福井名物・羽二重餅の名店3選。絹のようなやわらかな食感にうっとり!

2017.09.08

「羽二重餅」は餅粉を蒸して、砂糖や水飴を加えて練り上げた白くてなめらかな餅菓子のこと。福井名産の絹織物「羽二重」のやわらかな感触を餅菓子として再現したことが名前の由来になっています。福井に行けばお土産の定番としても有名な羽二重餅。今回はここに行けば間違いなしのおすすめ3店をご紹介します。

▲こんなにのびる羽二重餅も!

羽二重餅発祥の老舗「松岡軒」

最初にやってきたのはJR福井駅から徒歩5分ほどの場所にある「羽二重餅總本舗 松岡軒 本店」(以下、松岡軒)。明治30(1897)年から続く羽二重餅発祥のお店として知られています。
▲羽二重餅の文字が目印

まずは羽二重餅の由来になった福井の絹織物「羽二重」について、少しご紹介させてください。
福井は全国でも繊維産業が盛んなまち。今から1200年ほど前に絹織物が織られ始めました。糸に撚り(より)をかけずに経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を織り上げた「平織物」は、その滑らかな肌触りから「羽二重織物」と言われ、全国で愛用されていたそうです。

松岡軒の創業者・淡島恒(あわしまつね)氏の実家は、もともと羽二重織物を扱う織物屋。しかし、繊維産業をとりまく社会情勢の変化により和菓子の世界へ転身。東京の和菓子屋「松岡軒」で修行を積み、暖簾分けされたことで、地元福井で「松岡軒」としてお店を始めることになりました。
▲創業後間もない頃の松岡軒の様子

松岡軒の名物を考えていた淡島氏が思い浮かんだのは、家業であった羽二重織物。織物業とのつながりを残しておきたいという思いもあり、羽二重のような滑らかさを追求した商品を開発し、「羽二重餅」と名づけました。
▲これが松岡軒名物「羽二重餅」(20枚入り、735円・税込)

真っ白でつややかな見た目は絹織物そのもの!
やわらかな感触が楊枝を通して伝わってきます。
▲持ち上げるとひらひらと軽く、口の中にいれるとやわらかくすぐにほどけていきます

材料は福井をはじめとした国内産の餅粉と北海道産のビートグラニュー糖、水飴のみ(打ち粉に馬鈴薯澱粉を使用)。シンプルだからこそ、その配合が少しでも変わってしまうと、しなやかな食感が生まれないそうです。実際に松岡軒では代々「配合だけは変えてはいけない」と言い伝えられており、今もその掟を守っているそう。だからこそ創業当時の味を楽しむことができるんですね。
▲裏面の原材料表示を見ると一目瞭然!添加物などは一切入っていないため、賞味期限は1週間程度です
▲昔と変わらぬ羽二重をまとった天女のパッケージがレトロでかわいい

温度や湿度にも左右されるため、毎日その日の気候に合わせて水分量を調節するのが職人の技。ひらひらとしたやわらかい食感は、こうして生み出されるのです。

鉋で削る手かき氷が絶品!

松岡軒の店内には喫茶コーナーがあり、毎年6月下旬~9月下旬はかき氷をいただくことができます。いちごや宇治抹茶といったスタンダードなメニューもありますが、今回はかき氷に羽二重餅をトッピングしたメニューを注文しました。
▲毎年かき氷が始まるのを楽しみにしているお客さんも多いそう

松岡軒のかき氷は昔ながらの鉋(かんな)で削ったもの。地元の氷屋さんから仕入れた純度の高いかき氷用の氷を、手作業で削っていきます。
夏の時期はこの「手かき氷」を目当てにやってくるお客さんで満席になることも。
▲白山の伏流水からつくられた氷。向こうがそのまま透けてみえるほど透明度の高い氷です

ザッザッザッと鉋に4~5回氷を滑らすと、面白いように氷が削られていきます。鉋の刃の角度を調整すると氷の細かさが変わるそうです。
▲面白いように削れていく氷

削った氷にお店でことこと炊いた小豆と羽二重餅をのせ、点てた抹茶をかけると出来上がりです。
▲和菓子屋さんだからこそ、素材の良さはお墨付き
▲左:「羽二重宇治金時」、右:「羽二重宇治しるこ」(ともに756円・税込)

鉋で削った氷は氷の粒が大きくシャリシャリ。淡雪のようなきめ細かいかき氷と違い、なかなか溶けないので、長い時間氷の尖った食感を楽しむことができます。まさに、“正統派・かき氷”という感じ。
氷と一緒に食べることで羽二重餅の繊細な食感が際立ちます。白玉とは違ったふんわりした羽二重餅のやわらかさと氷のシャリシャリ感の組み合わせがやみつきになりそうです。
▲店内奥のテラス席がおすすめ

試食OK!選ぶのも楽しい「羽二重餅の古里」

次にやってきたのは福井北ICから車で約2分のところにある「羽二重餅の古里」。福井市で昭和30年代から和菓子屋を営んで来たマエダセイカが平成5(1993)年、福井市のお隣の永平寺町にオープンしました。
県内外から訪れる人たちでいつも賑わっている羽二重餅の古里。大型観光バスが15台、一般車60台が停められる広々とした駐車場も完備しています。訪れる人の数はなんと年間約30万人とのこと。まるでサービスエリアのような規模です。
▲入口近くには推定樹齢2000年のケヤキの根の衝立が

重厚な門をくぐり、茅葺き屋根の建物のなかに入っていくと、なかは太い梁がむき出しになった100畳の空間が広がります。古き良き日本の家屋をイメージしてつくられたのだとか。
▲一昔前にタイムスリップしたかのよう

永平寺で執り行われる法要の際にも使われることから、永平寺御用達に指定されているマエダセイカの羽二重餅。純白の羽二重餅のほかにも、チョコ味やニッキ味、黒ごまきな粉味、よもぎ味、あんこで包んだものなど全部で14種類もあります。
個数に合わせてサイズも何種類かありますが、一番小さなサイズ(8~16個入り)は、どの商品も1箱430円、5箱買うと2,000円になるという明朗会計!(ともに税込)
ここだけの特別価格ということで、お土産用にたくさん買う方が多いのもわかります。
▲一番小さなサイズはちょうどお土産に配りやすく大好評
▲店内を回って選ぶのも楽しい

でも、こんなにたくさん種類があると選べない……。そんな方も多いはず。羽二重餅の古里のすごいところは、どの商品も安心して購入してもらいたいという想いから、置いている商品のほぼすべてが試食可能なのです。

い、いいんですか?
よく見ると、ほかのお客さんもパクッとつまんでいます。
▲試食分だけで製造量の2~3割を占めるそう。太っ腹です!

しかも中央にある囲炉裏では自由にお茶が飲めるようになっていて、いたれりつくせり。
▲甘いものを食べるとお茶が美味しいですよね

羽二重餅の古里に来たならぜひチェックしてほしいのが、大人気商品「生羽二重餅」。
生?どういうこと?
商品の陳列棚には何やら注意書きがあります。
▲「とても『食べにくい』商品です」とのこと

生羽二重餅は、10項目以上の特許を出願している製法で餅粉と砂糖、水飴などを2時間かけて練り、そのままの状態を容器に流し込んだもの。通常は打ち粉をつけて一口サイズに分けていきますが、余分な粉をつけないことで、さらにもちもち感が増します。
その代わり、何も手を加えていない状態なので、日持ちは7日程度と短く、商品も水平に保っていないといけないとのこと。お店の方いわく、「扱いにくい商品」だそうですが、それでもこの商品を買うためにわざわざ足を運ぶお客さんも多いそうです。
▲うわ~!のびるのびる

なぜこんな食べにくい商品を作ったのか。
そこには長年、羽二重餅をつくることで、土産菓子の役割を考え続けているマエダセイカの想いが込められていました。

「土産菓子は家族や友人、会社の同僚など、人が集う場を提供する役割がある。でも、もっと心の距離を縮めるものを作れないか」
みんなで寄り合い、分け合いながら食べることで、絆を深くする手助けになれば……とあえて分けにくく、食べづらい商品を作ることを思いついたそう。

福井ではもともと、冬の時期にヘラですくって食べる「水ようかん」が一家団欒のシンボル。生羽二重餅もそれに続く文化になるようにと、ヘラですくって食べるようになっています。

私たちも、早速シェアしていただきます!
「どこから食べよう?」
「わ~のびる~!」

通常の羽二重餅にはないつきたての餅のような食感ととろけるような甘さで、あっという間に完食してしまいました。
▲シェアして食べるとかなり盛り上がります

生羽二重餅は数量限定の販売。見つけたらぜひ購入をおすすめします!

羽二重餅づくりが目の前で見学できる!

羽二重餅の古里では、売り場だけでなく製造工場も併設されています。ここでは一日に1,500箱以上もつくるそう。自由に見学できるので、つくりたてのお菓子が店頭に並べられる様子を目の当たりにすることができます。
▲売り場の日本家屋のような雰囲気から一転、近代化された空間に
▲2階はガラス張りになっていて、製造現場が見渡せるようになっています
▲繊細な羽二重餅だからこそ箱詰めは手作業で

試食して買って見学もできると大満足の羽二重餅の古里。福井観光の際にはぜひ立ち寄ってもらいたい場所です。

ご当地で大人気の「羽二重くるみ」

最後に訪れたのは福井県北東部、勝山市にある「金花堂 はや川」。
ここでは羽二重餅を取り入れた創作菓子「羽二重くるみ」が大人気なのです。
▲はや川は勝山市の大仏店のほか、JR福井駅のショッピングセンター「プリズム」内にもあります

お店に入ると和菓子と洋菓子のショーケースが。
はや川は創業した昭和40年代初め頃は和菓子店でしたが、現在の店主である4代目の早川慶太さんの代から洋菓子も取り扱うことになったそうです。
▲スタイリッシュな店内には多くのお客さんがひっきりなしに訪れます

ありました、羽二重くるみ!
和胡桃の入った羽二重餅を3枚のシュー生地で挟んでいます。
▲2~3口で食べきれるサイズはおやつにぴったり

ほんのり塩気のある生地と甘さ控えめのなめらかな羽二重餅との組み合わせが絶妙な塩梅!甘くて香ばしい胡桃がアクセントになり、2個、3個と手が伸びてしまいそうです。
▲シュー生地と羽二重餅がきれいな層を生み出しています

和菓子のようだけど、コーヒーや紅茶にも合いそう。
そんな和洋一体化した羽二重くるみですが、なんとはや川では意外なことに、創業時から羽二重餅の取り扱いはなかったそう。しかし、偶然の出来事から、この羽二重くるみが生まれました。

お店がある勝山市は和胡桃がとれる地域。洋胡桃に比べて小さく、味はみずみずしくて濃厚なのが特徴です。さらに脂肪分が少なく、香ばしいため、このあたりでは昔から和胡桃をつかった饅頭や最中などの和菓子が作られていました。
▲これが和胡桃。殻の硬い和胡桃は「鬼胡桃」とも言われます

はや川の3代目、早川常夫さんが和胡桃を使った新たな商品を考えていたところ、思いついたのはシュー生地を使った商品でした。

独学でシュー生地の試作を重ねてみましたが、本来のシュー生地とは程遠いどっしりしっとりとした仕上がりに。しかし、このどっしりしっとりした生地に羽二重餅を合わせてみることを思いつき、「シュー生地 と 和胡桃 と 羽二重餅」という奇跡の組み合わせが誕生しました。
▲少し多めの小麦粉で作った羽二重胡桃のシュー生地。しっとりとした食感と独特の焼き目が特徴です

なかに入れる羽二重餅はあくまでもシンプルなつくりに。
国産の餅粉を蒸し、砂糖と水飴を加えながらしっかり練り上げます。
ここに先ほどの和胡桃を混ぜていきます。和胡桃は飴炊きにすることで、甘さと香ばしさが引き立ちます。
▲コクのある和胡桃は羽二重餅と相性抜群

新聞紙片面ほどの大きさの型に焼き上げられたシュー生地を敷き、その上に熱々の羽二重餅を流しこみます。
▲とろっとろの羽二重餅

流し込むとすぐさまヘラで羽二重餅をのばしていきます。隙間ができてしまうとシュー生地と羽二重餅がはがれてしまうため、気泡が入らぬよう丁寧に、手早くのばして再びシュー生地でぴったりと密着させていきます。
▲あっという間に均等にのばされる羽二重餅。職人の技です
▲隙間なくぴったりとシュー生地で覆います

作業は羽二重餅を流しこむ人、ヘラで整える人、シュー生地をかぶせる人の三人一組。抜群のコンビネーションで次々と羽二重くるみの形になっていきます。
▲次々と流し込んだ羽二重餅にシュー生地がかぶせられていきます
羽二重餅を流し込み、シュー生地を乗せる。この工程を2回繰り返し、半日ほど冷蔵庫で寝かせた後、四角に切り分けると完成です。
▲1枚の型で90個分。1日に約1万個作ります
▲わー、きれいな断面!これぞ羽二重くるみ

通常、商品にはならない四隅の切れ端、通称「はしっこ」は小分けのパックに。朝早い時間帯に羽二重くるみを購入した方にはサービスでプレゼントされることもあるそうです。
▲もらえるとちょっと得した気分になるはしっこ

これぞまさに勝山が誇る銘菓。和菓子が苦手という方にもぜひ試してもらいたい一品です。日によっては売り切れてしまうこともあるので、早い時間の購入がおすすめです。
お店によってバラエティー豊かな羽二重餅。いろんな店舗で食べ比べながら、お気に入りの味を見つけてみてくださいね。
石原藍

石原藍

フリーライター/プランナー。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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