緑多き山麓のホームタウン、神戸・岡本を登る下る
神戸の東端、岡本は「気持ちのいい住宅地」として人気だ。JR・阪急両方の駅のにぎわいがあり、阪神間で最もカフェや雑貨屋が密集しているエリアであり、3大学(甲南大・甲南女子大・神戸薬科大)のキャンパスタウンであり、たまに野生のイノシシも下りてくる六甲山麓の街。そこで人気の店を訪ねた。

淡路島仕込みの岡本テイスト
岡本には特急停車駅である阪急岡本駅もあり、阪神間の街では2つの鉄道駅が例外的にご近所にあることも人気にひと役買っている。

駅から5分も歩くと「淡路のビストロManki」の外観が見えた。カウンター7席、テーブル8席とこじんまりした店だが、店内には美味いものを食わせてくれそうな気配が黒板から伝わってくる。

いきなり生シラスのテリーヌが出てきてびっくり。上にかかっているのは淡路島玉ねぎのムースで、瑞々しさにヤられる。



シェフの今井万喜(Mankiではなく「かずき」)氏は奈良県の北西部、平群町(へぐりちょう)の出身。岸和田と堺の人気レストラン「シャンソニエ」でキャリアを積んで、2013年7月にこの岡本で開店した。
「淡路島の出身というわけではないんですか?」
「ええ(笑)。店を始めるのだったら何かに特化したもんがないとアカンと思いまして」。なるほど。
淡路から肉や魚、そして旬の野菜を仕入れ、それらが一番生かされるようなメニューを季節ごとに提案。シェフというより職人的スリムで精悍な外見だ。

「ご家族連れが多いでしょ、この辺りは。それで入れているんです」
デザートはちょっと先延ばしにして、こっちにも一つ(どんだけ食うねん)。


子どもに食べさせるのはもったいないわ(怒らいでも)!
洋食屋のそれとは全然違う美味さ。ラグビーボールを平たくしたようなふわふわ卵が帽子のようで可愛らしくて色あいがええだけでなく、舌触りもまた良し。歯ごたえのある淡路鶏がナイスな脇役でございました。
ビストロ(仏bistro)は「気軽に利用できる小レストラン」や「居酒屋」の意。それでだろうか、これまでに経験したビストロの多くは「味付けが濃い」店が多かったように思う(塩分多い方が酒も進むし)。しかしこの店の味付けは、その一歩手前の優しい味。空手で言うと「寸止め」だろうか。
今井さん曰く「意識したことないです。僕が“うまい”と思う味付けでいってるだけですから」。
40代以上の女性からとくに支持されている理由が何となくわかりました。
ランチに付いている桃のリキュール入りパンナコッタがまたうれしく。ご馳走さまでした。

淡路のビストロManki
神戸市東灘区田中町3-19-16
[営業時間]11:30~14:00L.O. 17:30~21:00L.O.
[定休日]不定休(月2回)
078-412-2223
ナイスビューパークと不動の地元おやつ
何があるかというと…。

近所の商店街(甲南本通)の買い物途中とか、ドライブ最中にクルマを駐めてとかいろんな客が次から次へと買いに来る。
食べるまでに時間がある場合は「ちょっとかかるんですわ」とお願いすると、キンキンに凍ったやつを新聞紙に包んで渡してくれたりする。
ビストロの後だったので、自家製粒あん入りのミルク金時(120円)を買った。ちなみにバナナ(120円)、ミルク(80円)、カルピス(80円)やアイスモナカ(150円)、ソフトクリーム(220円)もあり、それぞれに熱烈なファンがいる。(いずれも税込)

これを上の公園で食べることを楽しみに、坂を上がる。馬のニンジンですな。
JRと阪急の高架をくぐると、街はいつの間にか「山の手」に早変わり。これが神戸の面白いところ。


とりあえず岡本散策の安全を祈ります。



「扉が閉まってる!」。いやいや昼間は施錠されてないから簡単に開きます。
こうしているのは、イノシシの侵入を防ぐため。「山の手」は言い換えれば「山麓」。イノくんがゴミあさりするなんてのは日常茶飯事なのです。だからこうやって「結界」を張る。






メイン入り口は南側。ここも「イノくん結界」があり、人力で扉を動かさないと出入りできないようになってます。こんどはぜひ梅真っ盛りの2月下旬あたりに行こう。

鈴木商店
神戸市東灘区田中町3-1-1
[営業時間]10:00~16:00(売切次第終了)
[定休日]火・水曜日
078-431-5744
糀で元気を取り戻して、岡本再見
岡本界隈はたぶん阪急神戸線一のカフェ密集地帯だと思うが、その中でもここは糀と発酵食品の多彩なメニューが売りだ。
奥に子どもが遊べるマットが敷かれたスペースやトイレでおむつを替えられる台も用意されていて、若いママにもパパにも人気だ。
甘糀ラテ500円(税込)の優しい甘さが坂を上り下りした体には助かる。

「子どもと一緒に遊べるような店がないよね、っていう話をお客さんからよく聞いていたので、子連れで来やすいカフェをつくりたいなという思いがあったんです。子どもとワークショップをやるのが好きでしたから」
そんな時、ボランティアで知り合った女性から「岡本でカフェやってみない?」との誘いを受ける。彼女がお店のオーナーになってくれた。
「これまでも味噌づくりの教室をしていたんです。するとあちこちで“糀”のことを耳にするようになって。糀って幅が広いし、旨みのモトですからね」

お店には主婦や学生など、10人ほどスタッフがいて交代でシフトを組んでいる。「私は週に3回ほど店にいますが、それ以外は経理をしたり次に開きたいお店のことを考えたりします。 “ママさんがいないとつまらない”というお店にはしたくなかったので」
たしかに「店主の顔」を売りにしているカフェの方が多いが、ここは別なものを売りにしている。


写真のような多彩な物販メニュー(アクセサリーなども販売)や、店内(月1回)または別会場で開く糀づくりの教室などがそれだ。お店で使っている糀も、量に余裕があるときは販売する。年明けからは、料理教室も始めるとか。
食生活を根本からヘルシーに……を目指しているが、「自然食品店」的な打ち出しではなく、おしゃれに生活を楽しもうという「岡本ライク」な提案。これだけいろんな人が訪れて楽しんでいるのはそういうことなのだろう。

糀大好きなヨメはんへのおみやげに、有機トウモロコシに甘糀と甜菜糖(てんさいとう)のキャラメルを使ったポップコーン(600円・税込)を買って帰ろうとしたら、背中に田中さんからお声が。

神戸・岡本Cozy Cafe
神戸市東灘区岡本1-14-6-104
[営業時間]9:00~19:00
[定休日]不定休
078-452-5840

中島淳
編集者。京阪神エルマガジン社時代にSAVVYとMeets Regionalの副編集長、Lmagazine編集長を歴任、2006年に独立して編集出版集団140Bを立ち上げ、代表取締役に。岡本界隈にはかつて15年間住んでいたが、新しい店があちこちに増えていて浦島太郎状態。しかし鈴木商店の健在に思わず安堵したのであった。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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