30分から22時20分まで、両日で約15,000発もの花火が惜しげもなく打ち上げられます。
▲浅原神社は別名「花火神社」ともいわれ、全国各地から花火ファンが訪れる

その花火の豪華さから花火大会と思われている人も多いのですが、正式には「浅原神社秋季例大祭奉納大煙火」という名称の、町の鎮守・浅原神社のお祭りです。代名詞といえる正四尺玉花火も、実はある願いを込めて浅原神社に奉納される「奉納煙火」のひとつに過ぎないのです。

そんな片貝の特徴のひとつは山というロケーション。「越後三大花火」として、「川の長岡」「海の柏崎」と並ぶ片貝の花火は、浅原神社の裏手の山場で打ち上がることから「山の片貝」と称されます。
▲提灯や紅白幕などお祭りの雰囲気満点の桟敷席から大花火を見上げる

初めての人は、山に反響する爆発音と衝撃波の迫力に圧倒されるはずです。全国を巡る花火通たちも、その立体的な音の塊と震動の異様さに驚き、子どもの中には泣き出してしまう子もいるほどの迫力!

これは、背後に位置する屏風状の山林と、観覧席よりも高い位置にある打ち上げ地点による、「山の片貝」ならではの自然環境のたまもの。花火の轟音と衝撃波は、雨のようにほとんど真上から降ってくるような感覚です。片貝の花火を味わうと、これまで花火を「眺めるだけ」だった人も、自然と五感で花火を「感じる」ことができるようになってしまいます。

世界最大の花火「正四尺玉」を町民が打ち上げる町!

▲会場には正四尺玉のレプリカと自撮りができる“インスタ映え”するポイントも

片貝の花火の代名詞とも言えるのが、過去に「世界最大の(大きさの)打ち上げ花火」の参考記録としてギネスブックでも紹介された「正四尺玉」。1985(昭和60)年に片貝まつりで花火史上初めて打ち上げに成功し、同年以来30年以上に渡って開催日両日22時頃に1発ずつ打ち上げられています。

ちなみに、2014年に「こうのす花火大会」の正四尺玉が「世界最大の(重さの)打ち上げ花火」として、ギネス世界記録に認定されましたが、実は“大きさ”においては、片貝の正四尺玉はその記録を上回っているんです。

その世界最大の正四尺玉も、浅原神社に奉納される奉納煙火のひとつ。
9月9日の正四尺玉は片貝まつりの成功と町の発展を祈願して、翌10日の正四尺玉は、その年に成人を迎えた町の若者たちへの祝福の意味を込めて、町民一同から打ち上げられています。
▲9日の正四尺玉(玉名:昇天銀竜黄金すだれ小割浮模様)は山林ぎりぎりまで花火が降りかかってくるほどの巨大さ

正四尺玉は、直径約1m20cm、重さ420kgという超重量級の大きさ。これを5mを越す巨大な打ち上げ筒から夜空に打ち上げると、上空800mまで一気に上昇し、衝撃波を伴う爆音とともに直径800mの大輪を咲かせます!

両日22時を迎えると、打ち上げ直前となった会場の息をのむ緊張感と静けさが「世界最大の怪物」の登場を際立たせます。町の発展祈願や、成人を迎えた若者たちへの祝福のアナウンスが読み上げられた後、警報のごとくサイレンがなり響くと、会場は一転してボルテージが最高潮に。

「上がれ!上がれ!」と自然発生的に観客席を巻き込んだ大合唱の渦がうまれ、ゆっくりと上昇していく正四尺玉の軌道を誰もが一心に見つめます。
▲二段階に開く10日の正四尺玉(玉名:昇天銀竜黄金千輪二段咲き)では、ひと際大きな歓声が上がる

東京スカイツリーより高い高度で開く正四尺玉を見守る打ち上げ前後の数分間は、会場の臨場感と相まってスローモーションのように感じられ、長い人生のなかでも指折りのアドレナリン出まくり体験となることでしょう。たった1発の花火が夜空を埋め尽くし、観客席に向かって花火が流星群のごとく降ってくるような光景は、片貝の花火を語る上で欠かせない体験です。

独特の花火文化「奉納煙火」

▲江戸時代後期の「花火目録」のコピー。様々な花火が打ち上がっていたことが分かる

江戸時代以来の伝統が色濃く残る片貝まつりは、浅原神社にその年の豊作を感謝する秋まつりの際に、酔狂な住民がお賽銭代わりに自作の花火を奉納したことにルーツがあるといわれています。これが片貝独特の奉納煙火の始まりです。
▲町の中心にある巨大な「煙火番付」はマストスポット。その年の花火が網羅されています

そのスタイルを受け継ぎ、現代でも同級生同士での成人祝いや還暦祝い、結婚、出産、新築、子どもの進学・就職、さらには故人の追悼や追善供養など、住民個人や仲間同士が1発1発の奉納煙火のスポンサーとなり、人生の節目に感謝の思いを花火で表現する習わしがあります。
近年では、全国各地からの奉納や、花火でプロポーズを決行する若者もあり、会場全体が沸き立つこともあります。
▲花火大会は地元企業が協賛するのが一般的ですが、ここ片貝は個人協賛が中心

個人スポンサーのはずの奉納煙火ですが、片貝はスケールがでかい!都市部では保安距離が取れずに規制対象となる尺玉(十号玉)がなんと、7~8割。一人ひとりの願いを込めて大きな花火が打ち上げられるのです。
▲観客席では、1発1発の大玉の迫力に圧倒されて思わず“ため息”が

そこへさらに還暦の同級会をはじめ、厄年や節目の歳を迎えた50歳、42歳、33歳、20歳の各同級会が超大型のスターマインで花を添えます。その1発1発すべての奉納煙火に人々の思いが込められており、初めて訪れた町なのに、多くの友人たちと花火を共有しているかのような、心あたたまる花火体験となるでしょう。
▲還暦の同級会による9日の超特大スターマインはさすがの貫禄。口コミからこれを目当てに訪れるという観光客も

「奉納」に華を添える名物アナウンスと「花火番付」

片貝の花火を祭りの雰囲気と一緒に満喫するならば、浅原神社境内の桟敷席や、片貝小学校グラウンドの一般自由観覧所など、町なかで花火を観るのがおすすめです。片貝大通りから浅原神社境内までを中心に200店舗以上の屋台が出店。軽食だけでなく、射的や輪投げ、金魚すくいなど、懐かしい日本のお祭りの雰囲気を楽しむことができます。
▲神社境内に続く参道には山車が往来し、お祭りの熱狂が感じられる

神社境内裏手には有料席が用意されています。定員8名の桟敷席(両日共通、税込30,000円/1スペース)は、毎年4月頭から販売開始されますが、毎年早々と満員御礼になるほどの人気です(2017年の申込受付は終了しています)。また、当日入場券(税込3,000円/人)は、9日・10日午前10時から浅原神社境内右手・桟敷席中央入り口にて販売されますが、先着順となっています。
▲地元の花火会社が得意とする青の発色は、「カタカイブルー」と呼ばれ評価が高い

また、桟敷席など町なかで楽しめるのが、名物アナウンス。片貝の花火は、一般的な花火大会とは異なり、1発1発をとてもゆっくりと打ち上げるのですが、それは花火に込められたメッセージを、会場全体で共有するため。
「一緒に歩いて来た50年間ありがとう、天国のおじいちゃん、一番近いところから花火を見ていてね 尺玉二段打ち 吉原○○」
といったメッセージが独特の節回しで繰り返し読み上げられた後、轟音とともに打ち上がります。
毎年お馴染みのこのアナウンスの声の主がプロのアナウンサーではないところも、住民たちが手作りでつくりあげる片貝まつりらしい魅力です。その素朴な語りぶりは、奉納者の思いが切実に乗ってくるあまりエモーショナルさを増し、花火の裏側に見えてくる家族の物語に、思わず涙を誘われる人も。今やその名調子は、片貝の花火を語る上で切り離すことのできないものとなっています。
▲当日、浅原神社境内入り口にて販売される花火プログラム「花火番付」。1部800円(税込)のマストアイテム

また、その年の花火を網羅した花火番付も重要なアイテムです。新聞紙サイズのアナログなメディアですが、毎年の花火情報が蓄積されてゆくため、過去に遡って片貝まつりの花火を確認することができるのです。

片貝にはこの番付が江戸時代から残っており、いつ、誰が、何のために、どんな花火を打ち上げたのかがすべて記録されています。この花火番付をひもといてみると、時代の変化と人の人生がふと浮かび上がり、時に豊かな物語に出会うことができます。
筆者も、自宅で20数年前の花火番付を押し入れの奥に見つけ、そこに生まれたばかりの自分の名前と、誕生を祝う花火のコメントを発見したとき、すぐさま数年前に亡くなった祖父のことを思い出しました。この町の祖父たちはみな、花火で孫の誕生を祝ったのです。それは、筆者が生まれる前から楽しみに計画されていたのだろうと、嬉しく感じたのを覚えています。

夜だけじゃない!真昼の正三尺玉に、祭りを盛り上げるエンドレスお囃子

片貝まつりは昼夜を問わずに花火が打ち上がります。片貝に泊まれば、両日朝6時に盛大に鳴り響く祝砲の連発とともに目を覚ますことでしょう。大正時代には午前3時に打ち上げを開始した、という記録が残されているほど、町中が花火に染まる2日間なのです。
▲古稀(70歳)の町民による「真昼の正三尺玉」

正三尺玉と言えば、他の花火大会では最大級の花火。そんな目玉の花火を真昼の14時の炎天下のさなかに打ち上げ熱狂する花火大会は他に存在しません。

火の発光による夜の花火とは異なり、彩色された「煙」による原始的な花火は、日本の花火のルーツに迫る光景かもしれません。轟音とともに天へ上昇する裸の花火玉のまぶしすぎる姿は、「花火は夜空に咲くもの」という固定観念を鮮やかに更新してくれます。ぜひ実際に体感して欲しい花火です。
▲2年かけて「花火貯金」を積み立てるなど記念行事の準備を整え、花火を奉納する20歳の若者たち。花火よりもまぶしい青春です

真昼の正三尺玉を合図に、町はずれから山車を引いて町中を練り歩く「玉送り」をスタートするひと際若い一団。その年の成人同級会です。彼らは、人生初めての花火を同級生とともに打ち上げるために、6つの町内を練り歩いてゆきます。

9月10日、22時打ち上げの「正四尺玉」の直前まで、成人同級会による特大スターマインを打ち上げるために、彼らは浅原神社を目的地に飛び跳ね、精一杯叫びながら町中を周ります。そうやって自身の同級会の名前を町中に伝えることが、若さあふれる威勢の良さを象徴する粋な伝統として受け継がれているのです。
▲奉納と書かれた「玉箱」を載せた山車を引き回す玉送りの様子

この玉送り行事は、火消しの若衆たちが町内の奉納者から集めた自作の花火玉を浅原神社まで安全に輸送したことに由来する伝統的な儀式です。
▲玉送りと対をなす、花火筒を引き回す「筒引き」行事も。9日の早朝からお昼過ぎにかけて町中を回ります
▲バリエーション豊かな山車25基ほども町内をめぐる

この、片貝の祭り囃子はかなりアップテンポなビートで、なかでも「でんでぼっこ、でんでぼっこ…」という独特のかけ声が特徴的な「さかのぼり」は、伝統的な曲目らしからぬ、新鮮でソウルフルなビートです。この曲目のビートとメロディが耳から離れず、観光客からも「東京へ帰るバスの中でひたすら脳内再生されて興奮冷めやらなかった」という声が続出します。
▲祭り囃子とともに歌われる「木遣り」は、江戸を感じさせてくれる伝統の祝い歌

アップテンポな祭り囃子に合わせて屋台通りを通過する山車の数々は、今や全国的にも珍しくなり、見ていて飽きることがないでしょう。

花火と祭り囃子のにぎやかな響き、日本の原風景を感じさせるお祭りの風景。この雰囲気は会場の中心となる浅原神社境内周辺でしか味わえません。花火は町周辺のどこからでも見上げることができますが、何はともあれ、浅原神社にお参りがてら、その熱気の最たるものを肌で感じてください。

世界一(?)花火が身近な町の花火大会へ!

▲大玉を開発してきた片貝は、花火史上欠かすことのできない場所です

片貝はなぜ花火にこれほどまでに熱くなる地域性なのか、今もって謎に包まれています。
江戸時代には天領(幕府直轄地)であり、商工業に優れた職人たちが集まっていた地域性が影響しているといいます。花火玉には線香づくりの技術が、打ち上げ筒には酒樽や木桶づくりの技術が応用されたのだとか。
▲約250年の歴史を持つ染物店など、現在も街並には職人の町の雰囲気が

そもそも、原始的な日本の花火は広く鎮魂や祈りの意味を込めて打ち上げられていましたが、片貝の職人たちは、早くから花火のエンターテインメント性と、自ら作る楽しさに気付いてしまったようです。

花火番付のルーツでもある当時の歴史資料からは、今でいうDIY(Do it yourself)の精神に近いものが感じられます。彼らは自分たちで火薬の配合から星(花火として発色する部分)の配列までを、あれこれと試行錯誤し、打ち上げてみては仲間たちと一喜一憂していたのでした。
▲浅原神社には、かつて使われた打ち上げ筒などが奉納されています

その挑戦の歴史が、1891(明治24)年の花火史上初となる正三尺玉の打ち上げ成功、さらには、こちらも花火史上初となる1985(昭和60)年の正四尺玉の打ち上げ成功に結びついたのかもしれません。
▲家の軒先から花火を見上げる住民。お祭りは親戚一同が集う特別な日なのです

片貝の花火の楽しみ方を筆者なりにお伝えしたつもりですが、花火の楽しみ方は人それぞれです。そういった意味では、誰よりも住民自身がこのお祭りを楽しんでいるということが、片貝まつりの最大の特徴かもしれません。
▲成人同級会の名を表した仕掛け花火。会場中が祝福のムードに包まれる

人々の人生や暮らしのなかにある花火だからこそ、独特な花火文化が今も残っています。ぜひ、花火を観るだけでなく、昼間のお祭りの雰囲気や、花火を見上げる住民の姿にも注目してみてください。花火の裏側に人々の暮らしと人生を感じることで、さらに味わい深い花火体験になるはずです。

2017年は土日開催のため、例年以上の混雑が予想されます。お車の方は日暮れ前の到着を目標とすると安心ですが、片貝まつりは昼間も見どころ満載!ぜひ昼間から花火の町・片貝へ出かけてみてはいかがでしょうか。

※ギネス世界記録はギネスワールドレコーズリミテッドの登録商標です。
佐藤瑞穂

佐藤瑞穂

新潟の花火の町に生まれ、同級生とともに若手地域づくり団体「鍬とスコップ」を立ち上げ、地域が育んできた伝統文化の再解釈に取り組む。ちょっとだけロマンチックな花火ばか。 編集:唐澤頼充

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