蕎麦、雑貨、城跡、そしてお茶…。丹波・篠山で心溶かす古民家の休日
電車なら大阪から約1時間でたどり着く篠山(ささやま)は良質な水と農産物に恵まれた丹波の城下町。毎年、10月三連休に開催される「丹波篠山味まつり」は観光客でごった返すが、それ以外はのんびりした町歩きを楽しめる。空の広さや風の爽やかさがたまらない。

というのも、JR篠山口駅から篠山市街までの道程にはほとんどアップダウンがない。季節は秋。こんな時こそ「地元の風」を感じながら目的地に近づいていく、というアプローチの方が楽しいのです。
あえて電動アシスト(800円・税込)は使わず三段変速の付いた20インチの自転車(500円・税込)を借りる(9:00~17:00)。城下までチンタラこいでも25分ぐらいの距離。ゆっくり行こう。
15分もすると城下への入り口となる渡瀬橋でイノシシくんがお出迎え。


懐かしさと新しさが同居する通りで、蕎麦をゆるりと
「丹波古陶館」や「能楽資料館」のほか結納品店、美術品店、畳屋、食料品店、ワインショップ、雑貨屋、カフェなどが軒を連ね、午前中はまだこのとおりだが昼を過ぎると人の姿が急に増えてきます。
兵庫県篠山市は東を京都府に接しているので、京都+大阪(北摂)+神戸+有馬の文化が微妙にミックスされた感じが、町並みからもなんとなく伝わってくる。



蕎麦茶と一緒に出てくる蕎麦の揚げ菓子をぽりぽり食べ、ゆっくり待つことにしよう。特に急ぐ用事があるわけでなし。

来ましたよ! お待ちかねの「胡麻つゆ冷やしかけ蕎麦(季節限定)」の蕎麦膳(1,670円、単品は1,240円。ともに税込)。

そういえばここの常連さんが言っておられたなぁ。「店主もお酒が好きな人なので、お猪口も好きなものを選ばせてくれる。それがまたいいんですわ」
しかし自転車での帰りの行程を思うと現実に戻り、蕎麦茶をひと口。残念。
十割蕎麦は風味がゆたかで、胡麻の甘さとカイワレの辛味が横綱(蕎麦)の太刀持ちと露払いのようにバランスを取っていて、楽しませていただきました。
「蕎麦膳」は蕎麦に加えて小鉢が付き、さらに季節のご飯や鯖寿司、黒豆笹おこわの三つから一つを選べるのだが、迷わず鯖寿司を選ぶ。
鯖寿司は篠山の蕎麦屋さん定番メニューのようで、「花格子」のは京都のようにギュギュッと酢飯を固めてない。口の中でほろっと崩れて食べやすく、かつ鯖の柔らかさと甘みがうれしい。筆者好みの一品でした。

「お料理を見て、“飲みたいけどなぁ~…クルマやねん”というお客さん多いですよ。今度はぜひ一杯」の店主・石田悌丞(だいすけ)さんのお言葉に「ホンマですね」と返事してお店を後にする。
「河原町通りの古民家再生」が本格的に動き出す前の2006年からこの地で開業。古い街の真ん中、目印のようにお蕎麦屋さんがあるというのはうれしい。今度は夜、丹波の酒とお蕎麦のデュエットといきたいものです。
丹波そば切り 花格子
兵庫県篠山市河原町160
[営業時間]11:30~14:30最終入店
17:30~20:30最終入店
※定休日前日はお昼のみ営業
[定休日]月曜(祝日の場合は営業、翌日休)
079-552-2808
古民家とスタッフと客が醸し出す「いい気」の雑貨店

これらの文言は篠山を中心に盆踊り唄として歌われる「デカンショ節」の一節で、2015年4月には文化庁から「日本遺産」最初の18件の一つ(デカンショ節-民謡に乗せて歌い継ぐふるさとの記憶-)として選定された。

店主の一瀬裕子(いちのせゆうこ)さんが旅先で買い付けた「器とくらしの道具」が150坪ほどの古民家を見事に埋め尽くしている。


「ハクトヤ」の意味は「白兎」にあらず。「ハク(白=朝)とヤ(夜)」、つまり「朝から夜まで暮らしのそばにあるもの」という一瀬さんのメッセージが店名に込められている。
「最初の1年半は一人だったので、商品を並べるのに格闘してました」
この膨大な商品陳列を一人でやっていたとは!?
もちろん「倉庫のような陳列」とは180度違って、「こんな家でほっこりできたらいいよね~」の空間に、様々なコーナーがあって、それに見合った商品をディスプレイしている。


一瀬さんやスタッフの皆さん(接客が上手で裏方に徹している)がええ「気」の持ち主であるのはもちろんだが、感じたのはお客さんが発する「こんな場所でこんなモノたちをゆっくり見られてうれしい」の気である。




器とくらしの道具 ハクトヤ
兵庫県篠山市河原町121-1
[営業時間]11:00~18:00
[定休日]月・木曜日(祝日の場合は営業)
079-552-7522
何げない風景がうれしい、城下町の道と城跡
「名勝」などとはちょっと違うが、小さな橋から見えるこんな小川の風景は、最近あまり使わないけど「命の洗濯」という眺めです。



小学校のHPによると校舎のほとんどが築50年を経過しているが、2015年3月に耐震・改修工事が完成したとのこと。うらやましいぞ篠山小の児童たち。

「名残惜しい町」の締めくくりに最高の名残惜しさを
「それでしたら、帰りに『ことり』さんに寄られてはいかがしょう?」
という返事が返ってきた。
場所がまた、南外濠と西外濠の角という絶妙の位置にあって、建物全体が「ここではゆっくりしていきなさい」と語りかけているようである。
かつての武家屋敷を改修し、店主の小谷咲美(さくみ)さんが2010年に開いた。


正直、何を頼んだらいいか分からなかったが、バランスがいいとメニューに書いてあったので「奇種(800円・税込)」というお茶をお願いする。お茶うけのお菓子も付いてきました。

小腹がすいてきたので、豆寒(600円・税込※季節限定)もリクエストする。

急須からいったん「茶海」というミニポットのような器に入れ、そこから湯呑みに注ぐ。このひと手間の動作がまた心を落ち着ける。
陶芸家の柴田雅章氏はスリップウェアでも素晴らしい作品を世に送り出している。器の表面をスリップ(泥漿=でいしょう=水と粘土を適度な濃度に混ぜたもの)状の化粧土で装飾するこの手法は太古から伝えられているもので、20世紀には日本でも著名なバーナード・リーチらが取り組んだ。それを現代の器で具現しているのが柴田氏だ。
建物と空間、お茶とお菓子、そして器。
三拍子プラスαがそろった場所で和むとお尻に根が生えまくりだが、秋の夕暮れは早いので再会を期して失礼する。
「篠山浴」は体にもココロにもすこぶる良い。
岩茶房 丹波 ことり
兵庫県篠山市西新町18
[営業時間]11:00~18:00
[定休日]水曜日・木曜日
079-556-5630

中島淳
編集者。京阪神エルマガジン社時代にSAVVYとMeets Regionalの副編集長、Lmagazine編集長を歴任、2006年に独立して編集出版集団140Bを立ち上げ、代表取締役に。久しぶりに訪れた丹波篠山の洗練され具合にちょっと驚いたが、次回は「昼間は自転車散策、夜は酒とぼたん(猪)鍋で1泊」という予定でリターンマッチせねばと意気込む。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
丹波篠山で体験できるプラン
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