京都の職人が直接伝授!雅な器を作れる金箔押し体験

2017.10.07

京都といわれてイメージする華やかさや、雅やかさ。それを支える伝統工芸の一つに京の「金箔押し」があります。ものづくりの機械化や量産化が進むなか、手仕事ならではの輝きをいまなお受け継ぐ工房で、その技術の一端を体験させてもらいました。

手仕事の証明「縁付き金箔」と 京の「重押し」

京都駅から北へ歩いて約10分。西本願寺と東本願寺という二大寺院に挟まれた界隈は、仏像や仏壇仏具をはじめとする伝統工芸の工房がいくつも軒を連ねる町です。
表通りからさらに奥へと、いくつもの細い路地が伸びている京都の町並み。南北に延びる新町通から、人がすれ違うのもやっとという行き止まりの路地の奥にあるのが、この地で四代続く「五明(ごめい)金箔工芸」。

仏壇仏具はもちろん、その技術の高さを聞きつけた海外のファッションブランドなどから声が掛かり、アクセサリーやオブジェなどの金箔押しも手掛けています。
こちらの三代目・五明(いつあき)昇さんは国から瑞宝単光章(ずいほうたんこうしょう)を受けた京の名工。また、京都市から「未来の名匠」に認定されている四代目・久さんは、伝統産業の普及に日々奔走されていて、自らの工房でも約20年前から「金箔押し体験」を主宰されており、京都に数ある工房のなかでも、まさに先駆けといえる存在です。
▲四代目を受け継ぐ五明久さん

「箔押しは主に漆を接着剤にして、作品に金や銀、プラチナなどの箔を張っていきます。漆の乾き具合や温度・湿度に左右され、自然相手のことなので経験の積み重ねが大事なんです」と説明してくれた久さん。繊細な美しい仕上がりには熟練の技術が求められるそうです。

なかでも京都では「重(おも)押し」と呼ばれる艶を抑えたむっくりとした重厚な輝きに仕上げるのが基本。
「昔ながらの風合いを出すために、うちでは機械ではなく職人が手作業で伸ばし、裁断した金箔を取り寄せて使っています」と久さん。
▲久さんの作品。仏像や仏具だけでなく現在は食器なども人気

金箔押しに使われる金箔は、箔同士が張り付いてしまわないよう「合い紙」で挟んで取り扱われます。機械で伸しや裁断をした金箔の場合、合い紙と金箔はぴったり同じサイズに裁断されますが、職人が裁断する場合は、作業中に金箔に直接指がふれないよう、合い紙だけに「縁(ふち)」が残されます。
つまり、合い紙に縁のある「縁(えん)付け金箔」の金箔は職人の手仕事の証ということ。

久さんが使う金箔はすべてこの縁付け金箔。五明金箔工芸が世界に誇る金箔押しの伝統の技もまた、昔ながらの技術を守る金箔作り職人の手仕事に支えられているんですね。

息をのむ箔押しの瞬間。本格派や手軽なコースも

では、いよいよ箔押し体験のスタートです。
この体験は、久さんの「ほんものの違いを知ってほしい」という思いから始まったもの。それだけに初心者の体験にも貴重な「縁付け金箔」を材料として使います。
▲手鏡や写真立て、丸皿に好きなモチーフの金箔を押す「ハイグレード」コース。また右の2つは手持ちの小物に金箔をほどこす「シンプル」コース

体験コースは「スタンダード」「ハイグレード」「シンプル」の3種類。
今回、私が挑戦したのは飾り皿をつくる「スタンダード」コースです。
▲朱か黒いずれかの角皿にマスキングテープでデザインを施し、金箔を押すスタンダードコース

2名から体験可能で、1人2,500円(税込)。所要時間は2時間前後で作品はその日に持ち帰ることができます。
素材の角皿と金箔、箔ばし、筆記用具、マスキングテープなどはあらかじめスタンバイされていました。

ではまず下絵から。約1cm幅のマスキングテープをどのように配置するかで、金箔を残す部分と剥がす部分を決めていきます。
▲型紙はホームページにもアップされているので事前に考えていくのもおすすめ
▲下絵を見ながら、漆塗りの角皿にマスキングテープを張っていきます。お皿の色が見えている部分に金箔が残ります
体験コースでは作業しやすいように、接着剤には漆ではなく専用液を使います。接着液を塗る作業はプロにおまかせ。薄さ、乾き具合などを調節するのはさすがに素人には難しい!

では、いざ箔押し本番!!……の前に、金箔の扱い方の練習を。
▲まずは下絵をお皿に見立てて、金箔の持ち方、運び方、置き方を練習

何しろ液を塗ったお皿の上に金箔を置くのは一発勝負。
エアコンの風や自分の息でもゆれてしまう薄い金箔を、思った場所に置くのは考えていた以上に至難の業!慣れるまでゆっくり待ってもらいました。

では、今度こそ本番!
息を凝らしながら慎重に…緊張の瞬間です。
▲四角い皿に4枚の金箔を敷き詰めます
▲「あれっ!?皺が入ったかしら!!」と焦っていたら、すかさず久さんがフォローを

「多少ズレたり、皺になっても、押さえの作業できれいに仕上げられるから安心してくださいね」という言葉に背中を押され、2枚目は思い切りよく目印の位置へ。
▲こんなに皺だらけで大丈夫かしら…と思いつつ、最後の1枚。

4枚の金箔を配置したら、プロがまんべんなく払い上げ、表面に艶を出します。
この力加減も職人ならではの技なので、美しく整えられていく手元をじっと観察。
そしてここからが一番緊張するけれど、一番楽しみな作業。
いよいよマスキングテープをはがしていきます!
ゆっくり慎重に、縁のマスキングテープまで剥がしたら箔押しの模様が浮かび上がりました!
仕上げに、作品にサインを入れることもできます。
竹の棒は五明さんが考案されたという修正棒。 竹に金箔を挟む合い紙が巻いてあります。これを使えば、縁を整えたり、文字を入れたりするのも簡単です。
これにて完成!
模様はシンプルに、金箔部分を多く残すデザインにしてみました。

“ほんまもん”の美を身近に感じて

工房では、アクセサリーや携帯ケースなど、オリジナルの商品も展示されていて、購入することもできます。
▲京都らしいモチーフで、シンプルモダンなアクセサリー。三日月型16,200円、丸型「月にうさぎ」「月にさくら」19,440円(税込)
▲スマホケースには舞妓のレリーフが。ゴールド27,000円、シルバー28,080円(ともに税込)

また、人気なのが「あぶら取り紙」。金を延ばすときに職人が用いる「箔打ち紙」を使ったもので、ところどころに金箔が残っているのが、まさに“本物”の証。数が少なく、品切れの場合もあるのでご注意を。
▲「あぶらとり紙」は30枚1,000円(税込)
▲金箔を受け継いできた職人ならではの技やその歴史、そして“ほんまもん”を見る目を養い、技術を守っていきたいという久さん

貴重な手作りの金箔を使っての体験で少々緊張しましたが、その甲斐あって出来栄えにも大満足。完成したお皿は現代的な照明の下だけでなくキャンドルの明かりで眺めてみるのがおすすめです。明かりを受けた金がゆらゆらと静かな光を放つようすに、昔の人々が金箔を愛でた意味が少しわかるような気がしました。

また、五明金箔工房が手掛けた作品は、京都市内のあちらこちらに点在しています。体験の後は観光の足で匠の技を訪ねてみるのもいいですね。
▲京都市役所に掲げられている市章。エンブレムの金箔押しは久さんの手によるもの
▲「京都市勧業館みやこめっせ」エントランス。エスカレーター壁面に金箔押しが市松模様に施されている

受け継がれてきた本物の美を体験しに、あなたも京都へ足を運んでみませんか。
若林扶美子

若林扶美子

フリーのライター&プランナー。京都をはじめ関西を中心に、雑誌、書籍、PR誌の企画・執筆を手掛け、伝統文化や地域情報などを発信している。6匹の猫とともに滋賀在住。

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