京都人が愛する漬物を食べて、買って、また食べる

2015.11.04 更新

京都の人は漬物好き。自宅でぬか漬などを仕込むことも珍しくありません。ちなみに、私は即席酒粕漬を仕込んで事務所に常備。そんな漬物にこだわりの強い京都人たちに愛され続ける名店や、ユニークな“お茶漬けコース”をご紹介します。

京都の「ぶぶ漬け伝説」なるものを聞いたことがあるかもしれません。早く帰って欲しい来客者や、長話が過ぎる相手には、「まあ、上がってぶぶ漬けでも」と言う話。
私は一度も聞いたことがないですが、ぶぶ漬け=お茶漬けはしょっちゅう食べます。

自然発酵したぬか漬が好きでよく食べますが、くせがあるので「苦手な人が増えている」と漬物店でもよく耳にします。
日の菜や白菜など、旬の野菜を使った様々な漬物が店頭に並んでいますが、これから寒くなると、京都ならではの漬物が登場します。
聖護院蕪を使った「千枚漬」や、漬物でしか食べない野菜、すぐき蕪を使った「すぐき漬」。
どちらも冬の風物詩ともいえる京都の漬物の代表格なので、お土産にもおすすめ。
いろいろな漬物を食べてみたいなら、漬物店などで食べられる“漬物のコース”にトライしてみるのも楽しいものです。

京都らしさ満点の「お茶漬け席」

「ぶぶづけ処」という、見慣れない暖簾が下げられているのは、千本通にある「近為(きんため)」。味にうるさい西陣界隈の人々にも愛されている漬物の名店です。
明治12(1879)年に創業。さまざまなものが機械化される中で、ここでは野菜を手切りして風味を大切にし、昔ながらの重石手法なども守っています。
「柚こぼし」という大根の漬物は名物として知られています。ふわっと柚の良い香りが漂う上品な味わいです。

少し西へ行くと北野天満宮もあり、観光の合間に立ち寄れる便利なロケーションで、その道中にここで「お茶漬け席」をいただきます。
「お茶漬け席」とは、いわば漬物がコース仕立てで味わえるもので、京都の風情を楽しみながら、漬物を味わって欲しいという思いから生まれたのだとか。
しかも、飽きが来ないように、京都ならではの白味噌雑煮やおばんざいも組み合わされていて、京都の味が堪能できます。
▲千本通は商店街でもあるので、そぞろ歩きも楽しめます

まずはとても小さな漬物寿司。瓜の粕漬を使ったもので、最初にひと口。ここから美しいコースが始まります。
数種類の漬物をいただいていると、白味噌の雑煮が登場。京都のお正月に味わうものですが、ここでは年中食べられるので、この雑煮恋しさも相まって訪れたくなります。添えられたからしを溶かしていただきます。
コースは2種類あり、今回は鮭の粕漬が付くコースをオーダー。2,700円(税込)。もうひとつは鮭の粕漬が付かないコースです。
メインディッシュともいえる漬物の盛り合わせ。そのときどきに、季節の漬物が美しく盛られていて、目でも楽しめます。今回は手前の南京(かぼちゃ)にびっくり。
漬物のほかに、ちりめん山椒や切干大根といった、京都のおばんざいも味わえます。どれも京都らしいので、他の都道府県ゲストは大喜び。
これからの季節なら、北野天満宮のもみじ苑の公開(2015年は10月25日~12月6日)と併せて訪れるのがおすすめです。必ず事前に予約して出掛けてください。

便利な街なかで気軽に漬物バイキング

気軽にあれこれ漬物を食べたい人には、「柴常(しばつね)」の漬物バイキングが好評。自分で好きな漬物を、好きなだけ、好きなスタイルで楽しめるのです。
「柴常」は90余年続く老舗の漬物店ながら、料亭などへの卸を専門としていたため、あまり一般には名前が知られていません。
できるだけ添加物を使わないのがモットーで、合成保存料は不使用。調味料も使用量を最小限に抑えているので、自然な野菜の味が楽しめます。
漬物バイキングはご飯や汁物に、好きな漬物を合わせて味わうのが基本。肉や魚をセットにしたコースもあります。
漬物はざっと、25種類以上が並んでいて、全種類制覇するために、少しずつ取り分けるのがコツです。
漬物だけでなく昆布とかつお節からとった出汁にもこだわりがあるので、ぜひだし茶漬けにして味わってください。
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▲柴漬けだけでも数種類あり、食べ比べしてみるのも楽しいもの

食べたい量をお皿に取ってきましたが、これでもラインナップの半分に達していません(!)。ゆっくりいただきます。
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そして、実はご飯がとても美味しい! 使用するのは仁多米コシヒカリといって、島根県仁多郡で栽培されたもの。美味しい白米と漬物で、もう箸が止まりません。
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そうめんに漬物をのせ、温かい出汁を注いでにゅうめん風に。これもかなり美味で、自宅でもやってみたくなる一品。
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ちなみに、予約のみですが夜の営業もあるので、こちらもおすすめ。

全国からわざわざ訪れるファンのいる老舗

漬物一筋180余年という歴史を持つ「村上重本店」には、わざわざ遠方から訪れるファンも多数。
「千枚漬はここのものが一番」という人も多く、冬になると「いつ出るのか」と、待ちきれない人々からの問い合わせが増えるのだとか。
ちなみに、本来千枚漬は冬のもの。ここでは寒暖の差が激しい亀岡地域の聖護院かぶらを使い、しっかりと塩漬けしています。
さらに、たっぷりの北海道産平昆布と根昆布を使って本漬けし、酢やみりんは使いません。
そんな本物の味を今も守っている老舗の漬物は、旬の野菜だけを使うため、ショーケースを見ているだけで四季を感じます。
今なら、京壬生菜(きょうみぶな)の漬物が出るころ。千枚漬けやすぐきも、今から待ち遠しい。
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▲風情あるたたずまいで、近くには高瀬川のせせらぎが

不動の名物だけに、千枚漬の大きな看板も掲げられています。
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ショーケースには白菜昆布漬440円(税込・217g)や、刻み壬生菜440円(税込・160g)などがずらり。味のしっかりとした野菜が不可欠なため、卸市場でも有名な「野菜の超目利き」がいるそうです。
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ここの昆布に対するこだわりはかなりのもの。それを感じさせる下の写真左の白菜昆布漬は、ぜひ食べてみて欲しい一品。糸を引くほど粘りがあり、うまみが凝縮されています。
右は刻み壬生菜。少しの醤油と胡麻、七味とを加えて白飯にあえて、おにぎりにすると最高です。
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▲わが家のお皿で撮影しました

今や調味料液に漬けるだけで簡単に浅漬けが出来る時代ですが、昔ながらの手法を捨てないところが老舗のプライド。
本物が脈々と引き継がれていく、京都という土地がそうさせるのかもしれません。
だからやっぱり、京都の漬物は美味しいのです。
内藤恭子

内藤恭子

編集者・ライター。京都出身。関西や東京の京都特集で取材・執筆を20年以上担当している。事務所である祖母の町家で土壁を塗り、モザイクタイルを貼りながらリノベーションしつつ、取材に出かける日々。著書に『竹中木版 竹笹堂 紙と暮らす京の一年』(宝島社)などがある。

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