美しい坂の街、神戸・北野界隈。極上の仏料理と、異人館・教会・おしゃれ建築を見て歩く

2015.10.18

異人館のある美しい坂の街として、NHK朝の連続テレビ小説「風見鶏(1977~78年)」でにわかに脚光を浴び、観光地になったのはもう30年以上も前。美しい建物、神戸山手に住む外国人、そして各国レストランにカフェ。他所に類を見ない「おしゃれな街」。その空気感をとびきりのペントハウスにある仏レストランとともにお伝えする。

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北野界隈でもっとも行きたい、ペントハウスの仏料理「ル・パッサージュ」

神戸市の中心地・三宮~元町。
市役所や県庁といった官庁のあるオフィス街、センター街や老舗の元町商店街、開港以来の旧居留地のデパートやブティック。
六甲山系がミナトまで一気に広がる南斜面の坂の街・神戸はコンパクトだ。
その三宮~元町の陽あたりのよい山手に、北野町~山本通界隈がある。

元々が住宅街で外国人がたくさん住んでいるエリアだが、80年代以降、安藤忠雄をはじめとするアーティスティックな建築家のお洒落なビルが北野坂や異人館通などに建ち、カフェやレストラン、ブティックが北野坂沿いに並んだ。 
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なかでも「ル・パッサージュ」のあるDemainビルは、この街にあった旅館の息子として生まれ育ったオーナーの美意識がびんびんと伝わるおしゃれなビルだ。
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驚かされるのは、「ル・パッサージュ」が、そのビルの屋上のペントハウスにあることだ。天井の高さが最高部で6.5メートル。屋根のそこここに採光窓が切り取られ、昼は陽光が注ぎ、夜は漆黒の空に月、星が輝く。
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▲一旦エレベーターで屋上まで上がり、テラスを歩いてペントハウスへ
80年代にフランスで2年間修業をして神戸に帰ってきたシェフ・春名公章さんは、1994年に独立してこの北野坂に「ル・パッサージュ」を開店。このDemainビルのちょうど斜め向かいのロケーションだった。
ビルのオーナーに誘われ、現在のペントハウスに移転したのが2006年。
客層は地元神戸に限られず、全国のグルメにファンを獲得した。

とくにスペシャリテの「平飼い飼育の卵とフォアグラのシンフォニー」(4,800円・税サ別)は、「それが目的で」来店する客も多い。
ランチメニューの「シンフォニー」(7,000円・税サ別)でも楽しめるので、そちらをダイジェスト。
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アミューズのあと、お待ちかね。最高の素材のフォアグラ、そしてボリューム。濃厚なコクが驚くほどなめらかに舌に絡みつく。
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魚料理こちらはハモと松茸。明石海峡~淡路島近辺の魚は、毎朝春名シェフの目利きにかなうもの。とてもレベルが高い。
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仔牛のグリルをマスタードソースで。申し分のない切り具合と焼き色。それにシェフ自らが客席でソースをかけてくれる。
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デザートは桃のコンポート・マラスキーノ風味。まるごと1個がどかん。
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天窓からふりそそぐ陽光の下、ランチを終えてあたりを散策すると、この界隈で最高のロケーションなのが分かる。

異人館、教会、アーティスティックな建築を見て歩く

北野町~山本通界隈は坂道ゆえ、坂を上がって下がってまた上がったり、というようにむやみに歩きまわると結構息が上がる。また異人館は入館料がそれぞれ必要で、端から順番に入っていくと結構な出費となる。

シュアでかしこい歩き方は、異人館をセレクトして、キリスト教やイスラム教の教会、安藤忠雄をはじめとするモダン建築を見て回ることだ。
旧居留地と北野を結ぶ美しい坂・トアロードを上がって、西から東へ、写真とともにご案内しよう。

元町からトアロードを上がりきってすぐ西にある「海外移住と文化の交流センター」。記念すべき第1回芥川賞の石川達三の「蒼氓(そうぼう)」の舞台となった元「国立神戸移民収容所」である。
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▲戦前から戦後にかけて約20万人もの南米移民を送り出した
トアロードから異人館通りを入ったところにあるシュウエケ邸。
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そして、グラシアニ邸を転用した仏レストラン
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一度トアロードを南に戻ると、回教寺院の「神戸ムスリムモスク」が。昭和10(1935)年に建てられたアラビア建築。公開はしていないが観光名所となっている。モスクの尖塔、ドームをつくる丸屋根…。どの角度から見上げるのがいいのか試したくなる。
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阪神淡路大震災後に建て替えられた「カトリック神戸中央教会」。ユニークすぎる外観。内部は見学可で、静かに開けられたドアから聖堂に入れる。
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こちらは北野坂を東に入ったところにある「神戸バプテスト教会」。米国南部コロニアル教会スタイルが興味深い。
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北野町~山本通界隈には、安藤忠雄の70~80年代の商業施設が10軒ほど点在する。傑作は煉瓦タイルを使った個人住宅+商業建築の「リンズギャラリー」。
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そしてコンクリート打ち放しの「リランズゲート」。
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スターバックスもこのあたりでは異人館風。
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あまりにも有名な「風見鶏の館」はドイツ人貿易商トーマス氏邸宅だった。異人館では珍しい煉瓦の外壁が美しい。
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▲風見鶏の館への石段で絵を描く画家
「風見鶏の館」のすぐそばには、アメリカ総領事シャープ氏の邸宅だった「萌黄の館」がある。2館券(入館料)税込650円。
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「風見鶏の館」のすぐ隣がなんと「神戸北野天満神社」。この界隈のパワースポットでもある。
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異人館めぐりのあとは、関西を代表する「神戸にしむら珈琲店」でブレイク。
ハンター坂の入り口にあって分かりやすい。

絶対立ち寄りたい名店「にしむら珈琲」

「神戸にしむら珈琲店中山手本店」。正式名称は長い。
戦後いち早く「ほんもののコーヒー」を神戸で出し、地元ではもちろん、全国の喫茶店ファンに知られる存在となっている。
山手幹線に面した、大フロアを有する巨大な3階建ての建物は北ドイツの木組み様式。コーヒーのおいしさと建物の立地で、この界隈のランドマーク的存在だ。
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世界中からの選りすぐった豆をドイツ・プロバット社の釜で自家焙煎している。水は灘の酒造りに欠かせない銘水「宮水(みやみず)」を使っている。
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天井が高くて広い店内は、旧くて新しい独特の空間。コーヒーの甘くて芳ばしい香りが漂う。
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もちろん「にしむらオリジナルブレンド」も申し分ないが、北野町~山本通界隈を歩き、汗をかいたあとは「アイスコーヒー」が心地よい。
注文すると「砂糖、お入れしていいですか?」と訊かれる。もちろん「はい」だ。
あらかじめ入れられる砂糖の量が絶妙で、うまさが堪能できる。
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▲清潔感あふれるかわいいウエイトレスの制服
山手幹線を渡ると、神戸を代表する夜の街・東門街に出る。大通り1本の結界を隔てて北野というエキゾチックな街が存在しているのがおもしろい。
江弘毅

江弘毅

編集者。京阪神エルマガジン社時代に雑誌『ミーツ・リージョナル』を立ち上げ、12年間編集長を務める。著書『飲み食い世界一の大阪』(ミシマ社)、『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)など、主に大阪の街や食についての著書多数。編集出版集団140B取締役編集責任者。

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